思い出のマーニー

評価/★☆☆☆☆(11点)

思い出のマーニー 評価

103分
監督/米林宏昌
声優/高月彩良,有村架純,松嶋菜々子,寺島進,根岸季衣ほか

あらすじ

養親から無気力と言われ、友達もおらず、心を閉ざした少女アンナ。喘息を患い養親から離れ療養のため海辺の町で過ごすことになるが、アンナはそこで「これこそずっと自分が探していたものだ」と直感的に感じる古い屋敷を見つける。

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綺麗な絵を見たいんじゃない、アニメを見たいんだ

本作品は借りぐらしのアリエッティの「米林宏昌」監督による映画作品
ジブリのプロデューサーいわく「スタジオジブリの次代を担うことになる最初の作品になる」
らしい。

監督は「もう一度、子どものためのスタジオジブリ作品を作りたい。
この映画を観に来てくれる「杏奈」や「マーニー」の横に座り、
そっと寄りそうような映画を、僕は作りたいと思っています」
と述べている。
映画を見終わった直後の感想としては「どこが?」の一言だが(苦笑)

基本的なストーリーは日常。
中学1年生の「アンナ」は喘息を患っていた、義理の母との関係も上手くいかず
彼女は療養のために夏休みの間だけ親戚の家に預けられることになる
田舎のんびりした空気の中、彼女は「古い屋敷」を見つける
誰も住んでいないその場所で彼女は「マーニー」という少女と出会う・・・
というところからストーリーは始まる

見だして感じるのはジブリの作画能力の高さだろう。
冒頭で公園で遊ぶ子どもたちが描写されるのだが、
ジブリの潤沢な予算とスケジュールを感じさせる子供達の動きと人数の多さには圧巻される
恐らく他のアニメ制作会社ならば止め絵でごまかすであろうシーンを
余すこと無く描いているのは流石ジブリという印象を受ける

だが、それが別に面白いわけではない。
ジブリというよりも「宮﨑駿」監督を彷彿とさせる「車」で
田舎のガタガタ道を走るシーンなど宮﨑駿監督を彷彿とさせるだけで
動きや演出が尽くつまらない。
ガタガタ道を走って車の中のダンボールからかぼちゃが飛び出す。
言葉にすると面白そうであり、宮﨑駿監督なら面白く仕上げるのだろうが、
この監督は酷くつまらないシーンに仕上げてしまっている

更に陰鬱ささえ感じさせる「暗さ」だろう。
借りぐらしのアリエッティの時も独特の暗さを感じさせたが、
この作品の暗さは群を抜いている。特にヒロインの暗さは尋常じゃない。

彼女は喘息という持病と家庭環境から酷くひねくれている。
だが、そのひねくれている心理描写の表現があまりにも回りくどい
冒頭で彼女は

「この世には目に見えない魔法の輪がある。輪には内側と外側があって、
私は外側の人間。でもそんなのはどうでもいいの。私は、私が嫌い」

と最初のセリフで嘆く、ちなみに彼女は中学1年だ(苦笑)
ライトノベルの中二的な主人公がこのセリフをこぼすならまだ納得できるが
この第一声で彼女に感情移入するのは不可能に近く、
その感情移入するのが難しいヒロインの心理描写を「永遠」と見せられるのがこの作品だ。

舞台が田舎に移り変わると退屈なシーンが永遠と続く。
丁寧といえば聞こえがいいが冗長でグダグダなシーンを「田舎」という背景の描写を
繊細にすることでごまかしている。
確かに田舎の背景の描写は凄い、他のアニメ制作会社ならば真似できないような
描き込み具合は流石ジブリと言いたいところなのだが、ただ綺麗なだけなのだ。
表面的な美しさはあるものの、そこからシーンの「圧」をまったくもって感じない

もっと幻想的な演出を効かせてもいい、もっと大胆な演出にしてもいいと
感じるシーンの数々がどれも「地味」な演出で終わってしまい、
綺麗な絵だけを淡々と見せられているような気分になってしまう。
もっと簡単に言うと「アニメーション」としてつまらない
綺麗な絵の使い方が悪いせいで動きとしてのアニメーションが尽く地味になってしまっている

始まってから30分~40分は感情移入できないヒロインの退屈な心理描写と
田舎を風景をただ見せられているだけだ。
退屈なだけならまだ我慢できるが話が進めば進むほどヒロインの性格の悪さが際立つ
性格がひねくれている理由自体は納得できるものの
その理由だけではあの性格の悪さを飲み込みきれない

見ている側がいい加減、話を進めろと感じてしばらくして、
ようやく「マーニー」がヒロインの目の前に唐突に現れるが
いきなり現れたマーニーに対して露骨に顔を赤らめたりする描写には違和感しか感じない
オタクならば頭のなかで「キマシタワー」と叫ぶかもしれないが、
ヒロインのマーニーに対する反応がいまいち理解できない

更に視聴者を置いてけぼりで勝手に盛り上がる登場人物たち。
登場人物たちはいかにもなセリフを言って、それをBGMが後押しするのだが
そもそも、そのセリフが突拍子もないセリフばかりで意味が理解できない
登場人物たちは勝手に盛り上がっているのだが、
なぜ盛り上がっているのかが見ている側にいまいち伝わっていない

マーニーが唐突に現れてヒロインと急激に仲良くなったかと思えば
互いに自己紹介したかと思えば、マーニーが唐突に消えたり、ヒロインが消えたり、
そうかと思えば謎のパーティーに参加したりと展開が唐突すぎる
唐突な展開がたまに訪れるならまだついていけるのだが、この作品はすべての展開が唐突だ
それまでの流れや空気感を無視して展開をどんどんと切り替えていくため
その展開についていけないうえに「ヒロイン」の性格も急激に変わる。

ヒロインは序盤から中盤までは暗すぎるひねくれた女の子だ。
だが、マーニーに会った途端、急にいい子になる。
なぜいい子になったのか、なぜあそこまで変化したのか
マーニーと会話しただけでヒロインの性格がどんどんと変わっていくのだが、
その変化に見ている此方側は納得出来ない。

その会話自体も大したことがなさすぎる。
互いの自己紹介をしてパーティーに強制参加させられたぐらいだ
明るくなるキッカケがどこにもない。
マーニーに出会っただけで明るくなるならば、マーニーはセラピストとして相当に優秀だ
ヒロインが二重人格でしたと言われたほうがマダ納得できるような急な変化だ

そして道端で寝過ぎなアンナ。
彼女は「喘息持ち」で田舎に療養に着ている女の子だ
それなのに夜に出歩いても、なかなか帰ってこなくても親戚の夫婦は一切心配しない
映画の中でアンナを心配する描写は全くない、ものすごい違和感だ。
年頃の女の子が遅くなって帰ってこなくとも、
喘息持ちで大雨が降っていて帰ってこなくても親戚夫婦は探さないし心配もしない(苦笑)
せめて1度位は帰ってこないアンナを探すような描写がほしいと感じるほどだ

終盤は「マーニー」の秘密に迫るストーリーになっていく。
アンナの性格はマーニーセラピーで一気に改善したため、あとはマーニー問題だけだ
屋敷に住んでいるはずのマーニーだが、屋敷に普通に行っても会えない
会えないどころかその屋敷には新しい住人が引っ越してきている
そんな中で「マーニーは空想の中の女の子だったのか?」とアンナは思い始める。

この終盤になってようやく物語が面白くなってきたという感覚だ。
ただ、その感覚は全く持続しない。ほんの一瞬だ。
唐突にマーニーセラピーで治ったはずの性格の悪さが再発してしまうせいもあるのだろう
アンナの感情の変化にまったくもってついていけない

アンナは自分がひねくれている原因をマーニーに話すのだが、
それがもう「?」となるような事ばかりだ。

「自分の両親が勝手に死んだ事を許せない(両親は事故)」
「自分の義両親がお金をもらっていることが許せない(市の手当)」

と、この2つが彼女の中でひねくれた大きな要因になっているらしいが、
この2つは仕方ないことじゃないだろうか(苦笑)
両親が死んでしまった事を恨むのはまだ納得できなくもないが、
お金をもらっている事に関しては一切納得出来ない。

これが両親の遺産を義両親がもらったとかならまだ理解できなくもないが、
子供を育てるための「手当」にいちいちムカつかれても仕方ないだろう
アンナ的には手当を貰っていることを黙っていることが本当はムカついているらしいが、
自分の子供に「あ、子ども手当もらったよ。」とか言うだろうか(苦笑)

そして唐突な百合発言。
「今までに出会った女の子の中で1番好き」「愛してる」などとアンナに
対して百合発言をかますマーニー。
なぜ、そこまで好きになったのかも理解できないうえに
そんな壮大な百合発言が必要な感じのシーンでもない。
友情ではなく、愛情をどんどんと互いにぶつける2人に全然ついていけない。

更に極めつけはマーニーにまでブチ切れるアンナ。
ただ、物凄いブチ切れて「絶対に許さない」と息巻いた割には
マーニーに「許して」と言われたらあっさりと許す始末。
情緒不安定過ぎて、感情の変化、心理描写の流れに見ている側が常に置いてけぼりだ。

結局、マーニーの正体は終盤になって現れたおばさんが全て説明してくれて
ヒロインがストーリーを進めていっている感覚がない。
マーニーの真実に関しても大人ならばだいたい想像がついていた事実で何の意外性もなく、
そこまでの流れがもっときちんとしていれば感動できたかもしれないが
登場人物の感情の変化に振り回され、ついていけない展開の数々で疲弊した心には
何も響くものはなかった

全体的に見てどこが「子どものためのスタジオジブリ作品」だろうか(苦笑)
少なくとも子供が見てもキャラクターの唐突な感情の変化にはついていけないだろう
なにせ大人でもついていけないのだから。
ストーリーに関しても回りくどい展開や分かりづらい描写があまりにも多く、
大人でも頭のなかでストーリーを整理するのが大変なのに子供に理解できるとは到底思えない。

派手なシーン、アニメーションとして面白いシーンはほとんど無く
ただ綺麗な絵を見せられているだけだ。
はっきり言って「ジブリの作画能力」の無駄遣いをこれほどまでに感じた作品はない
前作のアリエッティはまだ小人の描写が面白かったが、この作品での描写はただ綺麗なだけだ。
私が見たいのは「アニメーション」であって「絵」ではない。

更に映画のラストでも萎えさせる。
マーニーの正体に関しては終盤になって現れたおばさんが
アンナにも説明してくれたシーンのおかげで「理解」できる。
見ている側もなるほどねーと感じるはずだ、そしてその話を聞いたアンナも
当然のごとく「マーニーの正体」に気づいたのだと感じた。

事実、マーニーの正体をおばさんが説明した後に
アンナは急激にいい子になりすぎて、義母の関係も急激に良くなったため
マーニーの正体に気づいたからこそ「いい子」になったのだと見ている側も納得しかけていた
だが、アンナは気づいていなかった(苦笑)

見ている側は「おばさん」の説明で全てを理解しているのに、
それからしばらくしてアンナが今更のごとく「え!?マーニーの正体そうだったの?!」と
衝撃を受けて気づく。
この終盤の時点で私はこの作品全体の「大きな溝」を感じた
監督と見ている側でキャラクターの心理描写、考えていることに感じる大きすぎる溝がある。
見ている側は理解していないことを監督は理解していると思い込んでおり、
見ている側が理解していることを監督は理解していないと思い込んでいる。
大きな、大きなズレが生じてしまっている。

そもそもストーリー的には1時間、へたしたら45分でまとめられる内容だ。
それを強引に回りくどい表現や田舎描写、余計なシーンや冗長なシーンで
尺のかさ増しをしているせいで
余計にキャラクターの心理描写についていけなくなってしまっている
繊細で丁寧な描写といえば聞こえはいいが、繊細で丁寧な描写が尽く裏目に出ている作品だ

「借りぐらしのアリエッティ」のときからこの監督は何も成長していない。
むしろ酷くなっていると感じるほど映画としての完成度が低い。
アリエッティもキャラクターの言動や心理描写についていけなかったが、
面白いと感じる部分は多かった。
だが、この作品は「面白い」と感じる部分が殆ど無い。

少なくとも「子供」が楽しめる作品ではない。
退屈なシーンの連続や、情緒不安定なヒロインの心理描写は
子供には何も伝わらないだろう。
私が行った映画館ではお子様が中盤で「つまんないー」と嘆いていた。
アンナよりもお子様のほうに強い感情移入をシてしまったのは言うまでもない(笑)

「米林宏昌」監督は一度ジブリを離れたほうがいいのではないだろうか?
どうにもジブリの作画能力に頼りすぎている部分が大きく、映画を作る腕もないように感じる。
短編のOVAや逆に50話くらいに長編のアニメだったら才能を感じられるかもしれないが
少なくとも2時間ほどの映画作品に向いている監督ではないのだなというのが
本作品で強く実感してしまった。

来年以降のジブリ作品がどうなるかわからないが、
ジブリの先行きは今のところ暗そうだ・・・