「はねバド!」レビュー

評価 ★★★☆☆(59点) 全13話

あらすじ引用- Wikipedia

覇道は貫いてこそ価値がある

原作はgood!アフタヌーンで連載中の漫画作品。
監督は江崎慎平、制作はライデンフィルム。
バドミントン用品を取り扱うメーカーが協賛などで参加している。

ロトスコープ


引用元:©2018 濱田浩輔・講談社/「はねバド!」製作委員会

この作品はタイトルから分かる通り「バドミントン」が題材になってる作品だ。
1話から試合のシーンが描かれるが、気持ち悪いくらいによく動く。
服の皺、細かい運び、伸び切った腕の筋肉の筋までわかるような
繊細な描写は作画の良さを感じる。

この作品は「ロトスコープ」を使っている。
ロトスコープとは実際の人間の動きをトレースしてアニメにする方法であり、
最近では「悪の華」でも使われた。
このロトスコープは妙に生々しい表現ができるがゆえに、
「悪の華」という作品の雰囲気にはあっていた。

だが、この作品の場合、たしかに生々しい動きではあるのだが、
それが「アニメーション」としての面白さにつながっておらず、
よく動いてるのに惹き込まれない、繊細に描かれてるのに燃えない。

確かにスポーツアニメで「動き」は重要だ。
しかし、ロトスコープを使っているからこそ本来は普通のアニメでは
省かれている「余計な動き」までトレースされてしまっており、
それが違和感につながっている。
バドミントンという激しいスポーツだけにその違和感が余計に強まっている。

ギスギス


引用元:©2018 濱田浩輔・講談社/「はねバド!」製作委員会

1話からギスギスだ。
バドミントン部では強い上級生が下級生をしごいている。
彼女の指導方法に批判するものも居たりと常にギスギスとした空気が漂っている。
明るさなんてものはない。さわやかさなんてものは一切感じない。

スポーツ者におけるシリアスは対戦相手に負けたり、
自分の成長に悩んだりする中で描かれる要素だ。
しかし、この作品の場合はそういった過程ではなく、
話が始まった段階ですでにギスギスしている(笑)

現状に納得いかずに機嫌の悪いキャラ、そんなキャラに反抗するキャラ、
口喧嘩と罵り合いの言葉が行き交い、
「もうお前ら全員バドミントンやめれば?」と思うほどに
登場キャラクターのストレス値が常にマックスだ。

部活をやめると宣言するキャラも当然居て、
見てる側が「この部活は大丈夫なのか?」と思うレベルでギスギスしている。

主人公


引用元:©2018 濱田浩輔・講談社/「はねバド!」製作委員会

主人公はとある理由からバドミントンがやりたくない。
そんな彼女がやや強引に部活に参加することになるのだが、
彼女の性格の悪さは主人公至上、類を見ないレベルだ。

「やったって何の意味もないですよね?たかがスポーツですよね?
それも部活のバトミントンなんて何の意味もないです」

こんなセリフをバドミントン部の部員が勢揃いしてる中で言い放つ(笑)
強引に彼女をバドミントン部に入れようとするキャラへの反論ではあるが、
まともな常識があるならば言えないようなセリフを平気で言い放つキャラだ。
正直ドン引きしてまうような言動が多い。

彼女がこうなった「理由」もちゃんとあるのだが、
その理由を見てる側が納得し、彼女の言動を許せるかどうかは、
見る人の価値観によるところも大きいだろう。

ドロドロな人間関係


引用元:©2018 濱田浩輔・講談社/「はねバド!」製作委員会

主人公の二重人格のような性格もそうだが、
「ギスギス」な雰囲気と「明るい」雰囲気のシーンの切り替えが極端で、
ほんの5秒前にギスギスしてたのにまるで爽やか青春アニメのような
明るい雰囲気に変わっても見てる側がまるでついていけない。

明るい雰囲気になり明るい曲が流れていても彼女たちは喧嘩している(笑)
ここまでギスギスで喧嘩しっぱなしでキャラクターのストレスがマックスな上に
性格の悪いキャラクターしか居ない状況が一周回って面白くなってくる。

キャラクター同士のすれ違いも「意見の違い」や些細な出来事ではなく、
この作品の場合、主人公などのメインキャラが
「周囲を見下す」からこそギスギスする。

才能のあるキャラクターが才能のないキャラクターの言動や行動にいらつき、
それを才能のあるキャラが態度や言動、行動であからさまに表し、
その行動や言動で才能のないキャラクターがいらだつ。
悪循環である(笑)

もはや「バドミントン」なんてどうでもいいほど、
情緒不安定かつ自己中なキャラクターたちの人間関係が気になってくる。

ライバル


引用元:©2018 濱田浩輔・講談社/「はねバド!」製作委員会

スポーツものにおいてライバルキャラというのは重要だ。
互いが互いを高めあい、物語の積み重ねとキャラクターの成長があり、
因縁の対決が描かれたりする。この作品にも当然、ライバルキャラが居る。
さんざん周囲を煽りまくっていた主人公の前にライバルキャラが現れるが、
ライバルキャラも煽ってくる(笑)

しかもタイミングも悪い。
せっかくトラウマを少し乗り越え主人公がもう1度、
部活の仲間とバドミントンを楽しくやれるかもしれないと思いだした時に現れる。
ちなみに当然ライバルキャラも性格が悪く毒舌だ

「友達ごっこに意味なんてあるの?それで欲しいものが手に入るの?
 仲間なんて無意味だってこと証明してあげるから」

青春スポーツアニメにおける友情の全否定だ(笑)
これで主人公が以前の自分とは違う友達が居たからこそ勝利できた
みたいな展開があればスポーツアニメの王道とも言えるのだが、
この作品の場合、そんな王道は無視だ。
仲間なんて無意味だと証明されてしまう。しかも舐めプされて負ける。

この作品はとことん弱肉強食であり、とことん絶対才能主義だ。
他のスポーツアニメではお目にかかれない要素が詰まっている。
努力や友情の先にある勝利ではなく「才能」があるからこその勝利だ。
この作品で描きたいことが明確に伝わってくるとこの作品は面白くなってくる。

闇落ち


引用元:©2018 濱田浩輔・講談社/「はねバド!」製作委員会

トラウマのあった主人公がライバルとの対決や友達との友情を経て
トラウマを乗り越えて、再び「バドミントン」に向き合えるようになる。
普通の王道のスポーツアニメならばこうだ。
しかし、この作品の場合、そんな王道なことは一切しない。

トラウマのある主人公がトラウマを乗り越えそうになったのに、
ライバルに敗北したことで余計にトラウマをこじらせる。
そんな状態でもライバルは煽ってくることを忘れない(笑)

ハンカチを投げ渡し、
「負けたとき涙をふくのに必要でしょ?ふくのは鼻水かしら?」
と、煽ってくるシーンはもう大爆笑してしまった。

この作品は性格の悪いキャラの性格の悪さを臆すことなく描いている。
普通なら視聴者へ好感を持たせるキャラ描写をするが、
この作品は好感をもたせようとはしていない。

そんな性格の悪いライバルキャラに主人公も負けてはない。
目は光を失い、感情を失ったかのような平坦な声を発するが、
煽ってきたライバルキャラに対し

「ボっコボっコにするために練習してきたからワクワクが止まらないよ」

まるで好きな人に対する告白のように顔を赤らめつつ言い放つ(笑)
セリフの刺々しさが話を追うごとに増し、性格の悪さが際立っていく。
そんな性格の悪いキャラVS性格の悪いキャラの試合がどうなるかが
本当に面白い。

なにせどちらにも感情移入していない。
主人公VSライバルという構図よりも悪役VS悪役みたいな試合であり、
本来ならスポーツものは王道であるがゆえに展開が予測しやすいが、
この作品は王道ではないからこそどちらが勝つかはわからない。

7話


引用元:©2018 濱田浩輔・講談社/「はねバド!」製作委員会

7話ではロトスコープを使わない試合が描かれる。
才能のあるキャラ同士の才能のぶつかり合いはアニメと言う表現の場で
「ロトスコープ」という手法では表現しきれないと判断したのだろう。
最初からロトスコープを使わずに描かれていれば印象はだいぶ違った。
ようやく「バドミントン」の面白さを7話で味わうことができる。

技タイプの主人公と力タイプのライバル。
タイプの違いによる責め方の違いが試合の中できっちりと描かれ、
1点取り、1点取られるたびにコロコロと変わる表情が面白く、
相手がミスをするたびに煽ってくる主人公もたまらない。

普通のスポーツアニメならピンチのときに
友人の声援がかかれば逆転につながったりもするのだが、
この作品の場合、王道のスポーツアニメにおける勝利フラグが
負けフラグになっている。

負けた後に煽られて渡されたハンカチを「使う?」と差し出すシーンは
最高にクールだ(笑)

スポーツマンシップのない主人公


引用元:©2018 濱田浩輔・講談社/「はねバド!」製作委員会

この作品の主人公の中にはスポーツマンシップというのは存在しないようだ。
戦った相手に対する礼儀というものが主人公やライバルにはなく、
負けたら徹底的に煽る権利を与えられている。

この世界において強者とは絶対的な存在であり、
弱者は強者に煽られるために存在する。
爽やかな青春スポーツアニメの真逆のような要素の数々は、
「努力ではない、才能こそスポーツにおいて重要だ」と
現実を突きつけてくるような描写だ。

才能のないキャラは努力でそれを補おうともするのだが、
しかし、それでもかなわない。
才能のないキャラクターの物語は青春スポーツアニメのような展開だが、
努力している才能のないキャラに対しても当然煽ってくる。

「続ける意味なくない?もう勝ち目ないじゃん」

圧倒的な才能で叩き潰し、煽り絶望させる。
才能の前にはどんな努力なんて皆無だと、
才能のないキャラに痛いほど自覚させるように煽る主人公の姿は
ゾクゾクするほどのキャラの魅力を感じる。

本来ならスポーツアニメにある「最低限のスポーツマンシップ」が
主人公やライバルには存在しない
本性のままに、本能のままに、思ったことを口に出す。

ここまで内面の感情をむき出しにしてくるキャラは、
感情移入や好感なんてものは一切持てないのだが、
むき出しだからこそ惹きつけられる魅力がある。
スポーツは勝てばいい、スポーツマンシップなんてくそくらえだ(笑)

最終話


引用元:©2018 濱田浩輔・講談社/「はねバド!」製作委員会

主人公は目的だった「母親との再会」をしてしまったことで、
やや目的を失っている。
「なんで自分はバドミントンをしているのだろう」という迷いを抱えている。
迷いのある天才と迷いのない天才。勝つのは明白だ。

正直、この最終の展開は拍子抜けしてしまう。
散々煽ってきたのにまけて、散々母親を恨んでいたのに許す。
最後まで彼女には性格の悪さと孤高であった欲しかったと見てる側が感じるほど
最終話は青春スポーツアニメのようになってしまっていた。

目に光がなく抑揚のない声でしゃべる彼女だからこそ魅力があった。
最後の最後で目に光を取り戻し、王道のスポーツアニメのような展開になっても
今更感が強く、最後まで魅力のある主人公を貫いてほしかったと
感じてしまう作品だった。

総評:ダークスポーツアニメ


引用元:©2018 濱田浩輔・講談社/「はねバド!」製作委員会

全体的に見て好みの分かれる作品だ。
1話からギスギスした雰囲気とキャラクターの性格の悪さ、
そんなキャラの口から出てくる「罵詈雑言」の数々は見ていて清々しさはない。
だが、性格の悪いキャラをとことん性格悪く描くことで、
逆に圧倒的な存在感と他のスポーツアニメにはない魅力をこの作品は確立している。

この作品は才能こそが全てだ。
才能がないキャラは努力しても負ける、才能のあるキャラは努力をする事で
強くなり、精神的な弱さをなくすことでより強くなる。

スポーツアニメにおける努力と白々しい友情というのものを否定している。
声援があるから勝てるわけではない、努力をしたからといって勝てるわけではない。
スポーツマンシップをもっているからと言って勝てるわけでもない。
「才能ありき」な試合模様は王道な展開から外れ、
圧倒的な試合展開を描いている。

別にバドミントンでなくてもいい。
正直いってこの作品を見てバドミントンの面白さや魅力はあまり感じない。
ロトスコープや、最終話の白黒演出など色々しているのだが、
試合内容よりもキャラ描写のほうが際立ってしまっており、
バドミントンの魅力というのはほとんど伝わらない。

好感の持てる主人公ではない。だが惹き込まれる主人公だ。
この性格の悪さとライバルキャラや周囲に対する煽りセリフを
「楽しめるかどうか」でこの作品を楽しめるかも決まるだろう。

王道のスポーツアニメとは正反対の魅力を持つこの作品、
ぜひまだ見ていない人は1話試してほしい。
こんな性格の悪い主人公はなかなかお目にかかれるものではない(笑)

個人的な感想:これはスポーツアニメなのか?


引用元:©2018 濱田浩輔・講談社/「はねバド!」製作委員会

何方かと言うとこの作品はダークヒーロー的な魅力のある作品だ。
スポーツマンシップのかけらもなく、相手への敬意もなく、
口も悪ければ態度も悪い。だが才能はある。
本来なら主人公ではなくライバルキャラや敵キャラとして
描かれるようなキャラを主人公に据えている。

だからこそスポーツアニメが苦手でも楽しめる。
主人公のキャラ描写があまりにも極端だからこそ、
予想できない展開やシーン、セリフが次々と出てくる。
煽りセリフの数々は出てくるたびに笑ってしまった。

ただ、最後までそれが貫けなかったのが残念だ。
「母親を捨てる」という彼女の目的もどこかへいってしまい、
正直、個人的にはそれが1番見たかった。

色々と原作も改変してるようで原作ファンの間でも賛否両論のようだ。
特に主人公の性格の悪さはここまでではないらしい(笑)
個人的には面白かった。だが、好みの分かれる作品なのは痛いほどにわかる。

ロトスコープなどの演出や尖ったキャラ描写など、色々と挑戦的な作品だった。
無難を捨て王道を捨てて、原作も改変しまくって
制作側がやりたいことをやりきった感じが強い。
この挑戦心は高く評価したい。

原作ファンは怒るだろうが(苦笑)