「虐殺器官」レビュー

評価 ★★☆☆☆(31点)

あらすじ サラエボで発生した核爆弾テロによって世界中で戦争・テロが激化した結果、アメリカを始めとする先進諸国は厳格な個人情報管理体制を構築しテロの脅威に対抗していた引用- Wikipedia

伊藤計劃作品はアニメ化向きではない

本作品は「ノイタミナムービー」第2弾「Project Itoh」の一環として
制作されたアニメ映画作品。
本来は2015年に公開予定だったのだが、制作会社のマングローブが潰れ、
制作がジェノスタジオに引き継がれたため2017年の公開になった。
監督は村瀬修功

見出して感じるのはわかりにくさだろう。
2022年の場面が映し出されたかと思えば2020年に戻り、
兵士たちが「殺される様」が描かれる。

9.11テロによって世界中で戦争・テロが激化した世界らしいのだが、
冒頭から小難しい言葉ばかりのセリフの応酬で地味である。
出てくるキャラクターの名前すらも覚える前に政治的な話や
テロに関する話をされても、そこに面白さを感じず、
回りくどい台詞回しのせいで余計にわかりにくさを加速させている。

テロを起こした人物がなぜ自分がテロを起こしたのかも分からず、
主人公の仲間も唐突に狂い暴走する。
それがタイトルでもある虐殺器官につながる内容になるのは分かるのだが、
きちんと世界観や主人公、設定などを理解する前に
淡々とそれを見せられても、面白さが伝わりにくい。

きちんとした世界観の説明や設定などを主人公が解説するのが、
それが映画が始まってから20分だ。
この20分で惹きつけられる何かやインパクトのあるシーンがアレば別だが、
淡々と進められた後にようやく説明されたという感じが強く、
ストーリー構成に疑問を感じる。

ただ、その20分をすぎるとようやく話が理解しやすくなる。
全世界で起こっているテロや虐殺行為、その全ての裏にいる
「ジョンポール」という人物、彼は一体何者でどんな方法で虐殺を
行わせているのか。

しかし、話が面白くなると絵が地味になる。
淡々と「ジョンポール」についての捜査を行い、スパイのような活動をする。
基本的に会話劇であるがゆえにアクションシーンのようなものが少なく、
いざアクションシーンが合っても短くすぐに終わってしまい、
映画として恐ろしいほどに地味だ。

淡々と話を勧め、真面目に作られすぎている感じが強く
「映画」として「アニメーション」としての面白さが薄い。
作画の質はよく絵はきれいなのだが、「キレイなだけ」で魅力がなく、
見ていて退屈だ。

話自体は面白い、原作を読めばもっと面白いんだろうなと感じる部分も多く、
「言語」による人間の「虐殺器官」の刺激と支配など、
テーマとしては興味深く描かれている内容も理解できる。
だが、それが「アニメ」としての面白さに昇華しきれておらず、
淡々と始まり、淡々と終わってしまった感じだ。

特に終盤の討論は哲学的であり、理解できない人も多いだろう。
理解できてもキャラクターの感情の変化や考えについていきづらく、
中村悠一と櫻井孝宏という実力派の声優だからこそ成り立っているシーンともいえ、
結末も「う~ん・・・」という感じが残ってしまうラストだった

総評

全体的に見て残念な作品だ。
ハーモニーや屍者の帝国は問題点は多いものの、
「伊藤計劃」という作家の作品の持つ魅力を感じさせてくれる作品だった。
しかし、この作品はあまりにも真面目に淡々と作れすぎてしまっており、
原作の持つ面白さは所々に感じるのだが、原作の魅力を
アニメーションという媒体で表現しきれておらず作業的なアニメ化だ。

仕方ない部分はあるのだろう。
当初の予定通り、マングローブが制作していれば
もう少し魅力的な作品になったかもしれない。
色々な事情から「無難」に作られすぎてしまった感じが強く、
作品として形にするべく無難に作ったがゆえに面白みが欠けてしまっていた。

原作を読めば印象が変わるかもしれない。
そう感じさせる部分もあり、原作から省かれている部分もあるようだ。
ただ、それを差し置いてもアニメーション的な無難さと淡々さは否めず、
前2作が色々と挑戦的な表現も多かったがゆえに、
この作品の無難さは残念でしか無かった。

個人的な感想

個人的にはこの「Project Itoh」の作品は嫌いではなかった。
ハーモニーと屍者の帝国、両者とも欠点はあれどやりたいことと
面白さが伝わる部分もあり原作を読んでみたいと感じさせる作品だった。
しかし、この作品をみたあとに原作を読んでみようとは思えず、
制作会社が潰れてしまったのは本当に残念でならない。

Project Itohはこの作品で終わりのようだ。
全3作品、原作ファンの方ならば楽しめる部分も多かったのかもしれないが、
どうにも原作を読んでる前提の作品が多すぎた印象だった。
今から見る方は原作を読んでから見たほうが楽しめるかもしれない。

伊藤計劃作品が根本的にアニメという媒体での
表現に向いていないのかもしれないが、
作品の方向性や内容自体は面白いだけに、いつかアニメーションという媒体で
文句なしに「伊藤計劃作品」を楽しみたいものだ。