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これが新時代!超百合で超SFな大傑作「超かぐや姫」レビュー

5.0
超かぐや姫! 映画
画像引用元:(C)コロリド・ツインエンジンパートナーズ
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評価 ★★★★★(82点) 全142分

あらすじ バイトと学業の両立で多忙な日々を送る17歳の女子高生・酒寄彩葉にとって、インターネット上の仮想空間「ツクヨミ」の管理人であり大人気ライバー(配信者)でもある月見ヤチヨの配信を見ることは、日々の癒やしだった。 引用- Wikipedia

これが新時代!超百合で超SFな大傑作

本作品はNetflixオリジナルアニメ映画作品。
監督は山下清悟、制作はスタジオコロリド/スタジオクロマト。
なお本レビューにはネタバレが多少含まれますので
ご注意ください。

盛り上がり

この作品、配信前から非常に盛り上がっており、
配信開始日には多くの漫画家によるファンアートが
公式で上げられるなど、異様な盛り上がりを見せていた。

原作のある作品でもなく、世間的に知名度のある監督や
制作会社が手掛けているわけではなく、盛り上がっているのは
異様にも思えるものだった。

予告PVの映像のクオリティが非常に高く、
そしてそこで流れる有名なボカロPたちの曲、
それがこの盛り上がりを後押ししており、
ボカロ文化に詳しくない私はその盛り上がりについていけなかった。

そんな右も左もわからない中で配信開始日にいざ
この作品を見たところ「度肝」を抜かれてしまった

近未来

この世界は少し未来の話だ。
建物などは日本の風景そのものであり、現代的なのだが、
「技術」の面で少し進化している。
今も「VR」というものが流行りつつあるが、
VRは機械も大きく、その機械を動かすためのパソコンやゲーム機も高価だ。

だが、この作品の世界では「スマートコンタクト」というものを
目にはめるだけ、コンタクトレンズのように装着するだけで
VR世界を楽しめるようになっている。

このほどよい未来感がちょうどいい、
そのVR空間、VRに入り込んで楽しんでいるコンテンツも
しっかりと作り上げられており、クリエイターが好きにコンテンツを作り、
そのコンテンツの人気が上がれば運営から通貨がもらえる。
一歩進んだVRChatやYouTubeのような感覚だ。

そこには当然、VTuberのような存在も多くおり、
VRというものの未来を華やかに、鮮やかに、
「希望」あふれる描き方がされている。

そんなVRを主人公もまた楽しんで推しのAIVTuberがいる。
彼女の曲を聴きながら、毎日忙しい日々を送っているのが
本作品の主人公だ。

電信柱

主人公は母親との問題を抱えており、一人暮らしをしている。
生活費も学費も自分で稼ぎながら優秀な成績を収める、
時間に追われながらも、ゲームや推し活を楽しんでいる。
それが彼女の日常の中での唯一の癒しだ。
いつ倒れてしまうのかわからないほど不安定な少女。

そんな少女の家の前の電信柱が光っているというところから物語が始まる。
タイトルでもわかる通り、この作品は「かぐや姫」を下地においている。
令和に蘇ったかぐや姫は竹の中ではなく
「電信柱」に潜んでいる(笑)

この現代的なアレンジが面白く、漫画的な表現も非常に多い。
キャラクターの心理描写をあえて崩して描くことで
より感情がコミカルに見ている側に伝わりやすくなっている。

そんなかぐや姫を拾った主人公、自分の生活すらままならないのに、
赤ん坊など育てることはできないはずなのだが、
かぐや姫は1日ごとに猛烈に成長し、あっという間に
主人公と同じくらいになってしまう。

作品全体に言えることだが、
ややご都合主義やツッコミどころがないとは言えない。
しかし、そのあたりのツッコミどころを怒涛の勢いで、
目まぐるしい展開でごり押してる作品だ。

VTuber

この作品は「今」のネット文化というものを詰め込んでいる。
成長したかぐや姫は主人公とともにVRの世界を楽しむようになり、
そこで開催されるイベントに参加することになる。
一定期間でもっとも人気になった配信者が優勝となり、
大人気のAIVTuberとコラボすることができる権利だ。

主人公はそんなイベントに参加する気などなかったものの、
かぐや姫のほうは参加する気満々で、
彼女をサポートする形で主人公も参加していく。
少しずつ、少しずつ配信者として形になっていく様はほほえましく、
今のVTuber文化そのものだ。

配信をして、雑談をして、ゲームをして、オリジナルの曲を作って歌って。
このVTuber模様がダイジェストでサクサクと描かれており、
映画自体の尺は長いのだが、その長さを感じさせない。

「君の名は」以降一時的にはやった曲を流しながらの
ダイジェストなども効果的に作用しており、流れる曲も
私でも知っているようなボカロ曲が多く、
思わずテンションがあがる。

ゲーム

そんな中でのゲームパートは圧巻だ。
大人気の配信者とコラボすることになった主人公たち、
そんな相手とのゲームはいわゆるMOBAだ。
LOLやポケモンユナイト、あの手の類のゲームをするさまを
私はアニメで初めて見た、なおリアルな配信でも人気はない。

そんなMOBAをVR世界だからこそ、まるで本当に戦っているように描いている。
この作品の作画はとんでもないハイスピードな戦闘シーンを、
これでもか!と舐めまわすようなカメラアングルで映し出し、
立体的なアクションシーンをさらっと描く。

この作品は別にバトルアニメではない、
バトルシーンにここまでこだわる必要はないはずだ。
だが、この作品はこだわりまくっている。
細かいルールやMOBAというものがわからない人でも、
このハイクオリティなアニメでごり押して楽しむことができるようになっている。

ややこのゲームパートは長い印象があるうえに、
そのあとに主人公たちが急にイベントの1位になる展開は
ややご都合主義ではあるものの、そこはご愛敬だ。

細田守

優勝した主人公たちはAIVTuberとのライブを成功させる、
だが、そんなライブの後に謎の存在が現れ「かぐや姫」を連れ去ろうとする。
この作品は竹取物語を下地においている、
大人になったかぐや姫は月に帰る、それが宿命だ。

この連れ去ろうとするシーンは若干ホラーな雰囲気があり、
デジタル空間に未知の存在が現れる展開は
どこか「細田守監督」作品を想像させてくる。
この作品には細田守監督のDNA、影響を強く感じる部分がある。

デジタル空間を舞台にしているからというわけではないのだが、
ぼくらのウォーゲームで描いたデジタル空間、
そしてサマーウォーズで細田守監督が描いた「未来のネットの世界」が
まさに令和でよみがえったような感覚になる。

最新作の果てしなきスカーレットでは「ハムレット」という古典を
下地に置いており、この作品は「竹取物語」という日本最古の物語、
古典を下地においている。

細田守監督イズムのようなものを強く感じると同時に
今の細田守監督にはできなくなってしまった
真っ向勝負の「エンタメ」と「明るいネット」を描いているのが
本作品といってもいい。

君の名は

主人公とかぐや姫の関係性はほほえましいものがある。
母親との関係性に悩み孤独に生きる主人公と、
自らの役目から逃げて地球にやってきたかぐや姫。
そんな二人が自らの現状を受け止め一歩進む、そんな物語ではある。
でも、一歩だけで彼女たちは満足できない。

その二人の関係性の描き方は「百合」そのものだ。
離れ離れになる運命だ、それは二人ともわかっている。
最後のデートを楽しみ、それでも離れたくないと手をつなぎ、
別れる一瞬まであがくさまは重たい百合感情につつまれている。

かぐや姫の物語はバッドエンドだ。
そんなバッドエンドではなくハッピーエンドにしたい。
そんな「かぐや」の意志、主人公への思いが
物語をとんでもなく壮大なものに仕上げていく。

ラストの30分のこの展開はとんでもない。
あえてネタバレしないが、この作品は細田守監督作品テイストであり、
今のネット社会を取り込み、そして「君の名は」のような展開を描き、
最後の最後で「ジュブナイル」という山崎貴監督のテイストまで
ぶち込んできている(笑)

あまりにも怒涛の展開ではあるものの、
物語はハッピーエンドであるべき、そんな精神のもと突き進む
ラストの30分は、壮大なSFであると同時に1つ夏のジュブナイルで
終わらせない「超ド級の百合」ものになっている。

本当にとんでもない作品だ。

総評:これが新時代!超弩級の超百合SF映画

全体的に見て言い方は悪いが、この作品はずるい。
鬼滅の刃のような戦闘シーン、細田守監督作品のテイスト、
そして君の名はからのジュブナイル。

多くの「売れる要素」を詰め込みまくって、
それをただただパロディやパクリではなく、
この作品らしい要素に落とし込み、作品に仕上げている。

今時の要素というのもこれでもかと盛り込んでいる。
VTuberやボカロ曲だけでなく、VR、eスポーツ、推し文化、
それを近未来という舞台で綺麗に描いており、
こんな未来が訪れたらいいなという「明るい未来」が
エンタメの中で描かれている、夢と希望に満ち溢れている作品だ。

作画のクオリティもすさまじいものがある、
ライブシーンの数々の演出、バトルゲームシーンのアクションの数々、
これが配信サイト限定の映画であることがもったいないと感じるほど
「映画館」で見たいと思わせるアニメーションがしっかりとある。

そしてストーリーだ。
序盤から中盤はある程度要素通りに物語が展開していくのだが、
終盤30分の展開は度肝を抜かれるほどの怒涛の展開であり、
超くそでか感情の百合から生まれる超壮大なSFと超壮大なジュブナイルが
気持ちのいいハッピーエンドにつながっている。

令和という時代を
ぎゅううぅぅう!っと詰め込んだような世界観は見ているだけで楽しく、
そこに百合要素とSF要素がうまく絡み合ってる作品だ。

Netflixに今、入ってる人はもちろん、
入ってない人も映画料金を払うと思えば安いものだ。
是非ご覧いただきたい。

個人的な感想:細田守の進化

おそらく多くの人が「細田守監督」に求めていた要素がある。
夢と希望に満ちた明るいインターネットの世界と、
古典である竹取物語を下地にしている。
ラストの展開も「君の名は」ではあるが、
同時に「時をかける少女」でもある。

見ている間にそんな細田守監督イズムのようなものを
ビンビンに感じてしまい、思わずニヤニヤしてしまう作品だった。
監督の名前は初めて聞いたが、山下清悟監督は現在38歳だ。
まだまだ若い監督が細田守監督イズムを受け継ぎ、
素晴らしい作品を作り上げたことにスタンディングオベーションを送りたい。

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