伏 鉄砲娘の捕物帳

評価/★★★☆☆(59点)

伏 鉄砲娘の捕物帳 DVD通常版

制作/トムス・エンタテインメント
監督/宮地昌幸
声優/寿美菜子,宮野真守,小西克幸ほか

あらすじ
江戸の世。「伏」と呼ばれる半人半犬の者たちの暗躍が耳目を集めていた。人の生魂をとって食らうという彼らに、幕府は高額の懸賞金をかけ、それを狙う者の追撃も後を絶たなかった。

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実写にはないアニメだからこその魅力を感じられる作品

原作は桜庭一樹氏による小説『伏 贋作・里見八犬伝』。

監督は『千と千尋の神隠し』で監督助手を務めた宮地昌幸、
脚本に『コードギアス 反逆のルルーシュ』の大河内一楼、
ビジュアルイメージに『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』で
デザインワークスを手掛けたokama、
人物設計に『カウボーイビバップ』で原画を手掛けた橋本誠一、
音楽に『鋼の錬金術師』の大島ミチル
と、wikipediaを見るとえらく大作タイトルが並んでいる作品だ(笑)

基本的なストーリーはアクション。
時は江戸時代、猟師をしている「浜路」という少女、
彼女は猟師として祖父と暮らしていたが、祖父がなくなり兄に呼ばれ江戸に来ることに。
江戸では半人半犬の「伏」と呼ばれるものが人の魂を食らっていた。
幕府は彼らに高額懸賞金をかけ、狩ってはさらし首にしていた。
「浜路」はそんな中、信乃という伏に出会う。
という所からストーリーが始まる。

見だして感じるのは独特な色使い「江戸時代」の雰囲気。
うすピンクや水色、赤紫のような色使いは
純粋な「江戸時代」としてはあまりにも派手な色使いで、
登場人物の髪の色も「赤」や「銀髪」など、江戸時代という時代設定ではあるが
ファンタジーの江戸時代なんだよというのが背景の色合いから感じられる。

だが、そうかと思えば江戸時代らしい石造りの壁や木造の家などもあり、
そうかと思えば物凄い配色の建物があったりする。
魅力的・・・というのとは違う、独特という言葉が最適な背景だろう。

一歩間違えば世界観を壊しかねないギリギリな背景デザインだ
前述した大作タイトルに名前の無い方なので美術監督さんの仕事なのか
色彩設計さんの仕事なのかが図りかねるが、このギリギリな背景デザインは
映画という大きなスクリーンでは映えただろう。

背景は人物よりも思わず目が行く部分が多かったのは印象的だ。
キャラクターよりも背景の桜を見てしまうようなシーンも多い
背景はとにかく見どころがある、今から見る人はぜひ背景にも注目して貰いたい。
実写だったら許されないがアニメという表現だから許されるデザインだ

この作品は「絵」的なおもしろみの強い作品だ。
背景、キャラクターが着ている服のデザイン、
出てくる食べ物の江戸時代という時代背景を生かした料理の数々や
それらの美味そうな感じは思わず生唾を飲み込みたくなる。
絵的な魅力はこの「伏」という作品の特徴だろう。

ストーリーは「淡々」という言葉が似合う。
江戸にやってきた鉄砲娘と犬と人の間に生まれた伏の出会い、
伏を駆る鉄砲娘、仲間を次々に殺され自分も人の魂を食らわざるえない伏、
そして伏と鉄砲娘の狩りが始まる。
そこに江戸に生きる人達を描き、シンプルにストーリーを楽しまさせる。

しかしながら、色々と「唐突」な部分が多い。
伏と鉄砲娘の出会いや、初めて鉄砲娘が伏を見つけるシーンや
終盤の「殿様」が掛け軸から刀を出すシーンなど
あまりにも、それまでのシーンからファンタジー過ぎて突拍子な感じがする。
もちろん物語の中で説明はついてはいるのだが、
それを差し置いてもあまりにも唐突なファンタジー要素が受け入れがたい。

しかし、ファンタジー要素はあるものの、
きちんと物語の中での小さな物語が大きな物語に繋がっており、
キャラクターのセリフの1つ1つが物語の本筋のストーリーに関係している。
ストーリー構成が見終わった後に染み渡るような、そんな作品だ。

全体的に見て名作ではないのだが、とても面白い作品だった。
唐突なストーリー展開や、唐突な主人公の恋愛描写、ファンタジー要素など
しっくり来ない部分も多く、癖のある作品なだけに万人受けはしない。

しかしながら、全体のストーリーを考えたからこそできる
キャラクター一人一人のセリフに意味合いをもたせ、小さな物語を大きくつなげていく、
因果をめぐるストーリーはどこか芝居がかっているのだが、どこか伝わってくる。
そして、どこか物足りない。

1時間40分という尺で制作側の「やりたいこと」を全て詰め込んでしまって
その1つ1つがどこか少ししずつ物足りない感じになってしまった。
あと1時間とはいわないが、2時間半くらいの尺ならば
唐突に感じた部分や物足りないキャラ描写もグッと深まり、
もっと感動できたはずなのが残念だ。

更に言えばターゲットがよくわからない。
女性のキャラデザはお世辞にも「可愛い」といえる感じではなく萌え要素はない。
オタク向けの作品ではなく一般向けの作品と考えると、
奇抜な要素や独特な世界観はあまり一般受けとはいえない。

年齢層も子ども向けにしては吉原や若干グロい表現も多く子ども向けとはいえず、
大人向けとしてはシンプルなストーリー展開だ。
どの層を想定したのかがイマイチ把握しかねる。

色々と面白みのある作品なのだが同時に色々と欠点が目立っている。そんな作品だ。
欠点に目をつぶれば名作になる、欠点が目に入ってしまえば微妙になる
本当に色々と惜しい作品だった。

個人的には主題歌を歌っている「chara」さんが脇役出てているのだが、
演技の下手さ加減に一瞬作品の評価が物凄い下がった(苦笑)
地味にそこそこのセリフがあるだけに、彼女が喋る度に
物語の世界観を崩されているような気分になってしまったのは残念だ。
なぜ声優をやらせてしまったのだろうか・・・この作品最大の謎だ