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犬とロボの秒速5センチメートル「ロボット・ドリームズ」レビュー

3.0
ロボット・ドリームズ 映画
画像引用元:(C)2023 Arcadia Motion Pictures S.L., Lokiz Films A.I.E., Noodles Production SARL, Les Films du Worso SARL
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評価 ★★★☆☆(58点) 全102分

11月8日(金)公開『ロボット・ドリームズ』|本予告

あらすじ 時は1980年代の真夏。ニューヨークのマンハッタンで一人暮らしをしている犬のドッグは、孤独な日々を虚しく過ごしていた。 引用- Wikipedia

犬とロボの秒速5センチメートル

原作はグラフィックノベルな映画作品。
監督はパブロ・ベルヘル。

孤独な犬

見出して感じるのは不思議な世界観だ。
いかにもアメリカっぽい雰囲気と色合い全開な作画ではあるものの、
メインの登場人物は動物とロボットとしかいない。
この作品に人間はいない、動物たちはまるで人間のように暮らしている。
だからこそ「孤独」に暮らすものも居る。

主人公である犬のドッグは一人さみしく暮らしている。
ゲームをしたり、テレビを見たり。
孤独を紛らわせようとするものの、癒やされず、
彼は「ロボット」を飼うことになる。

コミカルなアニメーションと頻繁なカット割りで
テンポ感を生み出しており、「セリフ」が一切ないのにもかかわらず、
きちんとアニメーションによる演技のお陰でキャラの心情が伝わる。

ロボット

そんなドッグの家にロボットがやってくる。
ウキウキで自分で組み立てたロボットは
ドッグにとって唯一無二の存在へとなっていく。
可愛らしいキュラデザのキャラの愛くるしさと
アニメーションの豊かさのお陰で彼らの日常をみているだけで面白い。

1980年代のニューヨークを舞台にしており、
それがどことなく日本人でさえ「ノスタルジックさ」を感じさせてくれる。
自由の国アメリカ、そんな国で暮らす動物たちは自由そのものだ。
ストリートミュージシャンたち、ラジカセを抱え踊りだすやつら、
懐かしい音楽がノスタルジックさを後押しし、二人の日常を彩る。

「ホットドッグ」なんていかにもな食べ物を食べる姿だけで愛らしい。
最初は友情だったかもしれない、だが、ドッグの中には愛が生まれている。
ロボットを心配し、勝手にロボットに触るものに嫉妬し、
手をつなごうとする姿は微笑ましさすら感じさせる。

恋愛というよりは「ブロマンス」という言葉を使うほうが正しいかもしれない。

別れ

だが、そんな幸せな日々はあっというまに過ぎ去ってしまう。
海にいったせいでロボットは錆びて動けなくなってしまう。
重たすぎるロボットを持ち帰ることもできず、
ロボットを置き去りにするしかなくなってしまう。
あまりにも悲しい別れだ。

久しぶりの孤独に犬は寂しさを隠しきれない。
海はシー人オフになり、閉鎖され、
ロボットとの間には高いフェンスで阻まれる。
たった少しの別れだったはずなのに、ただ海を楽しんだだけなのに、
犬とロボットは離れ離れになってしまう。

次の海開きまでロボットと会うことはできない。
会える日までロボットはずっと「夢」を見続ける、
ドッグと再開できる日を、何度も何度も何度も何度も。
だが、それは夢でしか無い。

無常にも季節は移り変わっていく、二人はずっと孤独だ。
1度、一人ではないことを味わってしまったがゆえに孤独が身にしみる。
それはまるで錆のように、心に、体にのしかかっていく。
悪い夢を何度も観て、悪い妄想を何度もしてしまう。

別の友だち

ドッグは海開きまでどうしようもない、だからこそその間、
孤独を紛らわすために別の友だちを作ろうとする。だが、うまくいかない。
結局、ドッグにとっての理想はロボットだ。
彼は「命あるもの」と仲良くするのが下手なのかもしれない。
だからこそ、ロボット以外の存在を受け入れることができない。

人間でも対人関係が苦手な人がいる、
だがペットに対しては愛情たっぷりに接してる人もいるだろう。
それと似たように本作の主人公のドッグは対人関係ならぬ
対動関係が下手な動物だ。
だからこそ、彼なりに孤独を紛らわせようとするものの、紛らわせることすら難しい。

思いを寄せた人も1年間の間には現れる、
だが、結局うまく行かない。
「友達ロボット」という商品は無条件に愛をくれる。
それは非常に都合がいい存在でもある。

ロボットはそうプログラミングされているだけなのかもしれない。
だが、彼はずっとずっとドッグのことを思い続け待ち続ける。
その一方でドッグは様々な動物と交流するもののうまくいかない。
そんな1年だ。

ロボットはずっとずっと夢を見る、
季節が移り変る中で、その移り変わりを楽しむかのように
ずっとずっと様々な夢を見続ける。

どんな夢であろうと内容は「ドッグ」との再会には変わりがない。
だが、会おうとしても会えない、夢の中ですら再会を味わうことすらできない。
あまりにも無情だ。
秋になり、冬になり、春になる。

ロボットのそばで巣を作っていたヒナたちも巣立ちを迎える。
1年近い月日の中でロボットは砂の中に埋まってしまう。
しかも廃品業者に回収され、バラバラにされてしまう始末だ。

海開きの日にドッグはやってくるものの、
ロボットはもうそこにはいない。
もっといろいろな手段を模索しても良かったはずだ、
実際、船からビーチにたどり着いたものたちもいる。

だが、ドッグはそれをしなかった。
1度救出作戦が失敗してしまったからこそ、
彼は諦めてしまい、ロボットがいない孤独を
別の誰かで埋めようとしていた。

ロボットは動けないながらも、ずっと待ち続けていたのに。
そんな思いの違いが「大きなすれ違い」をうみ、
別れにつながる。

別の誰か

ロボットはラスカルに回収され改造されたことで復活する。
記憶がリセットされたわけではない、彼の中にはきちんとドッグの記憶がある。
ドッグはドッグであっさりと諦める始末だ。
彼は別のお友達ロボットを購入してしまう。

ロボットはラスカルと、ドッグは別のロボットと。
欠けていたものを補充するかのように彼らの日常はまた始まる。
もうあの日々が戻ることはない。
ロボットは偶然「ドッグが別のロボット」と歩いている所を目撃してしまう。

もう戻らないあの日々。残るのは「楽しかった記憶」だけだ。
すれ違いが、思いの違いが、ちょっとしたきっかけで関係性は失われる。
それでも生きていく、新しい希望を胸に抱き、
孤独を埋め合わせながら。

ときに思い出の曲で彼を思い出しながら。

総評:孤独な貴方へ

全体的に観てまるで「秒速5センチメートル 」でも
見ているかのような気分になる作品だった。
幸せな二人の日々はまるで初恋のように色鮮やかで思い出深い描写になっており、
そこから別れが訪れ、会えない日々が続き、それぞれが
別の誰かを見つけ、再び孤独ではない日々を過ごすようになる。

最後に二人の気持ちが強ければ再会することもできたかもしれない。
しかし、多くのすれ違いが、掛け違いが二人にその一歩を踏み出させない。
二人が「今」幸せならそれでいい、例えそれを知るのがロボットだけでも。
まるで秒速5センチメートルのような恋愛とも友情とも言えるブロマンス模様は
非常に切なく、特にロボット目線だと胸が締め付けられるようだ。

その一方でドッグの目線だと消費により孤独を埋め、
それを諦め、別の何かで満たそうとする姿は共感を産む人もいれば
嫌悪感を抱く人もいるかも知れない。
別のロボットで孤独を満たすドッグの姿は
幸せ道ではあるもの、その姿を見たロボットの気持ちを思うと辛いものがある。

セリフが一切ないアニメ映画だからこその心理描写は素晴らしく、
1980年代のニューヨークのノスタルジックさと、
動物とロボットしかいない不思議な世界観が癖になる作品だ。

ハッピーエンドともバッドエンドともいえないラストは
1度見ると記憶に強烈残るものがあり、
海外で評価されたのも納得してしまった作品だった。

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