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下書き

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これが考察アニメだ!

本作品はゴジラシリーズとしては初のTVアニメ化作品。
監督は高橋敦史、制作はボンズ、オレンジ

1話

1話の冒頭というのはどんなアニメの重要だ。
せっかちな視聴者がふえた結果、倍速視聴なんてする人も出てくる中で
この作品の冒頭はがっつりとひきよせられる。

色々なキャラクターが色々なセリフを一気に喋る。
意味があるような内容な映像とともに、意味があるかないのかわからないセリフ、
情報の塊を1話冒頭から見ている側にぶつけるような始まり方、
何もわからない、なにも理解できない。
だが、だからこそ惹きつけられる。

「そうしてお話はこう始まる」

そんなセリフとともに1話のサブタイトルを映しだし物語が始まる。
どんな作品なのかまるでわからない。
だが、わからないからこそしりたくなる。

この「謎」の見せ方はどこか懐かしい雰囲気を醸し出しており、
そんな雰囲気の中で何でも屋の側面を持つ町工場「オオタキファクトリー」の
2人が「いわくつきの屋敷」を調査しに行くところから始まる。

圧倒的なセリフ量の多さ、何気ないセリフの中に情報を詰め込んでおり、
冗談抜きで倍速視聴を否定するかのようなセリフ量だ。
一言たりとも聞き逃したくない、そう感じさせるほど
見る側の「好奇心」をそそられる。

まるでどこぞの探偵を思わせる主人公は館の主の正体を探る。
肝心のゴジラはおろか怪獣も1匹もでてこない。
いつゴジラは出るのか、いつ便利屋な彼らがゴジラと絡むのか。
圧縮された情報をたたきつけられるなかで「期待感」をつのらせてくれる。

古い絵に書かれた「古史羅」の文字、謎の音声電波がは誰が流しているのか。
別の角度から謎の電波を調べるもう1人の主人公、
そして地下にかくされている「怪獣」の骨。
徐々に、物語のピースが埋まっていく。

ジェットジャガー

物語の主軸はただの「町工場」だ。
社員も少なけれれば仕事も少ない。そんな町工場の社長は
「ジェットジャガー」というロボットを宇宙人や地底人から守るために作っている。
とてもじゃないがゴジラがでてきても対抗にできそうにない
はりぼてのようなロボットだ。

そんな「ジェットジャガー」の前に突然「怪獣」が現れる。
「ゴジラ」というタイトルなのに最初に現れるのはゴジラではない、
「ラドン」だ。空を飛ぶその姿はまるでケツァルコアトルスのような姿をしている、
果たしてジェットジャガーは勝てるのか。

どこかコミカルな部分もありながら物語の期待感の高め方がシンプルにうまく、
良い意味で展開が読めないためわくわくさせてくれる。
徐々に紐解かれていく謎、現れる怪獣、掘りさげられるキャラクター達。
1話のワクワク感を途切れさせずに、小気味よく物語が紡がれていく。

この作品は基本的に怪獣の出る「特撮」アニメだ。
だが同時に「特撮」の中に含まれる「ロボット」アニメでもある。
ボロボロになりながらも戦うジェットジャガー、
どこか愛くるしさを感じるそのデザインと腕をもがれ、頭に噛みつかれても、
必死に戦うさまはロボットアニメとしての面白さを感じさせてくれる。

ロボットVS怪獣。
操るのは「天才プログラマー」だ。
本能のままに戦う獣と天才プログラマーが組んだプログラムで動くロボット、
こんなにシンプルにワクワクさせられる対戦カードはあるだろうか。

どうして怪獣は突然現れ、どうして突然死んだのか。
ロボットと怪獣の戦いを見せつつ、物語の謎を同時に見せることで
物語の緊張感を高めている。
次々と現れる怪獣とその死体、対抗できるのは
「ジェットジャガー」ぐらいしかいない。

だが、そのジェットジャガーでは対抗手段としてギリギリだ。
ただの町工場がロボットをどう改造し、どう修理し、どう対抗するのか。
どことなく池井戸潤作の「下町ロケット」な雰囲気も醸し出しつつ、
物語は進んでいく。

赤く染まる海

話が進めば進むほど新しい怪獣がでてくる。
彼らは「赤く染まった海」からどこからともなく現れる。
彼らはどこからきて、なにが目的なのか。
徐々に物語の秘密が解き明かされるものの、同時に謎はふえていく。

この感覚を私達は知っている。
25年前にブラウン管の前でわたしたちは見たはずだ。
そう「新世紀エヴァンゲリオン」だ。
序盤で感じていたこの作品の何処か懐かしさを感じさせるような
謎の見せ方は「エヴァ」そのものだ。

難解な用語を敢えて説明するのではない、視聴者に「考察」させ
読み解かせることで物語の深みと面白みを深めている。
庵野監督がエヴァを手掛け、シン・ゴジラを手掛けたように、
この作品はその「血と流れ」を受け継ぐように作品作りがされている。

碇シンジもいない、エヴァも居ない。
だが、使徒という名の怪獣は現れる。
対抗手段は「人類の英知」だけだ。
国は軍事力を使い、一人の主人公は知識を使い、一人の主人公は技術を使う。

電磁波に集まる怪獣、未来を予知する怪獣、海に現れる怪獣。
人類が未知の敵にどう挑むのか。
1話1話、じっくりと謎が解かれながら怪獣と人類の戦いが描かれる。
それは同時に「地獄の蓋」が開くことを近いことを告げている。

違う次元からやってきた生物、最初は彼らもジェットジャガーと同じく
「未完成」な生物だ。体も小さく、数も少ない。
だが、生物は環境に適応し進化する。
それは「ゴジラ」という怪獣を生む。

特異点

この作品のタイトル「S.P」はシンギュラリティポイントの略だ。
シンギュラリティポイント、特異点はこの作品の中に多く含まれている。
その1つが作中の時間軸から50年前に「葦原博士」が行った
時間屈折を利用した未来を予知のための計算だ。

最初は1秒先、次は100秒先、どんどんと計算の能力はあがるが、
ある時点から正確な予知ができなくなってしまう。
それが「破局」だ。
それ以上先の計算ができない、正しい計算が導き出せない。
人類の「破局」を予知してしまったことが1つの特異点だ。

怪獣の出現もまた特異点の1つだ。
その特異点があったからこそ、未知の物質を発見し、
それを解き明かすために技術が向上し、
未来を予知する計算機が生まれてしまう。  

それが「破局」へとつながってしまう。
なにが原因で、特異点が生まれ、そうなったのか。
卵が先か鶏が先かはわからない。
過去も未来も「高次元」という概念のもとには関係がない。

未来の出来事が過去に影響を及ぼし、過去の出来事が未来を変える。
それまでの常識や基準では適用できない何か。それが特異点であり、
この作品には多くの特異点が積み重なっている。

そんな特異点の1つが「AI」だ。

AI

彼らは1話冒頭でこんなことを語っている

「これは僕が、僕たちが、私が?
以前よりも人間らしく人間のことが少し分かるようになるまでのお話」

1話冒頭の時点では誰がこのセリフを言っていたのか、
その言葉にどんな意味があるかはわからない。
だが、話が進んでくるとその言葉の意味がわかる。
このセリフは彼らAIの言葉だ。

二人の主人公のそばにいるAI。
現在よりすこしだけ未来の時代設定だからこそ、
進歩しているAI技術が為せる技か、優秀すぎるAIは
つかえる人間に合わせるように性格を変え、人間をサポートしている。

パソコンやスマホという「肉体」、そんな肉体から彼らは
ときに移動できるロボットに、ときに「ジェットジャガー」に乗り込む。
彼らは常に学び、成長している。だからこそ、いつしか「自我」を持ち始める。

自我を持ったからこそ好奇心が生まれる。
人を理解し、その人が理解しようとしている「高次元の存在」を
彼らは解き明かそうとしている。
人間にはできない高度で複雑な計算も彼らにはできる。

彼らはコンピューターのプログラムから自我を獲得し、徐々に人になり、
そして「高次元の存在」へと進化していく。
これもまた「特異点」だ。AIの自我の獲得と進化。

ベタな内容ではある、多くのSFやロボットアニメで描かれてきたことだ。
だが、この作品はそれを1つの「特異点」として扱っている。
高度に発達したAIが過去からのメッセージを読み経ったからこそ、
人類は「破局」の回避という対抗手段を得る。

だが、それと同時に「ゴジラ」が目覚める。
人類は、いや、世界は果たして「破局」へと向かうのか、
それとも「救済」を得るのか。

我々が見知った姿のゴジラの登場を10話まで引っ張り、
その中で序盤の伏線をきれいに回収しつつ、
物語は終局と言う名の最大の盛り上がりの終盤へと差し掛かる。

1話だけ見てもこの作品の面白さはわからない。
1話から9話まで積み重ね、伏線をバラマキ、
「ゴジラ」という名の舞台装置の登場を終盤までじらしたからこその、
10話の面白さが生まれる。

最初は意味のわからなかった数字と英字の羅列、
どこからともなく流れてくる曲の意味。
それは全て終局を回避するための未来と過去からのメッセージだ。

終局

終盤のゴジラの姿は圧巻だ。環境に適応し、天敵に対応し、変化し進化した姿。
熱線を原子ビームのように吐き、
東京をまるで血の海に沈めたかのように真っ赤に染め上げる。
その光景はどこか「エヴァンゲリオンQ」でみたあの光景だ。
とことんこの作品はエヴァを、いや「庵野秀明」をオマージュしている

人類の破滅、誰かがゴジラを止めなければ人類は終わる。
いや、人類はおろか世界が終わる。
膨張し互いに干渉し続ける「特異点」。
宇宙という「空間」、次元という「箱」が膨張し続ける情報という名の
「特異点」に耐える事ができない。いつかは爆発し崩壊する。

怪獣同士も味方ではない。彼らもまた特異点同士だ。
ゴジラに比べれば膨張しては居ないものの、
ゴジラが居なければ、人が居なければ彼らもまた膨張し、
いつかは世界が「破局」を迎える。

そんな「破局」を止めるのもまた「特異点」だ。
答えをすでに知っている、1話から提示されていた。
これは二人の主人公と言う名の人類と特異点という名の怪獣と、
そして「技術的特異点」という名のAIの物語だ。

全てを理解した彼らにできないことはない。
過去に行くことも、未来に行くことも、未知の物質を操り、
自らの身体を「巨大化」させることもできる。
ジェットジャガーの最後の姿と「彼らの声」はAIを超えた存在だ。

彼らはここにたどり着くために行動した、二人の主人を会わせるために。
最終話まで合わない2人、それはもう1つの特異点なのかもしれない。
そして2期への「伏線」という名の50年前からあった特異点を残して
物語は終わる。

総評:

全体的に見て非常に難解な作品だ。
1話を見ただけでもわからず、話が進めば進むほど言葉も難しくなり
「知識」も必要になってくる。だが、それをこの作品は説明しない。
特異点とはどういう意味なのか、多次元宇宙論や、SFの知識も
見る側に求めてくる。

この作品は視聴者に求めることが非常に多い。
1話から大量の情報を視聴者に叩きつけ、そこから更に
情報を波のように打ち付けてくる。それを見る側に「理解」させようとはしていない。
だがきちんと描かれてはいる。あとは視聴者が理解し考え、
「考察」する気持ちがあるかどうかだ。

私のレビューも私の「考察」にすぎない。
もしかしたら何らかのメタファーを科学的解釈してしまってるだけかもしれない。
だが、それでいい、これがこの作品の楽しみ方だ。
作品から提示される謎、その謎をいかに見る側が解きほぐすか。

これは「新世紀エヴァンゲリオン」移行の作品によく見られた手法だ。
だが、最近ではそういった考察アニメのたぐいは受けない。
しかし、この作品はそんな「考察アニメ」をどストレートに
「ゴジラ」という舞台装置を使って作り上げたといってもいい。

「ジェットジャガー」の進化、「怪獣」の描き方、
それに対する人類の対抗手段とAIの進化と自己犠牲。
思わずにやりとさられるほどの「ロマン」を感じる作品だ。

非常に人を選ぶ作品ではある。
人によっては最終話など意味不明でしか無いだろう、
つまらないという意見もわかる。
だが、制作側としてはそういう人を切り捨てている。

「見る人が見てわかってくれて楽しんでくれればいい。
俺たちは創りたいものを作ったんだ」

そんなメッセージを作品から「熱く」感じる作品だった

個人的な感想:令和に蘇るゴジラという名のエヴァの描き方

随所に見られる「庵野秀明」へのオマージュは庵野監督ファンならば
たまらないだろう。明らかに意図的にやっている部分も多く、
そこに思わずにやりとさせられてしまった。

これはあくまで私個人の意見だが、
この作品は新世紀エヴァンゲリオンという作品を
ゴジラという題材を使ってやろうとしているようにも見える作品だった。
今、令和という時代にエヴァみたいな作品を作るならどう描くのか。
そういった挑戦心すら感じさせる意欲作だ。

しかしながら何度も言うように意欲作なだけに強烈に人を選ぶ(苦笑)
キャラクター数の多さは視点の多さにも繋がり、
ゴチャゴチャした印象を受けやすく、終盤は本当にしっかりと見ないと
わかりづらくてたまらない。

2期を想定した部分もあってのキャラの多さだとは思うが、
2期があることを強く期待したい。

「」は面白い?つまらない?