名探偵コナン 絶海の探偵

評価/★★★★☆(61点)

名探偵コナン 絶海の探偵 (小学館ジュニアシネマ文庫)

制作/TMS/V1 Studio
監督/静野孔文
声優/高山みなみ,山崎和佳奈,小山力也ほか

あらすじ
早朝、京都府の舞鶴湾で巡回中の海上保安官によって自爆用の爆弾を積んだ1隻の不審船が発見された。 同日、舞鶴港で海上自衛隊によるイージス護衛艦「ほたか」の体験航海が開催され、その参加者の中には高倍率の抽選を当てたコナン一行もいた。

スポンサーリンク

今年のコナン映画は一味違うっ!

本作品は名探偵コナンの映画。
コナン映画としては17作目の作品となる 脚本はテレビドラマ『相棒』や『ATARU』を手がけた櫻井武晴が担当しており、
流石・・・というか、驚くほど今回のコナンはミステリー映画になっていた

基本的なストーリーはサスペンス・アクション。
コナンたちはたまたま当たった「イージス艦」の体験航海に参加することに。
しかし、イージス艦の中では「あの国」のスパイが密かに動いており、
体験航海中に不審船の接近、更には人の片腕だけが見つかるなど
大きな事件が動き出していた・・・という所からストーリーがはじまる

序盤から迫力のあるイージス艦が存分に描かれる。
外観こそ3DCGを用いた描写になっていたが、内部の繊細な描写の数々は
防衛省・海上自衛隊が全面協力したということもあって素晴らしいまでの完成度であり、
不審船が近づいた時の対応や海上自衛隊の仕組みなど、
見ていてとても興味深い描写の数々だった。

更に序盤からストーリーもかなり緊迫している。
ただの体験航海だったはずが、不審船が近づいたことで緊迫感がましたかと思えば
スパイの影を気にする船員たち、更に人間の「片腕」だけ見つかるなど
緊張感のある展開も多く、犯人はダレなのか「スパイ」はダレなのかという憶測を
見ている側にさせる素晴らしい展開だ。

ただ、その反面、話がかなり難解だ。
海上自衛隊の情報部の話の中で機密ゆえに人物の役職も最初から明かされていない事が多く
話や人物関係がかなり複雑になっており、
ストレートに誰が誰を殺したというようなストーリー展開ではないため
わかりづらさが顕著だ。

若干ネタバレになるが、イージス艦のデータを盗んだのは誰なのか、
スパイは誰なのか、殺人を犯したのは誰なのか、それを追っているのは誰なのかと、
スパイが狙っているのがイージス艦のデータであり、それが日本の防衛ラインに関わる
国家機密だったりと大人が見ればこの複雑さは面白さに感じるのだが、
子どもが見れば序盤から中盤まではかなり退屈に感じる。
休眠会社を使ってスパイ活動など子供からすればチンプンカンプンなセリフだろう(笑)

だが、子どもたちが話がわからなくともコナン自体もそれを探りながら、
衛星電話を何度も使うため海上自衛隊が「怪しい電波発見!スパイか!?」と
何度もコナンの隠れている付近に銃を持って接近したりと
緊張感のある展開が多く、画面から目を離せなくなる。

ただ本作品のスパイさんはかなり迂闊だ。
終盤に正体がばれると逃げるために海上自衛隊殴りまくりだわ、
人質とって海に逃げようとするわとかなりスパイの割には目立っており、
スパイの正体に関しては彼の初道場シーンでピンとくる方も多いはずだ
しかし、スパイの正体自体は本作品のミステリー部分における重要な部分ではない。

本作では「誰なのか」というのが複雑に絡み合っている。
スパイの正体、スパイを追っているもの、殺人を犯したもの。
特に殺人犯に至っては私個人はまったく予想してなかった人物で
思わず「あれ!?お前誰!?」と思うほど以外な人物だw
ネタバレになるが、海上自衛隊が全面協力をした作品なのに
殺人犯の正体があの人だったのは本当に以外だった。

ミステリー部分の完成度はコナン映画としては
史上最高と言っても過言ではないかもしれない
それほど大人が見ても面白い「ミステリーアクション映画」になっている。

そしてアクション。
コナン映画といえば超絶スケボーアクションだが、本作品では残念ながらスケボーはない。
その代わりコナンの超絶シュートがある。
もう本作品のシュートはイナズマイレブンもびっくりな奇抜なシュートであり、
どんな計算方法であのシュートを繰り出したのかコナンさんにじっくりと伺いたい。
今回の超絶シュートは一見の価値在りだ(笑)

更に蘭の格闘シーン。
今回、スパイと蘭が終盤戦闘するシーンが有るのだが、
空中を自由に駆け回りながら繰り出すケリの数々は人間離れしており、
思わず笑ってしまった、女子高生格闘アニメ「エアマスター」を彷彿とさせる
動きまくりで迫力のあるシーンなのだが、超絶シュートといい戦闘シーンといい
若干やり過ぎに感じるほど派手すぎるシーンだった。
コナンだから許される現実味のないアクションシーンだろう。

そしてストーリー全体をきちんと考えているからこそできる伏線の数々、
序盤で何気なく出たアイテムが終盤できっちりと生きてきており、
それをイージス艦の機能ときっちりと絡める。

だが、この終盤の展開は予測できる。
映画ではお約束の「蘭の命がピンチ!」という展開になるのだが、
この伏線アイテムを使って助けるような展開になる。
「あ~なるほど、アレを使ってアレするのね」と大人なら分かるはずだが、
その予測結果が一回失敗にする。

登場人物が絶叫しながら号泣し本当に蘭の死を一瞬覚悟するシーンは
子ども向けとは思えないほどシリアスなシーンだ
あえて、大人が予想した展開を予想通りに生かさず、
絶望シーンを見せた後に最初の予想通りの展開を持ってくる。

王道で予想できる展開だったはずなのに、
それを崩された意外性は「蘭の命が助かった」という安堵を深く感じさせ映画を締める。
涙腺の緩い方は危ないかもしれない、素晴らしいストーリー構成だった。

全体的に見て完成度の高い作品だが、同時にコナンらしくない(苦笑)
はっきりいって子供が見ればつまらないと感じる部分も多く、
大人が見れば面白いと感じる名探偵コナンになってしまっている点が多く、
今までの子供が楽しめる名探偵コナンではなくなってしまっている。
更には真犯人の存在感が薄いなど他の欠点も探せば気になる部分は多い。

しかしながら、初期の頃に比べるとおもしろみの減った最近のコナン映画に比べれば
きっちりと「サスペンス・アクション映画」になっており、
イージス艦の内部と海の上という大きな舞台、
サスペンスシーンは緊張感のある展開と以外な犯人、

アクション部分はヤリスギなほど動きまくりなシーンと アニメ映画としてのおもしろみをこの作品はきっちりと持っている。

ただ、面白いのだがコナンらしくない部分が目立つ。
難解な用語の数々や、海上自衛隊の階級や所属の話、国家防衛やスパイなど
コナンとしてはストーリーが「固すぎる」感じが強く
相棒の脚本家の脚本というのが痛いほど分かってしまう。
同じ台本を少し変えれば相棒の登場人物に変えても問題のないストーリー内容だ。
もう少し子ども向けに砕いた表現をして欲しいと感じてしまう部分は多い。
コナンファンであればあるほど気になる部分は多いかもしれない。

しかし、来年以降の映画に期待できる作品だった。
マンネリになりつつあったコナン映画のターニングポイント的な作品になるかもしれない
来年の映画を楽しみにできる完成度の映画だ。
この方向性でもう少し子ども向けにし、コナンらしさをもっと出せば
初期の頃のコナン映画の面白さが戻ってくるだろう。

個人的には映画の中でスパイの国が明かされず、
ずっと「あの国のスパイが潜入した」「あの国の物と一致しました」など
あの国と表現を濁しているのに笑ってしまったw
不審船を近づけてきたり、潜水艦に対する防衛を知りたかったり、
スパイがアジア系の方だったりすること考えれば「あの国」は「あの国」なのかな?w
海上自衛隊なので「旭日旗」が描写されるシーンも多く
あの国の人がこの映画を見たらどんな反応をするのだろうか・・・w

色々と粗の目立つ作品だが、それを差し置いてもオトナが楽しめるコナン映画として
クォリティの高い作品だった。
来年の映画制作ももちろん決定しているので楽しみにしたいと思います。