評価 ★☆☆☆☆(11点) 全12話
あらすじ ミライアカリ、電脳少女シロ、猫宮ひなた、月ノ美兎、田中ヒメ、鈴木ヒナをはじめ、総勢30名超のVTuberが出演するTVアニメ 引用- Wikipedia
共感性羞恥の塊
みなさんは普段「VTuber」というものを見ているだろうか?
キズナアイが生まれ、多くのVTuberが登場し、VTuber事務所も多く存在する現在。
アニメにも声優として登場したり、OPやEDを歌ったりと、
この数年で色々な所で見かけるようになった。
それだけVTuberという文化が根付いた証でも有る。
そんな今、なぜか「バーチャルさんはみている」がYouTubeで一挙配信されている。
あのVTuber黎明期に生まれた伝説のアニメだ。
私も6年前にすでにレビューしている。
当時はVTuberという文化に対する拒否感や異物感などもあった中で
私は視聴したが、今は違う。VTuberというものが
ある程度、どういうものかわかったうえで、この作品を見たらどうなるのか。
あえてあの「悪夢」に再度、足を踏み込んでみることにした。
内輪ノリ
1話の冒頭からきつい、馬面のVTuberがVTuberというものを紹介する。
メインキャラが彼の前を走って横切る中で、それぞれが奇声をあげる。
「よく後輩にセクハラをする明るいセクシーお姉さん!」
「変な歩き方をしているのがゲラ娘!」
内輪ノリだ、彼女たちの普段の配信を見ているならば
そんな内輪ノリで笑うことも出来るかもしれない。
だが、それは難しい。
今でこそ知っているVTuberもちらほらとでてくるものの、
内輪ノリを堂々とやられるのはきつい。
メインキャラ達が必死に長いセリフを早口で読んだり、
奇行を繰り出すことで「面白い」雰囲気を作り出そうとしているのはわかる。
だが、そんな彼女たちの「必死さ」が画面にもでており、
有る種の共感性羞恥すら感じてしまう。
でているVTuberたちに罪はない。
彼女たちはアドリブではなく「脚本」をもとにセリフを喋っているだけだ。
脚本家も必死にVTuberというものを学び、
彼女たちらしいセリフを台本に落とし込んだのだろう。
それが余計に「ズレ」を呼び、必死さが残るだけになっている。
カメラ
この作品で1番最悪なのがカメラワークだ、
誰かが手で持ったまま撮影しているかのような
「手ブレ」があり、無駄にカメラがかたむき、揺れる。
それが見ている側の三半規管を狂わせる。
ただでさえ虚無感がただよって視点が定まらないのに、
そんな視点を揺らしてくる。シンプルに酔う。
キャラクターの動き自体も当時の技術的な問題も有るだろうが、
動きの幅も少なく手をバタバタさせているだけのようなキャラも多く、
それにあわせてカメラも揺れる。
なぜカメラを揺らす必要があるのか本当に意味不明でしかない。
ちなみに制作会社は「リド」という会社だ。
VTuberが流行りだしたときに
ドワンゴ・KADOKAWA・カラー・インクストゥエンター・アソビシステムの5社の合弁により設立され、2019年に本作品を手掛けた。
しかし、2019年の4月には会社がなくなっている(苦笑)
VTuberのアニメを作るために制作された会社が、
バーチャルさんはみているの放送終了とともに制作会社もなくなるという
意味不明なことも起きており、このあたりも企画の見切り発車感は否めない。
話が進むとこのカメラの揺れは多少は改善されるが、多少だ。
唐突に静止画でお届けされたりと、ギャグなのか本気なのか
いまいちわからない演出もあったりと、
本気でやってるのかそうではないのかの判断がしにくい。
企画
このアニメはアニメという媒体では有るものの、
やってることは「VTuber」によるバラエティ番組だ。
最初からアニメではなくバラエティ番組という枠組みでやるならば、
ここまで酷評されることもなかっただろう、
「アニメ」と公式が言い張ったがゆえにアニメとして見た人たちから多くの声があがった。
そのバラエティ番組的な企画がそもそもつまらない。
何度も言うが出演者には何の罪もない、
アニメのはずなのにアニメ的な台本を作れなかった脚本家や監督に責任がある。
いわゆるシチュエーションコント的な感じの企画が
何本も1話の中で繰り返される。
ゲーム部プロジェクトの面々が宇宙で色々なことをしたり、
バーチャルグランドマザーこと小林幸子さんが四字熟語などを紹介したり、
猫宮ひなたがバトロワゲーの妄想をしたり。
電脳少女シロが訪れた客のリクエストに答えてうんちくを披露したり。
ミライアカリがお悩み相談に。
これの何が面白いんだろうか。本当に疑問でしかない。
しかも同じ企画を1クールに渡ってずっと繰り返す、
これなら普段の彼女たちの配信のほうが1億倍楽しめる。
1企画1企画をきちんと掘り下げるわけでもなく、
矢継ぎ早にやり続けるだけで、セリフもこころなしか早口だ。
見ていて面白いわけではない、それどころかVTuberたちの必死さが
伝わってきて見ていて辛くなる作品だ。
その必死さにいわゆる共感性羞恥を覚えている人もいるだろう。
空回りし続ける彼女たちを見て、見ているこちらも恥ずかしくなってくる。
同じようなシチュエーションで同じようなネタも多く、
「ピーナッツくん」が隕石になって衝突してくるネタなど
流石に飽きてしまう。
キャラ数
メインと言えるのは月ノ美兎、電脳少女シロ、
ミライアカリ、ヒメヒナ、猫宮ひなただ。
あれから6年の月日が経っているものの、ミライアカリ以外は
現役でVTuberを続けており、この着眼点に関しては素晴らしかったのかもしれない。
今となれば知名度もあり、知っている人も多いVTuberではあるものの、
6年前の時点ではメインのうち一人か二人、知っていればいいほうだろう。
そんなメインの5人以外にも多くのVTuberがでてきて、
サブキャラとしてでてくるキャラクター数も多い。いや、多すぎる。
話によっては30人近いVTuberがひしめきあっており、
ゲーム部、ピーナッツくん、富士葵、にじさんじの面々と
多くのVTuberが登場しており「今」見ると逆に豪華にもみえる。
だが、当時はその豪華さがわからない。
これは視聴者側もそうだが、制作側もそうだったのかもしれない。
VTuberというものが生まれ流行りつつ有る中で、それをアニメにする。
その企画だけが進行し、監督や脚本家、制作陣もVTuberというものを
掴みきれないままにこの作品を作ってしまったのかもしれない。
だからこそ有象無象のVTuberに
バラエティ番組のマネごとをさせるだけのアニメになってしまっている。
今見ると多少見れなくはない部分はあるものの、6年ぶりに見ても
この作品のキツさは変わらなかった。
総評:6年越しの虚無
全体的に見て6年越しに見直してみてもキツさは変わらなかった。
何度も言うが出ているVTuberさんには罪はない。
すべては制作が問題だ、カメラワークをはじめ、企画、脚本、
ありとあらゆる要素が素人かと思うほどで、
誰がやっても結果は変わらない、たとえプロの芸人がやっても同じだ。
この状況、用意されたものの中でVTuberさんたちは
必死に面白くしようとするのは見てて伝わる。
だが、それだけに痛さが際立ち、共感性羞恥のようなものを感じてしまう。
この作品に出ているVTuberのファンの人もいるだろう、
そういう人たちはそのVTuberの活躍を楽しめなくはないかもしれない。
それでもギリギリだ。
VTuberという文化の黎明期に生まれた迷作であり、
それは何年たっても変わらないことを見直して感じることができたのは
再レビューして良かった部分かもしれないが、2度目の最後まで見るのは
なかなかに厳しい作品だった。
個人的な感想:シン・バーチャルさんは見ている
6年前の状況だからこそ生まれた作品であり、
もし今、2期、続編のような作品が生まれたら
色々とか悪いかもしれない。
視聴者側も制作側もVTuber自身もVTuberというものがどういうものなのか、
それを多くの人が知っている今だからこそ、
バーチャルさんはみているの続編を作られれば、
バーチャルさんはみているという作品の汚名を返上する可能性もなくはない。
あの頃にはいなかったVTuberたち、
そして今もなお活躍しているバーチャルさんはみている出演者が集い、
バーチャルさんはみているのリベンジが果たされる日を
私は心待ちにしている。



