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「ドラゴン、家を買う。」レビュー

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評価 ★★★☆☆(43点) 全12話

あらすじ 臆病であるがために、ドラゴンの一族から勘当されてしまったレティ引用- Wikipedia

子供部屋ドラゴン、家を出る?!

原作は月刊コミックガーデンで連載中の漫画作品。
監督は春日森春木、制作はSIGNAL.MD。

森本レオとドラゴン

1話冒頭、この作品の世界観の說明のためのナレーションが聞こえてくる。
甘美な声とゆったりとした口調、彼の名は森本レオだ(笑)
きかんしゃトーマスでも始まるのかと思うほどのナレーションであり、
まさかの起用だ。

彼のナレーションのインパクトと口調のおかげで
自然とこの作品の世界観に入り込むことが出来る。
いろいろな種族が住むファンタジーな世界、
そんな世界でこの作品の主人公は「ドラゴン」だ。

モンスターであるドラゴン、モンスターたちにも暮らしがあり生活がある。
だが、そんな生活があるのにも関わらず勇者という冒険者たちは
彼らの住まいに勝手に入り込み荒らし回る。

だからこそ、彼らには「家」が必要だ。
勇者に見つからない、もし見つかっても安全で、
大切なものを奪われない暮らしやすい家。
そんな家から勘当されてしまうところから物語は始まる。

弱気なドラゴン

主人公は決して強いドラゴンではない。ステータスも弱く、
性格も気弱で争いを好まない実家暮らしだ。
ドラゴンでなければニートや子供部屋おじさんともいうべき存在だ。
彼は社会を知らない。

自分がドラゴンであるということはわかっているが、
「ドラゴン」という存在がどれだけ恐れられているのかを知らない。
人間にも他種族にもドラゴンがどう思われているかを自覚していない、
「ドラゴン」の肉体そのものも高く売れることも知らない。
羽はあるのに空すら飛べない。

世界の常識も知らない、仕事もしていない、スキルもない。
ゴブリンにも馬鹿にされるようなドラゴンだ。
この作品はそんな彼の「自立」の物語と言っても良い。
家族に甘え、社会も知らず、自分に自信もない。
そんな主人公が「魔王」と出会うことで物語が動き出す

物件探し

魔王であるエルフは家造りや様々な家(ダンジョン)の仲介をしている。
この作品の世界における「不動産屋」だ。
そんな彼と共に主人公であるドラゴンは家探しをする、
この作品はその繰り返しだ。

魔物たちにとっては家、だが、ダンジョンだ。
罠もあれば、複雑な構造もあれば、築100年以上の家も当たり前。
ファンタジーな世界ではあるものの不動産屋さんのルールや法は
日本と似ており、問題のある物件は告知義務がある。
ある意味で全部事故物件のようなものだ、幽霊だって当然出る(笑)

ゲームや漫画、この手の作品の「パロディ」が時折描かれており、
ゲーム好きだと思わず笑ってしまうパロネタが多い。
ドラクエやマイクラ、古今東西のファンタジーなゲーム世界が
混じったような世界観だ。

ややメタ的な要素や演出も多く、時にカメラワークをあえて
「FPS」視点にしたりしながらアニメーションとしての演出で
ギャグをもり立てている。

各物件に住んでいる色々な種族の魔物たちを種族ごとに
掘り下げつつ、世界観の広がりと設定を見せることで
主人公の見聞を広げながら見ている側にもこの作品の世界の
考えられた世界設定の面白さを感じさせてくれる。

いろいろなダンジョンという名の事故物件を魔王と共に
めぐりながら、徐々に魔王の過去が語られつつ、
ひ弱なドラゴンは文句を言いつつ物件めぐりという名の
自立の旅を続ける。

色々な物件とそこに住む魔物たちとの交流、
過去を知ることで主人公であるドラゴンもすこしずつ成長していく。
序盤から中盤までこの繰り返しでギャグ要素はあるものの、
強い刺激的な要素はなく、キャラクターも主人公のドゴラゴンの
気弱な性格も相まって弱い。

一言で言えば地味だ。ゆっくりと旅をしながら主人公が成長する。
おばけにおびえ、炎龍王と崇められるのを嫌いながら、
色々な魔物と魔王との交流が彼をゆるやかに変えていく。

90年代のラノベファンタジーアニメにはよくあったストーリーではあるものの、
この地味さは面白さが伝わりづらい部分もあり、
この作品の味というべき部分が出てくるのも遅い。

ゆっくりゆっくり煮出した紅茶のようにゆっくりと味わいと香りが広がる。
焦って飲んでは台無しだ。地味ではあるがゆっくり、飲み干せば
1話1話の話がしっかりと楽しめる。
この作品に焦りは禁物だ。

子育て

旅の中で主人公であるドラゴンは「卵」と出会う。
その卵からかえった雛鳥は彼を親と認識する。
最初はそんな雛鳥を拒否する、気弱な彼には子育てなんて無理だ。
里親を見つけようとするくらいだ。

だが、話の中で彼はそんな雛鳥を守る決意をする。
「僕じゃ駄目だと思う」、自分に自身がないからこそそう思っていた。
だが、そんな彼を雛鳥は頼ってくれる、慕ってくれる。

他ではない自分自信を必要としてくれる存在が現れることで、
そんな存在を守りたいと思い、彼は自分自身が少し自信を持ち、
親としての自覚が芽生える。
物件探しという旅をしたからこその出会いが
主人公の成長をゆるやかに生んでいる。

そんな成長が求めるものの変化につながっている。
一人で静かに暮らせる場所を彼は探していた、
だが「ぴーちゃん」の存在がファミリー向け物件の探索へとつながり、
養う存在ができたからこそ初めてのバイトをしたりもする。
求める「家」の形が変わっていく、出会いからの変化が丁寧に描かれている。

意外と序盤でネタ切れしそうな「物件ネタ」もうまく
ネタギレせずに描かれており、一戸建てから集合住宅事情という
リアルな住宅事情から「クジラのお腹の中」という辺鄙な場所の家まで
魔物たちの色々な家という名のダンジョンが
毎話出てくるたびに特徴があり面白い。

終盤になると「納税」などリアルすぎる要素も出てくる。
こういったリアルな要素ファンタジーな世界観に上手くを混ぜることで
そのリアルさがギャグになっており、
妙な生々しさを生んでいる要因になっている。

毎話、Cパートで「不動産ネタ」も描かれており、
アパートとマンションのちがいなどの雑学も
さり気なく盛り込まれており、物件アニメとしての知識欲も満たされる

明るくゆったり

1話で1つのエピソードをやる場合もあれば
2エピソードやる場合もある。
この使い分けのおかげで作品自体のテンポはゆったりしているものの、
間延びしないストーリー構成になっており、この作品らしい
テンポで物語が綴られている。

メインキャラも中盤まではドラゴンと魔王、そしてぴーちゃんの3人だ。
魔王の過去も終盤で描かれ、
彼がなぜ不動産屋のようなことをしているのか、
なぜドラゴンである主人公に良くしてくれるのかという理由も分り、
よりこの作品の深みが増す。

彼もかつては世間を知らないエルフだった。
知識はあった、だが、世間は知らない。
そんな彼がかつてドラゴンから世間を教わった。
だからこそ今、彼は主人公に世間を教えようとしている。
寿命が長い彼らの巡り巡る物語。

更に終盤になるともうひとり女性キャラクターがでてくる。

親離れ

終盤で出会う女性キャラクターは「お姫様」だ。
彼女は国王と些細な喧嘩をし家出をしたところで主人公と出会う。
彼女を取り戻しに来ようとする国王、
そんな彼を見て主人公は「親の愛」を知る。

自分は確かに勘当された。だが、それは父の愛情だったのではないか。
勘当されたからこそ魔王にも、ぴーちゃんにも、お姫様にも、
多くの人たちとも出会えた。1話から彼は少しずつ少しずつ成長している。
飛べなかった彼が生まれてはじめて飛べるようになる。
親から離れた子供が巣立ち、飛びだつ。

それは今は魔法の力かもしれない。
でも、いつかは自分の家を見つけ、自分の力で飛べるはず。
そんな自立の物語が丁寧に描かれている作品だった。

総評:子供部屋ドラゴン、家を出る

全体的に見て丁寧に作られている作品だ。
主人公であるドラゴンが家を出てエルフと共に家を探す。
そんな中で描かれるのは彼の「自立」の物語であり、
地味ではあるもののまったりと淡々と描かれる物語は
一本筋の通ったものだった。

ギャグに関しては好みが分かれる部分があるものの、
ゲームのパロディネタやリアルな不動産ネタをいれることによる
「現実感」がうまくギャグとして作用しており、
メインキャラが少ないからこそ一人ひとりの掘り下げがきちんとされ、
話が進めば進むほど味わい深いものになる。

森本レオさんのナレーションも良い味わいを出しており、
ベテラン声優が脇役でちらっとでることで1話しか出ないキャラの
印章もより深まるようになっている。
作品全体としての地味さや刺激のなさはあるものの、
ゆったりとノーストレスで楽しめる絵本のような作品といえるかもしれない。

個人的な感想:意外と?

1話でクスクスと笑い、2話、3話、4話と進んでいくうちに
この作品の魅力がしっかりと感じられる作品だった。
主人公のなよなよっぷりは人によっては好き嫌いが分かれる部分だが、
そんな彼がゆっくりではあるものの成長していく過程が丁寧であり、
じんわりと染みこむ面白さを感じられる作品だ。

2期があるかどうかはわからないものの、
もしなくても原作に手を出したくなる、そんな作品だった。

「」は面白い?つまらない?

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  1. resin K. より:

    でも酷評

  2. 02l より:

    原作勢ですが、序盤はテンポが悪いなぁ、なんか思ってたのと違うって感じがしましたね。ただ回を重ねるごとにテンポも良くなってきて原作勢としては満足でした。少しずつ成長していくレティみたいなアニメでした。