評価 ★★☆☆☆(25点) 全92分
あらすじ トムとジェリーは博物館の警備員として働いており、遠い土地にテレポートできる不思議な魔法のコンパスを秘密に持っている。引用- Wikipedia
中華100%なトムジェリ無関係映画
本作品はトムとジェリーの映画作品。
監督はジャン・ガン、制作はサム・レジスター、張剛。
34年
ジェリーといえば、世界で3番目くらいに知名度のあるネズミだろう。
いつもトムという猫に追いかけられており、
ドタバタ劇を繰り返す、そんなアニメを子供のころに
多くの人が目にしていたはずだ。
トムとジェリーの歴史は長く、1940年に短編映画が制作されて人気となり、
数多くの短編映画が制作され、TVシリーズも制作されている。
しかし、長編映画は本作品を含む3作品のみで、
1作品は半分実写の作品だ。
純粋なアニメ映画としては1992年のトムとジェリーの大冒険以来であり、
34年ぶりのアニメ映画となる。
本レビューを執筆している私自身は完全なにわかであり、
それをご承知で本レビューをお読みいただきたい。
いつもの
映画が始まる前、WBなどのロゴが映し出される中で、
中国のものと思われるロゴが映し出される。
この作品は中国とアメリカの共同制作で作られた作品であり、
上映自体は中国が2025年に最速で行っている。
その中国っぽさは気になる部分がある。
流れてくる曲や風景がまさに中国であり、
トムとジェリーが生まれたはずのアメリカの景色や雰囲気は一切ない。
そんな中でもトムとジェリーは相変わらずだ。
子供のころに見たような「追いかけっこ」が
映画でも繰り広げられており、どこか懐かしい二人のドタバタ劇に
思わずくすくすしてしまう。
異世界転移
しかし、そんな懐かしさをくすぐられるのも一瞬だ。
ネズミのジェリーは「羅針盤」を見に博物館にやってきており、
そんな博物館の警備員だったトムは、ジェリーといつもの
追いかけっこを繰り広げている。
そんな中で力を失ったはずの「羅針盤」が力を取り戻し、
トムとジェリーは唐突に「数千年前の異世界」に飛ばされてしまう。
まさかの異世界転移である(笑)
これがトムとジェリーの映画における王道展開なのかは
定かではないものの、唐突な異世界転移には笑うしかなく、
しかも、転移した先は謎の古代中国的な世界観だ。
古代中国
この古代中国の世界観がとんでもない(笑)
もうめちゃくちゃだ。ネズミの魔王が羅針盤を狙って、
ドラゴンのロボットに乗って黄金の都を襲おうとしている。
そんな黄金の都には守護獣と呼ばれる存在が何匹かおり、
彼らは「不死鳥仙人」を師と仰ぎ、教えを請いている。
そんな不死鳥仙人は神様らしく、羅針盤を勝手に持ち出してなくしたせいで、
「天帝」という存在によって天界から追放されており、
なくした羅針盤を探しているという状況だ。
おわかりいただけただろうか(笑)
もう1度確認していただきたい。これは封神演義的な作品の
世界観の説明ではなく、「トムとジェリー」の映画の話を
私はしている。
恐ろしいほどのミスマッチだ。
アップルとペンを合体させたピコ太郎も驚くほどの
ミスマッチなものを無理やり合体させた感じが凄まじい。
トムとジェリーそっちのけで、そんな世界観や、
古代中国のキャラの紹介をされるのだが、
そんなことよりトムとジェリーを出せと思うほど、
まるで別の作品を見ているような感覚になってしまう。
神
そんな古代中国のどうでもいい戦いの中で、
トムとジェリーが未来から「羅針盤」を持ってやってくる。
トムは古代中国の人から「神」と勘違いされ、
崇められて調子に乗り、そんなトムを快く思わないジェリーは
妨害行為をし続ける。
そんな中で、トムが持つ羅針盤を不死鳥仙人や
ネズミ魔王が狙ってくるという流れだ。
ストーリー自体はシンプルではあるものの、
場面転換が恐ろしいほどに早い。
トムとジェリーのいつものノリがあったかと思えば唐突に異世界転移し、
古代中国でネズミ魔王が龍に乗って都を襲っていたかと思えば、
守護獣やら不死鳥仙人と戦いだし、そうかと思えばトムとジェリーが
やってきてドタバタが始まり、そうかと思えばトムとジェリーが
不死鳥仙人により街中を観光案内されたり…
息つく暇もないというのはまさにこの作品のことだ。
次から次にいろいろな展開が起き、落ち着く暇が一切ない。
怒涛の展開が怒涛に続き、脳が処理しきる前に
次の展開に移り変わる。
日本でも「超かぐや姫」がドーパミン中毒向けアニメなどと
言われることがあったが、超かぐや姫など生易しいほどに、
この作品はひたすら刺激を詰め込んだ作りになっている。
思わず映画を見ながら
「TikTokは中国由来のものだし、
中国にもドーパミン中毒という概念がやっぱりあるのだろうか?」
と真剣に考えてしまうほどだ。
取り合い
序盤はこの羅針盤の奪い合いがひたすら続く。
そこにトムとジェリーらしいドタバタアクションなどを
盛り込んでいるものの、不死鳥仙人や守護獣、ネズミ魔王などの存在が、
トムとジェリーとあまりにもミスマッチすぎて、馴染んでいるようで馴染んでいない。
このアクションシーン自体はそれなりにクオリティが高く、
予想外の動きをしてくることが多いため、妙な満足感はある(笑)
旧正月をお祝いしている時期のせいなのか、花火がドパドパと上がりまくり、
アクションの中でも爆竹やらがドカンドカン爆発しており、
それをアクションの中でも利用している。
今年のコナン映画よりもトムとジェリーのほうが爆発しているといっても
過言ではないほどの爆発まつりだ。
ずーっとこの調子で目まぐるしい展開とアクションが続くため、
さすがに疲れが溜まってきたところで、ネズミ魔王や
不死鳥仙人の過去や事情が描かれる。
不死鳥仙人
基本的にはこの不死鳥仙人が羅針盤とやらを持ち出して
暴れまわったことが原因であり、そのせいで不死鳥仙人は
天界から追い出され、しかも、ネズミ魔王は尻尾を失っている。
問題なのは、この不死鳥仙人が本作の主人公ということである。
不死鳥仙人 THE MOVIE with トムとジェリーと
タイトルを変えたほうが自然だ。
不死鳥仙人という身勝手な主人公が天界から追放され、
300年の間に守護獣たちを育て、街の人からも信頼を得ており、
それでも天界に帰って神の座に戻ろうと必死だ。
ようやくトムとジェリーが羅針盤を持ってきて
取り戻しても、「悟り」を開いていないせいで天界に帰ることができない。
するとブチギレだ(笑)
メインキャラとして、まるで主人公のように描かれているのに、
そんな不死鳥仙人に共感も好感も一切持てない。
いいからトムとジェリーの話をしろと思うほど、
話の主軸が映画オリジナルキャラによって進められすぎている。
中華4000年大戦争
一応、中盤くらいまではトムとジェリーも活躍している。
ネズミ魔王にさらわれたジェリーを助けにトムが立ち上がり、
守護獣や不死鳥仙人とともにネズミ魔王に戦いを挑む。
無事にジェリーを助け出し、ネズミ魔王も倒し、
ハッピーエンドかと思いきや、不死鳥仙人絡みの
ストーリーがまた展開する(苦笑)
終盤になると、もうトムとジェリーは関係ない。
ネズミ魔王が羅針盤の力で巨大化し、不死鳥仙人が悟りを開き巨大化し、
巨大化したネズミ魔王と不死鳥仙人のバトルを観る。
いったいこれはなんの映画なんだろうか。
一応、トムとジェリーもネズミ魔王を倒すために活躍する部分はあるものの、
あまりにもトムとジェリーとは無関係すぎる世界観と、
無関係すぎるキャラクターによる中華アニメ全開の映画になっており、
ちょっとカオスすぎて笑いが止まらなくなってしまう作品だった。
総評:トムとジェリーは無関係です
全体的に見て、とんでもない作品だ。
例えばドラえもんやクレヨンしんちゃん、
ああいった国民的な認知度のあるキャラの映画なのに、
無関係なメインキャラ二人だけで古代中国に行って、
メインキャラがサブキャラになって、映画オリキャラの話ばかりやるような作品だ。
トムとジェリーの映画を見たはずなのに、
まったく関係ない中国アニメ映画を見せられたような意味不明なことが起きている。
ハンバーガー屋に来たはずなのに、ラーメンチャーハン餃子大盛りセットを
強制的に食べさせられるような作品だ。
これは別にトムとジェリーでなくても問題なく成立する話だ。
トムとジェリーであえてこのストーリーとこの世界観を
映画にする意味がない。
あまりにもトムとジェリーに無関係すぎる作品だ。
しかし、ここまで無関係すぎると逆に面白くなってしまう。
荒唐無稽で怒涛の展開が続くストーリーも、
見終わったあとに考えると悪くなかったと感じる部分もあり、
旧正月を祝う爆竹、爆破、アクションの映像にも面白さがある。
トムとジェリーを絡めずとも、古代中華キャラクターだけで
成立しそうな話という点を除けば、1本の映画として評価できそうなのに、
トムとジェリーが混ざってしまったことで、そこがきちんと評価できない。
本末転倒な作品になっている。
決して駄作ではない。しかし、名作でもない。
名作や駄作といった枠組みではなく、
どちらかといえば「珍品」といったほうが正しいかもしれない。
この珍品を食べられる、いや、観られるのは今しかない。
この手の海外作品の吹き替えは配信が行われるかどうか怪しいところであり、
今しか味わえない作品かもしれないだけに、
気になった方はぜひ劇場に訪れていただきたい。
そこには摩訶不思議な中華アドベンチャーが広がっていることだろう。
個人的な感想:とんでもないものを見た
色々な意味で話題になっていたので映画館に足を運んだ作品だったが、
そんな話題から想像する100倍くらいとんでもない作品だ。
これが許される中国という国もすごいが、
これをやれてしまうトムとジェリーの懐の深さもすさまじい。
ところで、これが中国でどこまで受けたのかも気になるところだ。
少し調べてみたところ、子ども向け・ファミリー層にはそこそこの評価だが、
映画ファン/従来のトムとジェリーファンからはかなり厳しめという感じだ。
そりゃそうだろうという評価である(苦笑)
「これはトムとジェリーでやる必要があるのか?」
と中国でも芯を突く評価も出ており、本作品に対する価値観はそこまで
日本と違いはなさそうだ。
中国での興行収入は5.5億円とヒットしておらず、
アメリカでも小規模な公開で6500万円ほど、
日本でも数字が出ないレベルで、おそらく3000万から5000万円ほどだ。
これだけトムとジェリーという世界的なキャラクターを使っておきながら、
世界的にも大きく跳ねていないというのが、またこの作品らしい。
そもそもトムとジェリーを見に来た観客に、
古代中華ファンタジーを全力で浴びせる映画なのだから、
受け入れられる層が限られるのも当然かもしれない。
いわゆる爆死映画ではあるものの、この映画を見るチャンスが
もしかしたら今後ない可能性を考えれば、
映画好き、アニメ好きならば一見の価値がある作品かもしれない。



