サカサマのパテマ

評価/★★★☆☆(41点)

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コウモリ人間を愛せますか?

本作品は「イブの時間」で有名な吉浦康裕監督による劇場アニメ作品。

見だして感じるのはパテマ可愛いだろう(笑)
冒頭から不思議な世界観を醸し出しているが詳細がわからない、
そんなまだ何も明かされていない世界観で「一人の少女」が廃鉱のような場所を
防護服のようなものを来て突き進む。
時折見せてくれる顔、時折聞こえてくる声、ぴょんぴょんと弾むような動きなど
世界観は気になりつつも同時に「パテマ可愛い」という素直な感想が湧き上がる
物語はそんなパテマが天井に張り付く「コウモリ人間」に出会うところから始まる

この作品はいわゆる王道の「ボーイ・ミーツ・ガール」な話だ。
少しネタバレになってしまうが、この作品の世界は2つに分かれている
その2つの世界は単純に「相反するの重力」の世界観であり、
一方の世界の住民にとっては地面でも、一方の世界の住民にとっては天井だ。
この2つの世界観の描写が見所の1つだ

カメラワークを絶えず180度回転して描写しているような、
見ている側がどっちが地面でどっちが空なのか分からなくなる
そんな感覚になるほどグルグルと画面が回転し、グルグルと天地が逆さまになる。
相反する重力の2つの世界に住むそれぞれの住人の
天と地の感覚の違いをアニメーションという媒体でカメラワークを上手く活かしながら、
見ている側にも「不思議な浮遊感」を感じさせるほど生々しく描写する。

そして重力だけじゃない世界観の違い。
一方の世界では地下のようなところで貧相ながらも自由に暮らしている
一方の世界では裕福な地上の世界だが徹底的な監視のある社会だ。
重力意外にも違う世界観というのが「サカサマ」だけではない
不思議な世界観をより作り上げている。

世界観だけは本当に素晴らしい。だがストーリーに関してははっきり言って難ありだ
いわゆる王道のボーイ・ミーツ・ガールであり、世界観から想像できるストーリーでしか無い
これがもっとテンポよく「冒険活劇」のごとくコミカルに描かれるなら
王道なストーリーも「面白い」と感じられたかもしれない。

だが基本的なストーリーはグダグダっとシてしまっており進行も遅い。
淡々と淡々と物語を進めてしまっているため、
劇的なシーンとシーンの間のシーンがつまらない。
「サカサマ」になってカメラワークがグルグルと変わるシーンは確かに面白い、
だが、それ以外でのシーンの描写が酷く単調で淡々としている。

簡単にいえば盛り上がってるシーンと盛り上がっていないシーンの温度差が激しい。
盛り上がるシーンはぐわっと見ている此方側の気分も浮き上がるのだが、
盛り上がっていないシーンは冷めた気分で退屈に感じてしまう。
本来はもっと世界観や設定、人物描写をすれば盛り上がるようなシーンでも
2時間という尺に収めるために明らかに説明不足になってしまっている部分や
キャラクターの掘り下げ不足のせいでどうにもキャラクターに感情移入ができない。

主人公のクラスメイトなど掘り下げればもっとストーリーに絡んで
物語が面白くなりそうなのに掘り下げ不足、
世界観も基本的に「主人公とヒロインの周囲」しか描かないため
2つの世界を描いている割にはどうにも世界が狭く感じてしまう。

更にもったいつける演出。
オチや先が分かるストーリー展開なのに、その先の結果を描写する際に妙に溜めてしまう。
結果のわかる展開をサクサクっと見せてくれれば
引っかかること無く王道なストーリーも楽しめるのだが、
サクサクっと見せずに「ぐだ~」っと見せてしまうためストーリーが変に冗長になる。
もっと簡単にいえば全体的に「締り」がない。

例えば中盤の「主人公たちの父親」の回想シーンも非常に長く、
直前でせっかく盛り上がったのに淡々とした描写で盛り下げてしまう。
その直後にまた盛り上がるシーンが有るため、
1シーン1シーンの温度差が激しい。

更に終盤ある意味「どんでん返し」的な設定の逆転がある。
ある意味世界の真実ともいうべきどんでん返しなのだが、
このどんでん返しもある程度予想出来てしまう。
予想出来てしまうのに以外にもあっさりとそのオチにたどり着いてしまうのだが、
この描写が非常にわかりづらく、人によっては理解しづらい。
中盤で描写される「空」も解説などを読んで理解できる部分が大きく、
いろいろな部分で「引っかかり」を覚えてしまうのも残念だ

全体的に見てアニメーションとしては非常に面白い。
カメラワークがグルグルと書いてしながらサカサマの世界観を描写し、
見ている側にも不思議な浮遊感を感じさせるほど凝った演出の数々、
別の重力を持つ2つの世界の2人が抱きあうだけで空も飛べるというロマンなど
見どころのあるシーンはたくさんある。

だが、その反面でストーリーが微妙だ。
ストーリー自体は王道かつ、見終わった後に少し考えると飲み込めるストーリーであり
根幹のストーリーは面白いといえるだろう。
だが、妙にグダグダっとしたストーリー構成や間延びしてしまう演出、
掘り下げ不足になってしまっているサブキャラクターなど、
いろいろな部分で「もう一歩」足りないストーリー展開になってしまっており
見終わった後に歯がゆさが残ってしまう。

説明不足な部分も「勢い」があればごまかせたと思うのだが、
その勢いが強制的に止められてしまうようなストーリー構成になっており、
急ブレーキとアクセルを繰り返しているような感覚は
世界観の浮遊感と相まって少し「酔い」すら生まれるようなアニメだ。

メインのキャラクターもパテマは確かに可愛いのだが、
その可愛さは最初に感じた印象以上には深まらず、主人公もあまり魅力を感じない。
敵キャラクターもわかりやすい敵キャラクターではあるのだが、
どうしてそこまでサカサマを憎んでいるのだろうかという疑問も生まれてしまう

極端な話だが映画ではなく「4クール」くらいでがっつりと描かれれば
もっと面白い作品になったのではと感じる世界観だ。
主人公の学校関係、パテマの地下世界の住人達など
もっと掘り下げればストーリーが生まれ、更に作品の面白さが深まり
4クールあれば描写不足だった設定の説明なども出来たはずだ

アニメーションとしては面白いのだが、
アニメ映画としては描写不足を感じる作品だった。
恐らくノベライズなどを読めばもう少し理解できる部分もあると思うのだが、
最後の「手紙」など物語の根幹的な部分の内容のはずなのに内容がわからない。
ネットで検索して解読されている文章を見つけて納得したが、
この内容ならラストで1シーンだけでも解読した文章を描写しても良かったのでは?と
理解できない部分を理解できてもモヤモヤっとした部分は増えてしまった。

個人的に嫌いじゃない作品なのだが、
大きな声で人に「この作品面白いよ!」とは進めにくい作品だった。