青春アニメ

全てがあまりにもキツい「千歳くんはラムネ瓶のなか」レビュー

1.0
千歳くんはラムネ瓶のなか 青春アニメ
画像引用元:©裕夢/小学館/チラムネ製作委員会
スポンサーリンク

評価 ★☆☆☆☆(15点) 全12話

TVアニメ『千歳くんはラムネ瓶のなか』本PV|2025年10月7日より放送開始

あらすじ 高校2年生の千歳朔は、スクールカーストトップに君臨するリア充。天然姫オーラの同じくリア充である少女、柊夕湖を始めとした通称「チーム千歳」と言われるメンバーと日々、青春を謳歌していた。 引用- Wikipedia

全てがあまりにもキツい

原作はライトノベルな本作品。
監督は德野雄士 、制作はfeel.。
なお本レビューは9話までの視聴でのレビューとなっている。

延期と分割2クール

この作品は2025年秋アニメとして放送されたのだが、
6話以降の配信が制作上の都合で一ヶ月ほど延期になり、
年内で10話までの放送で終わる予定になっている。

11話以降の放送がいつになるかは未定であり、
しかも分割2クールとして制作予定なので続きがいつになるのか
全く読めない段階だ。
そのため現段階でのレビューを書き記しておくことにする。

ポエミー

1話冒頭からかなりきつい。
ポエミーな主人公のセリフで始まるのだが、このポエミーさはかなり鼻につき、
青がなるだの青が咲くだの青に染まる青に青に青にと
メインキャラが青でなんか色々といっているのだが、
ようは色々と青春を過ごしてますよといいたいのはわかる。

分かるがまどろっこしいだけだ。
その詩的な表現が非常に鼻につき、文章で読むならば気にならないかもしれないが、
それをいざセリフとして聞かされると、このポエミー感は
かなり厳しいものがあり、作品全体でそれがちょこちょことある。

詩的な表現は賛否がわかれやすい。
それが抽象的であればあるほど賛否が別れやすく、
個人的にはこの作品のポエミーさは受け付けなかった。
ライトノベルの主人公は心の声、モノローグが多めなことが多いのだが、
この作品はそれが顕著だ。

陽キャ

主人公が各ヒロインの「印象」を話す時も遠回しな表現で表すことが多く、
いざ心の声でなく現実で喋りだしても独特なうざさがある。
もうシンプルにきつい。
例えばヒロインの一人を紹介するときがこうだ。

「柊 夕湖、周りから俺の正妻なんて言われている」

この一文だけでキツさが伝わるだろうか。
この作品の主人公はいわゆる「陽キャ」なのはわかる、
イケメンで周りには美少女がいっぱいいてモテモテ。
頭も良くて運動神経もいい。そんな主人公だ。

そういう主人公を「描きたい」のはわかるが、
この陰キャが考えた陽キャっぽい陽キャは嘘っぽさが凄まじく、
「実は陽キャを演じている」と言われても信じられるほどの
嘘っぽい陽キャだ。だが、作中では本物の陽キャとして扱われてるからこそ
余計に厄介だ。

もう喋るなと思うほどでてくるセリフの1つ1つのキツさがやばい。
主人公は教壇に立ちこんな事を言う。

「こほん!俺の名前を知らないやつなんていないだろうけど、
岩波先生の専属メイドこと千歳 朔ちゃんです!
ちなみに裏ではヤリチンクソ野郎と言われてます!」

どうだろうか(苦笑)
これで笑える人はこの作品に向いている、だがうざいと感じてしまえば終わりだ。
この作品はこのノリがずっと続く上に、更にきつい要素がある。

陰キャ

陽キャな主人公は担任の先生から頼まれて
引きこもりの生徒をどうにかする役目を負う。
引きこもりな生徒は「陰キャ」であり、そんな陰キャを、
引きこもりをどうにかするというのがこの作品の物語だ。

そんな陰キャは当然陽キャを拒否する。
色々なヒロインを引き連れながら陰キャの家にいき、説得を試みる。
その中でヒロインと主人公のいちゃいちゃを見せられるのだが、
見かけはいいヒロインばかりではあるものの「空虚」だ。

積み重ねもなく最初から嘘のように主人公への好感が高い。
主人公と彼女たちがここに到るまでの日常があったゆえの
好感度なのはわかるが、それを見せてくれないため、
「嘘っぽさ」が凄まじい。

主人公は三枚目を演じつつ、心の底を明かさない。
そういう感じのキャラ描写なのは分かるが、
その設定のせいでより嘘っぽさがましている。

魂がない

主人公のためなら何でもする都合のいい女たちが、
主人公とともに陰キャの説得を試みる。何が面白いのかがまるでわからない。
ヒロインたちが本当に主人公にとって都合のいい人形のようにしか見えず、
ヒロインだけでなく全キャラ「それっぽい」なにかでしかなく、
キャラクターに魂がこもっていない。

あまりにも空虚なキャラゆえに嘘っぽいセリフと嘘っぽい展開だらけだ。
1話の終盤で主人公が陰キャの部屋に侵入するために窓ガラスを叩き割るのだが、
GTOのマネごとにしか見えず、本当に一挙一動がこれほど
浅く薄い作品は珍しい。

キャラクターにキャラクターの「説明」をさせて、
それ以上の何かがなく、生っぽさのようなものがない。
陽キャっぽい陽キャ、陰キャっぽい陰キャ、ヒロインっぽいヒロインだ。
全部ぽさでできている。

指南

陰キャとはあっさりと和解する。
彼が引きこもっている理由も「女の子に振られたから」であり、
そんな陰キャが振った女を見返すために陽キャな主人公が指導する。
ようはずっと陽キャが陰キャにマウントを取る話だ。何が楽しいんだろうか。

会話もポエミーなセリフ以外にも、まるで演劇のような嘘っぽさが凄まじい。
主人公だけならまだしも、メインキャラ全員そうだ。
歯が浮くような、背筋が凍るようなダサいセリフで
繰り出される会話劇は厳しいものがある。

陰キャも太っていたのに2週間ほどであっさりと痩せる。
2ヶ月ならともかく2週間だ。
このあたりも嘘っぽさが強まる原因でもある。

リア充、陽キャが陰キャを変える。
この流れも「弱キャラ友崎くん」などでも描かれた内容であり、
「弱キャラ友崎くん」を観ていると、この作品の浅い展開に萎えてしまう。

浅い展開ゆえに結末も浅い。
陰キャが自分を変えて自分を振った女の前に行くのだが、
結局いじられてしまう。挫けそうになったときに
主人公様が登場し、女たちにマウントを取る。

主人公がかっこいい!と思わせたいシーンなのは分かるが、
見ている側がこの主人公を一切かっこいいと思えないため、
ズレまくった感じが生まれてしまい、
決めるシーンでもポエム全開なゆえに、余計に薄ら寒くなってしまっている。

下ネタ

毎話毎話ちょいちょい下ネタが挟まる。
セクシーシーンというわけではなく、ナチュラルにDカップや、
下着などそういう話を会話に盛り込む。
それが別に面白いわけでもなく、ひたすらに寒い。

原作ではもっと過激な言葉が使われているらしく、
アニメではナチュラルにしているようだ。
それほど原作は会話が過激なのだろう、ポエミーな会話劇も、
ウリなのはわかる、怒涛の会話劇がウリなのもわかる。
だがひたすらに滑っている。

全部の会話をここで記すわけにはいかないが、
この作品の会話劇を一言で言えば
「センスのない西尾維新」だ。
化物語のあの会話劇がもしズレたセンスで作られたらこんな感じなんだろうと
思うほどセンスを感じない。

中盤からはヒロインの物語になり、序盤よりも
ストーリー自体はいささかマシではあるものの、五十歩百歩だ。

どうでもいい

中盤はヒロインがストーカーに遭ってヤンキーみたいなのに襲われて、
そんなヒロインを主人公が守るために彼氏のふりをする。
ありきたりでよくある展開を、ダラダラとポエミーなセリフ全開で描く。

基本的にこの作品の治安は最悪だ。
福井県を舞台にしているのだが、ヤンキーが襲ってくるのは当たり前、
クラスの中でも陰険な事件が起こり、クラス同士の言い合いも陰湿だ。
主人公の軽口とポエミーというシュールさがあるからこそ見てられるが、
陰湿なストーリー展開はじめじめしすぎてカビが生えそうだ。

このカビの生えそうな展開をグダグダグダグダ続けるため、
どうでも良さが強まる。
10話以降の話は延期してしまったものの、
もう見ることもないかもしれないと思うほど「どうでもいい」という
感想で頭が埋め尽くされてしまう作品だった。

総評:1から10まで嘘くさい

全体的に見て、2025年秋アニメとして悪い意味で話題になったが、
その理由が納得できるほどキツすぎる作品だ。
モノローグの多さやポエミーなセリフなどはライトノベル原作アニメでは
あるあるではあるものの、それにしたって度を超えている。
センスのない怒涛の会話劇は一切頭に入ってこない。

1話の時点で主人公とヒロインの関係性が既に構築されているのも厄介で、
しかも序盤は主人公とヒロインの話ですらなく、
主人公と中盤以降は特に居ても居なくてもどうでもいい陰キャの更生話だ。
そのせいでヒロインの描写が非常に薄くなり、
中盤からヒロインの掘り下げが始まっても特に思い入れも生まれない。

色々なヒロインが居て主人公に想いを寄せているのはわかる。
ただ、そういうキャラクター設定だけを見せられている感覚で、
その設定のまま動いているキャラクターに魂のようなものを感じず、
そこに浮ついたセリフとセンスのない会話劇が合わさることで
強烈な嘘っぽさが生まれている。

展開自体も序盤は浅い「弱キャラ友崎くん」をやり、
中盤ではどうでもいいゴタゴタを引き伸ばしている。
主人公のセリフや行動もいちいち演技がかっており、
そういうキャラ設定的な感じなのは分かるが、それにしたって嘘くさい。

10話以降、及び分割2クール目からどうなるかはわからないが、
このテイストはおそらく変わらないのだろう。
正直シンプルに見るのがきつく、10話以降を見るのを
身構えてしまう作品だった。

個人的な感想:やべぇ…

今の10代が見れば違うのかもしれない。
化物語やはがない、あの手の作品も独特のキツさが無いと言えば嘘になる。
だが、あのころの10代や20代はそれを素直に楽しんで受け入れていた。
もし、今、化物語やはがないがあれば、同じような感覚になるのだろうか?

とも思ったが、どちらの作品も私は30代以降に触れているため
おそらくこの作品が突出してやばいのだろう(苦笑)
コミカライズもちらっと読んでみたが、同じようにきつかったが、
アニメでは声がつきアニメーションによる演技があるだけに余計に
キツさが強まっている印象だ。

アニメーションのクオリティだけはムダに高いが、
宝の持ち腐れで終わりそうな作品だった。

「千歳くんはラムネ瓶のなか」に似てるアニメレビュー