「映画ドラえもん のび太の月面探査記」レビュー

4.0
映画
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評価 ★★★★☆(70点) 全111分

あらすじ 引用- Wikipedia

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これはスネ夫の映画だ

本作品はドラえもんの劇場アニメ作品。
ドラえもんとしては39作品目の作品となる。
監督は八鍬新之介、制作はシンエイ動画

月面ミステリー

冒頭でTVのニュースが流れる。
その映像には月面探査機が撮影したものであり、
そこには「白いなにか」が見えている。
そんな白いなにかに対し、のび太はそれは「うさぎ」だと宣言するところから
物語は始まる。

ドラえもんとしては比重にテンプレート的な始まり方ともいえる。
のび太の素っ頓狂な発言、そんな発言をいつも本当のことしてくれるのが
「ドラえもん」だ。
ときには雲の王国を作り、ときにはまるで違う世界にだって連れて行ってくれる。

のび太以外の人たちは彼の発言を馬鹿にする。だが、彼は純粋な少年だ。
自分の目で月に本当がうさぎがいるかどうかを確かめないといけない。
それは化学や様々な「説」を立証する上で、人類が歩んできた歴史そのものだ。
地球の自転、重力の存在、多くの科学者たちが多くの人に
馬鹿にされながらも自分の「説」を信じ、立証してきたからこそ今の定説になっている。

そんな数多の偉人が唱えてきた「説」。
のび太が唱えた「月にうさぎがいる」という説もとんでもない「異説」ではあるものの、
そんな異説をドラえもんが本当のことにしてくれる。
もしかしたらあり得たかもしれない説に基づく異世界。

異説の世界に自分たちが行ける未来の道具だ。
それが「異説クラブメンバーズバッジ」だ。
もしもボックスと近しいものでは有るものの、
もしもボックスとの違いは「バッジ」をつけてる人は
異説の世界を共有し認識できるが、
バッジをつけていない人には認識すらできないという点だ。

さらに言えば「もしもボックス」はもしもと付ければいいが、
「異説クラブメンバーズバッジ」は長年、人々の間で論じられてきた
「異説」のみを本当のことにしてくれる。

これがこの作品の胆になっている。

月から来た少年

そんなのび太達のいつもの行動の裏で1人の少年「ルカ」が動いている。
まるでどこぞの「最後のシ者」のようなポージングで登場し、
なぜか「のび太」に目をつけている不思議な少年だ。
不思議な力を使い、のび太と同い年とは思えないほどの身体能力を持つ
不思議な青年だ。

そんな彼とのび太たちが「異説クラブメンバーズバッジ」で
作った月の世界に行くところから物語は動き出す。
月の世界はのび太たちがあまり干渉しなくてもどんどんと進化していく、
月の住人たちは科学技術をも発展させ、訪れる度に
まるで100年や1000年たったかのような進化と変化を見せてくれる。

月のうさぎたちも可愛らしいデザインをしており、
神のようにドラえもんを敬う一方で、のび太への扱いは雑だ(笑)
まるで「のび太」のようなドジでメガネを付けたうさぎもおり、
彼らの独特な進化と技術発展による異説の月の世界が面白く、
序盤はそんな異説の月の世界を見せてくれる。

ドラえもんたちへのもてなし、料理の数々も
ドラえもん映画特有の美味しそうな料理の描写になっており、
子供がみれば間違いなく食べたいと思う
「人参料理」と「おもち」の数々に涎を垂らさせてくれる。

そんな平和な序盤から一気の物語は動き出す。
月の世界はあくまでドラえもんの道具で作った異説の世界だ。
月に空気が有るのも、月にうさぎの住人が住むのも、
「異説バッジ」をつけているからこそ認識でき、
月で宇宙服なしで行動できるのも「異説バッジ」があるからこそだ。

もし「異説バッジ」が外れてしまったら、
月のうさぎたちも認識できず「空気」もなくなってしまう。
そんな中で「のび太」のとある事件でバッジが外れてしまう。
しかし、なぜかのび太は息をすることができるうえに、
「本当の月の住人」に出会うことになる。

それがルカだ。
月には本当に「うさぎ」の住人が居た。
異説でも、ドラえもんの道具のおかげでもない、
のび太のついたはずの「嘘」が真実であるという展開は、
ドラえもんらしい子供の想像力を刺激してくれる。

それと同時にきちんと「科学的な設定の裏付け」もされている。
なぜ月に空気があるのか、なぜ月に住人が居たのか。
決して子供だましではない大人も納得できる設定もきちんと描くことで、
話が進めば進むほど大人もこの作品を楽しめる。

月の住人たちの「過去」は子供向けと見るとやや重く、
狙われている11人の月の住人、住めない星になってしまった「かぐや」、
重厚なSFアニメの設定のような雰囲気すら感じる。

友達

月の住人とのび太たちは友だちになった。
暮らす場所も種族も年齢も違う、だが、彼らと交流し、
のび太と月の住人たちは「友達」になることができた。
子供だからこその純粋さと偏見のなさ、
「のび太」や「ジャイアン」だからこそ彼らは月の住人と心の友になる。

そんな月の住人が「かぐや星人」にとらわれてしまう。
本来ならのび太たちは無関係の出来事だ。
月の住人たちの事情も、かぐや星人とのいざこざも、
のび太たちには関係ない。命をかける理由としては弱さすら有る。
ただただ「友達だから」だ。

のび太という主人公は優しい少年だ。
人の幸せを喜び人の悲しみを悲しめる人だ。
だからこそ何の迷いもなく、戦う決意をする。

しずかちゃんというヒロインも優しい少女だ。
戦うことへの怖さはある、不安もある、小学5年生の女の子なんだから当たり前だ。
飼い犬をぎゅっと抱きしめるその姿は慈愛を感じさせ、
不安と恐怖はありつつも彼女も家を飛び出る。

ジャイアンという少年は勇敢な少年だ。
迷いも恐怖もない、彼の中にあるのは心の友に救われた恩と、
そんな心の友を救う決意と覚悟だ。
まるでお守りのように家の商品をポケットにつっこみ、
勇敢に家を飛び出る。

スネ夫という少年は弱い子だ。ずる賢く、臆病で、弱い。
ジャイアンという強者のそばにいて、親の経済力に頼り、
それを笠に着ている少年と言ってもいい。だからこそ、彼悩む。
もしかしたら死んでしまうかもしれない、
そこまでする理由があるのか、自分が行く必要があるのか。

だからこそ、彼だけ戦いに赴く晩に「遅れて」やってくる。
一人ひとりの、ドラえもんというキャラクターの見せ方に
思わず涙がこぼれそうになってしまう。
スネ夫はたしかに弱い子だ、そんな彼は1番、「人間らしい」少年だ。
誰だって恐怖は有る、権威や強いものの下で生きたいという思いがある。

しかし彼もまた心優しい少年だ。
月の住人が襲われている間に何もできなかった自分へのくやしさ、
友達を助けたいという思いがある。
そんな彼は恐怖を見せない。
遅れた現れた彼はいつもの調子でこんな事を言う。

「前髪が決まらなくて」

視聴者には彼の中にある恐怖と不安、葛藤を見せつつも、
そんな葛藤をのび太たちにはスネ夫は見せない。
彼がいるからこそ、この4人の関係性は成り立っているのだ。
涙も、恐怖も、他の3人は見せない。彼は「空気を読める」少年だ。
読んだ上で彼は自分の立ち位置を理解し、恐怖を乗り越え戦いへと赴く。

月の住人であるルナを1番に思い、彼女に虚勢を張る姿は
いつものスネ夫だ。
だが、私たちは知っている、スネ夫が戦うことへの不安を
胸の中にしまい込んでいることを。

終盤

この作品は序盤から終盤までちょこちょことアクションシーンと
戦闘シーンが多く描かれている。
CGに頼らず、手書きの作画でグリグリと動くアクションが描かれており、
キャラクターデザインも今作は少し懐かしさすらある雰囲気になっているおかげで、
昔懐かしいドラえもん映画を見ているかのような気分になる。

終盤は「異説バッジ」を活かした展開が生まれている。
月に住むうさぎたちの技術発展の凄さはやや突っ込みどころでは有るものの、
彼らのものすごい技術発展を序盤から描いたからこその展開だ。
多くの仲間達と、友達たちと、ともに戦う。

ときにはしずかちゃんが、ときにはジャイアンが、
ときにはドラえもんが、ときにはスネ夫が、ときにはのび太が。
懐かしい道具を使いながら、友達と手を取り合い戦うさまは
終盤の盛り上がりが生まれており、
細かいエピソードと伏線が終盤の盛り上がりにつながっている。

そしてラストのスネ夫の活躍だ。
この作品の制作陣は本当にスネ夫が好きなんだなと感じるほど、
彼の活躍や台詞で見せ所をさり気なく作っており、
それが見ている側に伝わるストーリーになっており、思わずニヤニヤしてしまう。

住む場所も、年齢も、価値観も、住む「次元」すら違うキャラクターたち。
そんなキャラクターたちの「友情」がこの作品にはあり、
そして「ドラえもん」という作品らしい「想像力」を掻き立てられる物語が描かれている。

ラストの展開も、ドラえもん映画らしい「別れ」だ。
ドラえもんとのび太が「異説」を唱える。
映画だからこその冒険が別れと異説で終わる、今は別れるしか無い。
だが、彼らの友情は変わらない。

月を見上げればいつもそこには彼らがいる。
例えバッジがなくとも「想像力」が未来の道具の力を超える。

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総評:これはスネ夫の映画だ

全体的にみて素晴らしいドラえもん映画だ。
原作にもでている「異説クラブメンバーズバッジ」をいかし、
「もしもボックス」とは違う点をストーリーの中で見事に生かしており、
ドラえもん映画らしい未来の道具を活かしたストーリーと、
友情、そして想像力を掻き立てられる作品に仕上がっている。

異説のはずの月のうさぎから、月に本当に住人が居たという展開、
そんな月の住人の真実と過去からストーリーを広げ、
ドラえもん映画らしい冒険の物語を描きつつ、
ドラえもんのキャラクターそれぞれにしっかりとスポットが当たっている。

特に「スネ夫」は今作ではある意味で裏主人公ナノでは?と感じるほど
彼のキャラクターとしての魅力をひしひしと感じられる描写が多く、
妙にスネ夫のシーンの1つ1つが印象に残ってしまう作品だ。

ラストの展開とエンドロールも素晴らしい。
今は「別れる」しかない2人、だが、そんな今を
想像力で変えることでき、再会できる日が来るかもしれない。

ただ、難点をいえば「異説クラブメンバーズバッジ」の設定が
少しややこしいことだ。
つけている状態で認識できるものとできないものがあり、
シーンによってつけていたり、外していたりすることもあり、
そのせいで今はどんな状態でどういう認識になってるんだ?と
頭の中での状況整理がややこしくなってしまってしまいやすい。

子供だと余計に混乱しそうな点もあり、
細かいツッコミどころがないといえば嘘になるが、
そういう細かい部分や混乱する部分をうまくギャグを盛り込みつつ、
子供も飽きずに最後まで楽しめるような仕上がっている作品だった。

個人的な感想:エヴァ…

ルカの登場シーンのポージングのせいか
もうどうにもエヴァの使徒な彼にしか見えなかったのはここでだけの話だ(笑)
一応、ヒロイン的なポジションのキャラはいるものの、
今回はスネ夫とのいい感じになっているせいもあってか印象も薄く、
ルカとのび太のある種のBL的な構図にニヤニヤしてしまう。

コレが果たして狙ってやってるのかそうでないのかは
判断しかねる点だが、軽く感想などを検索してみたところ
ちらほらそう感じてる人が居て安心したものの、
これもまた新世紀エヴァンゲリオンという作品の呪いなのかもしれない…

エヴァもそうだが、どことなくスターウォーズや
スタートレックあたりのSF作品を意識、もしくはパロディしていると
感じる部分があり、そういった意味でもオタク的な目線で見ても
面白いと感じられる作品だった。

なお、ルカくんは皆川純子さんが演じている。
ずるい(笑)

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