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悪ガキ大暴れ映画「星つなぎのエリオ」レビュー

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星つなぎのエリオ 映画
画像引用元:(C)2025 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
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評価 ★★☆☆☆(28点) 全12話

「星つなぎのエリオ」日本版本予告|日本版エンドソング「リボン」performed by BUMP OF CHICKEN|8月1日(金)劇場公開

あらすじ 好きなことにまっすぐな少年エリオは、何光年も離れた遠い星へ行ける日を夢見て、大好きな宇宙に思いを馳せていた。し。 引用- Wikipedia

悪ガキ大暴れ映画

本作品はピクサーによるオリジナルアニメ映画作品。
監督はマデリーン・シャラフィアン、ドミー・シー、エイドリアン・モリーナ、
制作はピクサー

監督3人

すでに冒頭でお気づきの方もいるかもしれないが、
本作品の監督は3人もいる。なぜ3人もいるのか、揉めたからである。
色々と海外でも日本でも情報が流れているが、
当初はリメンバー・ミーの共同監督であるモリーナ監督が
単独監督としてデビューを飾る作品として企画がスタートしている。

しかし、なぜかドミー・シー監督とマデリーン・シャラフィアン 監督による
作品になり、本作品からエイドリアン・モリーナ監督が外されることになった。
クレジットだけは残っているものの、ほぼ作り直したというような情報もあり、
本作の制作費はかなり莫大なものになっているのでは?と
情報が錯綜している。

最近のディズニー、ピクサーらしい内部の揉め事が起こっており、
その結果、先に公開された全米ではピクサー史上最大の爆死映画になっている。
そんな内部の揉め事が聞こえる中での日本での公開となった。

テンポ

この作品で1番気になるところはテンポ感だ。
キービジュアルには一人の少年とエイリアンが映っている。
エリオという少年が地球外生物と出会う物語であり、
予告映像などでも少年とエイリアンの楽しそうな様子が映ってるはずだ。

しかし、このエイリアン。メインキャラではあるのだが、
映画が開始して1時間くらいしないと出てこない。
映画の上映中なので時計は確認していないが、
体感では1時間、少なくとも40分か50分くらいしないと
メインキャラが出てこないというのはあまりにも遅すぎる。

特に序盤のテンポ感は非常に悪く、
両親を失ったエリオが叔母に預けられることになり、
そんなエリオがたまたま「宇宙」に興味を持つようになる。
少し成長したエリオは宇宙にロマンを求め、
地球外生物と出会うことを夢に見ている。

宇宙にメッセージを送る毎日ではあるものの、迎えは来ず、
勝手に夜抜け出したり、友達ともめるせいもあって
叔母との中も険悪になってしまっている。

このエリオという主人公が非常に好みが分かれる存在だ。
宇宙が大好きなのはわかるが、そのために無線クラブを作ったとおもえば
他人の無線機がほしいだけだ。その結果、同じくらいの少年と揉めて、
左目を怪我することになる。

いじめっ子のような存在もいるものの、主人公にもかなり悪い部分があり、
どうにも彼に感情移入や共感、好感というものがもてない。
それは最後まであまり変わらない。

そんなグダグダな序盤をへて、ようやく宇宙へ行くことになる。

コミュニバース

彼が導かれた宇宙船、コミュニバースの描写はさすがはピクサーだ。
多種多様な宇宙人が集まって暮らす場所は
宇宙人だからこその技術や文化があり、それを丁寧に見せつつ、
見た目的にはあまり可愛さが見えない「宇宙人」を
コミカルに見せながらキャラ描写を深めている。

宇宙人の宇宙船という、あるかどうかもわからない場所を
ロマンチックに描いているのはさすがはピクサーだ。
宇宙船に招かれたエリオのテンションの上がり方もすさまじく、
序盤の陰鬱とした雰囲気からガラっとかわる。

彼は居場所がないと思っている少年だ。
両親を失い、叔母に預けられる、そんな叔母は
自身の「キャリア」というものを犠牲にしている。
そんな叔母にとって自分は重みであり、枷ではないのか。
自分は愛されていない、自分の居場所はここにはない。

だからこそ彼は宇宙に居場所を求めた。
ただ、友達がいないのも、叔母にとって枷になっているのも
すべてエリオに問題がある部分が多く、
おばさんが務める空軍の装置を勝手に使って停電させるわ、
宇宙に行ったら行ったで「嘘と欺瞞」に満ちた行動やセリフが多く、
彼のせいで起こる騒動があまりにも大きい。

1歩間違えば誰かが死んでてもおかしくないことを
この作品の主人公は平然とやってのける。
彼は勝手に宇宙人に軍の施設を使ってメッセージを送ったせいで
「地球のリーダー」だと勘違いされてしまっている。

序盤30分を過ぎても盛り上がりどころが薄く、
淡々と薄い物語が進んでいる感じが強い。
映像表現の絵力があるからこそ場面が持っているが、
ストーリーだけ考えると描いた尺の割に中身が薄い。

ヴィラン

今作のヴィランともいえる存在はわかりやすく言えば
「ドラゴンボール」のサイヤ人のような戦闘民族だ。
力こそ全てであり、力で奪ってきた。
そんなヴィランがコミュニバースへとやってくるものの、
彼は仲間として受け入れてもらえず、コミュニバースを力ずくで手に入れようとする。

そこで主人公は自らの存在をアピールし、
コミュニバースに入るためにも「交渉役」を買ってでる。
ただの子ども、地球のリーダーでもないのに、
地球のリーダーであると偽り、危険な宇宙人との交渉に買ってでる。

結果的に彼が交渉をしたり、色々と誤魔化そうとした結果、
コミュニバースは甚大な被害を受けることになってしまう。
すべて主人公が原因だ、序盤の騒動の数々も、中盤の騒動の数々、
この作品に起こる全ての出来事は主人公のせいだ。

それに周囲が巻き込まれているに過ぎない。はた迷惑な話だ。
彼のせいで無線機を奪われて怒られた子どももいる、
彼が嘘をついたせいで宇宙人たちのコミュニティが崩壊仕掛ける、
彼が嘘をついたせいで友人の宇宙人が死にかける。
彼のせいで叔母は仕事を失いそうにまでなる。

あまりにもやらかしていることが多く、
自分は愛されていない、自分には居場所がないというのだが、
それを自覚していないだけなのだ。
だからこそ、イラっとした感情すら生まれてしまう。
主人公のほうがやってることだけでいえばよっぽどヴィランだ。

特に中盤、交渉のためとはいえヴィランの「子ども」を
誘拐して、それを出汁に交渉するのはあまりにもひどい。

グロードン

映画が開始して40分から50分するとようやく
メインキャラの一人であるグロードンが出てくる。
彼は戦闘民族なヴィランの息子であり王子様だ。
将来は父のように強く、戦い、奪うことを求められている。

しかし、彼は優しい性格をしており、本当はそんなことをしたくない。
そんな気持ちを素直に父親にも言い切れず、
彼は孤独に生きてきた。エリオという主人公と同じように孤独を抱えている。
そんな孤独にそっとエリオは寄り添い、彼のために努力する。

その姿や展開自体は悪くないものの、
だらーっとした展開とアニメーションとしての盛り上がりの薄さが致命的だ。
確かに作画のクォリティは高い、しかし、それだけだ。
思わずワクワクするようなシーンも少ない上に、
同じようなシーンを2度もやってしまう。

序盤でエリオがコミュニバースに訪れた際に
コミュニバースの中がダイジェスト的に一気に紹介されるが、
グロードンがやってくるとエリオとともに
同じようにまたコミュニバースの中を探索する様子が描かれる。

このあたりのシーン構成や脚本など
「練り込みきれていない」感じが非常に強く、
なにをしたいのかわからなくなってくる。

ありのままの

結局、何がしたいのかよくわからない作品になっている。
エリオの孤独についてはエリオ自身に問題がある部分があまりにも多く、
彼自身に共感や感情移入がしにくいほどやらかしまくっている。

グロードンとの友情物語としても、肝心のグロードンが出てくるのが
40分くらい過ぎてからで、そこから30分くらいで
友情があっさり築かれても浅い感じが強い。

家族の物語を描きたいのかもしれないが、
結局、これは「ありのまま症候群」でしかない。
家族をなくしたメインキャラの心が傷つき、自分の居場所を失い、
別の居場所を見つけようと冒険した結果、自分を見つめ直し、
家族や友人の助けを借り、彼らの愛をしり、
ありのままの自分でいられる場所があったことを再確認する。

最近のディズニーでありがちなプロットでしかない。
何度目だといわんばかりのありのまま症候群だ。
手を変え品を変えとやっているが、やっていることが
アナと雪の女王からずっと変わっていない。

ありのままの自分でいい、ありのままの自分をそのまま伝えるだけでいい。
ありのままの自分を受け入れてくれる人は気づかないだけでそばにいる、
ずっとありのままのと歌い続けている。

予想通り

王道といえばそれまでではあるが、
脚本の練り込みの甘さを感じてしまい、
監督が変更などドタバタがあったことがわかってしまうほど、
この作品の芯となる3つの要素がどれもうまく噛み合っておらず、
ずーっと薄いまま物語が描かれてしまっている。

展開自体も予想通りだ、メインキャラが死にかけたところで
「死ぬ」展開はないのはわかっている、
終盤、エリオがコミュニバースに残るか地球に帰るか悩むのだが、当然地球に帰る。

アクションシーンとしての盛り上がりは終盤の
デブリを避けまくるシーンくらいだが、
このシーンを見るために映画館に行くほどでもない。
物語の内容も、キャラの魅力も、アニメーションの魅力も、
劇場でぜひ味わってほしい!とはならない作品だ。

配信で十分、そんな気持ちが鑑賞後に生まれてしまう作品だった。

総評:ピクサー史上最大の赤字映画

全体的に見て全米で流行らなかったことも納得できる作品だ。
ストーリーは王道といえば聞こえはいいが、ありきたりでしかなく、
キャラクターの魅力に関しても、宇宙人たちはキモかわいい的な
魅力はあるものの、主人公であるエリオには魅力がない。

アニメーションとしての盛り上がりも非常に薄く、
ところどころ盛り上がりどころはあるものの、
作品全体としてテンポが悪く、
脚本にしろアニメーションにしろ
「練り込まれていない」感じが非常に強い印象を受ける作品だ。

最初の監督の構想段階では主人公に「クィア」要素があったと言われている。
その要素がアレば彼の孤独にもより拍車がかかり、
エリオという主人公を好きになれたのかもしれない。
ポリコレ要素を排除したことで作品としての核も失ってしまった感覚だ。

最近のディズニーはその手の要素を逆に排除するか薄めるという
流れになってきており、制作する側も手のひらを返されたような気分だろう。
そのせいで作品が犠牲になった、そんな印象を受ける作品だった

個人的な感想:3人

時間の都合上、本作品を字幕でみたのだが、
そのせいか私含めて3人しかいなかった。
吹き替えのほうは多少、お客さんは入っているようだが、
日本でもそこまで伸びることはないだろう。

ピクサーはここ最近、インサイド・ヘッド2などで
大ヒットになったものの、この作品でそんな利益が吹き飛ぶかもしれないと
思うと、映画という興行のハイリターンハイリスクを感じてしまう。

色々と迷走感も強いピクサー&ディズニーだが、
ズートピア2はしっかりとやってのけてくれることを期待したい

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