殺人が起こらないコナン映画、果たしてそれはどうなんだ?「名探偵コナン 純黒の悪夢」レビュー

2016年5月15日

評価★★☆☆☆(26点)112分
劇場版「名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)」オリジナルサウンドトラック

あらすじ
ある夜、警察庁内に何者かが忍びこみ、機密データを閲覧していた。これを察知していた安室透や風見裕也をはじめとする公安警察は忍びこんでいた女と対峙し、対決するも警察庁内から逃げられてしまう。車

スポンサーリンク

殺人が起こらないコナン映画、果たしてそれはどうなんだ?

本作品は名探偵コナンの映画作品、名探偵コナンとしては20作品目の作品となる。
監督は去年と同じ静野孔文、脚本は櫻井武晴、なお本レビューはネタバレを含みます。

見だして感じるのは強烈に凝りまくったアクションだろう。
コナンを見ている人ならばお馴染みの「安室」と
今回の映画の中心人物となる女性の格闘がかなり激しく描かれる、
更にその後は首都高バトルよろしく、赤井も加わり大逃走劇だ。

確かに作画のクォリティは凄い、無駄と思えるほど動きまわるアクションシーン、
激しいカーレースシーンは映画というスクリーンを意識したシーンづくりになっており
見応えはあるのだが、この作品はあくまでも「名探偵コナン」である。

主人公を一切登場させないままコナンそっちのけで描かれるアクションシーンは、
安室や赤井のファンならば楽しめるかもしれないが、コナン映画としては
無駄に感じてしまう冗長なアクションシーンだ。
だが、ストーリー的には非常に期待感をそそられる。

記憶喪失になった女性と出会ったコナンたちが、
記憶喪失になった女性の正体に迫りつつストーリーが展開されるのだが、
この記憶喪失になった女性と最初に出会うのが
「巨大な観覧車のある海上に浮かぶ水族館」である。

この1行で多くのコナン映画ファンあらば
「あ、観覧車爆破されるな」「あ、水族館沈むかな?」など
過去の映画でのお約束敵爆破、沈没などのシーンを浮かべるはずだ。
私も巨大な観覧車が出てきた時は終盤で爆破されることを大いに期待していた。

だが、序盤のアクションシーンのインパクトは確かに強いのだが、
その後のストーリー展開が非常に地味だ。なにせ殺人事件が起こらない。

これはコナン映画としては非常にレアケースだ、第一作目である
「時計じかけの摩天楼」を除けば、劇中で何らかの殺人事件は起きており、
それを基盤としてストーリーが進むが、
この作品の場合は殺人事件ではなく「黒の組織」が中心にストーリーが展開する。

だからこそ、はっきり言って退屈だ。殺人事件も起こらず、
派手なアクションシーンも中盤は殆ど無い。
記憶喪失になった女性が黒の組織のNO2である「ラム」ではないか?
という疑いは確かに緊迫感はあるものの、
実際に灰原やコナンが命狙われるのではなく疑うだけ。

コナンたちが疑っている間に今回の主役である「赤井」と「安室」、
そして黒の組織たちが勝手にストーリーを進めている感じが強く、
コナンがどうにも蚊帳の外とまではいかないものの、主人公としての存在感が薄く、
淡々とストーリーを進めてしまっており、中盤はやや退屈かつ冗長に感じるシーンも多い。

はっきりと言ってしまえばコナンの優秀さがFBIである「赤井秀一」と
公安である「安室透」という二人の何でも出来る男たちのせいで
霞んでしまっており、この二人が居なければ過去の映画では
コナンがなんとかしていたはずのシーンが、
この二人が居たせいで何とかなってしまう場合が非常に多く、
この二人を際立たせるためにコナンが傍観者になってるシーンも少なくない。

正直、コナンという作品の突っ込みどころにあえて
突っ込むのはシたくない行為ではあるのだが、
流石に日本の警視庁のデータベース?のようなところに
「世界中のスパイの情報」が格納されているのは非現実的だろう。

安室透の正体だけならばまだ日本の公安に所属しているため理解でき、
そのせいで安室透が裏切り者として粛清されそうになるのならわかるが、
FBIのスパイの情報までとなると無理が出て来る。

黒の組織ももはや日本中、世界中にさらされても良いのか?と思うほど
裏の組織としての暗躍感がまるでない。
冒頭の首都高バトルだけならばまだコナンという作品の範疇だろうが、
流石に「どでかいアーム付き」の戦闘機はいくら夜で停電してるから
暗いという状況でもツイッターで拡散されそうなど派手さだ(苦笑)

更にコナン映画としては致命的とも言える欠点をこの作品は抱えている。
スケボーだ。私はコナン映画はスケボーシーンを
見るために見続けていると言っても過言ではないほど、
コナンのスーパースケボーアクションの大ファンである。

今年は20週年にふさわしいスケボーアクションを見せてくれるはず!
と期待したのだが、大切なスケボーは草葉の陰に隠してしまい一切活躍しない。
今作では明らかに現実的ではないアクションシーンもあるのだが、
流石に「伸縮ベルト」で「観覧車の動きを止める」というのは無茶だ。

どんだけ伸縮するんだ伸縮ベルト・・・
どんだけ耐久性があるんだ伸縮ベルト・・・、
コナンがスケボーで雪崩を起こしても私は寛大な心で爆笑できたが、
流石に今作の伸縮ベルトの超非現実的性能は爆笑というよりも、
苦笑してしまう感じの強いシーンだった。

全体的に見て心底残念な作品だ。「赤井秀一」と「安室透」という
キャラクターが好きならば大活躍するので楽しめる作品ではあり、
決してつまらないというわけでもない。
しかし、コナン映画ならではの面白さや、コナン映画ならではのお約束敵シーンはなく、
コナンの映画でありながら、コナンの映画っぽさが薄い感じの作品になっていた。

例えばお約束のスケボーアクションもない、
例えばお約束の蘭ねえちゃんの格闘シーンもない、
例えばお約束の蘭がピンチになる展開もない。
例えばお約束のド派手過ぎる爆発シーンもない。

確かに見飽きた感じはあるシーンの数々ではあるものの、
もはや20作も作られてきたコナン映画だからこそのある種
「伝統的シーン」が無いのはどうにもしっくりとこない。
特に爆破シーンはやや地味な感じになっており、
期待していた水族館の沈没もなかったのはちょっと残念だ。

確かにアクションシーンは凄い、純粋にアクションアニメ映画としてみれば
起承転結のすっきりとしたストーリーになっており、
いつもどおり本編の謎は結局謎のままではあるが、
2時間という尺の中で「赤井秀一」と「安室透」というキャラをしっかりと立て、
サスペンス・アクションドラマを丁寧に展開していた。

だが、その丁寧さは中盤の退屈さをうみ、映像の凄さは
「名探偵コナンの映画」としての凄さではない感じが強く、
これは私の個人的な主観が強すぎるのかもしれないが、
「名探偵コナンの映画としての方向性」が
この作品は少しずれているように感じてしまう。

ゲスト声優も天海祐希でしっかりと演技をシており、
過去の棒ゲスト声優陣のあのなんとも言えない演技が
妙に懐かしく感じてしまった(笑)

本当に純粋なコナンファンならば間違いなく楽しめるだろう、
だが私のように邪推なコナンファンの場合は物足りない作品だ。
殺人が起きていないため子供向けと言いたいところだが、
基本黒の組織VSFBI&公安のゴタゴタストーリーなので
子供にはちょっとわかりづらいだろう。

静野孔文監督のコナン映画作品はこれで6作目だが、
年々推理要素が薄まっていき、
年々コナン映画としての方向性がずれていっているような感じだ。

予告では誰が監督かはわからなかったが、
次回作は「服部平次」がメインになるようなので少し楽しみだ。
私は地味に迷宮の十字路が好きなので、
あの頃のコナン映画の感じが来年は戻ってくれることを期待したい。