ラブコメ

「それでも歩は寄せてくる」レビュー

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評価 ★★★☆☆(50点) 全12話

TVアニメ『それでも歩は寄せてくる』ティザーPV

あらすじ 将棋初心者・田中 歩は八乙女うるしに一目惚れして将棋部へ。引用- Wikipedia

ラブコメの波動

原作は漫画な本作品。
からかい上手の高木さんでお馴染みの「山本崇一朗」さんによる作品。
監督は湊未來、制作はSILVER LINK

ストレート

.
この作品はかなりストレートな作品だ。
からかい上手の高木さんは年頃の男の子と女の子が
互いに恋愛感情を持ちつつ明らかに相思相愛ではあるものの、
告白したり付き合ったりせず、その1歩か2歩手前の関係性の中で
高木さんによる「からかい」が作品の肝になっていた。

しかし、この作品の場合は1話冒頭から
「すごいですね先輩は将棋が強くて、そのうえ可愛いですし」
とヒロインのことを主人公が褒めている。
明らかに主人公である「歩」は彼女のことが好きだ。

彼女しか居ない将棋部に将棋ができないのに入っており、
先輩の方も「自分のことが好きなはず」と分かっている。
だが、そんな状況なのに歩は彼女のことを好きと認めない(笑)

これで先輩のことが好きじゃないなら、とんだジゴロだが、
もちろん歩は彼女のことが好きだ。
しかし、彼はとある条件を自らに課している。

「将棋で勝ったら彼女に告白する」

そんな願掛けのような条件を自分に課してしまったために、
明らかに相思相愛の関係性なのに付き合うことにならないという
微妙な関係性が生まれている。
あえていえば、高木さん達よりも1歩進んだ関係性におり、
もう一歩踏み出せば付き合うのにその一歩を踏み出せずに居る。

「付き合う」王手はかかっているのに勝負がつかない。
そんな歯がゆい二人の関係性を楽しむ作品だ。
告白してないのに過剰なほど「かわいい」「綺麗」と褒める歩と、
そんな歩の言葉に照れてしまう先輩、
1話からある程度パターン化している部分は気になるところではある。

将棋部

一応、この作品は将棋アニメともいえるのだが、その要素はほぼない。
正式な部活ではないため大会に出るという流れも生まれず、
将棋のついての知識や勝負の駆け引きなどもほぼない。

別に「オセロ」でも問題ない要素だ。
将棋要素を期待するとかなり肩透かしを食らうことは間違いない。
あくまでも将棋はラブコメを盛り上げるためのおまけだ。

一応棋士の方が監修しているようで譜面はしっかりしているようなのだが、
そこに意味はない。

別カップル

序盤からパターン化している部分もあるせいか、
かなり早い段階から新キャラがどんどん追加される。
主人公の友達である「タケル」と同じ図書委員の「桜子」、
この二人も相思相愛ではあるものの付き合っては居ない。

主人公たち以外にも付き合っていないカップルを投入することで、
パターン化を防いでいる部分はあるものの、
がっつりと主人公たちと絡むわけではなく、
あくまでも「サイドストーリー」的な要素であり、
マンネリを防いでいるとは言い切れない。

1話の中に複数のエピソードを詰め込むことで
テンポ感を出そうとはしているものの、
あまりテンポが良いとはいい切れず、
似たような会話を状況を変えて繰り広げている感じが強い。
はっきり言えばワンパターンだ。

高木さんの場合、本当に徐々にではあるものの進展してきたり、
たまに出る「クリティカル」が作品の刺激になっていたが、
この作品にはそういうものがない。
もうあと1歩進めば付き合う二人なだけに進展もクソもない。

主人公の褒め方もワンパターンであり、先輩の反応もワンパターンだ。
それゆえに見ているうちに飽きてくる。
このあたりは演出の悪さもあるかもしれない。
決定的なシーンや照れ、そういう「決め」のシーンを
さらっと見せている部分が多く、印象に残らない。

イベント

1話以外、ほぼ毎話何かしらのイベントごとが行われている。
2話では体育祭、3話では文化祭、4話ではクリスマス、5話は正月、
6話はバレンタイン、7話は進級と序盤から中盤まで
なにかしらのイベントが常に起こっている状況だ。
そんな状況が変わってもやっていることは変わらない。

テンプレ的なイベントを消化していきながら、
関係性何かしらの変化があればいいが、特にない。
一応、名前で呼ぶという些細な変化はあるものの、
大きく変化してしまえばこの作品は終わってしまうため、
変化させられないのはわかるが、
いい加減早く付き合えといいたくなってしまう。

4話では一応、ハンデがある中で主人公が勝つ。告白チャンスだ。
しかし、あくまでも「ハンデなし」での勝利を主人公は望んでいる。
なぜそこまで勝ちにこだわるのかよくわからない中での、
こだわりはあまり納得できず、
どうして彼女を好きになったのか、将棋部に入った過程も
中盤まで描かれないためいまいちノリきれない。

ただ、この手の作品では珍しく、きちんと「時間」が進んでいる。
サザエさん時空の作品ではなく、きちんと時間が進むことで
「タイムリミット」も迫ってくる。
彼女が先輩だからこそ、自分よりも1つ上だからこそ、
彼女に勝つための時間は残り少ない。

変化

1話から6話まで大きな変化は現れていない。
だが、時間はひたすら流れ続ける。
1年の月日がたち、彼らが進級することで大きな変化が生まれる。
「恋のライバル」だ。

かつての主人公の後輩であり、主人公を慕い、
彼を剣道部に引き抜こうと勝負を仕掛けてくる。
ライバルが現れたからこそ、自分以外の誰かが彼を求めていることを
知ったからこそ、彼女は自覚してしまう。

彼を誰にも奪われたくない、自分のそばにいてほしい。
自身の中にある「恋心」からくる独占欲、
自らの気持ちを自覚することで変化が生まれる。

1話ごとにかなり早い時間の流れでイベントを
ただただ消化している感じが強かったが、
主人公の後輩を出すために時間の流れを速めたことを考えれば納得だ。
恋のライバルが現れて危機感を感じるからこそ、
変化が生まれる。

二人きりの将棋部ではなくなったからこそ
序盤から中盤までのワンパターンさにも変化が現れており、
ラブコメとしての面白さが極まってくる。
サイドストーリー的に描かれた主人公の友人たちの恋模様にも
変化がうまれ、ラブコメの波動が強まることでこの作品は面白くなってくる。

自覚

先輩は最終話にしてきちんと自身の恋心を自覚する。
修学旅行という少し離れ離れになる期間があったからこその
恋の自覚は可愛らしく、ヒロインとしての魅力が極まってくる。

そんな中での勝負だ。
まだハンデはある、だが、ハンデの差は少なくなり、
段々といい勝負ができるようになってくる。
いつか正々堂々と平等の状況で勝つこともできるかもしれない。
その時に、ようやく二人は結ばれる。

そんな「可能性」を感じさせる二人のラストは悪くない。

「歩、勝ってから言え」
「勝ってから言います」

1クールで区切りの付いたラストはスッキリとした余韻を
残してくれる作品だった。

総評:王手ならずとも

全体的にみて序盤から中盤まではパターン化してしまっており、
イベントを淡々とこなしている感じが強くマンネリ気味の作品だ。
しかしながら、そんなイベントを淡々とこなしたからこそ時間が流れ、
「進級」と「新入生」という変化が生まれ、
二人だけの世界観ではなくなることでラブコメらしい面白さが生まれている。

作画のクォリティは普通であり、演出は弱い部分が多いものの、
キャラクターたちの可愛らしさはしっかりと感じられる部分が多く、
主人公とヒロイン、そしてサブキャラたちの恋愛模様も
バランスよく描かれており、ラストはあえて告白させず、
「可能性」と余韻を感じるラストに仕上がっている。

惜しむべきは序盤から中盤まではマンネリ気味の展開の数々だ。
キャラ萌え的な部分が多く、その割には主人公が将棋部に
入った過程などが中盤にしか描かれず、
なかなかキャラに愛着や感情移入が生まれづらい状況になってしまっており、
この序盤のマンネリ感がなかったら
もう少し違ったのにと感じてしまう作品だった。

個人的な感想:飲み込まれた

ラブコメとして悪くない作品ではあるものの、
尖った部分はなく、あくまでも「悪くない」止まりだ。
高木さんブームのあとに似たような作品が多く生まれ、
そんな中で高木さんの作者原作のアニメがどう差別化してくるかと
期待した部分はあったが、
そのブームに飲み込まれてしまっているような印象の作品だった。

最後の展開も言い方を変えれば結末を引き伸ばしてるに過ぎない部分もあり、
原作がまだ続いてることを考えると、まだ引き伸ばしてるのだろう。
もし2期があっても告白という結果にならなかったら、
流石に「引き伸ばしすぎ」と感じてしまう可能性も高いため、
2期がもしあったら色々と気になってしまう作品だ。

「それでも歩は寄せてくる」は面白い?つまらない?

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