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「ピーチボーイリバーサイド」レビュー

2.0
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評価 ★★☆☆☆(21点) 全12話

サイコパス構成「ピーチボーイリバーサイド」アニメレビュー

あらすじ 童話「桃太郎」の舞台「日本」から少し離れた西の大陸。そこには人々を脅かす鬼や魔物が跳梁跋扈していた。引用- Wikipedia

愚策

原作は週刊ヤングVIPで連載中の漫画作品
監督は上田繁、制作は旭プロダクション。

シャッフル

この作品はDアニメ版とTVアニメのオンエア版という2つのバージョンが有る。
簡単に言えば物語を「シャッフル」してるか否かの違いだ

Dアニメ版は時系列通りに1話から12話配信しており、
一方でTVオンエア版は2話、3話、9話、1話、7話、8話、
4話、10話、12話、11話、5話、6話という順番にシャッフルするという
まったくもって意味不明なことをしている。

監督いわく最後まで見ればシャッフルの意図がわかるということなので、
せっかくなので原作を読んでいない立場の私は
時系列がシャッフルされているオンエア版を見てレビューします。

なお監督の上田繁氏は長年演出家として活動されているかたであり、
そういった方が初監督をすると駄作になりやすく、
上田繁初監督の作品はあのメルヘン・メドヘン。
私としては悪いイメージしかない監督である。

脈絡

時系列的には2話であるオンエア版の1話。
主人公は行き倒れている「うさぎの亜人」を助け、
うさぎを「お供」にする所から物語が始まる。
この作品はピーチボーイリバーサイド、つまりは桃太郎である。

姫だったはずの彼女がどうして城を出たのか、どうして旅をしているのか。
そういった理由はわからない。
本来は時系列道りに描かれていれば彼女の回想シーンに出てくる
人物が誰であるか、旅に出た理由もわかるが、時系列を変えているため
1話の段階では彼女のバックボーンが見ている側にはわからない。

この世界には「魔物」が存在し、
その中に「角」の生えた特別な個体である「鬼」がいる。
そんな鬼に対抗できる力「桃の目」をもつ1人が主人公の1人であるサリーだ。
「桃の目」をもつものは複数おり、「桃太郎」的な存在が複数いるのが
この作品の世界だ。

ただやはり「導入」である1話が描かれていないせいで
いまいちキャラのバックボーンや世界観や設定がわかりにくく、
いきなり本来なら2話の話を見せられたことによる脈絡の無さや
唐突さが目立っている。

飛びすぎ

1話と2話は連続した時系列のストーリーであるため
原作を見ていなくても分かる部分も多く察することもできる。
だが、3話になると時系列が飛んでしまう。
せっかくこの作品の世界に浸れそうになった所で拒否されるような印象だ
なにせ実質的な3話から9話という終盤に話が飛ぶ。

いくらなんでも飛びすぎだ。
メインキャラの1人の騎士は2話で自分のいた国が滅んでおり、
鬼だった少女は鬼の力をもうひとりの桃太郎のせいで
失ったというところで終わっている。

しかし3話になると、騎士は滅んだ国のことなどそっちのけで闘技大会に出ており、
鬼だった少女は敵対していた人間の心を理解している。
時系列が飛んだせいでキャラクターの心理描写がメチャメチャだ。

いつのまにか主人公のサリーも「鬼と和解する」という目的が生まれており、
なにがどうなってそうなったといいたくなるほど変化してしまっている。
6話分も時系列が飛べば当たり前の話ではあるものの、
この変化に見ている側がついていけない。

もうひとりの桃太郎「ミコト」にもいつのまにか仲間ができており、
もう何処の誰か知らないキャラがいつのまにか現れて
いつのまにか仲良くなっている。
見ている側は蚊帳の外だ。

敵同士であり憎み合っている鬼と人間であり争ってはいるものの、
人間の中にも、そして鬼の中にも和平を望むものは居る。
一方の桃太郎は和平を望み、一方の桃太郎は鬼を殺そうとしている。
そういった状況なのは察する者の、原作を読んでいなければ
物語を楽しむことより状況を把握することに必死になってしまう

調べた所、原作で言えば17話から51話に飛んでいる。
蚊帳の外になってあたりまえだ(苦笑)
正直、制作側のこの時系列シャッフルの行為に何の意味があるのだろうか?と
アニメの内容よりその部分のほうが気になってしまう。

3話で主人公は選択を迫られる。
「和平を考える鬼」と手を取り合うのか、
それとも「鬼を殺すことを考える人間」と手を取り合うのか。
それが3話の「引き」の部分だ。普通に時系列通りなら
4話でこの選択が描かれる。話としてはなんの問題ない。

しかし、この作品は4話でまた時系列が飛ぶ。
実質的な9話から本来の1話へと飛んでしまう。
もはや意味不明だ。

1話

4話、実質的な1話でようやく理解できる部分も多い。
主人公であるサリーはなぜ国を出て姫をやめてまで
もうひとりの主人公である「ミコト」を追いかける旅に出たのか。
彼との出会いと始まりの物語が描かれることで、
1話と2話でわからなかった部分やしっくりと来なかった部分が落ち着く。

あたりまえだ。実質的な1話なのだから(苦笑)
この4話を見てしまったことで
余計に「なぜこの1話をそのまま1話として放送しなかったんだろう?」と
疑問に思ってしまう。

物語の導入として何ら違和感はなく、1話として完璧だ。
たまに時系列シャッフルで1話で2話あたりのエピソードを描いて、
2話で1話を描くといった1話と2話の入れ替えはよく見る手法だ。

1クールのアニメでは重要な「1話の引き」として
2話を先に見せることでキャラの硬度や台詞に対し
「これはどういうことなんだろう?」と疑問に思わせて
2話で物語の導入である1話を見せる。これならば理解できる。

だが、この作品は4話で1話をやり、3話で9話をやっている。
もはや意味不明な時系列シャッフルでしか無い。
そんな4話のあとの5話でまた時系列が実質的な6話に飛ぶ。

時系列がシャッフルされるたびにこの作品に対する
「どうでもよさ」が強まってくる。
話が進めば進むほど置いてけぼりにされていく感覚だ。

矛盾

断片的ではあるものの話が進んでくるとこの作品で描きたいことがわかる。
主人公の1人であるサリーはなにも知らなかったお姫様だ。
そんな彼女がミコトと出会い、亜人と出会い、鬼と出会った。
鬼と人とは争いあい、亜人は人に差別されている。

この世界にとってはそれがあたりまえであり当然だ。
恨みと悲しみの連鎖が続いている。
そんな世界をサリーは旅の中で見つめ、多くの仲間を得た。
亜人、鬼、人間。彼女の仲間に種族による差別はない。

鬼を殺すことに特化した力を持ちながら、
彼女は鬼との共存の可能性を見出している。
自分の望むことと自分が持つ力の矛盾。
理想論でしかない部分はあるものの、彼女はまっすぐだ。
完全に解決はできないかもしれない、でも、もう少し妥協したい。

そんな彼女の物語とこの作品で描きたいことは見えてくるものの、
常に「時系列シャッフル」が邪魔をする。
みんなで魔女の家にいこー!という話になったかと思えば、
次の話ではまた時系列が飛ぶ。

1話完結のエピソードや2話完結のエピソードを
きちんと描いた上で時系列が飛ぶのならまだしも、
この作品は描いているエピソードの途中で別のエピソードに
飛んでしまうのが本当に厄介でしか無い。

時系列シャッフルをやるにしてもあまりにも
雑なシャッフルの仕方のせいで物語にまるで集中できない。
ただただ物語を引っ掻き回しているだけにすぎない。

時系列通りに描けば「キャラのピンチに駆けつける」キャラの
かっこよさも極まるが、時系列通りに描かないせいで
見てる側としてはどこの誰ともわからないキャラが
いきなり出てきただけに過ぎない。

毎回毎回、見ている側のこの作品への感情をリセットされるような感覚だ。

終盤

監督はインタビューでこう答えている
「最後まで見ていただいたらその理屈に気づいてくださると思います」

簡単に言えば本来の6話は話の区切りとしていいだけだ。
確かに実質的な6話は1クールの最終話っぽいエピソードであり、
「俺たちの戦いはこれからだ」というシーンすらもあり、
1クールのアニメの最終話っぽい雰囲気はある。

ただ、それだけだ。
本来の12話も色々と残っている要素は多いものの、
最終話として「俺たちの戦いはこれからだ」っぽい雰囲気もあり、
鬼側の行動も気になるところで終わっており、
続きが気になった人は原作で!という感じの印象も受ける。

わざわざ、こんなにわかりづらい時系列シャッフルをかましてまで
6話を最終話に持ってくるほどの価値はない。
本当に最後まで「どうして時系列シャッフルした?」という
感想しか浮かばない作品だった。

総評:さわるな危険

全体的に見て何がしたいのかよくわからない作品になってしまった。
時系列シャッフルにするにしても1つ1つのエピソードを
1話完結ないし2話完結できちんと連続して描いて
時系列だけシャッフルするならまだしもエピソードの途中で
別のエピソードに飛んでしまうのは時系列のシャッフルのやりかたとして
わるい。

そのせいで原作を読んでいない人にとっては状況の把握がしづらく、
あちこち移動し、知らないキャラがいきなり出てきて、
キャラクターもいつの間にか仲良くなっていたりと
大きな変化が怒りすぎているせいでついていけず、状況を把握すると
次の話ではまた時系列が飛んでしまう。

物語自体は悪くない。Dアニメで配信されている時系列順通りに見れば
この作品が描きたいことをストレートに感じ取ることができ、
キャラクター達に自然と愛着が湧いたはずだ。
しかし、そんなキャラへの愛着とストーリーの面白さすら
ばらばらにしてしまったような印象だ。

そもそも監督が「時系列シャッフル」がこの作品を面白くなる手段だと
本気で思ってやったのなら、わざわざ時系列順通りの配信を行わないはずだ。
「涼宮ハルヒの憂鬱」など時系列をいじってる作品はあるが、
配信サイトでは時系列通りに見れます!なんて手法は聞いたこともない。

作品の内容やアニメーションでの表現よりも
「時系列シャッフル」の影響があまりにも作品に悪影響を与えており、
そこばかりが目についてしまうような作品になってしまった。

個人的な感想:やっちまったなぁ…

普通に時系列通りにやれば一定の評価を受けた作品だったはずだ。
大味な戦闘シーンではあるものの、作画は悪くはなく、
1期でストーリー自体は「俺たちの戦いはこれからだ」で終わるものの、
そこは特に気にならない。

監督いわくいろいろな人に原作を見せて途中から読んだ人が
最初から読み直したら面白かったという意見を聞いて
シャッフルを思いついたらしいが、愚策としか言いようがない。

ゲキドルのときにも感じたが、上田繁監督は他の人とは違うことを
やろうとして失敗しているような印象だ。
アニメオリジナル作品ならそういった意欲的なことをするのも一興だが、
原作のある作品ではやってはいけないことをやってしまった感じだ。

いつかピーチボーイリバーサイドがきちんとした
アニメになることを期待したい。

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出演声優 白石晴香, 東山奈央, M・A・O

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  1. 匿名 より:

    時系列版だけの評価だとどういう感じなのか知りたい。

    • D-RAYS より:

      星3つで50点代後半くらいにはなったと思います。
      色々と中途半端な部分があるので星4にはならなかったかなと(本人のツイートより)

  2. 匿名 より:

    オンエアばんはついていけなかったが、dアニメの時系列版は面白かった
    オンエア版では★ひとつだな。

  3. 匿名 より:

    同じクール教信者先生の作品でも同じ期に放送した小林さんちのメイドラゴンSの方は京アニでアニメ化されていて、こちらも単話構成だったけど時系列的にはちゃんと前後の時系列ははっきりしていたので最終話で感動を得る事ができたけど、シャッフルはないなぁと思ってしまった。
    せっかく良いキャラデザなのにシャッフルで全て潰しているように思える、とても残念でした。

  4. 匿名 より:

    策士策に溺れる

  5. はっち より:

    自分はアニメレビューなどをよく見るのでテレビでの放映はシャッフルされていると知っていますが、普通の人はシャッフルされていること自体知らないことが多いので、そういう人は3話切りなど離脱してしまっていると思います。もったいないですね・・・