丁寧に作られた作品は面白い「それが声優」レビュー

2016年5月25日

評価/★★★★☆(68点)/全13話
それが声優! 第3巻(初回限定版) [Blu-ray]

あらすじ
一ノ瀬双葉、萌咲いちご、小花鈴。3人はそれぞれに事情と夢を抱いて、業界に飛び込んできた新人女性声優。彼女らは偶然、共演する事になった事をきっかけとして交流が始まり、友情を深めていく。彼女らは、時に声優業界の厳しい現実を目の当たりにし、友情を壊しかけ、潰されそうになりながらも、互いを思いやり励まして少しずつではあるが成長を遂げて行く。

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丁寧に作られた作品は面白い

原作な同人誌な本作品。
原作者は声優の「浅野真澄」が担当しており、
作画はハヤテのごとく!でお馴染みの畑健二郎が担当している異色の作品。
監督は博史池畠、製作はGONZO。

見だして感じるのは驚きだろう。
アニメの1話の冒頭から「野沢雅子」さんの声が聞けると
誰が予想できるだろうか(笑)
しかも本人役でアフレコする様子がアニメ化されている。

この作品はタイトルから予想できる通り
「声優業界」を声優である浅野真澄さんが声優目線で描いている作品だ。
だからこそ「本物」の声優さんたちが本人として主演する。
1話では野沢雅子、2話では神谷浩史、3話では田村ゆかり、
4話では銀河万丈とアニメオタクならば絶対に知っている、
アニメオタクでなくとも聞いた事がある声優陣が本人役で登場する面白さがある。

同じ業界作品の「SHIROBAKO」では同じように業界人が
モデルとして描かれていたが、
はっきりいってあれは「マニアック」な業界人ばかりだった。
オタクなら知っている、知っているからこそ、
その人がモデルになっていることによる面白さがあったが、
知らないとその面白さは伝わりにくい部分もあった。

だが、この作品は違う。
深夜アニメを見ている視聴者たちならば知っている声優たちを
本人役として出すことが、若干反則的な面白さを産んでおり、
その本人が「さらっ」と何気なく出るからこそ面白い。

そしてストーリー。
新人声優を主人公に据え、その主人公を通じて「声優業界」を生々しく描く。
新人声優だからこその挨拶、
いわゆる「業界あるある」や「業界の掟」をテンポよく描き、
その業界あるあるや掟に振り回される新人声優だからそのテンパリが
ストレートに面白さやギャグにつながっている。

声優業界の知識や用語の解説もテンポよくいれる事で説明要素がしつこくならず、
その用語を「マスコットキャラ」にさり気なく説明されることで、
ストーリーのテンポを崩さない。
説明する要素が非常に多い作品なだけに、このテンポが崩れてしまえば
一気にグダグダで面白みに掛ける作品になり欠けないところを
この作品は非常にうまくやっている。

そして、新人声優の苦悩日々。
「もうちょっと巨乳な感じの声で」
「もうちょっと普通の感じの声で」
スタッフの言葉によるリクエストに声による演技で応えることの難しさ。
新人声優だからこその演技の難しさを生々しく感じられる。

更に新人声優の日常。
彼女は新人声優だ、だからこそまだまだ「バイト」をしないと食べていけない。
ベテラン声優さんたちとの壁を感じつつも、オーディションを受ける日々が続く。
同じような新人声優たちと仲を深めながら新人声優として活動していく日々は
辛い毎日ではあるものの、主人公の天然さやアタフタさのおかげで、
重くなりそうな部分をあまり重くならない。

非常にシンプルな「日常系」であり、リアルに描いた「業界系」でもある。
リアルで生々しい声優業界のあるあるやネタなどを、
アニメ的な日常要素をアニメアニメし過ぎない程度に織り交ぜながら、
シリアスにはならず、きちんと明るいギャグもまぜ、
丁寧に描くことでシンプルではあるが、純粋に面白い作品になっている

ストーリーが進むと若干「リアルさ」や「生々しさ」はなくなるものの、
新人声優にありがちなアイドル声優路線やユニット、イベントなどを
通して少しずつ声優として成長していく様をきちんと描く。
シリアスな部分ももちろんある、だが、それをあまり引き伸ばさず、
重くしすぎず、挫折からの復活も早い。
だからこそ見やすく、きちんとキャラクターに感情移入できる。

本来は本編とは関係のない「エンディング」も
毎話、メインキャラ3人によるラジオ番組風になっており、
リクエスト曲と称して有名なアニソンが流れる展開になっており、
これが毎話どんな曲が流れるのか楽しみで仕方がない。
本来はここまでエンディングでこだわらなくてもいいのに、
制作側のこの作品にかける意気込みと気合を感じる部分だ。

そして最終話。
この作品の主人公は「預かり」の声優だ。
2年間の試用採用のようなもので、2年後に正式に事務所に所属するか決まる。

最後の面接で声優としての厳しさをこれでもかと押し付けられる中で、
主人公はこれまでの2年間、1クールで描かれてきた中で
築いてきたものをぶつける。
結果は決して求めていた結果ではない、だが、
簡単に声優として「続ける」難しさをきっちり描いた作品だった

全体的に見てシンプルに面白いといえる作品だ。
リアルな声優業界を生々しく描きつつも、
そのリアルさと生々しさをいい塩梅で
アニメ的なキャラたちの日常要素がアニメ的に仕上げており、
その現実的な部分とアニメ的な部分のバランスが
すっきりとした面白さにつながっている。

メインのキャラクターを増やしすぎず、3人に絞り
それぞれの立場でそれぞれの新人声優としての道のりを描きつつも
3人でのユニット活動やWEBラジオ、声優だからこそのシリアスな展開を
きっちりと描き、一人一人のキャラクターにきっちりとスポットがあたっている。

そんな3人の新人声優に、実際の声優が本人役で出演することで
ベテラン声優たちの「凄さ」、声優という職業の難しさと面白さを出しており、
声優が本人役で出るからこそのギャグ要素や、
それぞれのセリフの説得力と重みが強まっている。

シリアスな展開も時にはあるものの、
引っ張りすぎずテンポよく描くことでグダグダとした感じにならず、
フラストレーションが一切たまらない。
1話から最終話まですっきりと面白く、
すっきりと見終わることが出来る作品だ。

個人的に銀河万丈さんの「僕なんか何回死んだかわからないな」という
セリフとその後の言葉に妙に感動してしまった。
また「真地勇志」さんがアニメに出ているということも素直に驚いてしまった。

余談だが、この作品、ぜひ夕方やNHKでやって欲しいと感じる作品だ。
最近は声優を目指す人が増えすぎているからこそ、
この作品をみれば「厳しさ」が少なからず伝わるはずだ。

売り上げ的に芳しくないため2期は難しいかもしれないが、
ストーリー的にはすっきりと終わっており、
2季があってもなくてもい締め方をしているのは逆に高評化に繋がった。
作中のユニットであり、実際にもCDを出している
イヤホンズの人気や売れ行き次第ではもしかしたら2期があるかもしれない。
少しだけ期待しておきます。