評価 ★★★★☆(63点) 全60分
あらすじ ある日ケロロは冬樹と大好きなガンプラを買いに出掛けるが、帰り道で不思議な祠に気付く。ひょんなことから祠に入ってしまうと、そこは不思議な空間が広がっていた 引用- Wikipedia
これが本物のケロロ軍曹だ
本作品はケロロ軍曹の映画作品。
ケロロ軍曹としては初の映画化作品となる。
監督は近藤信宏、制作はサンライズ。
初映画
映画序盤から、とんでもない戦闘シーンが繰り広げられている。
ケロロ小隊の面々が戦闘シーンの中でさらっと紹介され、
数々の戦闘機と戦う姿がダイナミックな作画で描かれている。
彼らの「訓練」の様子を見せながら、
初映画だからこそメインキャラを軽く説明しつつ、
「藤原啓治」さんのナレーションが適度に笑いへと変えてくれる。
そうかと思えば「ガンダム」だ(笑)
ケロロ軍曹といえばガンダムであり、それを劇場版でも
とんでもない作画で描いている。
ケロロ軍曹の映画なのに、ガンダムの作画に異様なほど気合が入っている。
この意味不明な状況こそ、まさにケロロ軍曹だ。
子供向けではあるが、子供だましで終わらせない。
そんなアニメ制作陣の本気を、序盤から感じさせてくれる。
ジムスナイパーを手に入れて嬉しそうなケロロと、
そんなケロロに付き合う冬樹。
怒涛のテンポで二人がいきなり「謎の祠」から
謎の空間へと入り込むところから物語が始まる。
映画が60分しかないということもあるが、このテンポ感は見事だ。
この手の通年アニメの映画に求められる
「いつもの日常」から、映画だからこその「非日常」への橋渡しが非常にうまい。
いつもの日常の描き方も抜かりがない。
ガンダムネタの数々や、女性キャラたちのちょっとしたセクシーシーンもある。
あー、これぞケロロ軍曹だと、ひしひしと感じてしまう。
祠
ケロロ軍曹が謎の空間にあった祠を壊してしまったことにより、 街中では不可解なことが起こるようになっていく。
ケロロ軍曹の顔には謎のバツマークがつき、
謎の光によってバツマークをつけられた人は
テレパシーが使えるようになる。
心と心で会話できるようになり、
そのバツマークはどんどん伝染していく。
まるでニュータイプだと喜ぶケロロ。
詰め込むだけ詰め込んだ会話劇とガンダムネタの数々に、
思わず笑ってしまう。
このテレパシー能力の扱いも、ただの便利能力では終わらない。
人同士が声を出さずとも心の声を発せるようになったからこそ、
各キャラクターの本音や関係性が浮き彫りになっていく。
冬樹と西沢さん、夏美と小雪やギロロ。
それぞれの恋愛模様やすれ違いも、
ケロロ軍曹らしい会話劇の中できちんと描かれている。
当時同時上映だった「かいけつゾロリ」もちらっと出演するシーンがあるが、
それも作品のテンポを邪魔するほどではない。
あくまでお祭り感の一部として、自然に収まっている。
キルル
テレパシーによって多くの人類の声がどこでも聞こえるようになる。 しかし、それは必ずしもいいことではない。
心の声が聞こえるということは、
人の悪意までも伝わってしまうということだ。
そして、その原因は古代のケロン軍が残した兵器にあった。
キルルと呼ばれるその存在は、
人々の争いの感情をエネルギーにして成長していく。
ケロロが祠を壊してしまったことで封印が解かれ、
地球滅亡の危機が訪れる。
非常にわかりやすい展開ではある。
だが、このわかりやすさこそが本作の強みだ。
余計な要素を詰め込みすぎず、
ケロロ軍曹という作品のノリの中で、
きちんと映画らしい危機を描いている。
侵略者たるケロロ達と、ペコポン人である冬樹たち。
彼らには間違いなく友情がある。
しかし、侵略する側と侵略される側だからこその
「すれ違い」も発生してしまう。
ただ仲がいいだけではない。
ただギャグをしているだけでもない。
ケロロ軍曹という作品が持っていた関係性の面白さが、
この映画の中にはしっかりとある。
大怪獣バトル
終盤は、どこぞのウルトラマンを彷彿とさせるような巨大バトルだ(笑)
巨大化したキルルに対し、ケロロ軍曹も巨大化する。
しかし、ただ巨大化して暴れるだけではない。
「街を壊さない」ように戦う姿が微笑ましく、
同時にきちんと迫力のある作画で描かれている。
このあたりのバランスが非常にうまい。
ギャグとして笑わせながらも、戦闘シーンそのものは手を抜かない。
劇場版としてのスケール感を出しつつ、
ケロロ軍曹らしいくだらなさも忘れていない。
メインキャラクターの活躍もきちんと用意されており、
それぞれのキャラクターらしい戦闘シーンが
終盤の展開をより盛り上げている。
映画の中での起承転結がしっかりとあり、
その基本に沿って王道のストレートな物語が描かれている。
初映画にふさわしい内容であり、
ケロロ軍曹が好きな人ならば大満足の作品だ。
総評:これがケロロ軍曹だ!
全体的に見て、20年ぶりに見たケロロ軍曹の映画に 思わず「懐かしさ」を感じてしまった。 だが、それ以上に強く感じたのは、 これだよこれ、というケロロ軍曹本来のノリだ。
20年経っても色褪せないケロロ軍曹の魅力がきちんとあり、
20年経っても笑える。
そんな作品として、今見ても十分に楽しめる完成度になっている。
当時は何気なく見ていた作品だったものの、
オタクとなり改めて見返すと、作画の気合に驚かされる。
序盤から終盤に至るまで、戦闘シーンに対する妥協が一切ない。
その戦闘シーンも「劇場のスクリーン」を意識した
ダイナミックな構図で見せており、
メインキャラクター達らしい活躍もしっかりと描かれる。
ストーリーはシンプルではある。
しかし、日常から非日常へ自然にスライドし、
キャラクターの日常を見せながら、
少しずつ映画ならではの事件へと発展していく流れが非常にうまい。
60分という尺だからこそのテンポ感もあり、
余計な寄り道をせずに、ケロロ軍曹らしい物語を最後まで楽しませてくれる。
本作のゲスト声優として「おぎやはぎ」さんと「新垣結衣」さんが出演されているが、
演技面で引っかかる部分はほとんどない。
ゲスト声優だからといって悪目立ちすることもなく、
作品の中に自然に溶け込んでいる。
初映画という記念すべき作品であり、
その初映画らしいわかりやすさやお祭り感はありつつも、
しっかりとケロロ軍曹の魅力を感じさせてくれる作品だった。
個人的な感想:新劇場版
新劇場版を見たあとに、この作品を見たのだが、 何もかもが違いすぎて驚いたくらいだ。
作画のクオリティも、ギャグも、キャラ描写も、ストーリーも、
何もかもが新劇場版とは違う。
これを見てしまうと、
新劇場版は同人か何かにしか思えないほどだ。
パロディのやり方一つにしてもまったく違う。
1作目のガンダムネタは、ケロロ軍曹という作品の中に根付いたネタとして使われている。
だが、新劇場版はただ出しているだけに見えてしまう。
この差はあまりにも大きい。
ケロロ軍曹らしさとは何なのか。
劇場版として何を見せるべきなのか。
この1作目には、その答えがきちんと詰まっている。
まさか20年後にケロロ軍曹がこんなことになっているとは、
誰も予想していなかっただろう。
時の流れというのは恐ろしいものだ……


