「バブル」レビュー

1.0
映画
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評価 ★☆☆☆☆(18点) 全100分

あらすじ 本作の舞台は世界に降り注いだ泡〈バブル〉で、重力が壊れた東京。ライフラインが断たれた東京は家族を失った一部の若者たちの遊び場となり、ビルからビルに駆け回るパルクールのチームバトルの戦場となっていた引用- Wikipedia

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青春SFアニメ映画ブームの死骸

本作品はオリジナルアニメ映画作品。
劇場公開自体は5月13日からだが、NetFlixにて独占先行配信されている。
監督は荒木哲郎、制作はWITSTUDIO

著名人

私には1つのジンクスが有る。
例えばアニメの宣伝をするときに「あの○○を手掛けた○○が送る」というような
宣伝文句が使われることがある。
有名な作品を手掛けた有名な監督や脚本家がこの映画を手掛けているという
宣伝文句として、コレ自体は問題ない上にわかりやすい。

しかし、たまにあるのがこれが多すぎる場合だ。
例えばドラえもんを手掛けた藤子不二雄と、新世紀エヴァンゲリオンを手掛けた庵野監督と、君の名はを手掛けた新海誠が手を組んで一緒に作品を
作れば果たして名作が生まれるのだろうか?

私は否だと思う。よっぽど有名な監督や脚本家同士の相性が良ければ問題ないものの、
それぞれの作品としての「個性」が違い、それが喧嘩をしてしまえば
いくら有名な監督が手掛けようが面白い作品は生まれない。

「船頭多くして船山に登る」

という言葉があるがまさにそれだ。この作品もそんな感じだ。
監督は進撃の巨人を手掛けた荒木哲郎、制作も進撃の巨人を手掛けていたWIT STUDIO。
おそらくここまでなら問題がなかった、ここからが問題だ。

プロデューサーは『君の名は。』『天気の子』などの川村元気、
脚本には『魔法少女まどか☆マギカ』などのヒット作を手がけた虚淵玄、
キャラデザには『DEATH NOTE』の小畑健。

船頭があまりにも多い(苦笑)
山に登るどころから宇宙まで飛んでいきそうな勢いである。

世界観

映画の冒頭から独特の世界観を感じさせてくれる。
東京の一部分がまるで「泡」のようなものに覆われており、
独特な色合いで世界を美しく彩ろっている。
そんな美しい世界の中にいる住人は「ヒャッハー」である(笑)

崩壊した東京、そんな崩壊した街だからこその
ポストアポカリプス的な世界での「ヒャッハー」で「オラオラ系」な
キャラクターが多いのは理解できるものの、
そんな街で彼らがやってるのは「パルクール」だ。

キャラクターを追いかけ回すようなカメラアングルで
スピーディーに展開する試合模様は迫力がある。
5VS5のチームレース、コースはいつ崩壊するかもわからない街。
一歩間違えば「蟻地獄」に飲み込まれる中で、若者は生活必需品を賭け
パルクールでバトルをしている。

そんな世界観の雰囲気、アニメーションとしてのクォリティは高い。
だが、それだけだ。
特にワクワクしないレース模様、魅力にかけるキャラクター。
特に「主人公」は本当に小畑健が手掛けたのか?と思うほどに
「無個性」の極みのようなキャラデザであり、外見的な魅力がまるでない。

そもそも「生活必需品」が限られている中で
わざわざパルクールレースをして生活必需品を賭けて
バトルをしている理由もまるでわからない。

どうしてこういう世界になったのかというのも
ナレーションベースで説明されるものの、
ナレーションベースで唐突に説明されるため、特に面白みもない。
いきなり謎の泡が降り積もり、東京が崩壊したという状況だ。
まるで総集編映画のようなナレーションベースの説明では
設定の面白さや魅力も伝わってこない。

芸能人声優

更に声優による演技がかなり厳しい。
いわゆる芸能人声優であり、声のハリがなく、
主人公はボソボソと言葉数少なく喋るキャラだからこそギリギリ耐えられるものの、
声量が足りておらず、音量をあげないと下手したら聞こえない。

志尊淳さんは2分の1の魔法でも声優をやられており、
そちらではそこまで違和感がなかったため、
こういう演技指導をした結果なのかもしれない。

だが、そんな擁護も何も出来ないのがヒロインだ。
主人公を演じているのは「志尊淳」さんであり、役者さんだ。
声の演技の経験は浅いかもしれないが最低限の演技はできている。
しかし、ヒロインを演じているのは「シンガーソングライター」である。
歌手である(苦笑)

ヒロインは破天荒というより野生児のようなキャラであり、
人としての最低限の常識を知らない。
熱いお湯には平気で指をツッコミ、食料は袋ごと食べようとする始末だ。
そんなヒロインだからこそ「人の言葉」すら理解できていない。

そんなヒロインのキャラデザには力が入っており、
止め絵での1カットのシーンはさすがは小畑健と感じるデザインの
魅力を感じさせてくれる。
そんな蠱惑的で不思議な魅力を感じさせるヒロイン、
普通の人間ではない、むしろ人間ではない事は見ているだけでわかる。

そんなヒロインの演技がひどすぎる。
シンガーソングライターが本職の方に演技を求めるのは酷ではあるものの、
「笑い声」だけで演技の酷さが伝わるほどの棒演技だ。
「えへへ」という声だけで演技力の無さをひしひしと感じてしまう。

序盤こそ人間の言葉も理解できておらず、
「ん?」や「えへへ」くらいの言葉しか発しないから問題はない。
しかし、中盤辺りからは人間の言葉を理解し、話だしてからが問題だ。
終盤で少し慣れはするものの色々と厳しい。

盛り上がらないな…

この作品はいわゆるボーイミーツガールだ。
そこに青春恋愛要素とSF的な要素を足している。

新海誠監督の「君の名は」が大ヒットしてから
この手の作品は雨後の筍のごとく大量に現れており、
私はその手の作品を
「青春SFアニメ映画ブームが生み出したフランケンシュタイン」と呼んでいるが、
この作品もまさにそれだ。

序盤こそ独特な世界観と雰囲気、パルクールアクションの映像美で
ごまかされるものの、まるでラピュタのごとく降ってきたヒロインと
主人公が出会ってからは淡々とつまらない日常描写が描かれており、
何の盛り上がりもない。

本来ならこの日常描写でキャラクター描写を深めるべきでは有るが、
特に深まることはない。
演技のせいも有るがろくに感情移入できない主人公とヒロインに
何の愛着もわかず、特にストーリーとしての面白さがあるわけでもない。

そもそも脚本をかいている「虚淵玄」氏は
まどかマギカなどいわゆる「鬱」な展開を得意とする脚本家だ。
そんな脚本家に君の名のような青春SFアニメ映画の脚本を
手掛けろというのが無理がある、お門違いだ。

中盤では主人公の仲間がさらわれて、
なにやら怪しげな装置を装備した敵とパルクールバトルを
繰り広げるが特に面白みはない。

確かに迫力のある動きはアニメーションとしての面白さは有るものの、
外見だけで中身が伴っていない。脚本が映像について言っていない。
わかりやすいのは予告でも流れている台詞だ。
誰かが誰かを助けるときに「いけぇぇ!」と同じような台詞を繰り返す。
いけぇぇ!以外に言えないのだろうか。

音楽自体はいいものの、
スクリーンで見ればこの映像でごまかせる部分はあるかもしれないが、
なまじNetflixで先行配信してしまっているせいで、
普通のご家庭に有るようなTVやモニターサイズではごまかしもきかず、

ふわふわ

なんとなくの青春恋愛要素、なんとなくのSF要素、
なんとなくのパルクールアクション。
この作品を構成している要素がまるで重力が崩壊した
この作品の東京のごとく「ふわふわ」している。

展開も唐突だ。特に終盤の展開は本当に唐突だ。
ヒロインが人間ではないなにかなのは分かるものの、
唐突に「バブル」が活発になり、ヒロインはバブルの中に吸い込まれる。
ヒロインを助けるために主人公たちはパルクールをしながら
ヒロインのもとへ向かう感じだ。

ふわふわとしたSF設定がストーリーの中に根付いておらず、
なんかよくわからないけど大変なことが起きている感がすごい。
重力が崩壊し、障害物が多く舞い散る中でのパルクールアクションは
本当に素晴らしいものの、無駄に回転したりしている動きが多く、
これが競技の中ならばともかく命を賭してる中でのアクションとは思えない。

アクションの構成自体も主人公が仲間を踏み台にしてジャンプするという
中盤でも見たようなアクションが多い。
結局「なんだったのか?」と思う要素も多い、
そもそもの東京に降り注いだ「バブル」もなんだったのかもわからずじまいだ。

世界系

人魚姫をモチーフにしていることは分かる。
ヒロインである「ウタ」は人魚姫で言えば人魚だ、
彼女が主人公を助け人間に憧れ、彼を王子のように思った。
それが「バブル」としては何らかの禁忌なのだろう。
だが、それがどうして禁忌なのか、そもそもバブルはなんなのか。

考察することはできる。
おそらくバブルは地球外生命体であり、ウタは端末のようなものなのだろう。
「涼宮ハルヒの憂鬱」でいえば長門有希みたいなものだ。
そんな彼女が人を知り、言葉を知り、恋を知った。

こういう感じの内容なのは察することはできるものの、
それが正解かどうかはわからない。
この作品の根本の設定の説明が本当に最低限しか無い。

90年代のエヴァ以降に流行ったSF考察アニメみたいな感じになっている。
この手のアニメはエヴァ以降にいわゆる世界系アニメ的なものが散々あったが、
どれもこれも結局、見せている部分のキャラクターや
ストーリーに魅力があってこその考察だ。この作品にはそれがない。

だからこそ最終的にヒロインが泡となっても
見ている側には何の感情も沸かない。
最後の「東京」の姿もどこか天気の子のラストと似ている部分があるが、
見せ方が大違いだ。

概念となった「ウタ」も魔法少女まどかマギカでやった展開であり、
このあたりは「虚淵玄」脚本らしいとも言えるのだが、
今更、同じようなものを見せられてもという感じしか残らない作品だ。

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総評:ジェネリック新海誠作品の成れ果て

全体的にみてこうなるべくしてこうなったというような感じの作品だ。
端々に参加している監督さんや脚本家、プロデューサーの
作品のテイストは感じるものの、それが見事に噛み合っていない。

進撃の巨人で培った空中アクションという名のパルクール、
魔法少女まどかマギカで描かれた鬱展開、
君の名はで作り上げられた青春アニメSF映画ブーム。見事にバラバラだ。

まるで90年代から00年代前半の世界系アニメのようなテイストを感じさせつつ、
そこに2016年以降の青春SFアニメ映画のような要素を加え、
そこに虚淵節を混ぜる。土台無理な話である。

作品としてやりたいことは分かるものの、結局出来上がったものは
アニメーションとしての出来栄えはいいが1本のアニメ映画としては
新海誠監督作品のジェネリックのような作品であり、
もう、ここ、3,4年で腐るほどみてきた内容だ。
もはや食い尽くされて骨しか残っていない青春SFアニメ映画の死骸でしかない。

やりたいことは分かる、しかし、それはもう使いつくされた要素でしか無い。
アニメーション自体のクォリティは素晴らしいうえに、
恐らくは世界観の設定ももっと練り込まれているのだろう。
だが、100分の尺ではそれを活かしきれておらず、
最低限でしか説明もされていない。

ヒロインの演技がもう少しマシならばキャラへの感情移入も
生まれたかもしれないが、色々と厳しく、
キャラクターの印象も、名前も、ストーリーもろくに記憶に残らない。
なんでこうなったというべきか、こうなるべくしてこうなったというべきか。

色々と「残念」としか言いようがない作品だった。

個人的な感想:結局

ここ20年くらいのブームになったアニメ詰め合わせセットのような作品だった。
エヴァ、涼宮ハルヒの憂鬱、君の名は、魔法少女まどかマギカ。
これがうまく噛み合えばとてつもない名作が生まれるかもしれない。
だが、結局は水と油だ。混ざり合うことはない。

いわゆる「質アニメ」だ。もはやこの言葉すら死語になりつつあるが、
この一言で全てが解決してしまうような作品だった

「バブル」は面白い?つまらない?

この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください

  1. カズマサ より:

    私もごらくぶろぐというアニメブログを運営していて、バブルのレビューを公開されたタイミングで書きました。笠希々さんのレビューに納得する部分が多かったのでコメントさせていただきました!さすが、ジェネリックは納得の表現ですね。

    3.0 rating