「君は彼方」レビュー

映画

評価 ★☆☆☆☆(12点) 全95分

あらすじ 幼なじみの新(あらた)のことが気になっている澪だったが、気持ちを伝えられずに微妙な関係を続けていた引用- Wikipedia

青春アニメ映画ブームが生み出してしまった怪物

本作品はアニメ映画オリジナル作品。
監督、脚本、原作、プロデュースのすべてを
瀬名快伸氏が受け持っている。
制作会社はデジタルネットワークアニメーション。

既視感


画像引用元:映画『君は彼方』予告より
(C)「君は彼方」製作委員会

映画が始まってそうそう、強烈な既視感に襲われる。
物語は主人公が見てる夢から始まる、子供の頃の幼馴染との記憶、
そして高校生になって行った「花火」の記憶。
思わず「打ち上げ花火」をどこから見るかという話になるんじゃないか?
と思わせるような描写だ。

この作品は冒頭のシーンもそうだが、常に「既視感」がつきまとう。
新海誠監督の映画を彷彿とさせるような背景描写の頑張り、
ペンギンハイウェイのようにペンギンが空を飛んでたり、
千と千尋の神隠しのように海の上でを走る電車のシーンがあったり。

どこかで見たようなシーンが非常に多く、
それが「オマージュ」や「リスペクト」とは決して言えず、
「パクリ」とも言えない。元ネタが分かるシーンが多いものの、
そのすべての描写が安っぽく、逆に笑えてきてしまうほどだ。

どちらかというと「引用している」という表現のほうが
正しい気もしてくるような既視感だらけのシーンの数々に笑うしか無い。
当然、キャラクターデザインにも個性なんてものはない。
無個性の塊のような主人公や他のキャラクターデザインも
「どこかでみたことのある」デザインだ。

背景はやたら気合が入っているものの、キャラクターの作画のレベルは
低く、2010年代前半かな?と思わせるような
少し懐かしささえ感じさせるキャラクターの作画とミスマッチであり、
はっきりいって浮いている。

これならば背景の作画ももう少し安っぽくてもいいのにと思うほど
見ていて背景とキャラがちぐはぐだ。

空の彼方?


画像引用元:映画『君は彼方』予告より
(C)「君は彼方」製作委員会

序盤は主人公と幼馴染である「新」の関係性が描写されるr。
二人は幼馴染であり、主人公は新に好意を寄せており、
新も彼女に好意をよせ、去年の花火大会のときに告白しているものの
主人公は自分への自信の無さから「聴こえないふり」をしてしまい、
返事もしておらず、曖昧な関係になっている。

そんな曖昧な関係ではあるものの水族館でデートをしたりするものの、
主人公の友人も新に好意を寄せており、主人公はそんな彼女の
恋を応援すると言ってしまう。
これまた「どこかでみたことのある」恋愛事情であり、
毒にも薬にもならないどうでもいい関係性が描写される。

新を演じる声優さんがかなり演技力が不足しており、
彼のセリフのすべてがまさに「歯の浮いたような感じ」に聞こえてしまい
彼がしゃべる度に妙に笑えてしまう。

そんな中で主人公がいきなりこんなポエミーなことを言い出す。

「海と空の間を言うときさ、水平線っていうじゃん
 地面と空の間をいう時さ、地平線っていうじゃん
 空と宇宙の間はなんていうんだろう、空平線?」

すると新はそんな主人公の「空平線」を笑い、
彼なりにネーミングする

「そうだなー、空の彼方かな」

似た者同士である。IQの低い会話に苦笑いすることしかできず、
大気圏などの言葉は出てこない。
ちなみに正確には「カーマンラインorカルマン線」である。

そもそも主人公はテストで赤点をとるレベルなので
キャラ設定に見合った会話とも言えなくはないが、
特に面白みのない会話をダラーっと聞かされる。

喧嘩


画像引用元:映画『君は彼方』予告より
(C)「君は彼方」製作委員会

そんな似た者同士の主人公と新はデート途中に占いをすることになる。
主人公の占いの結果は最悪であり、一方、新は新で目には見えないものを
目で追いかけてたかと思えばいきなり叫ぶ。
ちなみに新がいきなり叫ぶシーンは何度かあり、彼の演技力が際立つ。
「うわぁああぁぁ!」と彼が唐突に叫ぶ度に大爆笑だ。

そんな二人は喧嘩をしてしまい、
主人公は「こんな関係性をおわらせよう」とついつい言ってしまう。
基本的にこの作品は「唐突」に物事が起る。脈絡なんて関係ない。

占いもいきなり入ったかと思えば、喧嘩をしだし、
家に帰ったかと思えば後悔で泣き出し、直接謝らなければ!と
家を飛び出し大雨の中で自転車を爆走させる。
そして事故る(笑)

それまでのダラダラとした展開と違い、
急に色々なことが起る中で困惑する中で主人公は
事故により幽体離脱し、あの世とこの世の境に迷い込んでしまう。
本編を見ずにこのレビューを見てる方からすると
意味不明の展開に見えるかもしれないが、見ていても意味不明だ。

だが話の方向性が一切見えず、先が見えないだけに
「この話はどこに向かうんだろうか」と悔しいかな気になってしまう。

思い..出せない!


画像引用元:映画『君は彼方』予告より
(C)「君は彼方」製作委員会

序盤をすぎるとようやく話の方向性が見えてくる。
幽体離脱してしまい、あの世とこの世の境に紛れ込んでしまった主人公は
元の世界に戻るためにあることを思い出さなければならない。
あの世とこの世の境では現世の記憶がどんどんと薄れていき、
現世の未練が亡くなり、あの世へと旅立つ仕組みだ。

ただ主人公は幽体離脱して紛れ込んだだけであり、
現世への強い思いと忘れてしまった大切な思いを思い出すことで
現世に帰ることが出来る。話自体は非常にわかりやすく、
彼女が努力せず、諦め、逃げていた自分、
新からの告白から逃げてしまった後悔と向き合い思い出すという展開だ。

しかし、その見せ方があまりにも悪い。
過去の自分と向き合っていたかと思えば急に歌い出す。
「君に歌うよ」はアニメのあるあるではあり、
ミュージカル映画などでもよく使われる手法だ。
ちなみに「打ち上げ花火下から見るか横から見るか」も急に歌い出す。

本当に唐突に歌い出すものだからびっくりしてしまう。
どうでもいいヒロインの歌をたっぷり3分と聞かされ、
彼女は自分と向き合う。流れ自体は悪くないのに、
本当にどうでもいい歌をたっぷりと3分聞かされる。

この歌と過去の自分と向き合うことで
忘れてしまったことを思い出したかと思えば、思い出していない。
見てる側としては「あ、これで新への気持ちを思い出したんだな」と
何度も思うようなシーンがあるものの、そんな決定的なシーンを
見せて多いて主人公は何も思い出していない(笑)

今まで努力してこなかった、色々なことを諦めてしまっていた主人公が
努力をしたい、諦めたくないと思えるようになる自己問答自体は
そこまで悪くないものの、思い出したのか思い出してないのか
はっきりしない展開の数々やどうでもいい歌などのせいで
本来は悪くないと思える部分すらよくわからなくなってしまっている。

繰り返し繰り返し


画像引用元:映画『君は彼方』予告より
(C)「君は彼方」製作委員会

結局、展開としては
「思い出せそうで思い出せない」という展開を何度も繰り返し、
ようやく思い出したかのような描写をしておいて
結局は実は思い出せてませんでしたという展開ばかりだ。

ずーっと主人公が思い出そうとしてるだけのストーリーを
ひたすら見せられる。見てる側としてはいい加減に思い出せと
何度も思ってしまう展開の繰り返しはグダグダだ。

現世に帰れるような雰囲気を出しておいて、残念帰れませんでした!
みたいな展開が起きたかと思えば、いきなり蜘蛛の化け物が襲ってきて
B級ホラーアクション映画のようになる。
君の名はをしたいのか、打ち上げ花火をしたいのか、
B級ホラーをしたいのか、作品の雰囲気がブレブレだ。

「思い出せそうで思い出せない」という展開を繰り返しているのを
隠すために無駄なアクションやB級ホラー要素を入れているものの、
それが特に面白いわけでもない。
はっきり言ってストーリーがめんどくさい。

調べた所、本来は短編の脚本を長編のか基本に書き直したらしいが、
それが痛いほどわかってしまう同じことの繰り返しの展開は
馬鹿なんじゃないかと思うほどだ。
最も主人公は前述したように赤点をとるような主人公であり、
思い出せないのも仕方ないのかもしれない。

霊能者


画像引用元:映画『君は彼方』予告より
(C)「君は彼方」製作委員会

物語終盤で主人公の幼馴染である新が「霊能者」であることが発覚する。
もはや大爆笑したくなるような設定だが、彼が急に大声を上げて
叫んだかと思えば幽体離脱し、主人公を迎えに来たかと思えば
現世で蘇生されて帰ってくる(笑)

一体何をしに来たんだ?と思うほど新の行動やセリフが
唐突でいちいち面白く、演じてる声優さんの演技も相まって
彼が感情的に慣ればなるほど笑ってしまう。

実は彼は霊能者で過去に力に目覚めたときに幽体離脱してしまい、
彼を引き戻すために父親は犠牲になり、彼の母親は
彼に力をつけさせまいと彼をあえて孤独にしたというような
ストーリーが描かれるものの、別にどうでもいいストーリーだ。
正直、描写されなくてもいいと思うほど取ってつけたような話だ。

なにせ、本筋のストーリーには殆ど関係がない。

え?


画像引用元:映画『君は彼方』予告より
(C)「君は彼方」製作委員会

終盤でようやく主人公は現世に戻ってこれるのだが、
実は「長時間幽体離脱をしていると体に戻れない」
という設定が発覚する(笑)
最初からその設定を明示して時間制限があることがわかっていれば
見てる側の気持ちも違ったが、本当にいきなりそんな設定が出てくる。

そんな事実を知った主人公が泣きじゃくるのだが、
この泣きの演技が過剰だ。
「いやぁぁぁぁ!!!」とまるでホラー映画で
目の前で大切な人が惨殺されたのかな?と思うほどに悲痛に満ちた
演技はある意味すごいものの、過剰すぎて引いてしまう。

ちょっとそのあとのセリフで声が若干枯れてる気がするほどの
叫び過ぎな演技にドン引きしてしまう。

戻せるんだよ!


画像引用元:映画『君は彼方』予告より
(C)「君は彼方」製作委員会

長い間幽体離脱してしまうと戻れないはずなのに、
記憶が深い場所につれていけば戻すことが出来るらしく、
新は意識のない主人公の肉体を連れ出し、記憶の深い場所で
彼女との思い出を再現する。

狂気である。
主人公のセリフを新が一人で読み上げ、
自分のセリフも当然、彼が読み上げる。
意識のない主人公の体を抱きしめ、涙を流しながら
序盤で主人公と新が交わしていた会話をすべて新一人で再現する(笑)

感情的に過去の主人公との会話を再現するものの、
別に再現する必要はなく、演技力もないため、
狂気すら感じるシーンだ。

結局、主人公はようやく思い出し生き返るものの、
何度も繰り返される展開や主人公と新の演技のおかげで
ハッピーエンドに終わっても色々とどうでもよくなってしまっている
作品だった。

総評:青春SFアニメ映画のフランケンシュタイン


画像引用元:映画『君は彼方』予告より
(C)「君は彼方」製作委員会

全体的に見て色々とぶっ飛んでいる作品だ。
いろいろな作品を彷彿とさせる既視感の強いシーンを
引用しまくっており、かといって引用する意味もない。

安易なシーンの引用はパクリでもパロディでもない
無意味な引用でしかなく映像的な面白さはほぼない。
背景の作画だけは頑張っているものの、キャラデザは古く、
どこかで見たことのあるようなデザインでしか無い。

ストーリーは根本的な部分での描きたいこと、
見せたいことは分かるものの、そこに至るまでの過程で
何度も同じことを繰り返してしまうため、
見ている側としては「いい加減に思い出せ」と何度心の中で思ってしまい
終盤にはどうでもよくなっている。

主人公と幼馴染の過剰とも言える演技、特に幼馴染の
何回かある唐突な叫びの演技は叫び度に笑ってしまい、
彼の唐突な幽体離脱や一人二役の芝居は笑わせているとしか思えないほど
ギャグとして秀逸すぎるシーンになってしまっている。

もともとが短編映画の脚本であることが痛いほどわかり、
これが30分位でまとまったらこんなにツッコミどころが
生まれなかったかもしれないが、90分に引き伸ばした結果、
とんでもない作品に変貌してしまった作品だ。

個人的な感想:化け物


画像引用元:映画『君は彼方』予告より
(C)「君は彼方」製作委員会

「君の名は」の大ヒットから青春ファンタジーアニメ映画ブームの
終焉を見たような作品だった。
新海誠監督作品を目指したかのような背景描写や彷彿とさせるシーン、
数多く生まれたアニメ映画を引用したシーンの数々、
青春アニメ映画のフランケンシュタインのような作品だ。

監督は2億ほど借金してこの作品を作ったようだが、
私が行ったときには私以外は一人しか居なかった。
果たして監督は大丈夫なのだろうか…(苦笑)

「」おもしろい?つまらない?

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  1.   より:

    駅で自分の大切な思い出を見つけると切符が発券されて帰れるシステム、あそびごころ。さんの脱出ゲーム「ウセモノターミナル」のパク……オマージュかなあと思いました。

    3.0 rating