アナと雪の女王

2017年3月4日

評価/★★★★★(86点)

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子供は素直に、大人はしっくりとこないけど、この作品は間違いなく面白い。

本作品はディズニーによる3D映画作品。
2014年、空前の大ヒットとなった作品だ、「ありのままに~」の曲が
うんざりするほどテレビから聞こえていたので知らない人はほぼ居ないはずだ
見だして感じるのは「氷」と「雪」の表現の素晴らしさだろう。

普通のアニメーションでは難しい「水」の表現を
3DCG映画という媒体での描写は純粋に「美しい」表現だ。
氷は固く水は流れるように、雪は柔らかく触っていないのに感触が伝わってきそうな
「水」という物質の表現の数々と光による
雪や氷や水の反射による美しさの表現があいまり
3DCG映画の利点を最大限に感じられる描写だ。

この表現は3DCG映画だからこその表現といえるだろう
その極めつけは「エルサ」の雪の魔法だ。

彼女にはコントロールすることのできない雪の魔法は
彼女の感情に合わせるかのように
時には刺々しく、時には荒々しく、時には清々しく、
時には静止し、そして時には優しく。

同じ「氷」という表現でもキャラクターの感情1つで
まるでキャラクターの心のように色々な表現を見せてくれる。

そして「表情」の描写。
序盤で出てくる「トロール」で特に感じることが出来ると思うが、
眉や目の瞬き、眉間の皺などの表情の細かい動きで
「硬い表情」になりがちな3D映画の欠点を覆い隠し、
細かかい説明やセリフではなくキャラクターの感情を表情から一瞬で感じられる。
子供も見る映画だからこその「表情」の描写による感情の表現は
ディズニーの子供に対する心意気の深さを感じる。

逆に大人が見ると説明がなさすぎるように感じるかもしれない。
セリフに余計な肉付けがされておらずシンプルかつストレートな台詞が多く、
それだけに「トントン拍子」でストーリーがポンポンと進んでいく
一見するとあまりにもあっさりとストーリーが進んでいくため
「子供向け」と感じてしまうかもしれない。
だが、そこにディズニー映画の特徴である「歌」が入ることで
子供だけではない大人も楽しめる「深さ」が出てくる。

子供にとってはキャラクターが歌を歌ってるシーンは
コミカルなキャラクターの動きで楽しそうに見える。
同時に大人にとってはキャラクターの
「細かい心理描写」を歌詞に乗せて大人の耳に響かせる。

子供にとっては難しいと感じやすい言葉とセリフを「歌」にすることで
同じものを見てるのに「子供」と「大人」ではまた違った目線で受け取ることができ
目線は違っても同じようにストーリーとキャラクターを楽しむことが出来る。

一歩間違えば子供騙しになる、一歩間違えば子供には難しい。
この繊細なキャラクターの心理描写はディズニーの力強さを感じさせるものだ
私は正直、ディズニー映画によくある、
いわゆる「ミュージカル」なシーンが子供の頃からあまり好きではなかった。

そのせいで、このアナと雪の女王もここまで
話題にならなければ見ることはなかっただろう。
しかし、この映画を見たことで「子供の目線と大人の目線」の違いを
ミュージカルシーンで埋めていたんだなというのを実感する事が出来た。

有名なシーンでもある「氷の城」が出来るシーンはその極めつけだ
「Let It Go」、邦題だと「ありのままに」は子供にとっては歌詞は非常に難しい
だが、大人にとってはその歌詞はエルザの感情そのものだ。

大人は歌詞でエルザの心理描写を深く感じることができ、
その変わりに子供は氷の描写とキャラの表情でエルザの感情を感じることが出来る。
大胆とも言える氷の魔法の数々を歌に乗せて画面いっぱいに描写し、
氷の城ができ、エルザの心を閉ざすかのように城の扉が閉ざされる。

ただ、ストーリー的には非常にシンプルだ。
制御できない氷の魔法を子供の頃から使えた「エルサ」とその妹「アナ」
2人は子供の頃は一緒に遊んでいたが、ある時、エルサはアナを傷つけてしまう。

そんな事件のせいでエルサは城に閉じ込められ他人との関わりを極力なくした
エルサが女王になった日、アナはその日に出会ったハンス王子と婚約する
混乱したエルサは反対し、
そんなエルサに対しアナも反対しエルサの魔法が暴走してしまう
国中に雪を降らし氷の城に閉じこもったエルサと話すためにアナは
途中で出会ったクリストフとともに氷の城へと向かう・・・

という所からストーリーが始まる。
前述したとおり「トントン拍子」にストーリーは進んでいく。
一瞬ダイジェストか?と感じるほどトントン拍子に進むため
いわゆるストーリーに「深み」のようなものはない。

テンポよく進むストーリーはある種の見やすさも生んでおり、
場面もどんどん変わっていく。
1シーン1シーンの切り替えが非常に早く、
わかりやすくシンプルなストーリーだからこそ
トントン拍子に進む展開も悪くはない。
子供が同じ場面ばかりで退屈する暇がないほど場面の切り替わりが激しい。

ただ大人が見ると慌ただしい感じが出てしまう。
1シーン1シーンじっくりと見ようと思っても、
すぐに場面が切り替わり状況が代わり
ストーリーがトントンと進んでいく。

同じ場面でキャラクター同士が会話しているシーンが非常に少なく、
確かに「シンプル」で分かりやすくはあるものの
大人には物足りなさを感じてしまううえに
トントンと切り替わる場面のせいで展開が「唐突」に感じてしまう

簡単に言うと「出来事」と「出来事」、
「イベント」と「イベント」の間が描写されないため
ストーリーの流れというものが薄く感じてしまう。

更にこの作品は若干複雑な「愛情」が中盤以降のストーリーの中心になる
いわゆる惚れた腫れたがテンポの早さのせいで
大人にとっては浅く感じてしまう部分もあるのに
「恋愛事情」の中にいきなり裏の顔を魅せるキャラクターまで出てくる。

それまで非常にシンプルでトントン拍子に
分かりやすいのがこの作品の面白さでもあった。
だが中盤でとあるキャラクターがいきなり豹変して裏の顔を魅せる。

シンプルイズベストで突き進んできたのに急にストーリーに一癖入れてしまい
見ている側の勝手な希望ではある、もしかしたら私の願望だけかもしれないが
「もっとストレートなキャラ描写でよかった、そんな裏の顔は見たくなかった」と
感じてしまう豹変の仕方だ。

中盤までのストーリー描写がシンプルでテンポよく進んでいたからこそ、
とあるキャラクターの豹変をどんどん切り替わる展開の中で受け止めきれないまま
中盤以降のストーリーがドンドンと進んでしまう。
これでもう少し最初から「豹変するキャラの裏の顔」が見えていれば想像しやすく、
受け入れやすかっただろう。

ストレートなキャラ描写から
一癖あるキャラ描写に変わってしまったからこそ
中盤からのストーリーが少し受け入れがたくなってしまった。

ちょっと言い方は悪いが前半と
後半で別々の脚本家が分担して書いているような感覚だ
そのせいで「しっくりとこない」ものが引っかかりつつ
終盤までストーリーが展開してしまい
終盤の展開も「ソッチの展開にしちゃったの?」と少し肩透かしを食らってしまった。

しかし、これは大人だからだ。
大人になるまでに散々「ハッピーエンド」の王道作品を見てきたからこそ、
大人の中にある王道なハッピーエンドとは
少し違うハッピーエンドになってしまったという
しっくりとこなさが残ってしまった。

全体的に見て確かに素晴らしい作品だ。
洗練され尽くした「3D」という媒体での水の描写の数々は
「3D」の表現での面白さ、表現の美しさを存分に感じさせてくれた
そして表情豊かに感情を表現しストレートに
見ている側にキャラクターを感じさせてくれた

序盤から中盤までのストーリーの流れはトントン拍子に進むものの
そのトントン拍子に心地よささえ感じさせ、王道の物語の面白さとディズニー映画の
面白さと底力を感じさせてくれた

だが、中盤からその王道から少しズレてしまった、
しかも、そのズレが修正されないままま物語が終わってしまう。
子供はそのズレも楽しめるというよりも気にならないだろうが、
大人は王道の物語を色々と見てきたからこそ
そのズレをいまいち受け入れられないまま物語が終わってしまう。

確かにハッピーエンドだ、だが、ハッピーエンドではあるものの
ゲームで言うならば「トゥルーエンド」ではないような
しっくりとこない感じが残ってしまう

中盤までストレートにシンプルに、ベタではあるが、そのベタさが良かったのに
中盤からはちょっと王道からズレてしまい大人が想像したゴールじゃない所に
ゴールしてしまった感じが強く残ってしまう。

だが、これはある意味面白い。
もちろん王道に終わらせて欲しかったという気持ちはある。
だが、子供はそんなことをは思わず素直に「面白かった!」と言ってくれるだろう
そして今から何年かしたあとにこの作品をその子供が見返した時に
子供の時とは違う感想を大人になって感じられる。

大人と子供の目線がしっかりと違う、見ている最中は目線は違うのに
同じように楽しむことが出来る、だが、見終わった後の感覚が少しだけ違う。
子供は素直に面白いと、大人は引っかかる部分はあるものの面白かったと感じる
その視線の違い、受け止め方の違いが大人と子供で違い
その違いが単なる子供騙しではなく、
作品としての「面白さの本質」なんだと感じられる

そして、ここまで流行った理由もそこにあったのかと私は推測する
他人から映画を進められるときに「面白かったよ!感動した!絶対見て!」と
ストレートに面白いを連呼されながら言われると妙な天邪鬼が働いて
「別に見なくていい」と思う人も多くいるはずだ。(私だけだろうかw)

だが逆に「面白かったけど・・・」と少し引っかかる部分がある場合は、
逆に気になる人も多くいるはずだ。
話題性ももちろんあったが、その「けど」の部分があるからこそ
ここまでのロングヒットに繋がったのではと感じられる作品だった。

今から見る人は最初は特に何も考えずに見てほしい。
素直に面白かったと言える人は本当に素直な人なのだろう、
ただ「しっくりこなかった」と感じた人はそれを「つまらない」と思うのではなく、
大人になったんだなと感じてほしい。

つまらないならば、少なくとももう一回見てみようかなとは思わないはずだ
しっくりとこないのは残るのだが、
不思議ともう一回見てしまう魅力がこの作品にはある
そのしっくりとこなさが自分の中のどこに引っかかっているのか
どうして、しっくりとこないのかを確認したくなってしまう。

自分の中で「どこが面白かったのか」「どこが引っかかるのか」を
確かめたくなってしまい2度、3度と見たくなってしまう作品だ。

個人的にこの作品を劇場で見なかったのかが悔やまれる・・・
「ディズニー映画だし」と食わず嫌いが出てしまったのがいけなかった、
この作品は本来、劇場スクリーンで味わいたかった作品だ。