王立宇宙軍 オネアミスの翼

評価/★★★★☆(69点)


王立宇宙軍 オネアミスの翼 [DVD]

制作/GAINAX
監督/山科誠
声優/森本レオ,弥生みつき,村田彩ほか


あらすじ
「失敗ばかり」「なにもしない軍隊」と揶揄され、世間に落第軍隊として見下されているオネアミス王立宇宙軍。宇宙軍士官・シロツグ・ラーダットは、欲望の場所でしかない歓楽街で献身的に布教活動を行う少女・リイクニ・ノンデライコとの出会いをきっかけにそれまでのその日暮らしの自堕落な生活を捨て、宇宙戦艦という名目の人類初の有人人工衛星打ち上げ計画に参加し宇宙を目指すことになる。




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上げるんじゃない、地球の丸みに沿わせて落っことすんだ


本作品は1987年に作られた劇場アニメ作品。
本作品は「ガイナックス」が初めて手がけた作品であり、
エヴァで有名な貞本義行や庵野秀明も参加しており
スタッフの平均年齢も24歳という若々しさ溢れる作品だ

基本的なストーリーはSF、人類が宇宙に行く事はまだ現実味がない時代ゆえ
世間からは落ちこぼれと言われる「オネアミス王立宇宙軍」
それ故に、そこに所属する軍人もどこかヤル気がなく堕落している
主人公も他の軍人と同じで、得た金を歓楽街で使うほど堕落していた
だが、そんな歓楽街で必死に自らの教えを説いている少女に出会う
という所からストーリーは始まる

見だして誰もが感じるのは
「これが昭和62年、1987年の作品なのか?」ということだろう
CGという技術がない時代、手描きのセルアニメ時代に
ここまで書き込まれた背景、機械、服、キャラクターの表情、
作画の雰囲気こそ古く感じてしまうが、作画の質という意味では素晴らしいという
言葉では表現できない、まさに「芸術」というレベルだ
更には音楽は坂本龍一と凄まじい圧を感じさせる

主人公である「シロツグ」はかなり単純な人間だ。
最初は堕落していたが、可愛い少女に出会い「素敵な仕事」とほめられただけで
仕事にヤル気が出て、自ら宇宙飛行士へと志願する。

訓練シーンも描かれるのだがかなりハイテンポで描かれていまい
「それがどんな意味を持つ訓練なのか」がいまいち伝わらない、
本来ならもう少し訓練シーンを描かないといけないはずなのだが(主人公は堕落していた)
訓練シーンをユニークな連続シーンで描いてしまっている点は
若い勢いを感じる部分があった

しかし、そうかと思えば序盤から中盤まで「淡々」とストーリーを描いてしまっている。
少女と落ちこぼれの主人公が出会い、主人公が宇宙へ行こうと決意するまでは
勢いがあったのだが、底からは勢いが落ち、描写の甘い部分も多い。

特にキャラクターの心情の変化はついていけない部分が多すぎる、
主人公の仲間である宇宙軍兵士はいつのまにか主人公の行動に対し真剣になってるし、
重要な人物の1人であった「博士」は驚くほど唐突に死んでしまうし、
主人公は強姦しかけるし(苦笑)と登場人物に感情移入はしづらい
こういったところでストーリーの練の甘さ、スタッフが20代という深みを作るには
まだ難しい年代を感じさせる。

しかし、勢いという意味では序盤・・・そして終盤の盛り上がりは凄まじい。
戦場のまっただ中でロケットを発射させる、銃声飛び交う中、
一度は諦めた彼らが、主人公の一声で発射する決意をする、王道といったらそれまでだが、
この終盤の盛り上がり方はそれまでの淡々としたストーリーの効果もあり
とても刺激的なシーンの連続だ

全体的に見てこの作品は・・・はっきりいおう。オタク向けだ。
淡々としたストーリー展開の中でストーリーの意味を見ている側が考え、
その淡々としたストーリーの中でも細かく描写される作画のレベルに酔い、
ストーリーと作画、そして音が織りなす「世界観」に浸る。
「アニメ」その物が好きな人ほど、この作品は面白く無いのになぜか
画面から目が離せず思わず魅入ってしまう作品だ

しかし、その反面、一般受けはしない。
主人公の魅力はあまりなく、強姦未遂まで仕掛ける始末で感情移入はしづらく
他のキャラクターも心理描写が甘く、キャラクターデザインもいいとはいえない
ストーリーも淡々としており、最後のロケット発射シーン以外の盛り上がりどころは薄い
ストーリーも「結局どうなったんだ?」と悪い意味でガイナックスらしさも
出てしまっており、確実に一般受けはしづらい作品だ。

個人的にはは最後のロケットが上がるシーン、
他の軍人が戦争する中発射されたロケットを軍人たちが
画面の向こうにいる視聴者と同じような表情で
「ぼぉー」っとロケットが宇宙へと上がっていくさまを見るシーンがとても好きだ

ストーリーを見終わったあとに色々と考えたり、
もう1度見て細かいところも見たくなってくる点は
後の「GAINAX」の作品傾向を感じられる部分だ。

なお、この作品は赤字でそれを補うために
「トップをねらえ!」が作られ、「ナディア」が作られ「エヴァ」が作られる。
劇場版エヴァンゲリオンが流行っている今だからこそ、
原点回帰にこの作品を見て見ませんか???

決して名作ではなく、面白いと素直に賞賛できる作品ではないが
アニメーションにおける「味」を感じることの出来る作品です。

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