青春

全員薬物中毒者「Paradox Live THE ANIMATION」レビュー

Paradox Live THE ANIMATION 青春
©Paradox Live THE ANIMATION
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評価 ★☆☆☆☆(15点) 全12話

【ティザーPV】Paradox Live THE ANIMATION / 2023.10 ON AIR

あらすじ 近未来。飽和状態となったHIPHOPカルチャーから新たなムーブメント“幻影ライブ”が誕生引用- Wikipedia

全員薬物中毒者

本作品はエイベックス×ジークレストによるメディアミックス作品。
HIPHOPを題材にしたものであり、本作品はメディアミックスの
一環のアニメ化作品。
原作はドラマCDとして展開している。

催眠と幻影

1話冒頭からライブシーンから描かれる。
フルCGで描かれたライブはきらびやかなものになっており、
テカテカとした質感のCGのクォリティ自体は気になるものの、
ライブ中にキャラが手を振りかざせば炎が撒き散ったり、
サビに入れば鳳凰のようなものが飛び交うようなライブシーンだ。

ただ曲の印象は薄い。
ヒップホップと言っているものの、ヒップホップ感は薄く、
同じヒップホップを題材にした「ヒプノシスマイク」と比べると、
冒頭の曲はラップがあるわけでもないため、
最近流行りのJ-POPとの違いがあまり感じにくい。

ジャンル的に「ヒプノシスマイク」と比較されやすいうえに、
しかも「ヒプノシスマイク」の2期と同時期に放送という
挑戦的な放送時期でやってしまった作品だ。
「ヒプノシスマイク」は催眠効果のあるマイクで、
ラップバトルを描いていたが、この作品も似たようなアイテムが有る。

ファントメタルという特別な金属があり、
その金属は感情とリンクして幻影を作り出すことが出来る。
冒頭で出てきた炎や鳳凰のような存在は
CGで描かれたライブ演出ではなく、実際に観客が
幻影としてみているものだ。

催眠と幻影、設定的にかなり被っている感じが強い。
主人公が所属するBAEというユニットは人気のユニットだ、
そんな彼らにかつて存在した「CLUB paradox」からの招待状が届く。
Paradox Liveというイベントで4チームが争い、
優勝者には100億円が送られる。

このあたりの設定も細かい部分は違うものの、
ヒプマイにおけるディビジョンラップライブと近いものがある。
それぞれ事情を抱えたユニットが100億円という賞金を獲得するために
Paradox Liveでの優勝を目指す。
導入としてはわかりやすいストーリーだ。

だが、1話終盤にはラップが入った曲も流れるのだが、
かなり真面目にやっており、どうしてもヒプマイに比べると
曲の印象も薄く、ヒプマイの催眠効果による演出は
ギャグじみててそれが作品の面白さにもなってたのだが、
この作品の幻影はあくまでもステージ演出にすぎないため面白みが薄い。

薬やんけ!!!

1話の時点でそんな幻影がステージ演出くらいで
とくに面白みがないものになってしまっているのだが、
2話の時点でそんなファントメタルのデメリットも明かされる。

ヒプマイにおけるヒプノシスマイクは特に使ったところで
デメリットと言えるものもない。
もっともだからこそ、安易に犯罪者が犯罪に使う道具になっている
部分もあるのだが…(笑)

今作のファントメタルは実質ドラッグと変わりがない。
ファントメタルを使用して幻影ライブを行うと
ド派手なライブを行うことが出来るが、
ファントメタルを使用したあとに「トラップ反応」というものが現れる。
いわゆる「バッドトリップ」だ(苦笑)

実際のドラッグを使った際にその快楽の代償、または過剰摂取で、
副作用として恐怖感、パニック、不安などに襲われることがある。
トラップ反応はまさにそれだ。ファントメタルは実質ドラッグに過ぎない。
自身が見せたい幻影を他者に見せることが出来るものの、
その代償に自身が抱えるトラウマを何度も見せられる。

意味不明だ。たかがステージ演出でしかないものを使用するために、
トラウマを何度も呼び起こさせ、最終的には自我を喪失さるかもしれない、
そんなリスクが有るのに平然と使用している。ちょっと意味不明でしか無い。
設定としてのツッコミどころが凄まじく、
この設定が明かされると作中のキャラがただの薬中にしか見えない。

ファントメタルはいわば、ドラッグ常習者が
ドラッグ使用時に見ている幻覚をドラッグをしていない人にも
見せるような効果のある金属なだけだ。しかも使用者には代償もある。
これが裏の世界で流れてるものとかならばともかく、
一般大衆向けのライブで普通にファントメタルを使用したライブを行っている。

そのあたりの設定の飲み込みにくさも有り、
いまいちストーリーにも入り込めない。
序盤はBAEを中心にParadox Liveに参加するユニットの
掘り下げを行っている。
各キャラが抱えるトラウマも匂わせつつストーリーを展開している印象だ。

Paradox Live

そんな各キャラの掘り下げを行ってる間にParadox Liveを
行っていて買ったり負けたりしているようだが、
大会の模様がろくに描かれない。
各キャラのセリフで勝った負けたが報告されるだけだ。

この作品でやりたいことは各キャラが抱えるトラウマを描くことだ。
だからこその「トラップ反応」という設定なのはわかるが、矛盾している。
例えばとあるキャラが仲間の「トラップ反応をどうにかしてやりたい」と
発言をする。それならばファントメタルの使用をやめればいいだけだ。
ただのステージ演出でしかないのだから。

このあたりの設定のツッコミどころが作品を素直に楽しまさせてくれない。
制作側としてはファントメタルによるトラップ反応を通じて
各キャラの不幸な過去やトラウマを描くことで、
キャラを掘り下げたいのはわかるが、それをやりたいがための
設定に色々と無理がある。

各キャラが自身の抱えるトラウマと強制的に向き合わせる。
そのためのファントメタルであり、トラップ反応なのはわかるが、
なら使うのをやめればいいという、そもそも論が
常に見ている側の頭につきまとってしまう感じだ。

ParadoxLiveの裏には製薬会社も絡んでおり、謎が謎を呼んでいる。
キャラクターの中で「リュウ」というキャラだけが
なぜかトラップ反応が起こらないという謎もある。

そんな謎をばらまきながら、各キャラの過去を描きつつ、
各ユニットを掘り下げているのが序盤から中盤までの流れだ。
各回の最後にはユニットごとのライブもきちんと描かれる。
キャラ数は多く、ツッコミどころも多いが、
キャラの印象付けはしっかりとしている。

中毒症状が!

終盤になるとBAEの一人である「ハジュン」が
ファントメタルに侵食され始める。
使えば使うほど侵食され、使うたびトラウマを見る羽目になり、
最終的には自我すら失う。ハジュンは無理をしてしまった結果、
全身が侵食されてしまっている。

何度もいうがファントメタルを彼らが使う目的は
ステージ演出のためだ。
ドラッグ中毒者が見る幻影を観客に見せるためのアイテムでしか無い。
なぜ彼らがそれを使い続けるのかもよくわからず、
それでも彼らは侵食されようともファントメタルを使い続ける。

シリアスになればなるほど、このファントメタルの設定の
粗さが目立ってしまっている印象だ。
侵食されて自我を失う結果になるとわかってても使い続け、
昏倒した仲間を助けるために仲間の精神世界にダイブする。
なんでもあり過ぎてよくわからない展開だ。

それぞれが自身のトラウマを向き合い成長する。
そういう物語をやりたいのはわかるが、
ファントメタルの設定のせいで素直にそれを楽しめない。

そんなトラウマがひたすら描かれる中で、
終盤にはいつの間にか最終決戦になっている。
対決しているシーンがほとんどなく、
各話の終盤のライブシーンが一応大会の模様であることはわかるのだが、
対決している感が非常に薄くなってしまっている。

本作における実質主人公と言えるのが「朱雀野 アレン」だ。
指揮者の父、オペラ歌手の母を持つ彼は
幼少期からクラシックの世界に入るように教育されていたものの、
彼はヒップホップに出会ってしまった。
だが、そんな彼のヒップホップを両親は否定した。それが彼のトラウマだ。

そんな父と主人公は終盤で再会する。
ParadoxLiveで優勝直前な彼を父は認めない。

「幻影ライブとやらをやめろ、汚れたものに浪費するな。」

そんな父に主人公は反対する。

「俺は俺の選んだ道をいく!信じ合えた仲間と!
俺の音楽で1番になる!」

主人公らしい主張だ。
だが、そんな主張に父は正論を返してしまう。

「お前の音楽で仲間を殺すがいい、ファントメタルの急性侵食、
以前のライブでお前の仲間が倒れただろう」

当然の反論だ(苦笑)
父親がクラシックにこだわり、クラシックの世界に息子を
縛り付けようとしたことは毒親的な部分があるものの、
ドラッグにはまってラップをやってる息子を説得する父の姿にしか
視聴者には見えない。

「お前の音楽は人殺しの音楽だ」

正論すぎて父親の方に味方をしてしまう。
本来は主人公に感情移入し、視聴者は主人公の味方になるはずなのだが、
ファントメタルという設定がめちゃくちゃなため、
本来は主人公に反対する父の意見の方に納得してしまう。

そんな父の言葉にショックを受け、BAEは決勝を棄権してしまう。
優勝者が決まる中で伝説の「武雷管」というユニットも出てくる。
10年前に突如として姿を消したユニットだ。

真実

作中のユニットの1つは双子だ。
双子の片方の病気を治すために大会に参加しているが、
終盤、ステージの上に立っている双子の片方は
ファントメタルが生み出した幻影であることが明らかになる。

主人公も仲間の言葉を受けて立ち直るものの、
みている側からすれば父親の意見が正論すぎて
立ち直るシーンの感動もいまいち伝わりにくい。

そして終盤に黒幕も動き出す。
双子の片方が真実を知り絶望する中で
メタルが共振しだし、侵食が始まる。黒幕たちは言う

「捨ててしまえばいい、自分というしがらみを。
 自分という個を捨てて1つになれ、もう誰もさみしくない」

人類補完計画

これは人類補完計画だ(苦笑)
ファントメタル使用者を絶望させ、ファントメタルを共振させ、
精神を侵食し、メタルに精神をとけこませ、
人類から個を奪うことで人類が1つになる。

ラッパーがドラッグを乱用してたかと思えば、
人類補完計画を始める、メチャクチャなアニメだ。
そんな計画を遂行しようとしている黒幕演ずるのは
「石田彰」さんというのは狙ってるようにしか見えない。
ちょっとメチャクチャすぎて呆れてしまう。

そんな人類補完計画の核にされた双子の片方を主人公はラップで説得する。
もうラップでどうこうするレベルの話になっていないなかで、
メインキャラ全員のラップで双子の片方の精神を取り戻して
人類補完計画を阻止して終わる。

めちゃくちゃだ。碇シンジも絶望するレベルの
人類補完計画の止め方はなにがしたかったんだろうと
思ってしまうほどの作品だった。

総評:ヒプマイの二番煎じにすらなれなかった

全体的に見てメチャクチャな作品だ。
原作のドラマCDの展開や投票による勝者を決める手法など、
明らかに「ヒプノシスマイク」の手法を真似したやり方だ。

それ自体は別に気にならないが、ヒプノシスマイクが催眠なら
この作品は幻影という手法を取っており、
そこまで真似しなくてもという二番煎じ感が凄まじくなっている。

しかも、そんな幻影を見せるためのファントメタルの設定がメチャクチャだ。
見せたい幻影を観客に見せるための鉱石ではあるものの、
使用者には過去のトラウマを呼び起こさせる効果があり、
使用すればするほど使用者は侵食されていき、最終的には死ぬ可能性もある。

そんなリスクを知らないキャラもいるのだが、知っていながらも
使用しているキャラも多く、そんなリスクを負ってまで
使用する意味が見ている側には理解できない。
なにせ幻影はステージ演出レベルだ、別に使用しなくてもいいのでは?と
感じるアイテムをメインキャラがリスク込みで使用しまくるのは
謎でしか無い。

そういった詰めの甘さも目立つ。
描きたいのは各キャラの重い過去であることはわかるものの、
そんな過去をさんざん描いた後に黒幕が企んでいるのが
「人類補完計画」というのは呆れてしまうレベルだ。

そもそもヒプノシスマイクの二番煎じで始まった作品だが、
アニメでは二番煎じにすらなれず、
メチャクチャな作品に仕上がってしまっている印象が残る作品だった。

個人的な感想:雑な人類補完計画

終盤で人類補完計画が始まったときは
一体何を見せられてるんだ…と思ってしまう作品だった。
黒幕の掘り下げも殆ど無いせいで、唐突に人類補完計画が
始まった感じが強く、その過程も結果も強引すぎてめちゃくちゃだ。

ヒプノシスマイクのヒットをみて、この作品が作られたことはわかる。
色々と似通った部分も多く、あちらはギャグ名部分が強めで、
こちらはシリアスを強めたかったのはわかるものの、
ファントメタルの設定はもう少しどうにかならなかったのだろうか…

ヒプノシスマイクは2期まで制作されたが、
この作品は果たして2期は制作されるのだろうか…?

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