青春

「ヒーラーガール」レビュー

4.0
青春
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評価 ★★★★☆(62点) 全12話

オリジナルTVアニメ「ヒーラー・ガール」PV

あらすじ 西洋医学、東洋医学と並ぶ第三の医学、ヒーリング。歌で病気やケガを治す“音声医学”として普及し、歌うことで医療行為を行うヒーラーは、その歌声で時には傷を処置し、時には患者の精神を安定させ、時には外科手術時の患者や執刀医のメンタルケアを施している。引用- Wikipedia

急に歌うよ~♪

本作品はTVアニメオリジナル作品。
監督は入江泰浩、制作はStudio 3Hz

いきなり歌うよー

1話冒頭、いきなり主人公が歌ってるシーンから始まる。
なんの説明もなく、本当にいきなり歌っているシーンから始まるため、
やや度肝を抜かれてしまう部分があるものの、
歌唱シーンから始まるインパクトは強い。

この世界では西洋医学、東洋医学だけではなく「音声医学」というものが存在する。
簡単に言えば歌で人を癒やすことができる。
精神的なものや、宗教的なものではなく、
本当に音楽が「傷」や「病」を癒やしてしまう。
そんな世界観の面白さをきちんと見せる。

不思議かつ突飛とも言える世界観だからこそ、
丁寧にこの作品がどんな世界観感かを見せている。
主人公たちはそんなヒーラーが存在する世界で「見習い」だ。
きちんと「医療」として音声医学が確立している世界だからこそ、
無免許での医療行動も認められていない。

ただ、この独特な世界観だからこそ、かなり癖は強い。
いわゆる「ミュージカル」的なノリが強い。
音楽に合わせて彼女たちは自分がなぜヒーラーを目指しているのかを
歌ったり、ちょっとした会話ですら歌いながら話す(笑)
ちょっとディズニーアニメをみているような気分にすらなる。

そんな彼女たちの「歌」を全開の作画と演出で盛り上げている。
ちょっとした歌唱シーンですら、表情やきらびやかな演出が
きらびやかに描かれており、どこかギャグ的にすら見せることで、
この独特な世界観とミュージカルにより構成されている作品の
面白さに1話で惹きつけてくれる。

宗教的

ただ、1話からそうなのだが、全体的に「宗教的」な概念を感じる。
音声医学は周波数や混合和音など、この世界では科学的な
エビデンスに基づく医療であり、オカルトや神に祈るようなたぐいのものではない。
しかし、そんな音声医学による施術シーンはかなり宗教的だ。

例えば1話、主人公が歌うと周りが金色の空間に包まれて、
小さな主人公の姿をした陽性のようなものが飛び出し、
患者の周囲に漂い、患者が助かる。
いわゆる「イメージ映像」なのはわかるが、そのイメージ映像は
当然のように周囲のヒーラーには見えており、
むしろ、そのイメージこそが音声医療には重要な部分すら有る。

映像だけ見るうと、これが「〇〇教」の宣伝長編映画ですと言われても
納得できてしまうスピリチュアルな映像表現が多い。
主人公たちの衣装もそれを後押しししてしまっている。

彼女たちにとっての「白衣」なのはわかるが、白いワンピースのような服で、
木造建築の病院で治療を行う姿は、どこか西洋医学や東洋医学を
否定したオーガニックなものを推進している宗教のような、
そんな雰囲気すら見せる部分がある。

これが現代ではなく、どこか「異世界」なファンタジーな世界を
舞台にしていればまだ宗教的なニュアンスが薄まったかもしれないが、
ゴリゴリに現代である(笑)
どこか大げさにすら見える映像表現がギャグ的にすら見えるものの、
やってる本人たちは至って真面目だ。

どこか「シュール」な雰囲気が序盤からただよっており、
この映像表現をストレートに受け取れば良いのか、
ギャグとして受け取れば良いのか、いまいち咀嚼できないような
そんな感覚が常に付きまとう。

その抽象的な表現に妙に「金色」や「花」や「蛇」など
宗教的なものに出てきそうなものが多いのも
原因の1つかもしれない。

ただ、その抽象的な表現のお陰で「見習い」である主人公たちと、
彼女たちの師であり、プロのヒーラーの力量の違いを
見て感じさせてくれる説得力が生まれている。
演じている声優さんもメインの3人は新人さんだが、
師匠を演じているのは「高垣彩陽」さんであり、歌唱力の違いという
リアルな説得力も生まれている。

目と耳で「ヒーラー」というものがどんなものなのかや、
実力の違いをきちんと見せることで、
見習いである彼女たちの「実力」を感じさせてくれる。

成長

1話の時点では見習いだった彼女たちが、
話が進んでくると成長していく。
仮免試験を合格し、本格的に医療行為が堂々と行えるようになり、
初めての治療行為、初めての手術の補佐、
1話1話手堅く、彼女たちの成長を描いている。

その中で面白いのが4話だ。
1話の時点で音声医療という突飛な要素が出てきて、
その要素に見ている側がなれ始めてきたあたりで、
「音声医療」を否定している西洋医学の医師が出てくる。

当たり前とも言える反応だ。
見ている私達でさえスピリチュアルなこの医療行為を
大胆た演出でふわっと見せられており、
科学的な裏付けは世界観の中ではありそうだが、
そこを明確にはもちろん描いていない。

そんな「音声医療」だからこそ否定する医師もいる。
同じ医師という職業、外科的な手術を行うロジカルな医師だからこそ、
スピリチュアルな医師に否定的になる。
そんな彼と「手術」を一緒に行う。

一方はメスを持ち患部を除去しようとしている。
一方は3人手を合わせて歌っている(笑)
相当シュールな光景だ。
3人の医療行為の効果は「医師のメンタルの安定」と
「患者の術後の経過」であり、手術という行為にどこまで効果的なのか
いまいちわからない。

しかし、そこに不思議な説得力をうませているのがこの作品だ。
手術中におこるトラブルを彼女たちの「歌」が癒やすことで、
手術が成功する。
ややご都合主義な展開ではあるものの、
「ヒーラー」という職業の存在意義を作品の世界観を描くことで
説得力が生まれている。

プロとして

彼女たちは見習いだ、まだまだ新人ではある。
だが、現場に経てば見習いも新人も関係がない。
悩んでいても、突っけどんな態度を取っていても、
彼女たちは「医師」として患者の前に立つ姿はプロだ。

一歩間違えば命を失ってしまう。
そんな現場にいるからこそ、普段はほんわかしたドタバタ日常を
描きつつも、医療現場でのミスにその日常をつなげては居ない。
だからこそ「不快感」がこの作品にはない。

そんなプロとしての日常を描きつつ、
彼女たちの日常も描く。
それは学校での学園祭だったり、田舎に帰ったり。
些細な日常の中でメインキャラクターを掘り下げ、
彼女たちがどうしてヒーラーを目指すのかというバックボーンもきちんと描いている。

それぞれのキャラの立ち位置がしっかりとしており、
余計なキャラクターが居ない。
3人の主人公たち、師匠、ライバル、ライバルの師、
サブキャラクターに至るまで丁寧に描写しており、
一人ひとりがこの世界で「生きている」ことを感じさせる。

嫉妬

物語の中で大きな失敗や挫折は殆どない。
見習いヒーラーが、仮免に受かり、C級ヒーラーの資格を得る。
この道程をひたすらにまっすぐ進んでいる。
非常に手堅いアニメだ、こちらが予想できないような展開はなく、
ひたすあにまっすぐに石橋を叩くように手堅いストーリーを進んでいる。

そのせいもあって序盤のヒーラーという特別な職業の
インパクト自体はあるものの、あとはよくある日常青春ものの
ストーリーを展開している。
3人の主人公がキャラ立ちしているからこそ、そんな手堅い
日常青春なストーリーが心地よいリズムを奏でるように進んでいく。

唯一シリアスといえるのは終盤の「嫉妬」だ。
3人が思い悩む中で、3人同士が互いに思っていたことをぶつけ合う。
自分にないものを持つ2人、だが、そんな2人にも自分にないものを
自分の中に見つけ、嫉妬してくれている。
一人ひとりが持つ環境や「個性」が3人だからこそ理解している。

そこまでギスギスした展開はなく、シリアスな雰囲気にもならない。
「盛り上がりどころ」という意味ではやや薄いものの、
見習い、仮免、そして「C級ヒーラー」というプロになった3人が、
初めて一人で違う場所で研修することで「プロ」として自覚し成長する。

ただ、最終話はやや駆け足な印象を受ける部分があり、
彼女たちの師匠が「そろそろ全盛期ではなくなる」などの
重要な要素の匂わせや師匠がヒーラー一本を目指した理由、
災害や、飛行機の中での病人など、
最終話だけは本来は2話や3話分の尺を欠けてやるような内容を
一気にやってるような印象だ。

それでも、主人公が「ヒーラー」を目指したきっかけから、
彼女がヒーラーとなって人を救う最終話までの流れを、
綺麗なストーリー構成で1クール見せてくれる作品だった。

総評:スピリチュアル・ヒーリングアニメ

全体的にみて非常に丁寧に作られているアニメだ。
現代の第三の医学として定着している「音声医療」をテーマに、
3人の見習いヒーラーが成長していく青春日常アニメになっており、
そこをブレずに本当にまっすぐ見せている。

ただ、好みが分かれる部分は強い。
医療シーンだけでなく、日常シーンでも急に歌うシーンが多く、
ミュージカルのように歌が台詞になっている部分もある。
ディズニーのミュージカルアニメのような感じになっており、
このあたりはやや好みが分かれる要素だ。

更に医療シーンでは彼女たちの音楽によるイメージ映像が
きらびやかに描かれているが、序盤は特にそのイメージ映像が
どこか「宗教的」に見える部分が多く、
この歌の要素が好みが分かれる部分になっている。

しかし、こんな突飛な「ヒーラー」という要素を
アニメーションで盛り上げるための演出は面白く、
話によっては一人だけが原画を手掛けており、
アニメーショでこの作品をどう見せるのか?というのに
強い怖だりを感じる作品だ。

癖は強いものの、内容は手堅い。
3人の主人公もキャラ立ちがしっかりしており、
彼女たちの成長物語を1クール、目と耳と心で楽しまさせてくれる作品だった。

個人的な感想:2期

もしかしたら2期を想定している部分があるのでは?と感じる作品だった。
師匠の全盛期という要素、彼女たちがまだC級であるという点など、
このまま2期があってもおかしくない要素を見せており、
それはそれでみてみたいと感じさせてくれる。

制作自体はStudio 3Hzではあるものの、PA.Worksが手掛ける
お仕事アニメ系のような雰囲気もあり、
2クールくらいでガッツリとみたかったと感じさせてくれる。

ただ、序盤の宗教感の強さやミュージカル要素の強さだけは、
好みが分かれるところだ。
あのあたりをどう受け止めるかで、見る人の感想が
ゴロっと変わりそうなそんな印象も受ける作品だった。

「ヒーラーガール」は面白い?つまらない?

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