評価 ★★☆☆☆(21点) 全134分
あらすじ 誇り高き騎士の国ローハンは偉大なるヘルム王に護られてきたが、突然の攻撃を受け平和は崩れ去ってしまう 引用- Wikipedia
全員脳筋
本作品はロード・オブ・ザ・リングのスピンオフ作品。
監督は神山健治 、制作はワーナー・ブラザース・アニメーション
SOLA ENTERTAINMENT 。
200年前
本作品の舞台はロード・オブ・ザ・リング本編から200年前の時代になっている。
スピンオフではあるものの、時代が違うため、
本家本元のロード・オブ・ザ・リングのキャラが出てくるわけでもなく、
原作で言えば「偉大な王」として語られたくらいのキャラでしかないヘルム王という
キャラを主軸にした話になっている。
スピンオフではあるものの、設定の段階でスピンオフ感は非常に薄く、
エルフやホビットといった種族もでてこない。
オークがチョロっと出てくるくらいで、
ロード・オブ・ザ・リングという名を冠してはいるものの、
ファンタジー感は非常に薄い舞台設定になってしまっている。
そんな原作では少ししか語られていない「ヘルム王」の娘である
ヘラを主人公とした作品になっている。
原作で少ししか語られてないキャラの娘を主人公にした作品というのは
もうほぼほぼオリジナル作品だ。
作画
本作品は作画にかなりこだわっていいる、CGを使わずに手書きにこだわる。
その主義趣向は素晴らしく、冒頭から馬の動きや大鷲の羽ばたきなど
圧巻の描写だ。特に最近は「馬」などはでてきてもCGで描かれてしまうことも多い。
動物は作画コストが高い、だからこそ省略されたりCGで描かれがちだ。
だが、この作品は手書きにこだわっている。
しかも、全シーンにわたって事前に「モーションキャプチャー」で
役者が演じたものを撮影し、その動きをCGにするのではなく、
それをベースにして手書きのアニメに仕上げている。
感覚的にはロトスコープに近い。
確かに映像自体はそういいった工夫を感じられるものになっている。
細かいキャラクターの動きは13万枚という作画枚数を感じさせるほどの
ぬるっとした動きになっており、素晴らしいアニメーションだ。
背景の描写も素晴らしく、こだわりまくった調度品や服装が
この作品の世界観を後押ししている。
王
主人公はローハン王国の姫であり、そんなローハン王国は
様々な問題を抱えている。その中の1つが異民族だ、
異民族のフレカは、主人公の幼馴染であるフレカの息子と
主人公を結婚させることで、最終的にローハン王国の実権を握ろうと考えている。
そんな彼の野心を感じ取った王はフレカと殴り合いを始めたかとおもえば、
一発でフレカを殺してしまう(笑)
たった一発殴っただけだ、この王、あまりにも強すぎる。
殴る前にご丁寧にゴツい指輪まで外していたのにだ。
魔法の力や呪い、毒などではなく、シンプルに力が強すぎる。
そんな王に自らの父を殺されたウルフは、ローハン王への復讐を誓う。
幼い頃に仲良くしていた主人公とウルフ、
政治が、国同士のいざこざが、父親同士のトラブルが
幼馴染という関係性を壊してしまう。
どういう状況なのかというのは理解できるものの、
王様のあまりの強さに笑いのほうがかってしまう。
フレカの短絡さ、王の自らの力の誤り方、
喧嘩を売ったほうなのに復讐を誓うウルフ。
全員短絡的だ。脳筋といってもいい。
幼なじみのウルフも「俺が嫌だったのか!俺を受け入れればよかったのに!」
と父親の野心そっちのけで大暴走だ。
冒頭だけでなく、ちょこちょこと「ナレーション」で
物語を進行してしまうのもかなり気になるところだ。
戦
ウルフが軍勢を従え、王として君臨し、戦争を仕掛けようとしている。
そんな中でヘラはウルフにさらわれてしまう。
それにお怒りなのは「王」だ。ヘラ自体は無事に救出されたものの、
ウルフの軍がどれくらいの規模なのかわからず、
一旦撤退して戦略を考えようと進言する部下を王は許さない(笑)
臆病者は王のそばにいることは許されない。
戦で、力で全て解決しようとするのがヘルム王である。
ただ、冷静に考えればこの戦争の原因はヘルム王が
自らの力を見誤って異民族のフレカを殺してしまったことだ。
そんな脳筋な王はあっさりと敵の策略にハマり、
多くの息子を失ってしまい、自らも負傷してしまう。
籠城を強いられてしまう。
どいつもこいつも短絡的かつ脳筋な思考しかしておらず、
頭の悪いストーリーが進んでいくのだが、
中盤になるとこの作品を「脳筋 」と決定づける事件が発生する。
亡霊
王は負傷と息子たちを失った悲しみで眠りについている。
籠城の中で打開策もなく主人公も悩んでいる中で、
城を取り囲む兵士が吹雪の中で「角笛」の声とともに、
王の亡霊が兵士たちを殺すという事件が発生する。
王は負傷し、眠り続けているはずなのに
なぜ城の外で王の姿を見るものが現れるのか。
凍てついた死人のような体で王はヘルムの亡霊となって
敵を食い殺しているのか。
そんな噂が広まっていく中で主人公は城の中に隠し通路を見つける。
この事件はシンプルだ。
亡霊や悪霊が起こした事件ではなく、王が夜な夜な目覚めて
拳1つで敵兵をぶち殺していただけだ(笑)
負傷していたはずなのに、そんな感じを一切見せず、
唐突に現れたオークも殴り殺し、
娘を守るためにウルフの兵を一人で拳1つで全滅させようとしている。
凄まじいほどの脳筋だ(笑)
結果的に王は仁王立ちのまま絶命する。
ウルフも復讐相手を失い、腑抜けになってしまう。
戦乙女
終盤、主人公はウルフとの一騎打ちを望む。
わざわざ花嫁衣装を着て煽りに煽りまくり、結果的にウルフは
一騎打ちを受けることになる。
まるで物語の序盤で自らの父たちが戦ったように。
あっさりとウルフは負ける(苦笑)
一騎打ちの勝負次第で戦争をやめるという条件だったはずが、
ウルフは負けても戦争をやめず、辞めることを進言した部下を殺し、
戦争が再開する。もうどいつこいつも短絡的だ。
ウルフとの一騎打ちで戦争が止まると思っている主人公も、
そんな提案に乗ったのにあっさりと負けて部下を殺したウルフも、
知力など無く、短絡的な思考で大勢の民を巻き込みすぎだ。
最後に申し訳程度にロード・オブ・ザ・リングのキャラを出し、
ふわっと終わってしまい、なんとも言えない印象が残ってしまう作品だった。
総評:西洋を代表する作品を日本人が作るな!?
全体的に見て作画だけは一級品だが、ストーリーがついて行っていない。
全キャラ短絡的で脳筋でなにもかも力で解決しようとしており、
その元凶たるヘルム王も、自らの力を見誤って部族の長を殺してしまったかと思えば、
中盤ではたった一人で敵兵を拳で全滅させようとしたりと無茶苦茶だ(苦笑)
敵であるウルフもめちゃくちゃ小物であり、主人公にも主人公感がない。
ロード・オブ・ザ・リングとしては初の人間、初の女性主人公だそうだが、
それを活かしきれておらず、ロード・オブ・ザ・リングという名前があるからこそ
この作品をみた人もいると思うが、その要素も申し訳程度にしかない。
原作では本当に少しだけしか触れられてないキャラを描くうえで
膨らましに膨らましまくったストーリーなのはわかるが、
膨らましすぎてすかすかになってしまった印象だ。
海外では一部の人が、西洋の有名作を日本人が作ることに対して
かなり否定的だったようで、それもあってか、
興行収入は2065万ドルといわゆる大爆死だ。
日本でも上映されたが、日本では話題に一切ならず、
興行収入も出ないレベルになっている。
それに対して制作費は3000万ドルという大金がかけられており、
大赤字で終わってしまった作品だった。
個人的な感想:ワンパンキング
ワンパンでなにもかも解決しようとする王様が
キャラとしては面白すぎたのだが、
そんな王のインパクトに対して他のキャラがうすすぎる。
海外の人の一部はこの作品に対して色々とお怒りだったようだが、
蓋を開けると別方向の怒りが生まれる作品だったかもしれない。
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