映画

環境活動家VSサメ「私がビーバーになる時」レビュー

3.0
私がビーバーになる時 映画
画像引用元:(C)2026 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
スポンサーリンク

評価 ★★★☆☆(56点) 全104分

「私がビーバーになる時」日本版本予告|キュートなクセありビーバーズと挑む“重大ミッション”とは⁉|3月13日(金)劇場公開!

あらすじ 大切な森を守るため、ビーバー型ロボットに意識を転送した動物好きの女子大生メイベルは、もふもふの動物たちの世界に潜入できて大はしゃぎをしていたのもつかの間 引用- Wikipedia

環境活動家VSサメ

本作品はピクサーによるオリジナルアニメ映画作品。
監督はダニエル・チョン 、制作はピクサー・アニメーション・スタジオ

エリオ

去年のピクサーオリジナルアニメ映画である
「星つなぎのエリオ」は個人的にはかなり厳しい作品で、
そんな厳しさを物語るように制作側も
ゴタゴタしていたという情報が流れていた。

ディズニーやピクサーはここ数年はいわゆる
「ポリコレ」的なニュアンスを含む作品が多く、
そちらを描くことが中心になって、
作品自体が振り回されてる感のある作品があった印象だ。

そんな中でこの作品の主人公は「日系」であり、
しかも「動物愛護」を掲げる女性だ。
なかなかに尖った主人公ではあるものの、
作品全体もかなり尖りまくっていた作品だった。

動物愛護

本作の主人公はいわゆる問題児だ。
学校で飼っている動物を「可哀想だから」という理由で
勝手に盗み出して自由にしようとしたりと、
子供の頃から「動物」に対する愛情が異様だ。

そんな問題児だった彼女を唯一受け入れてくれたのが「祖母」であり、
自然豊かな森のそばに住む祖母とともに暮らし育ったことで、
彼女の中にある「動物愛護」はより増長してしまっている。

それが決して悪いことではない、だが、彼女はある種の活動家だ。
森を切り開いて作られる高速道路が街に出来そうなことを知れば
彼女は即座に反対活動を始め「動物の家」を守ることに必死になって、
ある種の活動家として市長に認知されるほどだ。

かなり尖った主人公で自己主張が強い。
動物愛護に対する彼女の行動や言葉は自己中心的で、暴走気味だ。
他者からの共感や他者の考えなど彼女にとってどうでもよく、
自らの主張を押し通そうとする、かなりクセの強いキャラではあるうえに、
好みも別れるキャラクターだ。

最終的には彼女の行動のせいで森は火事になり、
あやうく街も火の海に沈みそうになっており、
ちょっとこのあたりのキャラクターの「行動」の極端さは
この作品において賛否が別れる部分だろう。

ビーバー

市長による高速道路建設を止めるためにはビーバーが必要だ。
ビーバーがいれば水をせき止め、池が作られ、
結果的に多くの動物が集まり、多くの動物が集まっている場所には
高速道路を作ることができない。

それに気づいた主人公はあくせくと活動する中で、
自らが通う大学で「人の意識」を「機械」に転送する技術があることを知る。
タイトル通り、この作品の主人公は「ビーバー」になる(笑)
正確に言えばビーバー型のロボットであり、見た目はビーバーそのもので、
しかも、動物の言葉まで理解できるようになってしまう。

動物が大好きな主人公が動物になる。
彼女にとっては夢のような世界だ、だが、そこには
「現実」も待ち受けている

弱肉強食

動物たちの世界にはルールが有る、弱肉強食だ。
弱いものは食べられ、強いものが生き残る。
それが自然そのものであり、そうでなければ肉食動物は生きていけない。
そんな現実を主人公はしる。

目の前で当たり前のように食べられる動物たち、
それは「当たり前」だからこそ「あっけらかん」とした描写だ。
この作品の面白いところは動物目線と人間目線とで、
「動物の描き方」が変わるところだ。

動物同士の目線では動物はディズニー、ピクサー映画らしく
コミカルでアニメ的な表現になっている。
しかし、人間目線で動物をみるとリアルな動物そのものだ。
この描きわけが作品全体の世界観をも作り出しており、
コロコロと描写が変わる動物たちの可愛らしさに浸ることが出来る。

当たり前のように行われる弱肉強食、
それは動物たちにとって生きていくうえでのルールだ。
同時に「人間」もまた動物であり、弱肉強食の社会にいき、
この地球という星のルールのもとに暮らしている。

だが、主人公はそれに気づくことができない。
自分勝手に、自分の思いを動物たちにもぶつけ、
それが動物たちにも伝染していく

自然の世界にはそれぞれ王がいる。
哺乳類の王、両生類の王、魚類の王、虫の王。
それぞれが王として動物たちを従えている。
人間もまた哺乳類であり、他の王たちは
哺乳類の問題は哺乳類で解決すべきだという考えを持っている。

しかし、そんな動物たちの世界に主人公は踏み込んでしまった。
ビーバーの姿で、人間であることを知らせずに、
彼女は強い意志で「人間」を批判し、結果的に
王たちは「人間」への怒りを顕にし、その原因たる
「市長」を潰すべきだという主張に変わってしまう。

この「潰す」という表現はリアルだ。
特に虫たちの世界においては「潰される」ことは日常茶飯事だ。
だからこそ当たり前のように「潰す」という表現が出てくる。

この世界における弱肉強食はリアルだ、
動物たちは現実世界以上の知性を持ち合わせているという
ファンタジーな部分はあれど、弱肉強食という要素だけはしっかり描いている。

王たちの討論の中で主人公は詰められ、思わず「虫の王」を潰してしまう。
別に殺すつもりではない、ただ、目の前の虫をいつものように潰しただけだ。
そんな虫の、動物の、自然の逆襲の物語でもある。

サメだぁあああ!

自然界の王たちの逆襲模様は凄まじく、
終盤では「サメ」がでてくる、ただでてくるのではない、
鳥がサメを抱え、サメが頭上に降ってくる(笑)

捕食者の王たるサメがまるで某サメ映画のように空を舞い、
噛みつこうとしてくるさまはパロディで
ありつつギャグシーンにもなっている。

コミカルなギャグシーンは非常に多く、
動物たちがスマホの絵文字で会話をしたり、
何気ないシーンでクスクスと笑わせてくれることで、
ストーリーにメリハリが生まれている。

ジョージ

主人公が出会った哺乳類の王であり、ビーバーたる「ジョージ」。
父から受け継いだ小さい王冠を被り、必死に王として
動物たちをまとめようとしている。

ジョージは王としては頼りなさが残るキャラクターだ。
しかし、彼は彼なりに「調和」を求めちており、
弱肉強食でのルールはきちんと受け入れながら、
ときに人間に住処を追われても、
それもまた自然の流れであると受け入れている。

そんなジョージという存在が主人公の考えを変えていく流れになるのは
自然であり、癇癪をおこし、自分の意見を押し付けようとしていた彼女が
「自然」のなかでジョージという存在に出会い、
調和を知り、変わっていく流れは素晴らしい。

市長が高速道路を作っているのは別に動物が憎いからではない。
高齢の母とくらし、彼もまた市長として市民の生活を豊かにし、
自らの市長としての立場を強固にしようとしているだけだ。

主人公の活動家的な行動も迷惑に思いつつも、
市長自身は主人公と顔見知りになるほど長い対話を続けている。
主人公よりも、市長のほうが自然に、調和という事を行っている。

主人公や動物目線で見れば「悪」なのだが、
市長自身がどこか憎めないキャラクターになっているのも
この作品の特徴だ。

ヴィラン

本作には明確なヴィランが存在する。
「虫の女王」の息子だ、彼は女王を潰され王になり、
人間の技術を使って人間への復讐を果たそうとし、
更には全ての生き物を支配しようとする。とんでもないヴィランだ。

そんな虫の王の暴走が原因で森のかなりの部分が火事になり、
動物たちも危険な目にあっている。
描かれていないだけで死んでしまっている動物も居るだろう。
最終的には動物と人間が協力して消火し、
市長も考えを改め動物たちの住処の再建に乗り出す。

そんなハッピーエンドで終わっているものの、
今回の事件の要因、きっかけを作り出したのは主人公であり、
彼女が蟻の王の母を思わず潰さなければ終盤の大騒動は起こらなかった。

そもそも彼女が暴走してビーバーに意識を移し、
動物社会に乗り込んでいなければ、ここまで大事にはならなかった事件だ。
結果として市長が考えを改め動物たちとの調和を考えるものの、
それは結果論であり、主人公のやらかしてることがかなり多い。

人間同士のいざこざも、そして人間と同部たちの関係性も、
調和、そして対話し、相手の立場を考えることが重要であるという
メッセージがあるのはわかるものの、
主人公のやらかし具合が最後までどうにも消化しきれない作品だった。

総評:環境テロリストVSサメ

全体的に観て、前作の「星つなぎのエリオ」も
主人公のやらかし具合がやばかったが、今作も似たようなやばさがある。
物語の核となる主人公の魅力が薄いというのは前作と同じ欠点ではあるものの、
コミカルな動物たちの描写やギャグシーンの数々は笑いを生み、
そんな描写があるからこそ、それなりに楽しめる作品だ。

ただ名作というには弱い。
動物たちの可愛らしさや、主人公が動物になるという展開の面白さ、
市長など含めたキャラクター描写は愛くるしさがあり、
弱肉強食の世界を当たり前に描くことでリアルなストーリーラインが
生まれる一方で、主人公の主張や行動には疑問がつきまとう。

結果的に主人公の変化というのもあまり見えず、
そもそも主人公が守りたかったのは「動物」というよりは
祖母との思い出の場所を守りたかっただけのように見える。

だからこそ、動物たちを自分の都合に利用し、
虫の女王を思わず殺してしまっても「ジョーク」で
済ませようとする始末だ(苦笑)

おそらく制作側としても意図して主人公をこういうキャラにしてるのは
わかるが、大学生なのに子供すぎる彼女の行動やセリフが
いまいち消化しきれないせいで作品に乗り切れない部分が多かった。

おそらく見る人によっても大きく評価が変わる作品だ。
だからこそ、ぜひ、劇場で確かめていただきたい。

個人的な感想:クセあり

ここ最近のディズニー、そしてピクサー作品の主人公達は
キャラクターデザインも含めてクセが強いキャラが多いような気がする。
だからこそ映像面は良くても、
ストーリーで核たる主人公に好感が持てず、乗り切れない。

個人的にはそういった作品が多い。
この作品もところどころ笑ってしまう部分もあり楽しめたのだが、
冷静になると「主人公やばくね….?」となってしまい、
素直に面白かったといい切れない作品になってしまった。

今、ディズニー&ピクサーに足りないのは
愛すべき主人公かもしれない。

「私がビーバーになる時」に似てるアニメレビュー