映画

おぢいさんのランプ

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評価/★★★☆☆(47点)

明治の明かり。

本作品はアニメミライ2011という企画の中の1本。
監督は「滝口禎一」、制作は「テレコム・アニメーションフィルム」

見出して感じるのは「音」だろう。
日本の昔懐かしい木造建築の家の中で「かくれんぼ」をする子供の足音のリアルさ、
「木造建築」の音が見ている側の耳に生々しく伝わり木の匂いすら伝わってきそうな感覚だ
そんな家の中で少年が「おじいさんのランプ」を見つけるところからストーリーが始まる

明治初期に時代が移り、そこで懸命に働く少年の物語が淡々と描かれる。
わらじを作り、人力車を手伝い、彼は日々のお金を稼ぐ淡々と、淡々と。
明治初期という時代背景に相応しい「背景」と「音」をしっかりと描写することで
淡々と進むストーリーに不思議と飲み込まれる。
丁寧に淡々と、まるで「絵本」を1ページ1ページ読み進めるように
話が進めば進むほど作品の世界観に浸ることができる

一人の青年がランプに出会ったことで「わらじ作り」から出世し
ランプ屋になり成長し、時が経過していく。
結婚し子供生まれ、彼の生活、彼の人生を淡々と描写してはいるものの
この作品の世界観づくりが素晴らしいからこそその淡々としたストーリーが染みわたる。

明治初期という時代背景だからこその「文明開化」、
文明開化があったからこその「ランプ屋」という職業の発展と
その後に「電気」が普及したからこその廃れ。
ランプ屋という職業を選んだ主人公のあせりと不安、
25分という尺の中で目まぐるしく展開していくストーリーのテンポが素晴らしく、
余計なシーン、余計な要素がないからこそ「25分」という尺の中で
主人公の人生を味わうことができる。

そして彼は「罪」を犯そうとする。
電気が普及すればランプはいらなくなってしまう、
だからこそ彼は「電気」は恨み、村に電気を普及させる「区長」を憎み、罪を犯そうとする
だが、そんな彼の罪は子供の頃から使っていた「物」が止める
使えなくなった道具に見限りをつけ、彼はまた新たな人生を歩む。

全体的にみて素晴らしい短編アニメだ。
序盤の5分で「作品の空気」をしっかりと感じさせ、
中盤の10分で主人公の成長をしっかり描き、
終盤の10分で主人公の変化と物語の終わりの余韻を味わせてくれる。
「25分」という尺を最大限に1分も無駄にせず活かし、
明治初期に生きた主人公の人生を淡々と、だがしっかりと描いている作品だ

ただ確かに面白いのだが、その反面で真面目すぎる印象も覚える。
25分という尺を最大限に使ってしまったからこそ「遊び」の部分がなく、
序盤など若干不自然な早口なシーンがあったり、
真面目に描いてるからこそ「動き」の面での面白さは薄い。

見終わった後も素直に面白かったといえる作品ではあるものの
強いインパクトが残る作品ではなく、すっきりと楽しめる作品だが
すっきりとしすぎていてもう少し「後味」が欲しかったと感じてしまう作品だ
面白かったのだが25分という尺で短編アニメを手堅く作りすぎているという印象が残る
ただ25分の短編アニメでそれを言い出すのも酷な話だ(苦笑)

誰かに強く「この作品面白いよ!」と進められる感じの作品ではないが、
機会があれば見て欲しい作品だ

「」は面白い?つまらない?

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