「クレヨンしんちゃん 激突! ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」レビュー

4.0
映画
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評価 ★★★★☆(70点) 全103分

あらすじ 地上の人々の落書きをエネルギーとして空に浮かぶ「ラクガキングダム」は、落書きをする人達の減少に伴うエネルギー不足により存亡の危機に立たされていた。引用- Wikipedia

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原点回帰

本作品はクレヨンしんちゃんとしては28作品目となる作品。
監督は京極尚彦、制作はシンエイ動画

らくガキ


画像引用元:『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』予告より
(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2020

クレヨンしんちゃん映画は「クレイアニメ」によるOPがおなじみだが、
今作はクレイアニメのOPではなく、
冒頭、「野原しんのすけ」よりも先にマサオくんが出てくる。
彼がVR空間上でらくがきをしているところから映画が始まる。

今作の敵の目的はわかりやすい。
彼らは「子供の落書き」を必要としており、
子供に落書きをさせるために大人を黙らせ、
無理矢理にでも子供に落書きさせようとしている。

「落書き」という子供だからこその自由な絵、
子供時代に誰しも1つはどこかに書いている落書き、
この作品は子供にとって馴染み深い「落書き」をテーマにしている。

そんな敵の目的を止めるために
「子供らしい自由な落書き」をする選ばれし勇者がいる。
もちろん、我らが「野原しんのすけ」だ。

定番


画像引用元:『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』予告より
(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2020

序盤描かれるのは「いつもの日常」だ。
朝起きて、しんのすけが騒ぐ中で色々なことが巻きおこり、
いつものように幼稚園に遅れる。

そんな「いつもの野原しんのすけの日常」が描かれ、
しんのすけのあこがれのマドンナである
「ななこお姉さん」と日曜日のお食事を約束し、楽しみにする。
「しのぶ」など細かいサブキャラも出るのも、
クレヨンしんちゃんファンにはたまらないポイントだ。

TVシリーズでもお馴染みの「日常」、しかし、そんな日常を非日常が襲う。
「らくがキングダム」の兵士は子供に落書きさせるために、
落書きのエネルギーを得るために彼らは大人をらくがきにし、
子供を誘拐している。

そんな大変なことが起きているのにも関わらず、
「しんのすけ」はのんきの極みだ(笑)
怪しいおじさんとおいかけっこし、お尻丸出しになる。
クレヨンしんちゃん映画の初期のようなノリがこの作品にはあり、
まさに原点回帰だ。

愛するななこお姉さんを助けるために、野原しんのすけは立ち上がる。
しんのすけがどんな落書きを書いて敵に挑むのか。
わかりやすくシンプルなストーリーにワクワクさせられる。

日常から非日常への変化がゆっくりと描かれることで、
子供も大人にもわかりやすい舞台とストーリーの始まりが
丁寧に描かれている。

敵キャラ


画像引用元:『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』予告より
(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2020

クレヨンしんちゃん映画といえば印象に残る敵キャラだ。
ハイグレ大魔王、雲谷斎、マカオとジョマetc…
彼らが特徴的だからこそ、それに相対する「しんのすけ」が際立っていた。
だが、最近のクレヨンしんちゃん映画は魅力的な敵キャラが少なかった。

しかし、今作は違う。見た瞬間に強烈な印象の残る敵キャラだ。
「性別不詳」なりんごちゃんをゲストに招いたキャラクター、
ムキムキで股間くらいしか隠してないキャラもいたりする(笑)

どストレートなオカマキャラでないことは残念ではあるものの、
色々と厳しい昨今の世情を最大限に考慮しつつ、
「性別不詳なゲストキャラ」をクレヨンしんちゃん映画に出すことで
クレヨンしんちゃん映画らしさを感じさせてくれる。

彼らとしんのすけがどんな戦いを繰り広げるのか。期待感が募る。

落書き


画像引用元:『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』予告より
(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2020

しんのすけが託されたのは描いたものが現実になるクレヨンだ。
ブリーフを描けば博識な二日目のブリーフが生まれ、
ななこお姉さんを描けば、まるで「ダッチワイフ」のような
ななこお姉さんが現れる(笑)

「しんのすけ」はきちんと5歳児らしい行動と台詞をしており、
妙に大人びた行動や台詞を言うわけではない。
だからこそ、博識なブリーフやななこお姉さんに彼をサポートさせることで
目的のための行動を後押ししている。

「野原しんのすけ」がいつものノリのままだからこそ
バカバカしいギャグも生まれており、
「お腹が空いた」という表情だけで笑えてしまう。

子供が描く自由な落書きという発想、
そんな自由な落書きが現実のものになり、
仲間となり敵と戦ってくれる。
子供の目線に立ち、子供の夢が詰まっている作品だ。

救いのヒーロー


画像引用元:『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』予告より
(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2020

二日目のブリーフと、ななこおねえさんだけが彼を助けてくれるわけではない。
しんのすけにとってのヒーロー、
それはアクション仮面であり、カンタムロボであり、
自らが作り出した「ぶりぶりざえもん」だ。
映画としては約20年ぶりに彼が「声付き」でしんのすけの前に現れる。

長年、クレヨンしんちゃんを見続けてきた者にとって
ぶりぶりざえもんは愛着のあるキャラの一人だ。
前声優である塩沢兼人さんがなくなり、
彼に敬意を評し、アニメスタッフはあえてぶりぶりざえもんの
声を出させないようにしていた。

だが、時は流れた。「よしなが先生」も、「園長先生」も
「ひろし」の声も「しんのすけ」の声も変わった。
クレヨンしんちゃんという作品自体が変化を求められ、
色々なものが変わった。だからこそ、
ぶりぶりざえもんを声付きで出すという決断に至ったのだろう。

しんのすけが助けてほしいと思い、彼を描き、
いつものように頼りない彼が出てくると、
思わず少し涙腺を刺激されてしまう。
声は変わった、だが、あの姿と彼らしさは変わらない。
彼が声付きで再びスクリーンにかえってきた。

救いのヒーロー、ぶりぶりざえもん見参。

ぶりぶりざえもん以外にも懐かしいキャラが勢揃いだ。
総勢50人以上のクレヨンしんちゃんのキャラクターが出まくっており、
思わず「懐かしい」と声に出してしまうようなキャラが出てくるキャラもおり、
そういった意味で昔からのクレヨンしんちゃんファンに
向けた作品でもある。

かすかべ防衛隊ファイヤー!


画像引用元:『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』予告より
(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2020

子供の落書きで1番、多いのはおそらくは「うんこ」だ(笑)
終盤、しんのすけたちは大量のうんこを生み出すことで敵に立ち向かう。
そんならくがきに頼ってばかりではない、
いつものように「かすかべ防衛隊」も敵に立ち向かう。
時には「ひろし」の足の臭いが武器になり、シロは綿あめとなり戦う。

クレヨンしんちゃんとしては「定番」、ベタともいえる
戦闘方法の数々が安定の笑いと安心感を生んでいる。
いわゆる「お約束」だ。

1つ1つのアクションシーンは短いものの、
色々なキャラクターがしっかりと活躍する姿を見せることで
しっかりとした盛り上がりどころを生んでいる。

ぶりぶりざえもん


画像引用元:『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』予告より
(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2020

彼は何度も裏切ろうとする、いや、裏切る(笑)
彼は強いものの味方であり、金のために行動をする。
「ブリーフ」も「ななこお姉さん」も「ぶりぶりざえもん」も
しんのすけがらくがきとして生み出したものだ。

彼らはらくがきゆえに「水」に弱い。
水に濡れるということは彼らにとって「死」を意味する。
それでも彼らはしんのすけを守る。
たとえ自らの存在が消えても、しんのすけのために。

「ぶりぶりざえもん」も雨で消えてしまう。
彼は最後の最後まで「救いのヒーロー」だ。
へらずぐちをたたき、すぐにうらぎり、金に汚いぶりぶりざえもん。
だが、しんのすけが作り上げた救いのヒーローだ。

彼も誰かを救うために自らを犠牲にする。
そんな喪失を味わったからかこそ、
しんのすけは「決心」が見ている側にも伝わる。

「オラはもう、誰ともお別れしたくないぞ」

しんのすけは救う。かすかべも、らくがキングダムも。

戦わない


画像引用元:『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』予告より
(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2020

らくがキングダムは子供の落書きが減ったこととで力を失っており、
国を維持するために今回の行動にうって出ている。
だが、終盤はそれすらも叶わず国は力を失い崩壊の危機にある。
純粋な「悪いやつ」ではなく、敵にも敵の道理がある。

だからこそ戦わない。中盤までは争い合ってた敵と、戦わない道を選ぶ。
過去のクレヨンしんちゃん映画の敵とは違う。戦った末に
悪い敵を倒したり、敵が自らの目的を諦めさせるというわけでもない。
今だからこそ、この時代だからこその「戦わない」結末。

敵も味方も関係ない。らくがキングダムを救いたい、
カスカベを救いたい。そんな純粋な平和を願う気持ち。
みんなの落書きが、みんなの気持ちが1つになる。

しんのすけが、かすかべ防衛隊が、紅さそり隊が、
父ちゃんが、母ちゃんが、よしなが先生が、
売間久里代が、大工の棟梁が、ラクガキングダムの住民たちが。
みんなで力を合わせて描く「巨大なぶりぶりざえもん」

誰かを倒すためではない、悪いやつをやっつけるためではない。
みんなを守るためにみんなで協力するシーンは
思わず涙がこぼれてしまった。

ベタで、王道、だけどクレヨンしんちゃんらしい。
そんな面白さを見せてくれる作品だった。

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総評:優しい作品


画像引用元:『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』予告より
(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2020

全体的に原点回帰を強く感じさせる作品だ。
らくがきが重要な要素になり、しんのすけに与えられた能力で
事態を解決するストーリーはシンプルであり、
そんなシンプルなストーリーの中でクレヨンしんちゃんらしい
アクションシーンやギャグの数々を見せてくれる。

制作側の原点回帰の意識を強く感じる一方で、
「勧善懲悪」ではないという現代的なストーリーにもなっており、
しんのすけを批判する大人達の存在や、
戦いで解決するわけではないストーリー展開は
かなり現代的なストーリーになっている。

それが決して悪いわけじゃない。
終盤、しんのすけと子供たち、らくがキングダムの住民、
かすかべの住民たちが力を合わせるシーンは希望に溢れており、
「人を思いやる」という優しいストーリーに仕上がっている。

ただ序盤のロードムービー部分がやや冗長だったり、
中盤で出てくる「ユウマ」ももう少し掘り下げてほしかったり、
戦わない敵が多かったりと、細かい部分で気になるところはあるものの、
それでも久しぶりに「ベタ」なクレヨンしんちゃん映画を見れたという
満足感を感じられる作品だった。

個人的な感想:見事な原点回帰


画像引用元:『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』予告より
(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2020

オトナ帝国の逆襲以降、クレヨンしんちゃん映画は長い間、迷走していた。
感動、涙、家族愛、その要素に縛られすぎるあまり
色々と残念な作品も多く生まれてしまった。

それでもB級グルメでギャグとして振り切り、
ロボとーちゃんはオトナ帝国の逆襲と
肩を並べるほど素晴らしい作品だった。

そして今作は原点回帰だ。
ハイグレ大魔王の逆襲、電撃! ブタのヒヅメ大作戦、
あの頃のクレヨンしんちゃん映画らしさあふれる作品になっており、
それと同時に現代的なストーリーもきちんと描かれている。

無理に家族愛をおすわけでもない、感動要素を押し付けるわけでもない。
子供の目線を意識した「クレヨンしんちゃん」らしい
クレヨンしんちゃん映画だった。
今年のクレヨンしんちゃん映画も楽しみだ。

「」おもしろい?つまらない?


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