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「ガーリー・エアフォース」レビュー

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評価 ☆☆☆☆☆(6点) 全12話

あらすじ 西暦2015年、中央アジア地域において正体不明の飛翔体が目撃される。のちに「ザイ」(災)と名付けられたそれらの飛翔体は、既存の軍用機をはるかに凌駕する戦闘力を有しており、各地に多大な被害をもたらした引用- Wikipedia

設定コピペラノベアニメ

原作はライトノベルな本作品。
監督は小野勝巳、製作はサテライト。

テンプレート


引用元:©2018 夏海公司/KADOKAWA/GAF Project

見だして感じるのは「既視感」だ。
1話そうそう、何の脈絡もなく「ザイ」という戦闘機のような物が
主人公たちの乗る船に襲いかかってくる。
「ザイ」とは何なのかというのをまるで説明しないままだ。

だが、既視感はすごい。
「ストライクウィッチーズ」という作品の「ネウロイ」だ。
ネウロイが動くときの音と似たような音をこの作品の「ザイ」も発しており、
空中で戦う謎の機械生命体という設定も含めてオリジナル性を感じない。

主人公もこの手のラノベアニメではありがちかつ、
特に印象にも残らない主人公だ。
そんな主人公が墜落した謎の「赤い戦闘機」のコックピットを開けると、
美少女がいて、いきなりキスされる。

もう使い古された展開をよくぞここまでやってくれたなと思うほどに、
既視感だらけだ。10年くらい前のラノベアニメブームの時に
こういった色々な作品を彷彿とさせる作品が多かったが、
その再来のような作品だ。
まさに「テンプレート」通りな展開は意外性のかけらもない。

センスのかけらもない戦闘シーン


引用元:©2018 夏海公司/KADOKAWA/GAF Project

この作品は作品の設定上、空中戦が基本だ。
高速で動き回る戦闘機と戦闘機の空中戦は当然、
戦闘シーンの作画やアニメーションでの迫力を期待させる。

原作がライトノベルという「文章」で想像するしかなかったシーンを、
アニメーションという動く絵に落とし込んだときにどうするか。
「戦闘シーン」こそこの作品をアニメという媒体で表現する上で
みたい部分だろう。

しかし、がっかりだ。というよりも手抜きでしかない。
安っぽいCGで描かれた戦闘機をただただ早く動かしてるだけで、
そこに思わず「おぉぉ!」となるような迫力を一切感じない。
カメラが追いつかないほどのスピードで無駄に動き回るだけで、
そこに「迫力」も「面白さ」もまるでない。

3DCGは機械を描く上での利点が大きい手法ではあるが、
同時に「重量感」が失われる欠点がある。
しかし、この10年~20年で3DCG自体の質も上がり、
更に演出によって重量感を出すことはできる。
だが、この作品は質も低ければ演出のセンスもない。

ふわぁーっと浮き上がる戦闘機の重量感のなさには
がっかりだ。

展開の雑さ


引用元:©2018 夏海公司/KADOKAWA/GAF Project

1話から本当に展開が雑だ。場面展開も唐突なのだが、
赤い戦闘機の中から謎の少女が出てきたかと思えばキスをし、
いきなり場面が変わり日本に着いていて主人公が出かけたら、
赤い戦闘機が運ばれるのを見かけて、幼馴染みが誘拐される。
「ダイジェストか?」と思うほどに強引なストーリー展開だ。

ストーリーも雑だ。
赤い戦闘機に乗っていた少女は「アニマ」と呼ばれる存在であり、
彼女たちは未知の技術で超高速で飛び回る「ザイ」に対応するため、
人間ではできない操縦や耐えられない「G」でも飛べる。
しかし、ヒロインでもある「グリペン」はアニマでありながら問題がある。

理由はわからないが彼女は安定動作しない。
しかし、理由はわからないが主人公がそばにいると安定する。
何もかもふわふわで「よくわからない」状態で話が進む。
ずぅーっと謎が謎のままだ。
作中の用語を説明するシーンも長く、その説明ばかりしている。

主人公補正


引用元:©2018 夏海公司/KADOKAWA/GAF Project

この作品の主人公補正はあまりにもひどい。
私は俺つえー作品は別に嫌いではないし否定もしない。
だが、この作品の場合、主人公は「ただの人間」だ。

人間のパイロットでは「ザイ」にかなわないからアニマが開発されている。
ヒロインたちの存在意義でもある。
しかし、そんなヒロインがピンチになると主人公様がご活躍なさる。
彼は母親がパイロットだったこともあり操縦経験はあり、知識もある。
だが戦闘経験はおろかプロですらない。

それなのにヒロインの助けを少し借りたとはいえ「ザイ」を撃墜してしまう。
主人公補正があまりにも露骨すぎてドン引きだ。
これで主人公も実は「アニマ」だったみたいな設定があるならば理解できるが、
そういう設定はない。主人公補正様々だ。

知識もあって訓練もしてる自衛隊があまりにも報われない。
主人公補正があってもかまわない、俺つえーでもかまわないが、
それに見合う「設定」がなければご都合主義でしかない。

これが1回だけなら許せたかもしれないが、
「アニマ」との模擬戦でも主人公の謎のスキルのおかげで
アニマに勝ててしまう。もはや作品の設定が矛盾している。
人間の技術や体でアニマに勝てるならアニマは必要はない。

感情移入できない


引用元:©2018 夏海公司/KADOKAWA/GAF Project

正直、台詞について行けないことがある。
例えば仲間内で「模擬戦」をやろうという話になる。これ自体は問題ない。
戦闘訓練にもなり、アニマ同士の連携を深める意味合いもある。

しかし、仲間のうちの一人が「情報戦」が得意なキャラクターであり、
彼女が情報を操作してレーダーをごまかし戦う戦法をとる。
するとヒロインの一人が「ズルした」と言い放つ。
だが模擬戦とはいえ敵同士と想定して戦っている。ズルも何もない。

これで相手の機体に飛び立つ前に何らかの細工をしていたり、
模擬戦のルールに逸脱する行為ならば「ズル」という言葉であっている。
だが、そんなことはしていない。
自らの能力を戦闘中に発揮して情報をごまかし倒しただけだ。
何も悪くない。

しかし、そんな「ズルした」という台詞に主人公も乗っかる。
電子情報戦で負けただけで何も悪いことをしていないのに、
主人公は「実際の戦闘じゃ味方同士で偽の情報を流したりしない!」と
ご立腹だ。

これで協力して仮想の敵を倒す訓練なら彼の言葉も理解できる。
だが、あくまで敵同士と仮定しての模擬戦だ。
これが実際の戦闘でも敵に対して「ズルしたぁ!」と言い放つのだろうか?
ヒロインも主人公も馬鹿みたいな台詞を言い放つため、
まるで感情移入できない。

そんなことやってる場合なのか?


引用元:©2018 夏海公司/KADOKAWA/GAF Project

未知の敵が攻めてきているという危機的状況にもかかわらず、
彼らは内輪もめをやめない。
ちゃんと協力して作戦を立てれば勝てる敵なのに、
その前に一回内輪もめしてからでないと協力し戦わない。

敵の前線基地を破壊しないといけないという状況なのに、
「難ありヒロインと仲直りのために模擬戦しよう!」みたいな流れは
見ていて頭が痛くなる。
明らかにそんなことをやってる状況ではないのは誰が見ても明らかだ。
戦闘中の流れの中で仲直りしろとと思ってしまうほどに話の腰を折る。

それで、その流れで敵を倒せましたならば理解できるが、
「もう一体アニマがいたので敵を倒すことができました」という
展開になってしまい、内輪もめが何だったのかとなってしまう。

扱いが雑


引用元:©2018 夏海公司/KADOKAWA/GAF Project

この作品は基本的にキャラの扱い方が雑だ。
基本的にメインとなるキャラは少ないのだが、
少ない割には描写が下手としか言い様がない。
特に最もそれが顕著に表れてるのは主人公の幼馴染みだろう。

主人公は日本国籍の日本人なのだが、なぜか幼馴染みは中国人だ。
だが、当初から彼女は主人公が戦うことに関しては反対しており、
主人公も彼女には「自衛隊でバイトをしている」と偽り、
本当のことを言っていない。

そのせいか幼馴染みはギャグ要員のように使われてしまい、
どこかに出かける予定はすっぽかし、約束は破られ、
主人公が連絡もなしに出かけたり宿泊して心配していても
主人公は一緒に住んでるのに連絡すらしない。

明らかに主人公に思いを寄せてるのに自分と同世代くらいの少女、
アニマたちと主人公が仲良くする様子を何度見たりと不遇だ。
悲しげな表情を何度も見せる彼女には同情しかなく、
主人公に対して「死ね」と吐き捨てる彼女が作中で
最も感情移入できるキャラクターになってるのは皮肉でしかない。

設定てんこもり


引用元:©2018 夏海公司/KADOKAWA/GAF Project

終盤になって少しだけ作品の謎が明らかになってくる。
といっても1クールでは全く明かされてないのと同じくらいの情報でしかない。
しかし、ろくに謎が解決してない状況で新しい情報が出てくる。
ヒロインは主人公に対し主人公を生き残らせることが彼女の使命であり、
それが「例え 何回でも何十回でも何百回でも」という表現を使う。

つまりはループだ(苦笑)
1クールでろくに作中の謎や複線を回収できていないのに、
更に終盤になって新しい設定を追加する。
Reゼロかシュタインズゲートでも見たのだろうか。

そもそも作品自体の根本に「戦闘妖精雪風」の影響を強く受けてるであろう
シーンや要素も多く、それがリスペクトならいいがパクリに近い。
結局、最後まで見ても盛り込みまくった設定は投げっぱなしで終わってしまう
残念な作品でしかなかった。

総評:10年前に散々見た


引用元:©2018 夏海公司/KADOKAWA/GAF Project

全体的に見て駄作だ。
10年前にインフィニットストラトスが大ヒットしたあたりから、
似たようなラノベ作品が一気に増えてアニメ化されることも多かった。
そのブームはすでに終わっているが、この作品はその再来だ。

色々なアニメや漫画、ラノベやゲームの要素をパクり、それを隠せていない。
それで面白ければいいが、ほとんど明かされない謎や伏線、
キャラクターの扱いのひどさ、雑なストーリー展開も目立ち、
結局投げっぱなしで終わってしまう。

キャラクターデザインはよく、可愛いキャラクターも多いのだが、
「居ても居なくてもいい幼馴染み」や「掘り下げのない金髪アニマ」など、
もう少しなんとかならなかったのか?と思う部分があまりに多い。
特に本来はメインヒロインである「グリペン」も最初こそ、
主人公との日常が描かれたりしたが、中盤以降はそういう描写も少ない。

結局、襲ってくる「ザイ」とは何だったのか。
「アニマ」はどうやって作られてるのか、なぜ主人公は
グリペンを覚醒させることができたのかなど
重要な部分はほとんど明かされず、設定だけが積み重なっただけの1クールだ。

2クールあれば違った部分もあったかもしれないが、
根本的に制作側がこの作品を「面白くしよう」としてる感じがないのが
残念な作品だった。

個人的な感想:投げっぱなしジャーマン


引用元:©2018 夏海公司/KADOKAWA/GAF Project

結局、1話のキスは何だったのだろうか(苦笑)
1話の冒頭以降、ヒロインと主人公はそんなことは一切していない。
何らかの意味があっての「キス」だと思うのだが、
それすらも明かされないのはなんとも言いがたい。

これで面白そうならいい。
根本的に「新世紀エヴァンゲリオン」のように複雑な伏線や設定を
自分で調べたり考察したくなる「面白さ」がこの作品にはない。
色々な作品からコピペした設定の数々は作品の名前を
次々と思い浮かべてしまう。
「この作品だから」というオリジナル性を一切感じない作品だった。

私が1番気になったのは結局最後まで幼馴染みは報われないままだったことだ。
もう主人公にとってどうでもいい存在なのだろうか?と思うほどだ。
最終話なんて洗濯しか干してない(苦笑)

原作で言えばおそらく「序章」なのかもしれない。
ここから謎が解き明かされていくのかもしれないが、
原作を読もうという気には一切ならない作品だった。

「」は面白い?つまらない?

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  1. 神アニメ探求者 より:

    こんなに参考になるレビューを見たの久々過ぎて笑いが止まらなかった。
    時折見せる(苦笑)がそれを後押しする良いアクセントになっていた。
    筆者に感謝。

  2. アニメ鑑賞者 より:

    このアニメを見た時、まず最初に想起した作品は「インフィニット・ストラトス」でしたね。