攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society

評価/★★★★★(90点)


攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society [DVD]

制作/Production I.G
監督/神山健治
声優/田中敦子,大塚明夫,山寺宏一ほか


あらすじ
「個別の11人事件」後、草薙素子が公安9課を去って2年経った2034年。草薙が失踪したことにより組織の変革を余儀なくされた9課は、課員を大幅に増やし「10の力で1つの事件を解決する組織」から「8の力で3つの事件を解決する組織」へと方針を転換。加えてトグサをリーダーに任命し、新体制の元で犯罪の抑止にあたっていた。




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100分で味わう攻殻機動隊


本作品は攻殻機動隊の続編。
当初は劇場版の予定だったが2006年にOVAとして発売された

基本的なストーリーは前作から2年後が舞台。
草薙素子が2年前に突如疾走し、彼女が抜けた枠を補うために
公安九課の人員増加、更にトグサが公安九課のリーダーとなり
彼自身も義体化を施した。そんな中、「傀儡廻」が起こす事件が巻き起こる
バトーは捜査の末、「傀儡廻」が草薙素子ではないか・・・?という疑惑が浮かんだ
という所からストーリーが始まる。

見だして感じるのは作画のレベルの高さだろう。
前作でも十分に高かった作画のレベルは更に洗練され、
キャラクターの作画、背景、アクションシーンのレベルが前作以上の水準になっている
特に中盤の「サイトー」の射撃シーンは迫力、緊張感、スピード感が凄まじく、
後半の潜入シーンも素晴らしいアクションシーンの数々だ。

更にストーリー。
本作品はOVAとして1話で構成されており110分という癪だ。
これまで攻殻機動隊SACは2クールでメインの事件を追いつつ
サブのストーリーを展開していたが、本作品では1本の事件を追う。
それ故に前作以上にテンポが良くなり、
2期にあった「難しさ」も少なく、かなり見やすい作品になっている。

本作品の犯人である「傀儡廻」もかなり魅力的だ。
彼は超ウィザード級のハッカーであり、マイクロウィルスによるテロを目論んでいた
犯人たちの電脳を次々ハックし「強制的に自殺」させるという犯行を重ねる。
更に公安九課が捜査を進めると、公安九課のメンバーの電脳までハックし、
物語の終盤では「トグサ」の電脳までハックする。
ハックされたトグサが愛娘のために自殺を図ろうとするなどシーン的にも展開的にも
「傀儡廻」の犯行は緊迫感をどんどんと募らせる。

物語の前半から中盤まで「草薙素子」=「傀儡廻」なのでは?という疑惑がつきまとう
だが、色々なアニメや漫画を見た方は「そんなわけない」と思うだろう。
敢えてネタバレをするが、それは正解でもあり不正解でもある。

今回の作品の「犯人」である傀儡廻の正体は物語中盤で一瞬だけうつる人物だが
彼の正体は最後の最後で、ある「可能性」を示唆し
それが「草薙素子」=「傀儡廻」という可能性でもある。
幼い頃から義体化し、自らの脳を電脳化し、インターネットの海に幾度も潜り
自分の記憶を外部端末に記憶し、体をパーツのように何度も入れ替えてきた
「草薙素子」だからこそありえる可能性の1つ。
データというコピーが簡単にできてしまうものだかこそ起こってしまうかもしれない

そんな可能性の1つの犯人が「傀儡廻」となっている。
明確な犯人の正体は描写されず、見終わった後にもう1度見て
物語の犯人の正体を納得するような展開や細かい伏線があることに気づく
攻殻機動隊SACシリーズで外見という意味ではもっとも地味な「傀儡廻」だが、
正体という意味ではシリーズ史上もっともインパクトのある犯人だ。

そして社会風刺。
近未来・・・、いや、すでに日本では問題になっている
「高齢化社会」による老人の孤独死、そんな孤独死をふせぐための
介護システムが存在し、だが、まるで徐々に腐る貴腐ブドウのように
ひからびていく「貴腐老人」、そんな貴腐老人と「虐待された子供」と、
一件「マクロウィルスによるテロ」とは関係のないように思える事件と事件が
まるで絡み合う糸のように構成され、1つのストーリーを作り上げている。
1時間40分という尺では掘り下げ不足な部分も若干あったが
その分「見やすく」テンポの良いストーリーを構成していた。

全体的に見て1時間40分という尺で「攻殻機動隊SAC」の魅力を120%詰め込んだ作品だ。
「正体不明のハッカー」による近未来の犯罪と将来の日本で起こるかもしれない問題、
そこに公安九課の魅力的なメンバーが絡みあい、テンポよくストーリーを展開し
1度を見終わった後に「もう1度見たくなる」要素を存分に含んだ作品だ
何回見ても面白い作品というのはこういう作品のことだろう。

見終わった後にいろいろな解釈をすることができるというのも面白い。
明確な答えはなく「そういう可能性」を示唆し物語を終える余韻、
そしてこれからも公安九課の活動が続いていくという余韻、
作品の余韻を存分に味わうことの出来る作品だ。

個人的な意見になってしまうが、
最後のシーンで「バトー」が「素子」の肩にさりげなく手を回すシーンが
私は妙に気に入っている。

攻殻機動隊SACのシリーズを通して「バトー」は「素子」に対し恋愛的な感情を抱き、
1期では彼女の死の偽装で「モトコォぉ!」叫び、
2期では彼女がネットの海へと行こうとしたら焦って走りだし、
彼女と因縁の会った「クゼ」との関連を勝手に外部記憶を除いて探ったりと
本作品では素子がいなくなったショックから髪を切ってたり?wと
もどかしいまでの恋が描写されていた。
はっきりとは描写されてはいないのが攻殻機動隊の恋愛描写のいいところだ。

そんな恋愛描写の結果が「肩にさりげなく手を回すシーン」だ。
キスをするわけでも抱き寄せるわけでもない、
ただ肩に手を回すシーンが「攻殻機動隊SAC」の最後のシーンとして描かれている。
短絡的な恋愛描写ではなく積み重ねの「しっとり」とした不器用な恋愛表現が
攻殻機動隊らしさを醸し出していた。

そして2013年。
攻殻機動隊ARISEの制作が発表された。
声優が全て変更されるという何とも先行き不安な感じがつきまとうが・・・
「攻殻機動隊」というネームバリューに恥じない作品ができることを期待したい。

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