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「トモちゃんは女の子」レビュー

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評価 ★★★★☆(67点) 全13話

TVアニメ「トモちゃんは女の子!」本PV|2023年1月4日(水)放送開始!

あらすじ 幼なじみの久保田淳一郎に恋するボーイッシュな女子高校生・相沢智(トモちゃん)は、淳一郎に“女の子”として見てもらいたいがいつも空回り。引用- Wikipedia

直球ど真ん中の王道ラブコメ

原作は4コママンガな本作品。
制作はLay-duce、監督は難波日登志

告白

この作品はいわゆる「ラブコメ」だ。
ラブコメにおいて「告白シーン」というのは物語の終盤で訪れることが多く、
メインキャラクターたちにとって決定的かつ、物語の大団円につながるものだ。
そんな本来ならば終盤で描かれるような「告白」からこの作品は始まる。

しかも、男性から女性への告白ではない。女性から男性への告白だ。
女の子とは思えないというと昨今は色々不味いのかもしれないが、
「お前のことが好きだ!」という大胆かつどストレートな
「男勝り」ともいえる告白の言葉が見ている側に強いインパクトを残す。

顔は赤らめながらも両手の拳を握りしめ、
まるで今から柔道の試合でも始まりそうなほどの立ち姿の女の子。
そんな女の子である「トモ」の告白を友達である「久保田 淳一郎」は
告白を告白として受け止めてくれない。

簡単に言えば恋愛という感情を彼が彼女に抱いていない。
いわゆる幼なじみの二人が、幼なじみであるがゆえに、
少し男勝りな女の子だったがゆえに、彼女を中学生の頃まで
「男」として彼は認識している。

彼は彼女を「女の子」としてみていない。恋愛対象ではない。
だからこそ大胆不敵な告白をしても、
「友達同士」の感情としては彼は処理してしまう。

そんな彼を振り向かせるにはどうすればいいのか。
シンプルなストーリーではあるものの、シンプルなシチュエーションゆえに
先の展開が素直に気になってしまう。

女らしく

しかし、彼女はいわゆる「女らしく」できない女の子だ。
父親は空手の師範であり、そんな父の元で育ったからこそ、
彼女も腕っぷしは人一倍強く、口調も女の子らしいとはいえない。

こういう表現をしてしまうと最近は色々と言われてしまいそうで、
たかが個人のレビューでもやや配慮してしまうそうになるが、
この作品はそういった意味でも「時代錯誤」な価値観がある。
女は女らしく、男は男らしくしなければならない。

そんな昭和の時代から平成の時代、そして令和の時代にも残る
男女の価値観や男女という性別があるからこその価値観と社会は、
令和になって徐々に変わってきてはいるものの、まだ残っている。

この作品はたしかに時代錯誤な価値観のもとに作られているかもしれない。
しかし、そんな作品だからこそ、どこか懐かしいラブコメな雰囲気を漂わせている。
ヒロインが男性に対してようしゃなく「暴力」を振るう様も、
10年くらい前に流行った暴力系ヒロインを思い返すようだ。

彼女の方は彼のことが好きなのに、彼は彼女のことを女としてみていない。
そんなシチュエーションだからこそ暴力を振るっても、
その暴力に対する嫌悪感よりも夫婦喧嘩のような微笑ましさを感じてしまう。

トモちゃんを演じている「 高橋李依」さんは
どちらかといえば可愛い声のイメージのある声優さんだが、
この作品ではそんな可愛さは鳴りを潜め、
どこかドスすら効いた声でトモちゃんを演じており、
それが「トモちゃん」という女の子の魅力にもつながっている。

嫉妬

彼の方は彼女と女としてみておらず、告白されても相手にすらしない。
しかし、そんな彼の中にも無自覚な彼女への思いがある。
もう一人の幼なじみの女の子から「もし、トモに彼氏ができたら?」と
問い詰められると、露骨に不機嫌そうな顔になる。

いつ、彼が彼女を女としてみて、自身の中の言語化できない感情を自覚するのか。
1話から、この二人の関係性にニヤニヤとさせられる。
そんな二人を二人の幼なじみである「群堂 みすず」はからかいつつも、
二人の背中をおそうとしている。

決して三角関係ではなく、視聴者と同じく二人を見つめる立ち位置にいるキャラクターだ。
彼女が視聴者の代わりに進展しそうにない二人の背中を押すことで
物語が生まれ、本当に少しずつ進展していく。

どこか懐かしい雰囲気を漂わせつつ、
原作が4コママンガだからこそ、1話2エピソード構成で
テンポよく物語を展開していく。

恋愛感情とはなんなのか、友情と恋愛の違いはなんのか。
男らしさとは、女らしさとはなのか。
基本的にはコメディで描かれつつも、真摯に「男女の関係性」というものを
描いている作品と言えるかもしれない。

女の子

トモちゃんは女の子だ。
身長も高く、がたいがややしっかりしていても、
心は「乙女」そのものといってもいい。
彼の隣に座るだけでドキドキし、汗臭い体を好きな人に嗅がれたくはない。
そんな乙女心を匂わせるたびに、彼には響かずとも見ている我々には響く(笑)

スタイルも非常によく、胸も大きい。
たまにそんな彼女のプロポーション故に彼に「女」として自覚されることもある。
あくまでもそういう恋愛感情の「自覚」のためのセクシー要素であり、
萌えラブコメなどにありがちなエロティシズムはこの作品では限りなく薄い。

それゆえにそういった要素が苦手な方も安心して楽しめるラブコメになっており、
シンプルに「女の子」なトモちゃんの可愛らしさと
なかなかかなわない恋愛模様をニヤニヤしながら楽しめる作品だ。

男の子

そんなトモちゃんを女扱いしない彼こと「久保田 淳一郎」ではあるものの、
彼はときおり「男らしく」かっこよさをみせてくれる。
鈍感で彼女の心の機微に気づかずとも、彼女が不安そうにしていれば
なにかあるのかを察し、彼女のために動いてくれる。

そんな彼がかっこよく見えてしまう。
トモちゃんというこの作品の主人公が「惚れる」理由もわかる
ヒーローの魅力が彼にはきちんとあり、鈍感ではあるものの、
キャラクターとしての、男としての魅力があるからこそ、
二人の恋愛模様を温かい気持ちで見守っていられる。

彼もまた彼女が女の子であることはわかっている。
だが、長い間、彼女を「男」として認識し、なおかつ「親友」という
友達という関係性を築いていたからこそ、
彼女が「女」であるということや自身の中にもあるはずの「恋愛感情」を
自覚し、脳内で処理しきれていないだけだ。

緩やかに、少しずつ、彼の中の感情の処理がされていき、
彼の態度も徐々に変わっていく。
一歩進みながら、半歩戻り、また一歩進む。

サブキャラクター

あくまでもメインのストーリーはトモちゃんと「久保田 淳一郎」だ。
そんな二人のそばにはサブキャラクターがいる。
もう一人の幼なじみの「群堂 みすず」や、
トモちゃんと同じ柔道部の先輩である「御崎 光助」、
そんな「御崎 光助」の婚約者の「キャロル・オールストン」など。

彼女らにも彼女らなりの恋愛模様があるものの、
あくまでも二人の恋愛模様の「スパイス」として描かれており、
そんな他のキャラクターたちの恋愛模様がまた
二人の恋愛模様を一歩推し進める。

彼女たちの日常がコメディを交えつつ、
徐々にラブコメらしい恋愛模様を推し進めていく。
メインの二人だけでも物語は成立するものの、
二人だけではダレてしまったり飽きが生まれそうなところを、
うまくサブキャラクターも追加することでダレや飽きをうませていない。

中盤くらいになると二人は友達のままではあるものの、
そうではいられなくなってくる。
徐々に「男女の関係性」に踏み込みそうな二人の異性の友人同士。
どこか歯がゆさすら感じるラブコメを久しぶりに味わう感覚だ。

情欲

このまま友達で居たい。変わりたくないという思いもありつつも、
同時に男として女である「トモちゃん」に勝ちたいと思っている。
友として、男として彼女を超えることで何かを変えようとしている。
男だからこそ女である彼女に守られるのではなく、
守れる男になろうとしている。

女らしさを求めるトモちゃんと男らしさを求める彼。
ふたりとも似た者同士だ。お似合いのカップルになれる二人だ。
あとは相沢 智が「男らしさ」にこだわらなければいい。
女の子らしく、可愛らしく着飾る彼女を目の前に彼は
徐々に自らの「理性」で抑え切れないほど「本能」が顔を出し始める。

思わず抱きしめそうになったり、思わず胸がドキドキしたり。
そんな感情に流されそうになるものの、
なかなか流されず、自身の中の恋心を自覚できないままだ。
だが、昔のように本気で「殴り合う」事はできないことは自覚している。
彼女を女の子と徐々に認識し始める彼は愛らしさすらある(笑)

そんな二人の変化をサブキャラクターたちと見守るのがこの作品だ。
男らしかった女の子が女の子らしくなり、
そんな女の子らしくなっていく女の子に男の子はドキドキさせられている。

構図としてはそれでしかないのだが、
男の子が女の子の女の子らしさを受け入れきれないからこそ
この作品らしい物語になっている。

治安

ただ、この作品の唯一の欠点と言っても良いのだが、
作品の世界観というか彼らの周囲の治安が悪い。
因縁をふっかけてくる上級生がいたり、ヤンキーみたいなのに囲まれたり、
ナンパする男も異様に多い(苦笑)

これが1回くらいならまだしも、何度も似たように絡まれることが多く、
そのたびに「トモちゃん」が撃退し、彼がけりをつけるパターンが多い。
若干、このパターンの多さにマンネリを感じてしまうのは
残念なところではあるものの、こういったヤンキー要素は
昔懐かしのラブコメっぽさもあり、妙な郷愁感にすらかられる。

そういった部分は気になるもののメインの二人が緩やかに変化していく中で、
サブキャラクターたちも少しずつ変化していく。
その変化がまたメインの二人の変化をうみ、
ストーリーが少しずつ進んでいく。

対等に

ふとした瞬間に感じる彼女が「女」であるということ。
だが同時に無二の「親友」のままで、
子供の頃の性別を気にせずに対等に勝負しあえた関係で居たいという
思いも自分の中に生まれている。

そんな彼の気持ちを彼女も理解している。
勝った負けたではない「対等」な関係でいる。
そこに男も女も関係ない。
男と女だからこそ友情から恋愛へと変わることもある。ただ、それだけだ。

しかし、それだけが難しい。
彼女を女であると認識し、前と同じ関係性になれないことに悩み、
女であると認識してしまったがゆえに異性として意識してしまう。
時折描かれる彼らの「過去」回想が彼らの心理を繊細に描いている。

試しに他の女の子と付き合ってみたり、殴り合ってみたり、
素直な気持ちを吐露してみたり。
思春期だからこその迷いと成長と変化が如実に見えるのがこの作品だ。
人は変わっていく、変わらないものはない。

その変化を相手がどう受け止めて、どう自分も変化するのか
そんな変化していくキャラクターたちの心理描写が愛くるしく
だからこそ、彼らに愛着を持つことができる。
二人の恋路を最後まで見つめていたくなる。

モラトリアム

この作品はいうなれば「モラトリアム」な作品だ。
メインキャラの二人が恋人同士になることはわかっている、
それを彼ら自身もわかりつつも、特に彼の方は決定的な関係性に踏み込めずに、
今のままの「曖昧」ともいえる関係性を保ちたいという気持ちと、
決定的な関係性に変化しなければならないという気持ちに挟まれている。

そんな青春の「猶予期間」のようなものを描いている。
サブキャラクターたちも同じだ、二人の幼なじみも二人の関係性を
どうにかしようと序盤から動いていると同時に、
どこか二人がこのまま付き合ってほしくない、このままでいてほしいという
「モラトリアム」におぼれている。

人は変化を恐れる生き物だ。
だからこそ「モラトリアム」という概念も生まれる。
そんなモラトリアムにも必ず終わりはある。
1話であれだけストレートな告白をしていた「トモ」ですら、
親友という関係性を終わらせて良いのかという迷いがある。

それでも二人は本音をぶつけ合う。
隠していた気持ちを、偽っていた気持ちを、拳に乗せて。
素直になっても、素直な気持ちを受け入れられない。
両思いなのに、両思いになったのに
そもそも「付き合う」とはどういうことなのか。

男女の関係性、思春期の心の機微をこの作品はコメディではあるものの
本当に丁寧に描いている作品だ。
二人の関係性が決定的になる「12話」は思わずニヤニヤしてしまう。

彼女でも、親友のままでいたい。
この関係性を壊したくないからこそ、この関係性のままでいたい。
それもまたモラトリアムではあるものの、
以前の関係性と親友であるということは変えずに、
「恋人同士でもある」という関係性が増えただけだ。

それもまだモラトリアムに溺れてるのかもしれない。
だが、二人は確実に変わった。
そんな関係性の変化を1クール、どストレートに見せてくれる作品だった。

ちなみに最終話はエピローグのようなものだ。
二人のバカップルを1話まるまる楽しむことができる(笑)

総評:男らしく女らしく、それでもいいじゃないか

全体的に見てまっすぐなラブコメ作品だった。
どこか平成初期っぽさをかんじるような内容ではあるものの、
好きな人に女として見られていない「トモちゃん」と、
そんな彼女への思いを受け入れきれてない彼の変化が丁寧に描かれており、
思春期だからこそのモラトリアムな心理描写が素晴らしい作品だった。

1話1話少しずつ丁寧に二人の変化が描かれている。
どうしてこんなこじれてしまったのか、
それぞれが「男らしさ」や「女らしさ」にこだわるのは
どこか前時代的な要素かも知れないが、今の時代だからこそ、
そんな前時代的な要素を丁寧に描いたラブコメに仕上がっている。

サブキャラクターたちの立ち位置と魅力も素晴らしく、
そんなサブキャラクターがいるからこそメインの二人が際立ち、
サブキャラクターたちの恋愛模様も気になってしまう。
特に「幼なじみ」な彼女、腹黒い彼女が素直になる瞬間は
ちょっと可愛らしさが爆発していた。

男らしく、女らしく。
男らしいこだわりを見せる「久保田 淳一郎」と
女らしくなろうとする「トモちゃん」。
そこを丁寧に描きつつ、それぞれのキャラの
男らしさと女らしさを感じさせてくれる。

結局、男と女だ。しかし、二人は恋人になったものの親友のままだ。
二人が出した答えがこの作品らしく、微笑ましい。
1クールできれいにストーリーをまとめていたのも好印象だ。
告白で始まり、告白で終わり、キスで始まる。

最後まで男らしさを見せ貫き通した「久保田 淳一郎」と
女らしく可愛らしい「トモちゃん」。
変に引き伸ばさずに起承転結、1クールで1つの作品を
最初から最後までしっかりと味わせてくれる作品だった。

個人的な感想:ベタでも

こういった女性が男っぽい要素があるというような作品は
少女漫画な作品にはよくあったものの、最近はアニメではとんとお見かけしない。
それだけに一周回って新鮮に感じるような「トモちゃん」の設定だったり、
そこに負けずに男らしくあろうとする「久保田 淳一郎」のキャラが素晴らしかった。

最初は鈍感な「久保田 淳一郎」に一瞬ストレスを感じるものの、
中盤になればその鈍感さの理由も明らかになり、
どんどんと彼のことも好きになってしまう。

メインの二人にしっかりと愛着を持てて、
その二人の結末を1クールで見ることができる。
アニメは年間300本以上作られる時代だが、地味にアニメで完結する作品は少ない。
大体が続きは原作で!となってしまっていたり、
いつまでも終わらなかったりする作品ばかりだ。

そんな中でこの作品は1クールで作品をすっきりと終わらせている。l
最近はなかなか味わえない1本の作品としての満足感を
感じさせてくれる作品だった。

「トモちゃんは女の子」は面白い?つまらない?

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