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PSYCHO-PASS サイコパス 2

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評価/★★☆☆☆(25点)

見ている側の色相が濁るアニメ

本作品はPSYCHO-PASSの2期。
制作会社は一期のプロダクションIGからタツノコプロへと変更、
監督に変更はないが、脚本が虚淵玄から熊谷純に変更になっている
なお劇場版も決定している

一期から制作会社が変更になり、キャラクターデザインは微妙に変わったものの
1期から作中で「1年半」という年月が経っており主人公である「朱」が成長し、
一係を牽引する役目になっており、
少し「シュ」っとしたキャラクターデザインへの変更が
より自然に1期との「印象の差」を減らし、スムーズに2期を見出すことができる

ただ作画の質に関しては一期のほうが質が高かった。
1期1話と2期1話と対比すると作中の雰囲気から生まれる「緊張感」が
1期1話に比べるとどうにも薄く、
ストーリーの盛り上がりを「淡々」と描いている印象が強い。
抽象的な表現ではあるが1期の1話は「引き込まれる」感覚が強いが、
2期の1話は「傍観者」になっている感覚が強い。

ストーリー的にはこの作品の世界の根幹にもなっている「犯罪係数」、
シビュラシステムと呼ばれるシステムで測られた犯罪係数が高い人間は
犯罪を起こす可能性が高くなるという世界観で、
主人公はヒロインは犯罪係数が高い人間を捕まえる「公安」に努めている。
そんな中で「犯罪係数」が上がらない犯罪者達が現れた
というところからストーリーが始まる

1期は「犯罪係数」が犯罪を犯しても変わらないものが主軸だった
その主軸に至るまでの丁寧なストーリー展開と、
「シビュラシステム」の問題点と登場人物たちの正義感を丁寧に描いていた
2期ではそんな問題のあるシュビラシステムの問題点を掘り下げるような内容だ

ただ1期と違い1クールというストーリー構成上、積み重ねが薄い。
1話完結ではなく全11話を通して「1話」というような感覚が強く
そのせいかどうにも「淡々」とストーリーを進めている印象が強い。
1期も序盤から中盤までは淡々としすぎていたが、
それは2クールという尺があったからこそ生きる「淡々さ」と
そこからの緊迫感のあるストーリーへの切り替えだった。

2期は1クール、全11話の尺しか無く
本筋から横道にそれるような話がなく、常に本筋を描いている
だからこそ1話1話の区切というものがなくダラーっと話を見ている感覚が強く、
その中で「過度なグロ要素」で緊迫感を無理矢理保っている
1期の段階でもグロ要素と呼ばれるものはあったが、
それは「サイコパス」という犯罪者を描く上では欠かせなかった

ただ2期では無駄にグロ要素を描いている部分が大きい。
狂った犯罪者をきちんと「描写」するからこそ、その犯罪者が起こす
犯罪の「グロテスク」さが生きてくるが、2期では「犯罪者」をきちんと描写せずに
犯罪者起こす犯罪のグロテスクさだけを描写するため
グロテスクさだけが際立ち「サイコパス」の犯罪者達の蠱惑的な魅力が欠けてしまっている
ただ単純にグロテスクなシーンを見せられると見ている側の色相が思わず濁りそうなほどだ

そして犯罪者だけではなく他のキャラクターの描写も甘い。
特に2期からのメインキャラクターの掘り下げは甘く、
多くの視聴者から嫌われた「霜月」は後輩という立場で
主人公である「常守 朱」に物凄く突っかかる。

彼女のやる事なす事、全てに否定的な態度をとっており、
そのくせ「六合塚 弥生」に対しては同性愛的な態度を見せる。
「常守 朱」に否定的な態度を取る理由付けが物凄く弱く、
否定的な態度を取らせるだけのキャラクターにしかなっていない
ストーリーにおける役割は理解できるが、役割だけでそこに「キャラクター」の魅力がない

更にストーリーを「先延ばし」にするためにキャラクターを無能にしすぎている。
殺せるべき状況で殺さず、捕まえられる状況で捕まえず、
尺を稼ぐためのストーリー展開が多く辟易してしまう。

だからこそ「大量虐殺」でしか「サイコパス」という狂った犯罪者を描けない。
1人の登場人物の精神を追い詰めるために目の前で大量に人を無残に殺すよりも、
1人の登場人物の友人を目の前でじわりじわりと殺すほうが見ている方にも
「サイコパス」の怖さが伝わる。

前者は確かに絵的には派手だ、だが、それではキャラクターと視聴者に与える影響が薄く
見ている側の精神を「抉る」ような狂気的犯罪の蠱惑的魅力を感じない。
大量に人を殺す犯罪者は誰にだって書ける脚本だが、
一人一人を狂信的に殺す犯罪者は誰にでも書ける脚本ではない。
虚淵玄氏と熊谷純氏の実力というより、
この作品的に言うならば「潜在的犯罪係数」の差がでてしまっている。

この「犯罪係数」に関しても1期に比べると安易に「300」を超えすぎてしまっている。
300を超えると主人公たちの武器であるドミネーターが「殺人」モードに入り
対象を破裂させる残虐な殺し方になる。
だからこそ「画面の派手さ」を求めて300を超えまくっている。

逆に画面に頼らない話の時は面白い。
「カムイ」の正体や謎を解く7話や8話などは純粋に敷かれた伏線を丁寧に回収し
視聴者に物語の「謎」の解を魅せる面白さ、サスペンス本来の面白さが出ており
7話以降は「安易なグロ要素」に頼らないためこの作品本来のサスペンスの魅力が出てくる。
この7話と8話のいわゆる「ネタばらし」的な話がもう少し早くあれば
淡々とした印象も薄くなったかもしれない。

しかし、終盤またグロに頼る。
物語を面白くすための過激な要素はエロもグロも肯定的に受け入れることができるが、
過激な要素を描くための物語の展開は面白さにかけてしまううえに
人によっては「不快感」すら感じてしまうだろう。

全体的に見て2期は1期の「欠点」を炙りだし誇張した作品だ。
1期で不快感を覚える人も居たであろうグロ要素を誇張し、
1期のシビュラシステムの問題点や矛盾点をあえて誇張し、
1期の序盤から中盤までの淡々さを2期でも誇張している。
あえて作品が抱える欠点を掘り下げて「面白く」なるなら文句はないが、
あえて作品が抱える欠点を掘り下げて「欠点を視聴者に明確」に伝えてるのは
不快にしか感じない。

ほら、サイコパスのここがおかしいでしょ?
ほら、シビュラシステムのここ矛盾でしょ?
ほら、グロいでしょ?と1期を否定的に見て否定的に作り上げている。
1期の象徴である「狡噛」と「朱」、狡噛は2期ではほとんど出さず
1期の象徴である「朱」を無条件で否定する「霜月 美佳」が2期の象徴であり、
彼女に嫌悪感を抱けば抱くほど2期の内容に関しても嫌悪感を抱きやすいだろう。

逆に言えば1期をあまり好きじゃない方はこの2期が気に入るはずだ。
1期が好きじゃない方の意見や考察をまとめあげたような2期であり、
はっきりいって1期とは別物だ。
1クールという尺で映画版に繋げなければならないという
条件の難しさはあったかもしれないが、それを考慮しても色々と厳しい作品だった

逆に1クールではなくOVAで1話45分全3話ほどで描かれればもっと
すっきりと面白くなったかもしれない。
1クールという尺をどうにも使い余してしまい結果的に欠点が目立ってしまっていた

個人的に犯罪係数を誤魔化すことができるという主軸の話よりも
5話~6話で描かれた「犯罪という意識のないままの犯罪」のほうが興味深かった
もともと犯罪係数が低い人間はシュビラシステムでさばくことが出来ず、
犯罪係数が低い人間に「犯罪」という意識がないゲーム画面で
間接的に「殺人」を犯させる。
「犯罪係数を誤魔化す」という思いつきました!という設定よりも、
まさにシュビラシステムの穴をつついた5話~6話の話のほうが面白く感じてしまった

劇場版は制作会社も脚本も監督も1期と同じなので期待できるとは思うが・・・
ここからどういうストーリー展開になるのか気になるところだ。

「」は面白い?つまらない?

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