結局、スポーツアニメ行き着く先は同じなのか「灼熱の卓球娘」レビュー

2017年6月7日

評価★★★☆☆(51点)全12話

あらすじ 女子中学卓球界で、全国大会9連覇の強豪校が、無名の学校に敗れる波乱が巻き起こる。そんな中、市立雀が原中学校の卓球部エースである上矢あがりは学校にて、転校生の旋風こよりに遭遇。こよりも前の学校で卓球部だったということで、雀が原中でも卓球部に入部する。引用 – Wikipedia


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結局、スポーツアニメ行き着く先は同じなのか

原作はとなりのヤングジャンプで連載中の漫画作品。
監督は入江泰浩、制作はキネマシトラス。

見出して感じるのは音の描写だろう。
この作品はタイトル通り「卓球」を題材にした作品であり、
「てーきゅう」のような名ばかりのテニス部が描かれるギャグではなく、
真剣なスポーツものだ。

1話冒頭から試合が描かれるのだが、その音が非常に心地が良い。
卓球台を跳ねるボールの軽快な音、ボールを弾くラケットの音、
左右の動く際の「靴」のキュキュ!とした音、
ラケットを地面に落とした時の音。

手を抜こうと思えば抜ける「音」の再現とリアルさを
1話冒頭からしっかりと感じることができ、
心地よさすら感じる卓球の試合の模様が耳でも楽しむことができる。

ストーリー的にも面白い。
何やら強豪校の選手のようなキャラ、だが無名の目を隠した女性に負ける。
泣き崩れるキャラと「また試合をしましょう」と丁寧に土下座しつつ、
ニヤリという笑みを浮かべるキャラ。
その試合の様を眺める他校の生徒もわかりやすく特徴的であり、
その特徴的なキャラとの試合の期待感まで高める。

1話のたった3分くらいのシーンなのだが、
この3分の中に「これから始まる作品への期待感」をかなり強めてくれる。
1クールのアニメにおける1話、その冒頭のシーンというのは非常に大切だ。

昨今、せっかちな視聴者が増えて3話切りどころから1話切り、
へたしたら0話切りするような人もいるいくらいだ(苦笑)
だからこそ、大事な1話の冒頭で「この作品を見続けてほしい」という
制作の強い思いがコメられており、その強い想いに期待しか感じない。

ただ、いざ本編が始まってみるとキャラデザのクセがかなり強い。
特に髪の色はいかにも「アニメ!」というような色合いであり、
目のもかなり大きい。一見すると「萌えアニメ」にも見えなくもないキャラデザは
やや好みが分かれるデザインかもしれない。

だが、そんな「萌えアニメのキャラクター」が
汗まみれになりながら卓球をする。
「滝汗」という表現がふさわしほどの流れる汗と、
着ている服が徐々に汗で滲んでいく様が卓球の険しさを感じさせ、
萌えアニメのキャラデザと真剣に卓球をするさまのギャップが生まれている。

試合模様も面白い。
卓球という題材ゆえなのかもしれないが
1試合1試合が「スピーディ」に展開し、結末も早い。
スピーディに試合を展開し、しっかりとした演出で見せつけつつ、
展開が早いからこそ「目が離せない」試合模様になり、
思わず画面に釘付けになり、気づいたら試合が終わっている。

試合を引き伸ばしすぎず、無駄なシーンは描かない。
キャラクターとキャラクターの力量の差や技を出し合い、
ある程度の「結果」が見えてくると、その試合の途中経過を省くことすら有る。
試合の開始前の緊張感と始まり、試合中の盛り上がり所と見せ場、結果。
この3つを意識し、そこに余計な要素を一切入れずシンプルに描いている。

ストーリーの進め方も面白い。
序盤は他校との試合は描かずに部活内での戦いのみ描く。
転校してきた主人公は卓球が純粋に強く楽しそうに試合をする、
そんな彼女に主要キャラが負かされつつも、
彼女と試合をすることで「卓球の楽しさ」を味わう。

しかし、そんな中で今まで部活の中で一番強かったキャラがあせる。
一番強かったがゆえにチヤホヤされていた彼女の立場が危うくなる。
徐々に差し迫ってくる主人公との戦いにあせり、不安に感じる。

彼女との試合は1話、中断してしまう形で描かれれているだけに、
自然と「主人公とどっちが強いのか」という展開の期待感を自然に強め、
彼女と主人公の試合が始まるとその期待感に答え、
素直に面白いといえる試合展開をみせてくれる。

ただキャラ描写に関しては話が進むと「百合」な雰囲気が漂う。
この作品は男性キャラを徹底的に排除しており、
そういう要素が出てきてもおかしくないのだが、
頬を赤らめ合う描写などもかなり多い。
そういう要素が好きな人は楽しめるが、嫌いな人には欠点だろう。

さらに言えば中盤以降、演出が過剰になる。
スポーツアニメ、特にジャンプ系に有りがちな漫画的かつアニメ的な演出で、
序盤のストレートな卓球の描写とは違い、
いかにもなスポーツアニメの過剰演出が目立つようになってしまう。

序盤はそういったいかにもな演出がなく「そういった演出がない」のが
この作品の魅力だっただけに結局はそういう演出だよりになってしまい、
作画も止め絵が目立ってくる。

回想シーンも試合中にガッツリ入れてくるお決まりのパターンまで有り、
主人公との試合を通してのキャラクター描写が深まった序盤とは大違いで、
結局「スポーツアニメ的キャラクター描写」になってしまっており、
キャラクターも特徴を出そうとしているのは分かるのだが、
メインキャラクターに比べて他校の生徒のキャラ付けが極端になってしまっている。

全体的に見て4話まではこの作品は面白かった。
キャラクター・デザイン的には日常萌えアニメのような印象を受けるが、
きっちりとした「卓球」の演出と過剰ではない演出で試合を盛り上げ、
ありがちな回想シーンでキャラを掘り下げるのではなく、
きちんと試合を通してキャラ描写が深まり、
そこに青春ストーリーが絡むことでストレートな面白さに仕上げていた。

しかし、中盤からはありがちなスポーツアニメ的演出と、
スポーツアニメ的キャラ描写に頼ってしまい、
序盤で感じたこの作品の魅力を感じなくなってしまった。

結局、試合に関しても序盤の部活内での戦いのほうが面白く、
その試合を超える試合が後に描かれない。
試合の描写自体は必殺技ともいえる過剰な演出で派手に見えるが、
派手なだけでそこに芯から燃えるような熱さはない。
作品としての最大の盛り上がりどころが序盤で出すぎてしまいる。

テニスの王子様のようにネタに走ってギャグのように見えるならまだいいのだが、
そういった思い切ったネタにも走っていない。
セクシー要素も胸が揺れまくるキャラや不自然に肩を露出しているキャラ、
スパッツで強調されるおしりなどセクシー要素もあるのだが中途半端だ。

ストーリー的にも1クールでは大会すら始まらない。
部活内での試合と練習試合のみで終わってしまい、
1話冒頭で描かれた意味深なキャラなども出てこず、
結局、あのキャラはなんだったのだろうか?で終わってしまう。

あれだけ期待感を煽るようなシーンを見せておきながら、
そのシーンは結局無いというのは騙された気分だ。
2クールくらいで大会の終了くらいまでガッツリ描かれて
作品自体が終われば印象は違ったかもしれないが、
中途半端すぎる印象だけが深く残ってしまった。

個人的にスポーツアニメは嫌いなためめったにレビューしないが、
この作品は4話の段階では非常に好印象な惜しい作品だった。
本当に残念でならない。