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腐った半熟卵「LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族」レビュー

1.0
原作:モンキー・パンチ (C)TMS 映画
画像引用元:原作:モンキー・パンチ (C)TMS
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評価 ★☆☆☆☆(18点) 全93分

『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族 』劇場公開記念特番~ルパン三世を100倍楽しむ方法~

あらすじ ルパン三世とその仲間達は、これまで自分達に刺客を送り続けてきた黒幕の正体と隠された財宝を追い求めて、バミューダ海域にある「世界地図に存在しない島」に向かうが、島に近づいたところで飛行機が撃墜される。 引用- Wikipedia

腐った半熟卵

本作品はLUPIN THE IIIRDシリーズの最新作。
いわゆる小池ルパンシリーズであり、
前作から6年の時を経ての作品となった。
監督は小池健 、制作はテレコム・アニメーションフィルム

履修

本作品は小池ルパンシリーズとして制作されており、
次元大介の墓標から始まり、血煙の石川五右衛門、
峰不二子の嘘、銭形と2人のルパンと4作品作られており、
その4作品の裏には黒幕と言える存在が匂わされていた。

銭形と2人のルパンではそんな黒幕からの招待状を受け、
ルパン三世たちと銭形警部が地図に乗っていない島に
向かうというところで終わっている。
この作品は完全にその続きとして制作されている。

今までは1本の作品として、他の作品を見ていなくても
ストーリーに支障をきたすことはなかったが、本作品は見ている前提だ。
それを制作側もわかっている部分もあるのだろう、
冒頭で過去の4作品を振り返るシーンが挟まれており、これがかなり長い。

ルパンのナレーションとともに長く振り返りを行うのは
だらだとしてしまっており、そんな振り返りが終わっても、
本編でも回想シーンが挟まれたりすることもあり、
全体的にダラっと間延びしている。

各作品でルパン三世たちを狙っていた殺し屋たち、
その裏に居た黒幕はなんの目的で彼を狙っていたのか。
謎の島へとルパン三世たちは訪れるというところから
物語が始まる。

ダラダラ

いざ島についてもダラダラだ。
島に不時着し、仲間と離れ離れになったルパン三世たち。
そんな彼らの目の前にはマスクを付け理性を失った
ゾンビのような兵士たちが大量に襲いかかってくる。

このゾンビのような兵士たちはCGで描かれていることも多く、
その違和感も強烈だ。それだけならいいのだが、
この作品はやたら無駄な敵と戦闘シーンが多すぎる。

これまでの小池ルパンシリーズでは各作品のメインとなるキャラと、
そんなキャラに相対するような敵一人だからこそシンプルに面白かった。
しかし、今作はルパンだけでなく、次元大介、石川五右衛門、峰不二子、
銭形警部も出ており、そんな彼らの相手となる敵キャラも出さないといけない。

そのせいで非常にゴチャゴチャしている。
次元大介を狙って「弓矢」を放ってくるような敵がでてくるのだが、
そんな敵と決着をつけることもなくいつの間にか居なくなっていたり、
双剣の敵がでてきたり、全身機械の敵が出てきたり、
終盤にはなんか手が熱い敵がでてきたりするのだが、
なんとなくな戦闘シーンが描かれてあっというまにその戦闘が終わる。

これまでの小池ルパンシリーズの戦闘シーンを期待すると
肩透かしを食らうような、ゾンビ物の映画の戦闘シーンでも見ているような
雑な敵キャラの描写にはがっくりしてしまう。
今作の最大の欠点は敵キャラに魅力がないことだ。

敵キャラが多いだけでろくに掘り下げられず、魅力もなく、
魅力の内的との戦闘シーンで盛り上がるわけもなく、
ただただ尺を使い、ダラダラとした戦闘を繰り広げている。

ヤエル奥崎

今作では一作目の敵でもあるヤエル奥崎が再登場し、
次元大介と再戦をする。そんな再戦、
再登場はテンションが上がる部分があるのだが、

これまた中途半端な再戦と活躍に終わっている。
2作目の敵であり石川五右衛門と戦ったホークも再登場するのだが、
これまたあっけなくヤられてしまう。

ファンサービス的な要素なのは分かるが、
そんなファンサービスがファンサービスになっておらず、
キャラクターを活かしきれていない。
登場人物はいつものルパンメンバーではあるものの、
そのいつものメンバーをうまくさばききれておらず、全てが中途半端だ。

ヤエル奥崎も敵ではあるものの、終盤は
次元大介や石川五右衛門と協力して戦っており、
再戦という面白い要素を全く持って活かしきれていない。

しかも、ルパン三世たちが訪れた島は毒が散布されており、
耐性がないものは24時間で死んでしまう。
俺達を狙ってあ黒幕の存在を暴くぞ!と息巻いて島に来たら、
そそくさと逃げようとするルパンたちがシンプルにカッコ悪い。

不死身

今作の敵は不死身だ。
ルパン三世に拳銃をつきつけられ、こめかみに銃弾がぶち込まれても死なず、
頭がぶっ飛んでも、全身を焼かれてもすぐに再生して蘇る。
刀も、銃も、色気も、何も通用しない最強の敵だ。

そういう設定なのは分かるが、不死身という設定のせいで本当につまらない。
不死身である「ムオム」という存在は
もともとは猿のような動物であり、とある人物によって
力を与えられれた結果、進化した存在だ。

そんな猿のような動物だからこそ、
猿のような見た目をしており、謎の格闘術を使う。
これがまったくもってかっこよくない。
近所のおじさんが趣味でやってる太極拳のような動きで、
ルパンや次元や石川五右衛門を追い詰めても盛り上がりに欠けてしまう。

どれだけやっても、どれだけ戦ってもあっさりと再生する敵。
設定としては面白そうなのだが、
それをアニメとして見せられると本当につまらない。
これまでの小池ルパンシリーズが描いてきた
泥臭いまでの戦闘シーンを味わえないのが残念でならない。

しかも不死身の秘密自体のつまらなさもある。
簡単にいえばルパン三世たちと戦っていた「ムオム」は本体ではない。
ルパン三世はそれを見抜き、本体とも言える部分を見つけ出し破壊して終わる。

ルパン三世の武器と言える頭脳が発揮されたともいえなくはなのだが、
その手段と方法自体もいまいちしっくりとこず、
強引に物語を畳んだ感が否めない。

マモー

この作品でやりたいことは分かる、本当の黒幕はマモーであり、
ムオムはマモーから血を分け与えられた存在だ。
そんなマモーとルパンに因縁が生まれ、
前作の偽ルパンの件を含めて「複製人間」につながる
ストーリーにしたかったのだろう。

それ自体は理解できるのだが、そうするためのつなぎのストーリーとしては
かなり強引すぎるストーリーになっており、
理路整然としておらずゴチャゴチャしてるだけの要素とキャラと
シーンの数々はシンプルに盛り上がりに欠け、呆れ返ってしまった。

これまでの小池ルパンシリーズにあったハードボイルドさ、
ニヒルさ、シニカルさ、そういったものを90分の尺の中で
殆ど感じずに終わったのは残念でならない作品だった。

総評:ルパン三世?ただのゾンビ映画だろ

全体的に見て残念な作品だ。
小池ルパンシリーズはリアルかつハードボイルドな
大人向けのルパン三世を味わえる素晴らしいシリーズであり、
前作の二人のルパンまで素晴らしい作品と世界観を作り上げてきた。

しかし、この作品でそんな世界観をぶち壊してしまう。
不死身の敵というファンタジーな敵はデザインも
戦闘スタイルもリアルさはなく面白みにかける上に
ダラダラと長いだけでつまらない。

別にルパン三世たちがメインキャラでなくとも、
そのへんのゾンビ映画の登場人物とそのまま入れ替えても
成立しそうなゾンビサバイバルのようなストーリー展開は
ルパン三世らしさがまるでなく、かつてのTVSPの酷い脚本を
彷彿とさせるような酷さだ。

作画のクォリティは高い、アニメーションも時折見応えがある部分はある。
しかし、過去4作ほど盛り上がるような戦闘シーンもなく、
CGの違和感も凄まじく、過去の4作品に劣ってしまっている。

ストーリー的にも90分になったことで間延びしまくって、
ツッコミどころも、すっきりとこない部分も発生している蛇足まみれの作品だ。
そこまで多いわけでもないのにキャラクターをさばききれずに
終わってしまっている。

ゲスト声優も酷い。
過去の4作では堀内賢雄、宮野真守、土師孝也、広瀬彰勇と
名優たちが演じており、敵キャラの魅力を引き出していた。

しかし、今作は違う。いわゆる芸能人声優がたくさん出ており、
空気階段というお笑いコンビや、よくわからない女優などが
明らかな素人演技で作品の世界観をぶち壊してくる。
ムオムを演じているのは片岡愛之助さんだが、
ムオムオ言っているシーンが多いせいで魅力を感じない。

ルパンシリーズとしても、小池ルパンシリーズとしても
この作品は最悪の出来栄えになってしまった。
本当に残念でならない。

個人的な感想:なんでこうなった…?

本当になんでこうなってしまったんだろうか。
過去の4作品は素晴らしかった、だからこそ
ハードルが上がりすぎていた部分もあったかもしれないが、それにしても酷い。

作画も、ストーリーも、アニメーションも。
過去の4作品のような見どころがまったくなく、
ルパン三世を始めとしたキャラの魅力も引き出しきれていない。
峰不二子の嘘から6年、その6年で色々と変わってしまった部分もあるのだろう。

コロナがなければ、もっと早い段階でこの作品が制作され、
作品のクォリティも方向性も違ったかもしれない。
そういうふうに思わなければ、小池ルパンシリーズに対する
思いを消化しきれない自分がいる。

本当に、本当に残念だ。

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