評価 ★★☆☆☆(37点) 全12話
あらすじ 『剣姫』と『魔導王』の息子として生まれた主人公・アレルはどんな職業を授かるかと期待されるなか、『無職』の烙印を押されてしまう。 引用- Wikipedia
キンキンキンキンキン
原作は小説家になろうな本作品。
監督は矢花馨、制作はstudio A-CAT
前評判
この作品の原作はアニメ化前に何度か話題になったことがある。
主にその原因は原作での表現だ。
戦闘シーンにおける文章での表現は数多あるものの、
この作品のとんでもない表現はネット民を震撼させた。
「キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!
むっ、さすがは〈剣技・中級〉スキルだ。 」
どうだろうか(笑)
擬音だけで戦闘シーンを表現するという前代未聞すぎて
斬新な文章表現に多くの人が驚き話題になった。
そんな作品のアニメ化ということもあって、それなりに放送前は話題になったが、
放送中はほぼ話題にならなかった作品だ。
Studio A-cat
1話冒頭から恐ろしく作画が悪い。
キャラクターデザインも最近のアニメというよりは90年代のアニメかな?
と思うほど古臭く、明らかな低予算臭が漂っている。
この時点でwikipediaで制作会社を調べてみた所
あの「Studio A-cat 」が手掛けていることがわかった。
「Studio A-cat 」はオタクならご存じの方も多いだろう。
ここ3年ほど「なろう系作品」に多く関わっており、
そのどれもが作画崩壊か、作画崩壊寸前のクオリティだ。
明らかな低予算でクオリティの低いCGや少ない作画枚数で
1クールのアニメを作り上げている制作会社だ。
「Studio A-cat 」が手掛けた時点でその作品は終わりだ。
そもそも、この作品をアニメ化するために動いていた会社たちも
この作品のアニメ化に対して期待していないのだろう。
だからこその低予算、だからこその「Studio A-cat 」だ。
職業
この世界では「職業」というものが絶対視されている。
ある年齢に達すると女神からの祝福を受け、
それぞれが「職業」を手に入れることができる。
手に入れた職業によって特別なスキルを手に入れ、将来が決まる。
主人公の両親は「上級職」であり、職業は血筋が影響される事が多い。
だが、そんな上級職な両親がいるのに主人公は
「職業」が与えられず「無職」になってしまうというところから物語が始まる。
この手のなろう系の場合はチートな能力を転生特典や
なんやらで手に入れて俺つえー!の限りを尽くすというのが
定番ではあるものの、この作品の場合はそういう主人公特典が
与えられていないというのが最大の特徴だ。
多くのなろう系主人公が何の努力もせずに金、女、力を手に入れるが、
この作品はきちんと「努力」している。
女神とやらが勝手に与えてくれる職業とスキルではなく、
「努力」によって強さを手に入れようとする。
その点は評価できる点だ。
キンキンキンキンキン!
ある意味、主人公は差別対象者だ。
職業絶対主義な世界、スキルを駆使することが当たり前な世界、
努力すら必要ない。
職業を与えられた子供でさえ、初級スキルでいい動きができる。
そんないい動きの表現が「キンキンキンキンキン」である(笑)
モブキャラな子ども同士が「真剣」で
自らの職業スキルで手合わせをして いるのだが、
そんなシーンですら「キンキンキンキンキン」いっている。
当然、この作品における戦闘シーンに対して期待できるのは
いかに「キンキンキンキンキン」いわせるかであり、
制作側もそこは理解しているのだろう、この作品の見所、
魅力、面白さはそこなのだと。
だから止め絵にして「キンキンキンキンキン!」という
効果音を1話からこれでもかと聞かせてくれる。
逆にここまで割り切っていると笑いのほうが買ってしまい、
1話の時点でここが見所ですときちんと制作側がわかっており、
それを伝えてきている。
努力
無職でも女神の「加護」というものがあり、簡単に言えばシールドだ。
だからこそ子ども同士でも真剣でやりあっている。
そんな加護を受けた主人公がモブと戦うことになる。
本来、無職な主人公が剣を使える職業なモブに叶うことはないのだが、
普通に2対1で勝つ(笑)
この時点で「職業とは?」という感じになるのだが、
一応は努力によって主人公が強くなっているという裏付けがあるがゆえに、
納得はできる。
ただ、そんなことより「キンキンキンキンキン」鳴りまくる
戦闘シーンに笑いが止まらない。
「職業」に甘えず「スキル」に甘えず努力し続ける。
それは天性の才能をも超えることになる。
騎士団長の子どもとのキンキンキンキンキンで負けた主人公、
スキルでは簡単にできる同時の二連撃も主人公はスキルがないゆえに
「簡単には」使うことができない。
だが、何本もの剣がぼろぼろになるまで努力した主人公は
「スキル」を使えるようになる。
しかも同時2連撃ではなく、努力の果に同時3連撃まで身につける。
努力が才能を超える、1話の展開自体は悪くなく、
異様なテンポで進む展開も悪くない。
キンキンキンキンキン
2話以降もことあるごとにキンキンしている。
主人公が成長し、剣士の街に行くことになるのだが、その道中で
オークの大群に襲われれば回転しながらキンキン、
街につけば再会した剣士と残像使ってキンキン、
ダンジョンの中ではリビングデッド相手に兜割りでキンキン。
無職というのはこの世界ではある種の差別対象だ。
そんな状況の中で主人公は努力し、耐え、多くのスキルを手にしていく。
色々なスキルを使う剣士と自ら努力して手に入れたスキルで戦う主人公と、
戦闘シーンはやたら多いのだが、作画が死んでいるせいも合って
「キンキン」しか楽しむ要素はない。
特にモンスターはStudio A-catお得意のCGだ。
明らかなCG感全開のCGは相変わらずの低クオリティであり、
逆に安定してすらいる。
ストーリー的には決して悪くはないのだが、
安っぽい作画とキンキンキンキンキンの主張がB級感を強めてしまっている。
中盤の盛り上がりとして一応「魔族」みたいなのがでてきて
大変なことになる展開があるが、安っぽいアニメーションのせいもあって緊張感は一切ない。
そもそも職業も非常にわかりづらく、単純に剣を扱うものの中でも
剣士だったり、魔剣士だったり、剣帝だったり、剣神だったり、
何がどう違うのかさえわかりにくい。
キンキン禁止!?
序盤から中盤で主人公はある程度の剣士スキルを学び、
剣士の街をでて、魔法を学ぶことになる。
つまり「キンキンキンキンキン」が無くなるということだ。
これほど悲しい展開はない。
魔法の才能がない主人公は職業もスキルもなく、
1から魔法使いとしての努力を始める。
きちんと修行シーンが有るというのは「なろう系」では珍しい。
ある程度魔法を使えるようになると、今度は魔法学園にいくことになる。
序盤とやっていることはあまり変わらない(苦笑)
序盤は剣、中盤は魔法とそれが変わっているだけであり、
しかも剣ではないからこそ「キンキンキンキンキン」が失われているせいで
やや盛り下がってしまう。
もう見ている側がキンキンキンキンキン中毒だ。
テンプレ的な試験などもあるものの、
この作品の無駄なテンポ感の良さのせいで、あまり引っかからず見ることが出来る。
なんとも不思議なバランスの作品だ。
割り切って制作しているからこそ、見てる側も割り切って楽しめる。
ただ、唯一、中盤からのキンキンキンキンキン不足が悔やまれる。
氷魔法で戦ってたときは多少キンキンキンキンキンいっているのだが、
それ以外の魔法だとキンキンキンキンキンとはいわない。
終盤
主人公は魔法学園であらかた魔法スキルを習得し、
剣士の街と同じように魔法学園からもでていく。
トントン拍子に物語が展開するからこそ、独特のギャグ感もでており、
終盤は序盤ぶりにでてきた姉とのエピソードが描かれて終わる。
無職な主人公が無職だからと諦めず、努力し強くなっていく。
そんな1クールがまっすぐと描かれており、
嫌味なキャラや、性格の悪いキャラなどが少なく、
独特のコメディ感が癖になってしまう。
キンキンキンキンキンが中盤以降なくなってしまうのは残念だが、
意外と見てみると楽しめてしまう作品だった。
総評:もっとキンキンしてほしい
全体的に見て興味深い作品だった。
アニメーションのクオリティ含め決して名作ではないものの、
同時に駄作ではない、最初は原作の「キンキンキンキンキン」という
ネタ的な部分をフィーチャーした演出が効果的に作用しているため、
それが笑いにつながりながら爆速で展開してくストーリーを楽しめる。
中盤以降は逆に「キンキンキンキンキン」しなくなってしまうため、
体が「キンキンキンキンキン」に慣れてしまったがゆえに、
「キンキンキンキンキン」を求めてしまう部分はあるものの、
ベタな展開をギャグ的なノリでハイテンポに突き進むため
見れてしまう魅力がこの作品にはある。
予算はおそらく相当低い、作画のクオリティも作画崩壊寸前だ。
戦闘シーンなど止め絵や演出で誤魔化すシーンも多い。
だが、この作品を「鬼滅の刃」のような予算と作画枚数で描いても
仕方ない(苦笑)
だからこそ逆にB級どころかZ級くらいに割り切った作品づくりがされている。
Studio A-catの低予算とこの作品のZ級感が見事にマッチし、
何故か不思議な魅力が生まれ、
最後まで不快感無く楽しめてしまう部分がある。
ぜひ1度、1話のキンキンキンキンを味わってほしい作品だ。
個人的な感想:奇跡のマッチ
これぞマリアージュといえるのかもしれない。
他の作品なら欠点にしかならない要素が、
この作品に限っては欠点に感じず、不思議な魅力を醸し出しており、
最終的にはなんだかんだで印象に残り楽しめる作品だ。
Studio A-cat の時点で何も期待していなかったのもあって
いい意味で裏切られた作品だったかもしれない。



