映画

ディズニー流原作改変「リトルマーメイド」レビュー

4.0
リトルマーメイド 映画
リトルマーメイド
スポンサーリンク

評価 ★★★★☆(60点) 全83分

リトル・マーメイド 本編プレビュー映像

あらすじ 海底の世界・アトランティカの16歳の人魚姫・アリエルは地上の世界に憧れており、秘密の場所に隠してある沈没船から集めた宝物達を眺めながら思いを馳せていた。引用- Wikipedia

ディズニー流原作改変

本作品はディズニー制作のアニメ映画作品。
監督はジョン・マスカー、ロン・クレメンツ

海の世界

この作品の原作はアンデルセンの『人魚姫』だ。
そんな海の世界を舞台にした作品だが、
ディズニーだからこその豊かな表現に思わず目を奪われる。

海の中で暮らす人魚たちの華やかな暮らし、
海の中を自由に動き回りながら、ときおり歌い、
幸せそうに暮らしている。
なめらかなアニメーションと配色、
「表情」の細かい表現はこれぞディズニーと感じさせてくれる。

この表情の変化による感情の表現は実にアメリカ的だ。
日本のアニメも誇張して描かれている部分はあるが、
ディズニーの場合はその誇張表現の元になっているのが
「ミュージカル」であり、大きな動きと
遠くから見てもわかる表情の大きな変化が言葉だけでなく、
見てキャラクターたちの感情を感じさせてくれる。

人間の世界

そんな世界で主人公である「アリエル」は地上の世界に憧れている。
彼らの世界の掟で人間と関わり合いを持ってはいけない。
人間は「魚」をくらい、海を汚す生物だ。
海で暮らす人魚たちにとっては悪でしかない。

だが、そんな人間にアリエルは憧れている。
海に漂流する人間が使っているものをコレクションし、
それをどういうふうに使うのか想像し、
そんな想像という名の好奇心がより人間の世界へのあこがれを強めている。

彼女はお姫様だ。
海の王であるトリトンを父に持ち、優秀な姉たちもいる。
そんな環境で育ったからこそ、彼女はより地上へのあこがれを強めている。
いつか地上に行きたい、人間のように足で、道を歩きたい。
だが、人魚である彼女には不可能なことだ。

序盤はそんな彼女を掘り下げるエピソードを描きつつ、
主人公であるアリエルの憧れを見ている側にも感じさせてくれる。

アンダー・ザ・シー

そんな世界を彩るのが愉快な海の仲間たちだ。
アリエルのそばに常に付き添っている魚のフランダーは
子供だからこその可愛らしさがありる。

そんな彼女たちを監視しているのがカニのセバスチャンだ。
本来は音楽家なのだが、トリトンの命令で彼女のお目付け役になっており、
地上へのあこがれを捨てきれない彼女に、
彼は歌い出す(笑)

ディズニー映画といえばミュージカルシーンが特徴的だ。
そんな特徴的とまで言えるほどの魅力になったのは、
この作品のおかげもあるのだろう。
セバスチャンは地上へのあこがれをすてきれないアリエルに
海の素晴らしさを歌いあげる

「素晴らしいアンダーザーシー、あっちじゃ働くだけ朝から晩まで
 こっちじゃ遊んで暮らすだけ、ここではみんなハッピー!」

海の生物たちが彼の歌に合わせて歌い踊る様は
見ているだけでワクワクしてしまう。
様々な海の生物がコミカルな表現でアリエルに寄り添う姿、
アンダーザーシーという歌詞と素晴らしいという韻を踏んだ
日本語の歌詞による翻訳も素晴らしく、1度聞けば脳裏にしがみつく。

みんなが歌い踊るほど海の世界は楽しくて素晴らしい。
海で暮らす彼らにとって地上なんてもってのほか、海こそ至高だ。
そんな楽しそうな暮らしをしているのに、
それでもアリエルは地上へのあこがれを捨てられない。

それほどまでの憧れという名の好奇心、
熱意が彼女の中にはある。

出会い

そんな彼女が出会うのが「王子様」だ。
ハンサムでイケてる王子様、彼は王子様でありながら航海に身を乗り出し、
海にロマンを求めている。
そんな彼が乗る船をアリエルはこっそりと覗いてしまう。

人間と関わることはできない。
本来は海の上にでて彼らの生活を覗くことでさえ禁止されてる行為だ。
だがアリエルの好奇心は誰に止められない。
船の中にいた彼を見たアリエルはひと目で彼に惚れてしまう。

このあたりの恋愛のきっかけはかなりシンプルだ。
イケメンだから惚れたという今の時代のディズニーなら
ありえない展開ではあるものの、
憧れの地上で暮らす、憧れの人間で、しかもハンサムときたら
惚れないわけがない(笑)

最近のディズニー映画では考えられないような
「ルッキズム」的な内容ではあるものの、
この時代だからこそ許されたシンプルなラブストーリーが
この作品にはある。

現状に何かしらの不満があるヒロインが王子様と出会うことで
運命が変わっていく。
いわゆる「シンデレラストーリー」だ。

そんな王子様を嵐の海から救い出した彼女、
彼の側にいたい、彼とずっと生きていきたい。
抑えていた好奇心が彼と出会ったことで抑えきれなくなってしまう。

魔女

そんなアリエルの心の隙間をつくのが魔女である「アースラ」だ。
彼女はわかりやすくいえば悪い魔女であり、
人の欲望につけ込み、契約を交わし、約束を交わす。
その約束が守れなければアースラのものになってしまう契約だ。

明らかに怪しいことは間違いない。
だが、アリエルはそんな怪しさよりも「人間」になることを望んでしまう。
自らの「声」を代償に、三日間という時間の中で
王子様と愛のこもったキスをしなければ人魚の姿に戻ってしまい、
しかも、アースラにすべてを奪われる、悪魔の契約だ。

原作の人魚姫ではアースラの立ち位置である魔女は
ここまでいじわるではない。
あくまでも声を代償に人間の姿にしてくれるだけで
3日間という時間制限もなければ契約書も交わしていない。

このあたりからディズニーらしい原作改変が大胆に行われている。

デート

人間の姿になったアリエルは無事に王子様と再開を果たす。
だが、王子様はアリエルの姿を覚えておらず、
嵐の海から助け出してくれた「女性の声」だけを頼りに
彼女を探し続けている。
彼にとっては運命の相手だ、だが、それがアリエルだとは気づけ無い。

人魚にとって1番大事なものを失ってしまった代償、
そんな代償はありつつも、アリエルは徐々に王子と仲良くなっていく。
このシーンはコミカルに描かれている。
彼女を見守るために同じく陸に上がったセバスチャンは
料理人に食材をみなされ追いかけ回され、
アリエルは地上のものに目を光らせながら楽しそうにしている。

そんな彼女に王子様は惚れていく。
二人で楽しそうに街を歩き、川をボートを漕ぎながらデートするシーンは
おもわずニヤニヤしてしまうほどだ。
そんなデートを盛り上げる「セバスチャン」による音楽、

川辺に住まう自然を楽器にし、川辺に住まう生物をバンドメンバーに
「キス」を迫る歌をセバスチャンが歌い上げる様は
可愛らしく、同時に、そんな歌に誘われて
互いの口を近づける姿はニヤニヤが止まらない。

名前すら知らない少女、そんな少女に王子様は恋をしてしまう。
だが、そんな恋路を邪魔するのがアースラだ。

アースラ

アースラは意地悪な魔女だ、アリエルの様子をこっそり覗きながら
彼女が約束を果たせないように邪魔をする。
アリエルから奪った声を利用し王子に近づき、
王子に魔法をかけアースラ自身に魅了されるようにしてしまう。

だが、そんな困難すらも愛の力で乗り越える。
アースラの妨害に気づき、彼女に奪われた声を取り戻し、
自身こそが運命の相手だと王子様に伝えることができ、
約束のキスを交わす….

その瞬間に三日間という時間が過ぎてしまう。
契約書どおりにアリエルは人魚の姿に戻り、
アースラのものになってしまう。

めでたしめでたし

だが、そんな彼女を救い出すのも王子様だ。
巨大化し荒れ狂う海でも構わずアースラという魔女に
単身挑む彼はヒーローそのものであり、
アリエルと協力して最後は彼女を倒して終わりだ。

アリエルは父と仲直りをし、自身の行く道を認めてもらい、
人間の姿で王子様と暮らすことをになる。
おもわず、めでたしめでたしといいたくなるような物語が描かれている。

ただ原作とはかなり風向きが違う作品だ。原作の人魚姫は悲恋だ。
声を代償に人間の姿になったものの、
王子様にとっての運命の人は人魚姫ではなく修道院の女性であり、
別の女性と結婚してしまう。
人魚姫の恋は叶わず、人魚の姿に戻ることもなく、泡になってしまう。

泡になった後も魂が救われるという展開はあるものの、
ディズニー版はこのあたりの原作を大胆に変更しており、
結果的にアリエルは何も失わずに王子様と結婚して
幸せな暮らしを送っている。

ディズニーらしいわかりやすいシンデレラストーリーであり、
華やかな映像や美しいアニメーション、
愉快な音楽は耳に残り、印象深い作品ではあるものの、
今の時代に見返すと色々とご都合主義やシンプルなストーリーも
目立つところはある。

ただ、子供が見るにはちょうどいいお話だ。
83分という短い時間で描かれるシンプルなシンデレラストーリーと
愉快な音楽は1度見たら忘れられない作品になるはずだ。

総評:物語はハッピーエンドの方がいい?

全体的に見て30年前のディズニーらしい作品と言える。
原作を大胆に改変してわかりやすくハッピーエンドな
シンデレラストーリーにしつつ、
目ではそこに色鮮やかな世界を豊かなアニメーションで表現し楽しませつつ、
耳では愉快で印象の残る曲が流れ続ける。
ご都合主義はあるものの、めでたしめでたしとつけるのにふさわしいお話だ。

ただ、今見返してしまい、大人になってしまうと
「惚れる」きっかけの安易さや、ストーリーのご都合主義感も目立つ。
原作は悲恋だが、ディズニー版ではわかりやすい悪者が居て、
それを倒してハッピーエンドというお話は
子供が見る分にはいいのだが、大人が見るとご都合主義や
シンプルさが目立つ部分があるところだ。

それでも1度聞いたら忘れられない曲の数々と
アニメーションの表現は30年経っても色褪せないものであり、
30年前のディズニーらしさを感じられる作品だった。

個人的な感想:子供の頃以来

リトルマーメイドは子供の頃に見た以来で
実写映画を見る前に久しぶりに見返してみたが、
今見ると時代感を感じるストーリーにはやや驚いた。

ただ、久しぶりに見てもアンダーザーシーや、
キス・ザ・ガール、セバスチャンが歌い踊る曲は
見終わった後もしばらく自然と口ずさんでしまうほど
素晴らしい魅力を秘めている曲だと再認識できる作品だった

果たして実写映画はどうなるか…

「リトルマーメイド」に似てるアニメレビュー

「リトルマーメイド」は面白い?つまらない?

この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください