サスペンス

「名探偵コナン 11人目のストライカー」レビュー

2.0
サスペンス
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評価 ★★☆☆☆(27点) 全110分

劇場版名探偵コナン11人目のストライカー

あらすじ コナンや少年探偵団は現役プロサッカー選手が指導を行うサッカー教室に参加した。そこで小五郎は、大学時代の後輩の榊良輔と再会を果たす引用- Wikipedia

コラボが仇になった作品

本作品はコナンとしては16作品目の映画作品。
本作は「Jリーグ20周年記念プロジェクト」とのコラボ作品となっており
5人のプロサッカー選手が作品内に登場し本人たちが演じている
更には小学館創業90周年記念作品という肩書きが2つも乗っている作品だ

いきなり爆発

コナンと言えば爆発物だ。一作目から伝統のように爆破され続け、
コナンに出てくる大きな建造物は爆破されるために出るようなものだ。
今作もいきなり毛利小五郎の事務所に電話がかかってきて、爆発する。
何の脈絡もなく唐突に爆破から始める展開は
ある意味でコナン映画らしい始まり方だ。

コナン映画といえば爆発というのを制作側が意識してるからこそ、
冒頭わずか1分ほどで爆発シーンが挟まれるのは
流石としか言いようがない。

そんなダイ・ハードもびっくりないつものシーンから、
平和な日常へと場面が転換する。

サッカー

今作は「Jリーグ20周年記念プロジェクト」とコラボしてることもあり、
がっつりサッカーが絡んでくる作品だ。
序盤から実際の「サッカー選手」がでて、その選手たちが「演技」をしている。
このシーンが少しならば問題はないのだが、
結構長めの尺で「素人の演技」を聞くのはかなり辛いものがある。

スポーツ選手に演技力などは求めていないが、
ファンサービス的な面から考えても、かなりの長尺で素人の演技を
聞かなければならないのはやや苦痛だ。
サッカーに1ミリも興味がない人にとっては本当に苦痛だ。
これでコナンがサッカー漫画なら分かるが、忘れがちだがコナンはミステリーだ。

ただ、「キングカズ」こと三浦知良選手だけは意外と演技がうまい(笑)
彼とコナンとのシーンはコラボレーションらしい内容で、
コナンのサッカー好きもよく描写されており、
このシーンのためにコラボしたかいがあったと実感できる。

この「キングカズ」とコナンの関係が犯人の動機の伏線にもなっており、
素人演技という面に目をつぶればJリーグと名探偵コナンという
作品のコラボは案外うまくやっている

スケボー

コナンと言えばスケボーアクションだ、今作はなかなかに凄い。
サッカースタジアム内の鉄骨をフルスピードで掛け上り、
ほぼ直角に近い角度で飛び出し、足を踏み外せばただでは済まない高所を
高速で走り回る姿はもはや爆笑以外では表現できない。
無駄に回転したり、ジャンプしたりが大きもするが気のせいだろう(笑)

しかし、今作は事故る。
流石にスピードを出しすぎたのか鉄骨にぶつかってしまい、
スケボーも壊れ、コナンは気絶してしまう。
非現実的なアクションをシておいて、いきなり現実的な描写になる。

正直、「別にこけなくても良かったんじゃないか?」と感じる部分でもあり、
超絶アクションをそのままやりきったほうがスッキリした描写になったはずだ。
しかも、コナンがわざわざ超絶アクションを繰り広げたのにも関わらず、
コナンは爆破自体を止めることは出来ない。

犯人の思惑通りに「電光掲示板」が爆破され、
サッカースタジアムの客席に落下してしまう。
こんな一歩間違えば何百、何千人も巻き込みかねない事故をわざわざ起こす
犯人の目的は一体何なのか、視聴者は釘付けだ(笑)

淡々とした中盤

序盤は非常に派手なのだが、中盤になると淡々としたストーリー展開になる。
なぜ犯人は毛利小五郎にわざわざ爆破予告をしたのか、
なぜサッカースタジアムを爆破したのか、
容疑者の過去やアリバイを調べつつ事件を捜査する。

前作もそうだったが、いまいち「映画向けのストーリー」という感じではなく、
TVSPレベルのこじんまりとしたストーリー展開であり、
爆破やアクションシーンさえなければ映画としては物足りない。

序盤は爆発で散々派手なシーンを展開していただけに、
中盤の40分くらいのテンポが悪く地味になってしまっている。

めんどくさい犯人

今作の犯人はコナン映画史上1番めんどくさい犯人だ。
わざわざ毛利小五郎に爆破予告をし、爆発する場所を暗号にして知らせてる。
終盤の爆発もわざわざ「サッカー選手が指示されたとおりのプレイ」を
すれば爆発を止めてくれる。しかも、そのプレイですら暗号化されてる。
止めさせたいのか止めさせたくないのか、もう面倒くささの塊みたいな犯人だ。

しかも爆発の規模と爆弾の仕掛け方がとんでもない。
スタジアムの電光掲示板も「一体どうやって仕掛けたんだ?」と
思うほどの高所な場所だが終盤の爆弾は
10箇所のスタジアム全てに仕掛けられている。
相当量の爆薬だ。

とてもじゃないが素人には用意できる量ではない。
これで犯人が爆薬を用意できる立場や職業なら理解できるが、
ただの「サッカー選手になれなかったバイク屋のアルバイト」だ。
一応、爆薬は南米の知り合いから手に入れたという設定になっているが
税関が見逃すにはあまりにもとんでもない量の爆薬であり、
それを一人で仕掛けるのも無理があり、色々と説得力に乏しい感じだ。

犯人の条件通りにサッカー選手が
プレイをする様を淡々と見せられても微妙だ。
これでもっと凄いプレイなら見ていて「おぉ!」となるかもしれないが
「ゴールの枠の真ん中に当てろ」という何とも微妙な条件は、
技術的にはすごいようだが、絵面としていまいち凄さがわかりにくい。

犯人の動機

犯人はサッカーとサポーターと毛利小五郎に対して恨みがある。
ただ、これは「勘違い」だ(苦笑)
よく調べもせずに勘違いで何千、何万人を爆破しようとこの犯人は考えている。
気持ちはわからないでもないという意味ではコナン映画の犯人としては
珍しいタイプの犯人ではあるものの、それが勘違いというのが残念だ。

単純に道を大騒ぎするサポーターが塞いでいて救急車が遅れてしまい、
仲良くしていた少年が死んでしまったという理由でも良かったはずだ。
わざわざ、実はサポーターと毛利小五郎は怪我人の救護をしていて、
自分たちが呼んだ救急車と勘違いして道を塞いでしまったという
理由付けをすることで「サッカーのサポーターの印象」を
悪くしないようにしている。

ワールドカップのたびに渋谷で馬鹿騒ぎしてるサポーターが
現実に大量に存在するのだから、
サポーターのマナーへの注意喚起としての意味合いを含めても良かったはずなのだが、
結局、サポーターは別に悪くない、サッカー選手はすごい!という
「Jリーグ20周年記念プロジェクト」感がバリバリに出てしまっている作品だ。

犯人のアリバイ作りもやや無理があり、
最終的にコナンに「ガキはお前だ」と
説教されるほどの犯人は初めてかもしれない(笑)

悠長に…

ラストのシーンはある意味でこの作品を象徴してるかもしれない。
あとわずかな時間で爆発物が起動してしまい、何万人もの犠牲がでかねない。
そんな中、止めるにはサッカーボールでコナンが
ゴールポストの真ん中にボールを当てなければならない。
しかし、サッカーボールがない。

そんな中で「少年探偵団」がゆっくり色々なことを言いながら、
サッカー教室で習ったとおりに一人ひとりパスしていく。
もう時間がない!という緊張感の塊みたいな状況なのに、
ちんたらちんたらパスシてるシーンは緊張感が抜け落ちる感じだ。

せっかく状況悪くないのに、その状況にふさわしい緊張感を作りきれていない。
色々な意味でもったいない作品だった。

総評:コラボさえシなければ…

全体的に見て色々と中途半端な作品だ
ありえない量の爆発物による爆破は迫力があり、
そんな中でコナンがスケボーで走り回るさまはコナン映画らしいアクションだ。
しかし、犯人の動機が「勘違い」だったり、中盤のダレだったり、
物語のメリハリがついておらず、どうにも地味な印象が残ってしまう。

ストーリー自体はそこまで悪くはない。
「サポーターのせいで」という理由付けは面白いのだが、
それが勘違いというのはJリーグとコラボしてしまったがための展開であり、
サッカー選手の素人演技は聞けたものではなく、
サッカーに興味がない人によっては苦痛でしかない要素だ。

爆発物の解除方法も無理やりサッカーに絡めた感じは否めず、
コラボがいろいろと仇になっている作品だ。
スタジアムの10箇所に爆発物を仕掛けて実際爆発もしてるのに
死傷者0なのも腑に落ちないところだ。

今作では殺人も起こっておらず、死人は0だ。
そういった意味ではレアなコナン映画ともいえるのだが、
Jリーグとのコラボゆえに殺人を描けなかったという
大人の事情も察してしまい、
派手なことをしてる割には印象に残らない作品だ。

個人的な感想:爆破

「Jリーグ20周年記念プロジェクト」とのコラボ、
「小学館創業90周年記念作品」という2つの要素が、
本作品をいつものコナン映画ではなく、どうにも突き抜けきれない感じを
生み出してしまっている感じだ。

本来のコナン映画ならもっと爆発させ倒壊していた、
もっと死傷者もでていただろう。
しかし、Jリーグとのコラボ作品で小学館90周年記念作品という要素が
いつものコナンらしさを失わせてしまっていた。

要素自体は悪くないのにはっちゃけきれていないもどかしさを感じる。
「推理」や「トリック」などのミステリー性は薄く、
いつものようなとんでも展開などが無いため
コナンファンでないならば楽しみづらい作品だ

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