攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX

評価/★★★★★(95点)


攻殻機動隊 S.A.C. 1st GIG コンプリートBOX[DVD] [Import]

制作/Production I.G
監督/神山健治
声優/田中敦子,大塚明夫,山寺宏一ほか


あらすじ
西暦2030年、電脳化が一般化され情報ネットワークが高度化する中で、光や電子として駆け巡る意思を一方向に集中させたとしても、「孤人」が複合体としての「個」となるまでには情報化されていない時代。複雑化する犯罪に対抗するため、内務省直属の独立防諜部隊として設立された「公安9課」(通称「攻殻機動隊」)の活躍を描く。サイバー犯罪の捜査やテロリズムの抑止・検挙、要人警護、汚職摘発など極秘裏な任務は多岐にわたるが、遂行していくうちにある一つの事件が浮かび上がっていく。




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未来に行き過ぎてるぜ・・・


本作品は2002年にスカパーのパーフェクト・チョイスにて初めて放送され
その後に地上波でも放送されたのだが、扱っているストーリーがかなり危なく
グロ描写なども会ったためカットされる話もあったようだ。
原作は士郎正宗氏の漫画作品。

1話から衝撃的だ。
脳が電子化され、体も機械になってサイボーグ化した人間が多くいる世界、
そんな世界で起きた事件。
ネタバレになってしまうが1話から「脳の入れ替え」という事件が起こる。
脳という人間が人間たる根源のパーツさえ入れ替えれば身体自体は入れ物でしか無い。
この「攻殻機動隊」という世界観に一気にのめり込ませる1話と言えるだろう。
そんな圧倒的に細かく描写される世界観が「攻殻機動隊」の魅力の1つだ

そんな細かく描写された世界観でキャラクターたちが繊細に描かれている。
脳意外を義体というサイボーグにかえた「少佐」が連れる
公安九課が近未来で起こる事件を解決していく。

一人ひとりのキャラ描写も素晴らしく、キャラクターに感情移入できる展開も多く、
ストーリー自体が「硬派」でSFや政治など難しい用語も多く出てくるのだが、
そんな硬派な世界観ではあるが茶目っ気のあるキャラ描写が多いおかげで
難しい用語の多いストーリーを魅力的なキャラクターが紡ぐことで
複雑な世界観やストーリーであるのに「見やすい」作品になっている。

そして「タチコマ」というこの作品の愛すべきキャラクターの存在。
このタチコマというキャラクターは公安九課に配属されている
小型の多脚戦車でAIを搭載している。
序盤こそ彼らに「個性」と呼べるものはないのだが、
公安九課とか変わっていくことで彼らは彼らなりの個性を生み出し、自我を持つ。

とてもAIとは呼べないような言動や行動の数々は愛くるしく、
彼らが難しい話を可愛らしい声と動きで会議している様子など、
この作品の「話は難しいが見やすい作品」といえる象徴ともいえる。

物語の中盤以降はある事情で彼らはいなくなってしまうのだが、
終盤、彼らは誰の命令でもない自らの「意志」で守りたいと思い
自己犠牲を顧みず戦いに赴く。
彼の最後のシーンは思わず涙をこぼさずに入られないだろう

そしてストーリー。
基本的に1話完結の話と「笑い男事件」をめぐるストーリーで構成されている。
1話完結の話のクォリティは高くリアルな近未来の描写だからこそ感じられる
「現実感」の強い数々の近未来の事件は生々しく、
前述した「脳の交換」だけではなく、決してハッピーエンドなストーリーだけではなく
人間が人間たらしめる所以を紐解くように1話1話噛み締めるように
味わうことのできる硬派なストーリーだ

そして「笑い男事件」。
笑い男事件はスーパーハッカーが起こした誘拐事件なのだが、
この笑い男の人物像や行動が序盤から「好奇心」をそそられる人物だ。
彼は電脳化された人々の脳をリアルタイムでハッキングし、自分の顔を「マーク」で隠す。
しかし、そんなスーパーハッカーなのにアナログ的な行動を取る彼の人物像の
二律背反が作中の人物だけではなく見ている視聴者をも魅了する。

独り歩きした「笑い男」の英雄像が電脳化され個の価値が失われつつある近未来で
様々な事件を引き起こし、笑い男の模倣犯や笑い男自身が出てくる展開にまで勃発する
この笑い男事件は簡単には解決せず、物語の終盤まで伏線を張りつつ引っ張り、
それを「公安九課」が追っていく・・・。

全体的に見てここまで完成度の高い作品はめったにない。
徹底的に細かく描写されている近未来の世界観と設定を基盤に
人間臭さすら感じるキャラクター描写とセリフ、
その2つが硬派で小難しいストーリーを見やすくしており、
見だしたら最後、最後まで一気に見てしまう作品に仕上げていた。

作画的にも細かい動きや背景はきっちりと書き込まれており
より「攻殻機動隊」の世界を綿密に作り上げ、
戦闘シーンの迫力は2000年台前半のアニメとしてはトップクラスの迫力だ。
ただ、人物描写がに関しては若干、微妙な部分もあるがそこまで気にはならないだろう
(個人的には少佐の肩幅が広すぎるときは何回か気になったが・・・w)

あえて欠点を言うならば難しいということだろう。
私はずっと前に1度見て、レビューにあたり見なおしたが
1回目よりも2回目のほうが面白く感じた。
1回見ただけでは作品全体の設定や笑い男事件の細かい部分などが把握しきれないが、
もう1度見てある程度ストーリーの流れを知っている状態で見ると
細かい部分に目が行くようになり、より「攻殻機動隊」という作品を楽しむことが出来た。

後は本当に「好み」の問題だろう。
硬派で堅苦しく難しい作品ではあるため、気軽に楽しめる作品ではなく
2クールというそれなりの長さのある作品だ。
取っつきにくさはかなりあり、グロい描写も一部あるので
そういった要素が嫌いな方にはおすすめできない。

しかしながら、この作品はアニメではあるがアニメ的ではない。
どちらかといえば「24」などの海外ドラマ的な印象もあり、
普段アニメを見ないかたでも見れる作品ではないかと感じている。

1話1話見終わった後にきっちりと「余韻」を残す名作だ。
まだ見てないかたは是非、もう見たという人はもう1度。
是非、ご覧頂きたい。
近未来、脳、人間が人間たらしめる所以、社会情勢etc….
きっと、貴方のゴーストに何かを囁いてくれるでしょう。