評価 ☆☆☆☆☆(2点) 全91分
あらすじ 現代の地球。ミュージシャンを目指す高校生ヨウは、親の反対やバンド仲間との人間関係に悩み、自らの将来を決められずにいた。 引用- Wikipedia
2025年アニメ映画ワースト1
原作は「星と翼のパラドクス」というアーケードゲームな本作品。
監督は静野孔文 、制作はHONOO、StudioGOONEYS
企画が死んでいる
この作品、そもそも制作段階から意味不明でしかない。
原作のアーケードゲームはそれなり人気だったようなのだが、
サービス自体は2021年に終了している。
続編ゲームのようなものがでるというわけでもなく、
なぜかサービスが終了して4年の月日を経てアニメ映画になる。
もうこの時点でワケワカメだ。
サービスが終了しているゲームの前日譚の映画化という
どういう立ち位置の作品なのか、企画意図の時点で滑ってる感が凄まじい。
そもそもタイトルもゲームの中でのプレイヤーを指し示す言葉になっており、
これもまたわかりにくさにつながっている。
監督は静野孔文さんであり、コナン映画ではおなじみの方だ。
そしてキャラクターデザインはエヴァでおなじみの貞本義行さん、
ロボットデザインには水星の魔女などでもメカデザインを手掛けた形部一平さん、
こういったビッグタイトルがスタッフ欄に並んでいる作品は
やばいことが多い。
私は思わず、あの「バブル」を思い出した。
船頭多くして船山に登るとはよく言ったもので、
豪華な制作陣に対して脚本は3人も居て、有名な人ではない。
この時点で地雷感が凄まじく出ている。
しかも公開時期はクレヨンしんちゃんや鬼滅の刃が絶賛上映中の8月。
ほとんど宣伝のようなものを見かけない。
同じような感じで「ChaO」も興行収入が悲惨なことになっているが、
この作品もかなり悲惨なことになっている。
もっとも、この作品は上映館数が100館規模であり、
ChaOは300館規模であることは留意しておいていただきたい。
主人公が死んでいる
この作品の最大の欠点は主人公だ。
映画の冒頭から終盤までずーっとウジウジしている。
エヴァ以降の2000年代前半のアニメには
この手のウジウジ主人公は多かったが、最近はとんと見かけないウジウジさだ。
彼は高校生であり、バンド活動をしているものの、
ドラムがなぜか抜けたようで、自分に自信をなくしており、
オーディション用の曲はできているが、歌詞はできていない、
自分に自信がなく歌詞作りもできないという感じだ。
この主人公のバックボーンがあまりにも薄い。これ以上でもこれ以下でもない。
家族仲も悪くはないようだが、思春期特有の本心や本音を
両親に言えない感じはあったりするものの、特に仲が悪いということでもない、
自分を信じられず、他人を信じられないみたいな感じの主人公なのだが、
そうなった原因がろくに描かれない。
あまりにも空虚な主人公だ、主人公としての魅力がまったくない。
セリフも相当少ない。彼を演じているのはいわゆる芸能人声優であり、
ときおり演技がとてつもなく棒演技になる。
それを誤魔化すためなのかなんなのか、ハキハキと喋らずウジウジしており、
大声を出すことが本当に少なく、セリフ自体も少ない。
だからこそ芸能人声優の演技力をごまかせてるとも言えるが、
そんな芸能人声優が歌手だからか歌を4回くらい歌う。
しかも全部同じ曲だ。
いい加減にしろと思うほど歌いまくり、特にうまくもなく下手でもない
心に一切残らない曲を何度も何度も聞かせられる。
苦痛でしかない。
そんな存在感も魅力もない主人公が唐突にワープする。
舞台がややこしくて死んでいる
この作品の設定は若干ややこしい。
主人公は地球に住む高校生なのだが、物語は地球から遠く離れた惑星、
巡星と呼ばれる場所が舞台になっている。地球人はそんな星の存在すら知らない。
そんな星では「星の血」と呼ばれる星のエネルギーを利用し発展していたのだが、
2国間による戦争があり、多くの犠牲者が生まれた。
そんな戦争の後の時系列になっており、
隊長と呼ばれる人物が宇宙から落ちるデブリを止めるために出撃する。
そんな隊長の行動を見てヒロインがまるで未来予知のように
このあと起きる展開が頭の中に浮かんでしまう。
デブリが星の海に落ち、大爆発を引き起こす未来。
そんな未来を止めるために新型機で出撃し、
ワイヤーをデブリに引っ掛けて引っ張るものの出力不足で難しい。
そんな中、なぜか遠く離れた地球の主人公とつながり、
とんでもない力を発揮して事なきを得るというのが序盤の展開だ。
序盤の時点で地球と巡星という2つの場所が描かれるのもややこしく、
主人公が地球人で巡星という場所を知らず、
別の場所に来ているという設定がわかるのも序盤を少し過ぎてからだ
いまいち飲み込みにくい舞台設定が常に続く。
アニメとして死んでいる。
この作品は非常に見づらい、キャラクターの服や背景、
小物に至るまで図形を使ったテクスチャが貼り付けられており、
そのせいで雰囲気は出るものの見づらい。
元々がゲームだったこともあり、そういった雰囲気を出そうとしているのはわかるが、
この見づらい演出は作画枚数を誤魔化すためでもあるのかもしれない。
この作品はよくわからないことをしており、
顔は手書きだが、それ以外の体などはフルCGになっている。
斬新な手法ではあるものの、斬新なだけで面白さはまるでない。
特に手書きのはずの顔は死んでいる。
本当に驚くほど作画枚数が少ない。
例えばロボットにのってデブリが落ちてる中という
危機感のある状況なのにキャラクターたちの顔の
表情がまったくもって変わらない。
だからこそキャラクターの心理描写、感情がまるで伝わってこず
声優さんの演技任せだ。もちろん完全に変化しないというわけではないが、
あまりにも変化が乏しい手書きの顔の作画は、
顔だけ手書きにこだわった意味がない。
アニメーションという表現においての動きの面白さなどまるで無く、
回想シーンなどでは止め絵も使う始末だ。
見ていて本当に退屈なアニメーションが続き、
それを見づらいテクスチャで誤魔化してるだけに過ぎない。
構図も恐ろしいほどに工夫がない。
巡り星のお偉いさんの思惑などが道中で何回か挟まれるのだが、
それがずっと同じ構図で同じ角度でお偉いさんが描かれる。
CGを使っていることが手抜きにしかなっていない。
ストーリーも死んでいる
主人公は唐突に遠く離れた惑星に「意識」だけヒロインの中に召喚される。
主人公の体は地球にあり、あくまでも意識だけだ。
基本的にヒロインが物語を進行する形になる。
ヒロインは未知の力を発揮し、その力はリアライズと呼ばれており、
その力のせいで狙われることになる。
この力が何なのかを知るために隊長とともに研究者である
父のもとに訪れると、父はなぜか未来の情報を知っており、
その未来をゲームと言う形でヒロインに伝えている。
更にヒロインの父親はヒロインの中にいる主人公の事も知っている。
このあたりは完全に説明されているシーンがほとんどなく、
考察するしかない。
主人公が「過去」の博士の中に意識だけ飛ばしたのかなんなのか、
もう一人の自分と言っているのも本当によくわからず、
原作ゲームをやっていればスッキリとする部分があるのかもしれなが、
映画単体としてはストーリーとして死んでいる。
ロボットアニメとしても死んでいる
敵はテロを企てており、戦争にも原因にもなっている
星のエネルギーを大爆発させようとしている。
この作品、一応ロボットアニメなのだが、
ロボットアニメとしての面白さは一切ない。
序盤、デブリの落下位置をずらすためにロボットで出ていって
ワイヤーでデブリを引っ張る。
これで前半のロボットによるアクションシーンは終わりだ。
そして終盤、もう1度ロボットによるアクションシーンがある。
敵のロボットのバトルも申し訳程度にあるのだが、
遠距離武器を適当にうったり、アップばかりで、まるで面白くない。
ロボットの魅せ方、動かし方というものを知らないのか、
ロボットアニメとしての面白さがまるでない。
そういった戦闘シーンを描けないからこそ
やってることはただの「綱引き」だ。
序盤のデブリも、デブリとロボットによるワイヤーを使った綱引きであり、
終盤の戦闘は「星のエネルギー」が集まってる場所に爆弾をぶちこもうとする
敵にワイヤーをくっつけてヒロインが操るロボットが引っ張る。
ただただそれだけである。
終盤の戦闘シーンの途中で敵が改心し、別の敵が機体をのっとり、
ヒロインの機体をバラバラにし、敵の機体とともに
星のエネルギーが集まってる場所に落下してしまう。
そこから主人公の意識が改心した敵の中に飛び、
リアライズのエネルギーを使ってヒロインの機体を引っ張り上げる。
また綱引きだ。
せっかく素晴らしいデザインのロボットなのに
ろくに戦闘せずに綱引きしかやっていない。本当につまらない。
映画として死んでいる
1つ1つの要素が一切噛み合っておらず、盛り上がりどころも生まれない。
理由はよくわからないが自分に自信がなく、自分と他人を
信じられなかった主人公が他人を信じるようになる。
そんな成長物語にしようとしているのはわかるが、
そもそも地球人の主人公にとって巡星の出来事は全く無関係な出来事だ。
遠く離れた惑星でその惑星が爆発しようがしまいが、
地球人の主人公にとってはどうでもいい。
なぜ主人公がヒロインのリアライズの相手として
いきなり召喚されたのか、そのあたりの理由も曖昧でしか無く、
無関係な宇宙人に意識だけ持ってかれてはた迷惑な話でしかない。
主人公がやってたことといえばヒロインと同じことをするという
意識を強く持つこと、ヒロインが寝てる間にヒロインの幼馴染が
実はテロリストだった!という重要な話を聞いたこと。
あとはなんかめっちゃ歌ってた。それくらいである。
エンドロール後のシーンで主人公が「リアライズ」を行い
過去の博士に何らかの干渉をしたのはわかるのだが、
その何等かがはっきりとしないため釈然とせず、
映画が終わった後に「つまらん」と思わず声が出てしまうほど
映画として死んでいる作品だった。
総評:全てがChaO以下の何もかも死んでいる映画
全体的に見てとんでもない作品だ。
興行収入が同規模ということでアズワンのタイトルもSNSでは
チラチラと上がっていたが、そんなChaOと比較するのもおこがましくなるほど、
映画としてのクォリティになっていない。
映像面ではテキスチャで誤魔化した作画枚数の少なさを誤魔化しきれておらず、
死んでいる表情の作画、CGの利点を一切感じないロボットによる
綱引きバトルの数々、アニメーションのつまらなさは劇場で見て後悔するレベルだ。
YouTubeの無料配信でようやく及第点くらいの映像のクォリティしかない。
ストーリーも映画だけでは明かされていない、すっきりとしない、
わかりにくい部分も多く、結局なんだったの?となる部分も多く、
そもそも地球人の主人公にとっては全く無関係な
遠い惑星のゴタゴタに意識だけ巻き込まれた話を見せられる。
キャラクターにも魅力がなく、せっかくの貞本さんによる
キャラデザを活かしきれていない。
そもそも主人公の台詞も少なく、行動と呼べるものも少ない。
芸能人声優を使うにはうってつけの主人公だったのかもしれない。
主人公を演ずるアイドルだか歌手だかよくわからない人のファンは
満足できるかもしれないが、ファン以外が楽しむことは非常に厳しい。
原作のゲームをやっていればもう少し印象も違ったのかもしれないが、
それを踏まえても原作が芸能人声優の歌の出汁にされてる感は否めない。
そもそもの企画段階から死んでいる作品であり、
予算的にも厳しかったのかもしれないが、
これほど劇場で見て後悔した作品は久しぶりだ。
これ以下の作品が現れないことを願って
2025年アニメ映画ワースト1位としておく。
個人的な感想:ひどい
何もかもひどい作品だった。ChaOと比べるのには
ChaOに失礼だ。
同時期に公開で、同じように興行収入が伸びてないことで
話題に上がることがあるのだが、それくらいしか話題にならない。
本当に作品として死んでいる。
これほどまでひどい作品はなかなか拝めないが、
せめて今年はこれ以下の作品が出てこないことを願いたい。