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まさかのセカイ系!?「映画 すみっコぐらし 空の王国とふたりのコ」レビュー

3.5
映画 すみっコぐらし 空の王国とふたりのコ 映画
画像引用元:(C)2025 日本すみっコぐらし協会映画部
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評価 ★★★☆☆(57点) 全68分

『映画 すみっコぐらし 空の王国とふたりのコ』映画冒頭映像/10月31日(金)全国ロードショー!

あらすじ すみっコたちは「おまつり」の準備で大いそがし。 だけど町はここのところ、雨ばかり……。 引用- Wikipedia

まさかのセカイ系!?

本作品はすみっコぐらしの劇場アニメ作品。
監督はイワタナオミ 、制作はファンワークス、
すみっコぐらしとしては4作品目の映画となる。

実質奈須きのこ

今から6年前の2019年、SNSで唐突にすみっコぐらしの映画が話題になった。
脚本が実質奈須きのこだのなんだのとオタク特有の過剰な言葉で
盛り上がっており、それにつられて私も見に行ったのが
私とすみっコ映画の始まりだ。

あれから6年、私事で恐縮ではあるものの、
1作品目は一人で見に行き、2作品目は当時彼女だった現在の妻と二人で、
3作品目は結婚して夫婦で見に行った。
4作品目である本作品、あれから6年の月日が流れ
私は第一子と妻とともにすみっコ映画を見に行くことになった。

ものすごい変化であると同時に、節目節目ですみっコ映画が
上映されるのは偶然ではあるものの、面白い偶然だ。
5作品目のときにはどうなっているかはわからないが、
そんなすみっコ映画があったからこそ今があるのかもしれない。
多分一切関係ないが。

泣き

すみっコぐらしの映画は子供と一緒に見に行く親も泣かされるような、
大人も思わず涙腺を刺激されてしまう作品が多い。
1作品目は自己確立の話であり、2作品目は夢の話を描き、
3作品目はブラック企業の話を描いていた(笑)

かわいらしい「すみっコ」たちのキャラクターとは裏腹に
内容が重いものも多く、子供だましでは終わっていない。
それがすみっコぐらしの映画であり、私が大好きな部分だ。

今作でも相変わらず「すみっコ」たちはかわいらしく、
雨が降りやまない街で「ほこり」が「カビ」になってしまっていたり、
「エビ天のしっぽ」という新キャラが出てたり、
今作ではメインキャラたちが「勇者」や「魔法使い」など
RPGな衣装に身を包んでおり、特別感も生まれている。

ただ、今回は内容としてはそこまで重くない。
「泣き」という部分があることにはあるものの、
4作品目にしてやや方針転換を感じる部分が多い作品だ。

なお、ここからはネタバレも含むレビューになりますので
気にされる方はご注意ください。

雲の上

本作の舞台となるのは「空の国」だ。
すみっコたちが暮らす街では雨が降りやまず、
おまつりの開催が不安視されるなかで、空の上から
空の国の王子が降ってくるというところから物語が始まる。

この空の国は「雲」でできており、そんな雲から雨が降ると
雲の国の大地が削られて行ってしまう。
雲が再生するよりも雲から雨として出ていく水分量が多いせいで、
雲の国は存続の危機にある。

原因を探る中で王子は雲の国から落ちてしまい、
すみっコたちと出会い、彼らとともに雲の国が
こうなってしまった原因を探ることになる。

物語の導入としては非常にわかりやすく、
空の国でたまたま見つけた地図により、
「水の神殿」に原因があると思った彼らが
水の神殿を目指すという流れになる。

RPG

この序盤から中盤までの冒険模様は完全にRPGだ、
しかも「古き良き」王道なRPG的な要素が非常に多い。
王様にお城の宝物庫にある装備を貸し与えられて
変身するすみっコたちの姿はかわいらしいものの、
戦士や勇者、魔法使いなどベタなRPG的な職業の格好をしている。

そんな恰好をして旅立った彼らが待ち受けるのは
RPG的な謎とき要素だ。
水の神殿にいくためにはいくつもの工程があり、
その工程をこなさないと水の神殿に行くことができない。

まず地図に書かれた魚の場所を探り、そんな場所にあったパズルをとき、
船を手に入れ、森の中の楽器を楽譜どおりにひくことで新たなアイテムをゲットし、
さらに森の中の指定されたモンスターを連れてくることでまたアイテムをゲットする。
どこかでみたことのあるようなRPGにおけるダンジョンの仕掛けの
数々をすみっコたちが序盤はこなしている。

すみっコたちのかわいらしさ、彼らの彼ららしい行動があるからこそ
まだ面白さはあるのだが、やや淡々としている部分も多く、
クエストの数もやたら多い。
60分ほどの映画で5,6個ほどクエストがあり、
そのクエストをこなしてようやく水の神殿に行くことができる。

おうじ

その冒険譚の中で映画オリジナルキャラである「おうじ」と
「おつきのコ」を掘り下げており、
彼らの関係性や、おうじの「誰かに頼ることができない性格」が
すみっコたちとともに徐々に変わっていく流れは悪くないのだが、
悪くないどまりで終わっている感は否めない。

60分ほどの映画なのでテンポが悪いというわけではないが、
淡々としている感じは否めず、やたらRPG的な展開が多いなと
疑問に思っていたら「Switch」でゲーム化されるようだ(苦笑)

過去の映画もゲーム化されているのだが、
今作は映画自体の内容がまさにゲームになってしまっており、
終盤にはボウリングだったり、シューティングゲーム的な要素もあり、
映画全体での妙なゲーム感の強さは最後まで気になってしまう。

ほうれん草

そんなドラクエ的なRPG要素がありつつ、
水の神殿にたどり着いた一同、水の神殿が故障したことで
雲の国に水が流れず、雲の国の大地が徐々に削られて行っているのが原因だ。
水の神殿を治すためにはクエストをこなしたアイテムを
水の神殿にハメればいい。

なぜアイテムが各地にあったのかというのは一応説明がある。
歴代の王様たちが大切な水の神殿を守るために、
水の神殿の再起動用アイテムのようなものを各地にわざわざ
謎とき要素とともに隠している。

そんな七面倒くさいことをしてしまったせいで、
現在の王様に水の神殿の情報が伝わっていないという
致命的なミスも起こっており、
「なぜ壊れたのか?」というのもいまいちしっくりとこない部分だ

セカイ系

そんな水の神殿を治すための最後のキーアイテムが「おつきのコ」だ。
彼は意思を持つ水の神殿のパーツの1つであり、
彼が犠牲になることで水の神殿からきちんと水が流れるようになる。
だが、おうじやすみっコたちがそんな「自己犠牲」を許すはずもない。

ようは「セカイ系」だ(笑)
セカイか君か、過去のセカイ系と呼ばれる作品の主人公は
ヒロインを助けることを選ぶのか、世界を助けれることを選ぶのか、
選択を強いられ悩みあがいてきた。

「おつきのコ」を助ければ水が流れず国は亡びる。
「おつきのコ」を助けなければ国は助かるが、
おつきのコは実質死んでしまう。
どちらを選ぶのか。

後先

そんなセカイ系なことを本作でやっている部分は驚きもありつつ、
笑ってしまった部分なのだが、
問題はおうじしかり、すみっコたちが「後先」というものを
考えていないことである。

とにかく目の前で友達が自己犠牲することはよくない。
その果てに雲の国がなくなるという結果になってしまう可能性を
彼らは一切考えていない(笑)
一切迷わず、後先を考えずに行動するのは清々しい部分はあるものの、
最終的にご都合主義な感じがすごくなってしまう。

もちろん、この作品は子供向け映画だ。
誰かを助けたことで国が亡びるなんてバッドエンドにはならない。
だが、ハッピーエンドに至るまでの展開がややご都合主義感が強く、
脚本の突っ込みどころが多い作品になってしまっている。

総評:後先考えてない奴らがドラクエした結果

全体的に見ていろいろと細かい部分での突っ込みどころは目立つ作品だ。
序盤から中盤までのドラクエ的な謎とき要素は
ゲーム化されるという部分に引っ張られすぎている感じが否めず、
60分ほどの映画でその謎解きが5,6個もあるのは多すぎだ。

終盤になると急にセカイ系になり、そんなセカイ系でも
一切ぶれないすみっコたちのスタンスは素晴らしく、
おうじの成長と変化、おつきのコとの関係性など
涙腺を刺激されそうな部分はあるものの、
あくまでされそうどまりで、過去作と比べるといまいちインパクトが足りず、
無難な感じに仕上げてしまっている印象を覚えてしまう作品だった。

決して悪くはない、子供向け映画は子供が楽しめてなんぼだ。
子供ならこの王道ファンタジーストーリーを素直に楽しめる、
その一方で過去3作のような大人も楽しめるような意外性のある作品では
なくなってしまったのを残念に思ってしまう部分もある。

すみっコぐらしも映画がシリーズ化し4作品目だ。
シリーズ化したほかのアニメ映画も全部が全部名作とは限らない、
それを踏まえると「すみっコぐらし」がシリーズアニメ映画としての
貫禄が出てきたという証なのかもしれない。

1作目から3作目がとがりすぎていたともいえる、
本来はこれくらいでいい、実質奈須きのこと言われたり、
ブラック企業を描かなくてもいいはずだ(笑)
本来の「すみっコぐらし」映画はこれくらいでいいのかもしれない。

こうなってくると次回作、5作品目がどうなるのか。
読めないだけに期待したいところだ。

個人的な感想:世界か君か

終盤のセカイ系的な展開は一瞬、むちゃくちゃテンションが上がってしまい、
過去のすみっコ映画のような見ている大人も驚くような
展開になるのか!?と期待してしまった自分がいる。
やや期待すぎてしまった。

キャラクター自体は本当にかわいらしく、今作では
出番こそ少ないがえび天のしっぽが個人的には1番のお気に入りだ。
エビフライのしっぽやアジフライのしっぽなど
「フライのしっぽ」ではなく「てんぷらのしっぽ」まで出てくるのは
完全に予想外だ(笑)

フライたちと微妙に衣の色が違うこだわりもあり、
次回作でえび天のしっぽが大活躍することを期待したい。

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