「雨を告げる漂流団地」レビュー

3.0
映画
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評価 ★★★☆☆(43点) 全120分

あらすじ 小学6年生の航祐と夏芽は、まるで姉弟のように育った幼馴染。小学6年生になった二人の関係性は、航祐の祖父・安次の他界をきっかけにギクシャクし始めた。引用- Wikipedia

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ギスギス無限ループ

本作品はオリジナルアニメ映画作品
監督は石田祐康、制作はスタジオコロリド。
Netflixで独占配信されており、同時に劇場公開もされている。

トロイメロイ

この作品はタイトル通り「団地」をテーマにしている。
どこか懐かしく、サビっぽく、ほこりっぽい。
夏の音が団地のコンクリートにこだまし、
夕暮れには「トロイメロイ」が流れ、
そこに住んでいる子どもたちもどこか湿っぽい感じだ。

子供が多かったころの日本は多くの家族が居た。
そんな家族が住む場所としての団地はすでに60年以上の月日が流れている。
建物の老朽化、過ぎ去りし昭和とバブルの日々の残滓が残るような
その団地の姿と雰囲気を物語の冒頭からぐっと感じることができる。

多くの人々がそこにすみ、出ていき、また新しい人がやってくる。
郷愁に駆られるような冒頭の映像は
「スタジオコロリド」という制作会社の力強さを感じる背景描写だ。

最近のアニメ映画の場合、君の名はの影響もあり
「リアル志向」になっているものの、
スタジオコロリドの場合はリアルでもはあるもののアニメ的な
背景描写になっており、非常にらしさを感じる描写の数々だ。

そんな「団地」から少年少女は引っ越している。
かつて住んでいた場所はおばけ団地といわれ、
もはや取り壊される運命だ。

思春期

この物語の登場人物のほとんどが「小学生」だ。
しかも、6年生という思春期真っ盛りで第二次性徴期を迎えた
少年少女たちは「変化」に戸惑っている。
昔は仲良く遊んでいたはずの異性の幼なじみ、
クラスメイト同士の恋愛事情、くすぐったいような懐かしさを感じる。

思春期だからこそ、男子と女子だからこそ、
そこに「恋」という厄介な感情があるからこそ、いざこざも生まれる。
そんな中で唐突に少年少女と団地がまるごと海の上に飛ばされるところから
物語が動き出す。

なぜ団地はいきなり転移したのか。
まるで団地に魂のようななにかがあり、
そんな魂が天に召されるが如く、「漂流」しつづける。
小学生の「ナツメ」だけはなぜかこの世界を知っている、
いつもは起きて戻れたこの場所はいったいなんなのか。

どうやったら帰れるかもわからないその場所で
少年少女の漂流は続く。

ギスギス

ただ序盤からギスギスしっぱなしだ。
主人公であるコウスケと、幼なじみのナツメは
とある事情からずーっとギスギスしており、それがなかなか解決しない。
子供だからこその意地の張り合いとも言えるのだが、
ギスギスした雰囲気がやたら続いてしまう。

食料も徐々につきはじめ、助けも来ない。ナツメは怪我までしてしまう。
コウスケのことが好きなレイナはナツメに苛立ちをぶつける。
極限状態だからこそのギスギスした雰囲気は人を選ぶ描写だ。
だが、子供だからこその、無邪気とも無鉄砲ともいえる感情の機微が
この作品の魅力の1つとも言える。

極限状態の漂流の中での少年少女の成長と変化が
ゆっくりと描かれている。
ただ、その「日常の描写」が尺の都合があるので仕方ないのだが、
ダイジェストで描かれたりカットされることが多く、
いまいち一人ひとりのキャラに好感や感情移入しきれない。

ノッポくん

彼は謎の存在だ。団地にずっと居るのに
コウスケは彼の存在を知らない。
だが団地が生まれた時からずっと団地にいる存在だ。
彼の腕は中盤、まるで誰も住まなくなった団地のごとく、草木が生え始める。

明確に答えが描かれる訳では無いが、見ている側は察することができる。
いわゆる「付喪神」だ。
団地の付喪神である彼は自分のこと以外は何も知らない。
なぜ漂流しているのか、なぜコウスケたちが巻き込まれたのか、何も知らない。

壊される団地が辿り着く場所、壊され、死にゆく建物が集う場所。
この場所はある種の「三途の川」のような場所なのだろう。
建物同士がぶつかり合い、いずれ「塵」とかす。
そんな世界だからこそ子どもたちが生きるには酷だ。

話が進めば進むほど子どもたちは追い込まれる。
怪我をし、血を流し、いつ死んでしまうのかもわからない。

ナツメ

この作品の最大の問題点が彼女だ。彼女は非常に面倒くさい。
両親が幼い頃に離婚したという家庭環境があるからこそ、
本心を隠し作り笑顔を浮かべる、そんなキャラクター像なのはわかるが、
本心を隠しているせいで面倒事が起こったり、肝心なところで和を乱す。

特に中盤、団地が沈みかけ、イカダで脱出しようという話になる。
だがナツメは「ノッポ」は置いていけないと頑なだ。
常に揉めて喧嘩をし、なんか解決し、また喧嘩をする。この繰り返しだ。
序盤こそそれが面白さもであったが、
中盤くらいからは同じようなパターンの繰り返しをひたすら見せられる印象だ。

喧嘩の原因もナツメなことが多く、
ナツメの身勝手な行動やセリフに「イラ」っとさせられてしまう。
勝手に一人で突っ込んで危ない目にあい、
コウスケたちが必死に助けに行くと

「ばか!こんなことして!助けてなんて言ってないのに!
 私は大丈夫なのに!」

と逆ギレしてくる。
もうヘイトがナツメに集まりっぱなしだ。
これで序盤から中盤までずっと喧嘩しっぱなしで
仲直りしたような展開さえなければいいのだが、
トラブル→喧嘩→仲直り→トラブル→喧嘩→仲直りの
無限ループを見せられたあとだから余計にたちが悪い。

唐突

終盤になるとノッポ以外の付喪神も唐突に現れる。
唐突に思い出の遊園地が現れ、唐突に付喪神のお姉さんも現れる。
あまりにも唐突に出てきて一瞬戸惑うほどだ。

ナツメは団地の付喪神である「ノッポ」を必死に助けるのに、
この遊園地のお姉さんは一切引き止めず見送る。
「レイナ」以外はその遊園地に思い入れがないから仕方ないかもしれないが、
キャラの扱いの差がひどく、どうにも冷静な気持ちで見てしまう。

結局ラストも唐突だ。
ノッポたち建物の付喪神が最終的に辿り着く場所にたどり着き、
なんか知らないが元の場所に戻れる。
ハッピーエンドで終わるものの、どうにもしっくりと来ない部分が多く、
なんとも微妙な印章が残る作品だった。

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総評:映像は素晴らしい…が

全体的に映像、アニメーションにおける表現は素晴らしい作品だ。
昭和、平成、そして令和の時代を生き抜き寿命がつきかえている
「団地」というものを舞台に、少年少女の成長物語を描き、
同時に昭和にはあった「家族」や隣人との関係性を描いてる作品とも言っていい。

団地の雰囲気、異世界を漂流する空気感や背景美術は素晴らしく、
何度もピンチになりながらも生き抜こうとする少年少女たちの
アクションは緊張感のある描写になっている。
一歩間違えば死んでしまうかもしれない、もしかしたら死者が一人くらい
でるかもしれないと感じさせるような緊迫したシーンの連続は見ごたえがある。

しかし、問題はストーリーだ。
団地の付喪神に引っ張られるように三途の川のような場所に
訪れてしまった少年少女たちという根本のストーリーは悪くなく、
その中で喧嘩をしながらも互いを理解し成長ていく流れ自体は悪くない。

ただ、全体的にシーンが間延びしてしまっており、
似たような展開が繰り返されてしまい、ずーっと喧嘩してる。
出来事も唐突におこり、なんか解決し、何かがまたおこり、解決し、
最後はふわっと終わる。

脚本がとっちらかってしまっている印象があり、
7人の少年少女のうち3人くらいしかがっつりと掘り下げられておらず、
残りの4人は必要だったのか?と感じてしまう部分もある。

決してつまらない作品ではないものの、
1度見れば2度目は見ることがないようなそんな印象を
受けてしまう作品だった。

個人的な感想:掴みどころがない

序盤は団地の雰囲気や漂流する雰囲気が良かったのだが、
徐々に突き放されるかのようにキャラクターにもストーリーにも
掴みどころがなく、面白さがするすると抜け落ちていくような感覚だ。
2時間という尺を使い余している感じもあり、
1時間半くらいで描かれていれば違ったのかもしれないと感じてしまう。

石田監督、そしてスタジオコロリドの長編映画ということで
少し期待すぎてしまった自分も悪いのだが、
PVの段階での期待値を超えないまま終わってしまう作品だった。

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