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これが彼の正義だ「LUPIN THE IIIRD 銭形と2人のルパン」レビュー

4.0
LUPIN THE IIIRD 銭形と2人のルパン 映画
画像引用元:原作:モンキー・パンチ ©TMS
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評価 ★★★★☆(60点) 全60分

【解禁】偽ルパン役に堀内賢雄!『LUPIN THE IIIRD 銭形と2人のルパン』6月20日配信 ルパン三世【PV】

あらすじ ルパン三世は相棒の次元大介とともにロビエト連邦首都ヴォロクアに向かうため、鉄道に乗り込むところであった引用- Wikipedia

これが彼の正義だ

本作品は2025年公開のアニメ映画
『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』の前日譚となる作品であり、
小池ルパンシリーズにおける「銭形警部」を主人公とした作品。
監督は小池健 、制作はテレコム・アニメーションフィルム

テロ

前作の峰不二子の嘘が2019年、そこからコロナを経て
ようやくシリーズ最新作が公開された。
本作品はその前日譚な作品であり、AmazonPrimeで配信されている。
小池ルパンシリーズと言えば「ハードボイルド」だ。

劇画タッチの渋い雰囲気で描かれるルパン三世は
まさに大人向けであり、多くの人を魅了し、今か今かと最新作を待ち続けていた。
そんな最新作であるルパン三世を主人公とした作品の前に
銭形警部を主人公にした作品が本作品であり、
待ちに待った作品だ。

映画冒頭からハードボイルドな雰囲気全開であり、
ルパン三世を追う中で銭形警部は「爆破テロ」を行うルパン三世を目撃する。
本当にルパン三世が爆破テロをおこなったのか…?
というところから物語が始まる。

対峙

冒頭から劇画タッチだからこその渋さが溢れている。
銭形警部とルパン三世、二人が顔を突き合わせて
セリフを応酬しているだけなのに面白い。
爆破テロを起こしたルパン三世を排除すべく「保安委員会」が狙っており、
さりげないアクションの中で銭形警部というキャラを映えさせている。

銭形警部は泥棒でも、侍でも、ガンマンでもない、ただの警察だ。
だが、長年ルパン三世を置い続けたからこその洞察力、
その洞察力が彼の武器だ。
お婆さんに変装したルパン三世の「目」を見ただけであっさり見破り、
自らの正義を貫こうとしている。

ルパン三世を捕まえた銭形警部は、国に狙われるルパン三世を保護しながらも、
爆破事件を起こした犯人を捜索する。
酒とタバコ、小池ルパンらしい描写を入れつつ、
常に渋く、ニヒルに、ハードボイルドに物語は進んでいく。

峰不二子も「もう一人のルパン」と出会い、殺されそうになる。
国としての正義、人としての正義、立場が変われば考えも変わり、
悪は正義にも、正義は悪にもなる。
そのなかで「銭形警部」の中の正義とはなんなのか。

ロビエト連邦はルパン三世を爆破テロ犯と思い狙うものの、
銭形警部は泥棒としてのルパン三世を追いながらも彼の無実を信じ、
彼の中の正義を貫こうとしている。

組織に縛られず、ルパン三世を追うことに生きがいすら感じている。
それはどこか「ルパン三世」とにている部分がある。ライバルだ。
立場は正反対ではあるものの、似ている信念があるからこそ、
理解者でもある。

二人

ルパン三世の前にルパン三世の顔をした爆弾魔が現れる。
全てが面白ければ良い、すべてを壊したい。そんな信念を持つ相手だ。
変装ではなく、本当にルパン三世の顔持つ爆弾魔は一体なんなのか。
拳銃すら持たない日本の公安警察である「銭形警部」は
己の正義を命を燃やしながら貫こうとしている。

同じ「信念」があるからこそ、同じ答えにたどり着く。
己の正義のために国民すら犠牲にする「政治家」の正義、
戦争が利益を生む、それは国の利益にもなる。
それは政治家としての正義かもしれない。
だが、国民を犠牲にすることを銭形警部は許さない。

殺すことで解決することは簡単だ。
ルパン三世を「射殺」する機会は銭形警部にはいくらでもある。
だが、あえてそれをしないのが銭形警部であり、それが彼の正義だ。

同じ信念を持ちながらも、わかり合うことができない二人。
そんな二人の信念、銭形警部の正義が1時間ほどで
まっすぐに描かれている作品だ。

ルパンの顔を持つものが何者だったのか、
それは本作では明らかにならない。
そして物語は劇場版へと続く。

総評:これが彼の正義だ

全体的に見て小池ルパンシリーズらしさ全開の作品だ。
銭形警部を主人公とし、彼の信念と正義はなんなのか。
それをまっすぐに描いており、言葉ではなく見て、
その正義と信念が伝わるようになっている。

TVSPなどでは銭形警部はコミカルなキャラとして描かれがちだが、
この作品では全くもって違う、最初から最後まで笑みなどみせず、
己の正義を貫くために苦虫を噛み潰したような表情ですべてを見つめている。
そんな洞察力だからこそルパン三世の変装を見破り、
政治家が企んでいる陰謀にもたどり着く。

正義と悪、立場が違うだけ、価値観が違うだけだ。
国が変われば価値観も変わる、そんな中で世界中を股にかける
インターポールの刑事である銭形警部は価値観というものがブレない。
だからこそ彼の中にある正義もまっすぐだ。

そんな銭形警部を理解しているのはルパン三世であり、
ルパン三世のことも1番理解しているのは銭形警部だ。
同じ信念をもちながらも、価値観が違うからこそわかりあうことができない。
1時間でそんな正義と信念と価値観の物語がまっすぐに描かれている作品だ。

惜しむべきはあくまで前日譚であるからこそ
やや中途半端なラストになっており、明かされていない謎も多い。
シリーズ最終作とも言える最新作がどうなっているのか
きになるところだ。

作画のクォリティ、作品全体が醸し出す雰囲気は
小池ルパンシリーズらしさ全開であり、
酒と煙草と女と血、そして寒冷地だからこその「吐息」が印象的だ。

「銭形警部」を主人公にしたからこそ銃撃戦や剣戟ではなく、
「徒手格闘」を主体にしたアクションシーンは過去のシリーズと
比較しても、しっかりとした特徴が出ており、
たった60分しかないのに、いや、60分だからこそ
濃厚な映画を味わえる作品だった。

個人的な感想:帽子

作中で妙に次元大介が帽子を取っているシーンが多いのが
印象的でもあった作品だった。
いつものあの帽子ではなくハンチング帽子を被っている次元大介、
いつもと違うというのは、もしかしたら「声優」が交代したということの
何らかの比喩表現だったのかもしれない。

前作から6年、次元大介の声は「小林清志 」さんから
「大塚明夫」さんに変更された。この6年は短いようで長い。
最新作の映画もそんな6年という月日にふさわしい映画であってほしいところだ。

「LUPIN THE IIIRD 銭形と2人のルパン」に似てるアニメレビュー

監督:小池健, 出演:栗田貫一, 出演:沢城みゆき, 出演:小林清志

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