たまこラブストーリー

評価/★★★★☆(71点)

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王道で、オーソドックスで、ベタで、ストレートな恋愛アニメ映画。だが、それがいい。

本作品は「たまこまーけっと」の劇場アニメ作品。
総集編ではなく、完璧なる続編ストーリーだ。
「たまこまーけっと」という作品は良くも悪くも喋る鳥がいる日常アニメであり、賛否両論の作品だ。
しかし、この作品はそんな「たまこまーけっと」という作品の印象を
ガラリと変えてしまうほど「青春映画」になっている。

基本的なストーリーはテレビアニメからの続き。
餅屋の娘のたま子と幼なじみのもち蔵。
二人は幼いことから共に過ごし、共に成長し、共に変わらない日常を送っていた
だが「高校3年生」になった二人には変化が訪れようとしていた。
「もち蔵」は自分の進学を決め、ある決意をする・・・というところからストーリーが始まる。

本編が始まる前に「デラ」が主役の短編作品が放映される。
相変わらずのデラと南の島の王子とチョイの3人の日常は
「たまこまーけっと」ってこういう作品だったな~とひしひしと思い出すような作品だ。
しかしながら、そんな感傷を本編は素晴らしいまでに裏切ってくれた。
先に行っておくが本編にデラは一瞬しか出ない(笑)
そう、この作品は「たまこまーけっと」であって「たまこまーけっと」ではない。
喋る鳥が居る日常アニメではなく、真っ直ぐな「青春アニメ」だ。

本編が始まって早々「もち蔵」の過去回想から始まる。
たま子と過ごした子供時代からの日々を思い起こす。
それはもち蔵がたま子への恋心を自覚するシーンだったり、彼女に見惚れるシーンだったり、
何気ない二人の過去回想が「もち蔵」視点で描かれることで、
この作品を見たことがない人でも「この男子はこの女子が好きなんだな」と分かりやすい。

そしてOPに入る、OPはお馴染みの「あの曲」だ(笑)
OPと共にキャラクターの名前と絵が出ることで簡単なキャラクター紹介が行われる。
冒頭から非常に丁寧で、もし「たまこまーけっと」という作品を見たことがなくても
すんなりとこの作品の世界観に一気に引き込まれるのは素晴らしい流れだ。

序盤から中盤までのストーリーは「もち蔵」が主人公と言っても過言ではない。
自分が進学を決め、いつもの変わらない日常から変わってしまう事を自覚した彼は
長年自分の中に溜め込んでいた「幼なじみへの気持ち」を伝えようと決意する。
だが、彼の心はまるでシャーペンのごとく折れやすい(笑)
決意したはいいものの、たま子の無邪気な態度やおしゃべりで幾度も告白のタイミングを逃し、
いつもの日常の中でたま子を目で追いかける。

恋愛の経験をしたことのある人、告白しようと思った人ならば彼の気持ちが痛いほど伝わるはずだ
彼がたま子にぶつける視線や、幼なじみというこれまでの日常があったからこそ
それを壊しかねない自分の告白の「怖さ」。
幼なじみという立場だからこそ難しい、幼なじみという立場だからこそ言い出しにくい。
彼の気持ちが痛いほど画面から伝わってくる。
表情の些細な変化とそこから感じられる分かりやすい彼の態度、
何もかもがストレートに見ている側に伝わってくる

本来こういった微妙な幼なじみとの距離感や恋心だけのストーリーは
演出1つ間違えばグダグダになってしまうだろう。
しかし流石「京都アニメーション」と言いたくなるほど
表情の変化や心情にあった音楽、描き込まれた背景が作品の「雰囲気」をしっかりと作り、
余計な要素を入れずにストレートな恋心を見ている側にストレートに突きつける。

そんな彼の告白。
たま子と二人きりで、たま子との思い出のある場所で
彼は彼女の手を強く握り、思いをぶつける。
なんて青いんだ、なんて真っ直ぐなんだ、なんて王道なんだ。
そんな言葉が一気に頭の中を駆け巡るほど彼の告白は突き刺さるほどにまっすぐだ。

そして中盤からは「たま子」の物語になる。
彼女は「変わらない日常」が「変わらない」と思っていた
高校を卒業をしても、もち屋の娘でもち屋をつぎ、友達ともいつもの街で会える
もちろん「もち蔵」もいつものように幼なじみとしていてくれる。
彼女は「変わらない日常」を望んでいた。
だからこそ「もち蔵」の告白は彼女にとって青天の霹靂だった

正直に言おう私は初めて「たま子」を可愛いと思った(笑)
TVシリーズでは全く感じなかった彼女の素直で天然で純粋なヒロインというキャラクター性が
映画になってはじめて、「もち蔵」に告白されて初めて魅力が溢れだしたようだ
もち蔵に告白された後の彼女の反応はすさまじい

川に落ちてすぶ濡れになるわ、謎の口調になるわ、もち蔵から逃げ出すわと
彼女が「もち蔵の告白」を受け止めきれず混乱している心理状態が痛いほど画面から伝わってくる
走り抜けるいつもの商店街の景色がガラリと変わって見える演出、
少し落ち着いた後での「もち蔵に掴まれた腕の感触」や言われた言葉を思い出し
受け止めきれない彼女の反応の数々は本当に可愛らしく、
彼女の気持ちがストレートに見ている側に伝わってくる。

簡単には受け止めきれない、簡単には返事することも出来ない。
彼女の混乱は謎の「もちスランプ」まで出てしまい、彼女の変わらなかった日常が一変する。
あれだけ好きだったモチは「もち蔵」を思い出してしまう、
いつもの商店街でさえ「もち蔵」といつすれ違ってしまうかもわからない。
いつもの学校でさえ彼が隣の席に居るため落ち着かない。

告白した少年と告白された少女のなんともいえない「距離感」の演出と繊細な心理描写が素晴らしく
丁寧に丁寧に積み重ねるようなストーリー構成が「青春」という要素を強く感じさせる内容だ
徐々に、徐々に、本当に少しずつ「もち蔵」の告白を受け入れていく「たま子」の様子、
そんな「たま子」の気持ちがわからず避けられているように感じてしまう「もち蔵」の気持ち、
どれもこれも「キャラクターの感情」が見ている側にがつん!と伝わってくる

この二人はこれからどうなるんだ、この二人の恋の行方はどうなるんだ
もちろん結末は見ている最中に予想できる「ハッピーエンド」なのだろうと。
だが、わかっていても気になる。素晴らしいストーリー構成だ。

そして、たま子の返事、このシーンは本当に良かった・・・。
思わず何の脈絡もなくそう言ってしまうほど「青春アニメ映画」として最大の盛り上がりだ。
東京へ電車で向かう「もち蔵」を追いかけて駅まで走るたま子の泣きそうな表情、
駅の階段を駆け上がり、もち蔵を見つけ叫び、投げる二人の「糸電話」。
なんて王道なんだ、なんてオーソドックスなんだ、なんてベタなんだ。

80年代や90年代のドラマで散々やったような別れと告白のシュチエーションだ
古臭い、だが古臭いからこそいい。
この作品のストーリーは王道でストレートでベタでオーソドックスな青春恋愛ストーリーだ
だが、だからこそいい。

たま子の絞りだすような「告白」は画面の暗転とともに劇場に響き渡り、
映画は終りを迎える。
エピローグはない、ないからこそ素晴らしい余韻を残してくれたといえるだろう。
(見逃しやすいと思うのであえて書くが、暗転の後のシーンは目を離さずにみてほしい)

全体的に見て素晴らしい青春恋愛アニメ映画だったと言わざる得ない。
内容自体は王道かつ、ベタでストレートでオーソドックスな内容だ。
オチも予想できる分かりやすいストーリーではある。
だが、そこに丁寧な「キャラクターの心理描写」と
京都アニメーション特有の作品の雰囲気作りのお陰でストレートなストーリーが突き刺さる。

丁寧にキャラクターの心理描写を積み重ねたストーリーは徐々に徐々に盛り上がり、
最後のシーンで最大の盛り上がりを見せ映画を綺麗に締める。
見終わった後に気持ちのいい「余韻」を残してくれる作品だ。

欠点を言うならばいい意味でも悪い意味でも「単純」なストーリーということだろう。
分かりやすい恋愛要素、分かりやすい恋愛ストーリー、分かりやすい心理描写。
単純すぎるほど「たま子ともち蔵」の二人の青春劇を描いているため
良い意味でも悪い意味でも「単純で普通な恋愛映画」だ。
喋る鳥が出るわけでもキャラクターが中二病を患ってるわけでもない。
普通の高校生の幼なじみの普通の恋愛ストーリーは普通過ぎてつまらないと感じる人もいるかもしれない。

繊細な心理描写や表情の変化など丁寧に描いているだけに「テンポ」が気になる方もいるだろう。
グダグダにこそなってないものの、風景や何気ない日常描写を映すようなシーンも多いため
それを退屈ととらえてしまう方も居るだろう。

だが私はあえて言いたい。
アニメでここまでオーソドックスでストレートで王道でベタな青春恋愛アニメがいくつあるだろうか。
過去に戻れる能力があるわけでもない、図書館で顔も知らない人物に思いを馳せるわけでもない、
好きな人がロボットなわけでもない、彼女が兵器なわけでもない。

あくまでも普通の高校生二人の古臭く実写でやり尽くしたような内容を敢えて
「アニメ映画」として丁寧に作りこみ、起承転結のスッキリした作品を作り上げてくれた。
王道でいいじゃないか、ベタでもいいじゃないか、ストレートでいいじゃないか。
そういった製作陣の声が聞こえてくるかのような真っ直ぐな作品だった。

ただもう1つ欠点を言うなら「TVアニメは何だったのか」と言わざる得ない(苦笑)
喋る鳥がいる日常アニメだったが、喋る鳥は特に二人に絡まず映画は終わっており
喋り鳥とはなんだったのか、異国の王子とは何だったのかと思ってしまう部分はある。
あれ?TVアニメいらなかったんじゃ・・・と思うほど
この映画の中に全てが詰まってしまっている。

TVアニメを見ていないとわからない部分は「喋る鳥」の存在くらいで他は問題ない。
それほど1つの作品としての完成度が高いとも言えるが、
本当にTVアニメ「たまこまーけっと」とはなんだったのか(笑)

個人的にはサブキャラクターも光っていた作品だった。
たま子を支える友人たちの「女子特有の作戦行動」だったり、
かんなちゃんの予想しにくい行動や言動だったり、みどりの「恋心」だったり。
サブキャラクターたちはあくまでサブキャラクターという立ち位置ではあるものの、
二人の物語を物語をしっかりと支える要因になっていた。

超個人的には「あんこ」の制服姿が可愛かった、
彼女が好きな紳士諸君はぜひ劇場へ赴くべきだろう。
彼女だけなぜか無駄に多いサービスシーン=京都アニメーションの素晴らしい良心を
スクリーン一杯に味わうことが出来るはずだ(笑)

ここまできっちりと「青春アニメ映画」をストレートにつくり上げるとは予想もしていなかった。
「所詮、たまこまーけっとだろ?」とすっかりヤサグれて邪推な気持ちで見始めた私の
予想をはるかに超える素晴らしい作品だった。