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「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」レビュー

1.0
映画
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評価 ★☆☆☆☆(14点) 全90分

あらすじ 夏休み、とある海辺の町。花火大会をまえに、「打ち上げ花火は横からみたら丸いのか?平べったいのか?」で盛り上がるクラスメイト引用- Wikipedia

集団催眠映画

原作は1993年に放送されたドラマ、1995年には映画化もされ、
2017年にアニメ映画として制作された。
総監督は新房昭之、監督は武内宣之、制作はシャフト

癖全開


画像引用元:「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」予告3 より
(C)2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会

映画の冒頭から非常に強いクセを感じる。
水着姿で水中に居る主人公とヒロイン、
思わせぶりなセリフのあとに大量の花火が描かれる。
物語が始まる期待感というものを感じさせるほどには至っておらず、
いわゆる「質アニメ」感が強い。

「質アニメ」の特徴として作画の質が高いというのがあるが、
この作品も類に漏れず作画の質は異常に高い。
シャフトにしては珍しくきっちりと「背景」まで書き込まれた作画と、
数々の深夜アニメを作り上げたシャフトらしい「エロチシズム」を感じる
太ももや女性のパーツの描写は一般受けを狙っているにしては艶かしすぎる。

カメラアングルもエロい。
妙にローアングルで映したり、体を舐め回すようにカメラを動かしたりと、
これが深夜アニメなら「エロい!さすがシャフト!」と褒めたくなる所だが、
「広瀬すず」や「菅田将暉」などをメインキャラに起用してるところを見ると
いわゆる「一般受け」を狙っているはずの作品だ。

そんな一般受けを狙っている作品なのにシャフトらしいエロさが
隠すことなく、あますことなく描かれており、
予算があるだけにかなり作画の質もいいせいで余計にエロい。

良い意味でも悪い意味でもいつもの「シャフト」であり新房昭之監督だ。
化物語を彷彿とさせるようなシーンも多く、
「シャフト」という製作会社の作品を普段から見ている人ならば
違和感はないが、シャフト知らない人からすれば
妙な生々しさを感じてしまうだろう

特に「胸」の描写もかなり露骨だ。
主人公の担任の先生の爆乳具合など深夜アニメならばお約束的ではあるものの
こういった一般受けを狙ったアニメ映画では過剰な描写だろう、
ぷるるんと揺れる胸の描写はオタクにとってはご褒美だが、
普通の人からすれば「気持ち悪い」と捉えられかねない。

キャラデザも化物語における「戦場ヶ原ひたぎ」と「阿良々木暦」に
何処か似ており、偽物みたいな感じのキャラデザは違和感が強い。
やたらめったら背景を映すシーンも多く、
そのせいでストーリーのテンポも悪い。

唐突


画像引用元:「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」予告3 より
(C)2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会

登場人物にも感情移入しづらい。淡々と序盤からストーリーが進む。
ヒロインは親の都合で転校を控えており、ヌケサクみたいな主人公は
美少女なヒロインのことが少し気になっている。
そんな状況でヒロインは主人公の友達を「花火」に誘う。

友人たちは友人たちで「花火って横から見たら平べったいの?丸いの?」と
どうでもいい会話を繰り広げており、序盤の20分くらい退屈だ。
淡々と何の盛り上がりも引っかかりもなくストーリーが進んでいく。
この年代特有の女子に対する恥ずかしさから生まれるすれ違いは
淡々としてながらよく描かれてる部分はある。

ヒロインは引っ越しや再婚が嫌で家出をしており、
連れ戻される彼女を「1度目」の主人公は見ている事しか出来ない。
彼女が落とした「謎の球」を拾い、主人公は考える。

「あの時、もしも俺が」

ループ


画像引用元:「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」予告3 より
(C)2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会

この作品はいわゆるループものだ。
主人公は謎の玉を使い、何度も「タイムリープ」する。
「もしものあとき」と主人公が玉に願えば、別のルートの主人公の姿が描かれる。

もしも自分が友人にプールで勝っていたらどうなったのか。
もしも自分があの時こうしていればという後悔から、
そんな「あの時」と「こうしていた」ストーリーが時間が戻って描かれる。

このタイムリープが非常に分かりづらい。
時間が戻って「もしものあとき」の時点に
戻っているのは分かるのだが、一回目のタイムリープの際に
主人公の記憶はないような描写だ。

こういった何度も同じ時系列を戻る作品には2パターンある
シュタインズゲートやRe:ゼロから始める異世界生活のように記憶があり、
バッドエンドを回避するためにタイムリープしルートを模索する作品と、
四畳半神話大系のように記憶がないが「あの時ああすればどうなったか」
という様々な分岐を見せるパターンがある。

だが、この作品は2パターン見せている。
1周目の段階では全開の記憶が無いように見せている、
少し違和感を感じつつも主人公はタイムリープしていることに気づいてはいない。
だがデジャブのように記憶が蘇り、すぐに主人公は
「お!この玉使えばあのときに戻れるじゃん!」と
めちゃくちゃタイムリープに対する理解が早く、すぐに使う。

もう少し「玉」に関して主人公考えたりなにかする要素がアレば良いのだが、
そんなことは一切しない上に「玉」に関しての説明は殆ど無い。
それを主人公がとんでもない理解度で理解し都合良く使う。

そもそものドラマ版ではこの「玉」すらでてこなかったようで、
どちらかといえば「四畳半神話大系」タイプの話のようだ。
あくまでAルートとBルートで話が別れているだけだ。
それを強引に、シュタインズゲートタイプのタイムループにしている。

しかも、それが余計な尺稼ぎにしかなっていない。
ループのたびに繰り返されるシーンや演出の数々のせいで
1ルートごとの時間が無駄に長く、
同じようなシーンが多いせいで見ていて単純に飽きる。

ヒロインが途中で松田聖子さんの「瑠璃色の地球」を歌ったりするのだが
これが長い。特に面白くはないが映像としてだけ見れば綺麗、
そんなシーンがひたすらに続く。

水増し


画像引用元:「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」予告3 より
(C)2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会

そもそもの原作が50分の作品だ。しかし、この作品は90分ある。
同じ話を約2倍の尺で描くためには当然、そもそもの話になかったシーンや
ストーリーを追加し尺を稼ぐしかない。
それがあからさまに作品の面白さそのものを薄めてしまっている。

何度も繰り返す中で世界が何故かおかしくなる。
ちなになんで世界かおかしくなっていっているのかという説明は一切ない。
なんかおかしくなる(苦笑)
花火が変な見え方になったり、電車が海の上を走っていたり、
何故か世界がおかしくなるが、なんで世界がおかしくなってるのかはわからない。

映像としては幻想的だ。不思議な花火、水の上を走る電車の映像自体は綺麗だが、
それが「どうしてそうなっているのか」という説明がなく、
なんか何度も繰り返す中で世界がおかしくなってるから
なんか変なことになってる。
というふわふわとしたものになってしまっている。

なにがしたいん?


画像引用元:「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」予告3 より
(C)2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会

結局「青春ストーリー」にしたいのか
「タイムリープSFストーリー」にしたいのか、
どっちつかずな感じになってしまっている。終わりも釈然としない。

主人公は何度繰り返してうまく行かない中で、世界はどんどんおかしくなる。
だからこそ主人公は考える

「元の世界に戻してくれと頼んだらどうなるのか」

しかし、元の世界に戻ってしまえばヒロインは転校してしまう。
だからこそ主人公は「おかしな世界でも」ヒロインと一緒に居たいと叫ぶものの、
肝心の「玉」を酔っ払いが何の前触れもなく破壊したことで
この繰り返したおかしな世界が唐突に終わりを告げる。

ストーリー的にもふわっとした感じで終わってしまい、
ハッピーエンドとは言えない。
SFの要素を強めてしまったせいで解釈の仕方次第ではバッドエンドとも
捉えることもできてしまうエンディングは強い消化不良を起してしまう作品だ。

総評:シャフトの癖が強すぎる


画像引用元:「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」予告3 より
(C)2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会

全体的に見てシャフトと新房昭之監督の癖が強すぎる作品だ。
一般受けを狙ってるはずの映画なのに所々見られる深夜アニメのノリや、
フェチズム要素の強いセクシー要素、シャフトらしくはあるが
癖の強すぎる演出は慣れていな人にとっては見づらさしか感じないうえに、
作品全体の「ターゲット層」がよくわからなくなってしまっている。

演出も無駄な部分が多い。ストーリーをより面白く見せるために、
キャラクターをより魅力的に見せるために、
シーンをより印象深いものにするための演出ではない。
90分という時間を稼ぐための演出でしかなく冗長であり、
よくわからない感じになってしまっている。

確かに映像自体は綺麗だ。綺麗なのだが「綺麗」なだけでそれ以外の意味がない。
シャフトらしくない、新房昭之監督らしくない自己満足と
尺稼ぎのための演出でしかなく、癖のある演出のせいで
この作品で伝えたいことが濁されてしまった感じも否めない。

一般受けを狙った青春アニメ映画にしたいのか、
オタク受けを狙ったSFアニメ映画にしたいのか。
最期までどっちつかずのままで進んでしまい、
ふわっとした感じで終わってしまい、見終わったあとに
特に何の感傷に浸ることもなく「見た」という結果しか残らない。

結局の所、原作にはなかった設定やストーリーを追加したことや、
そもそも原作では「小学生」だったキャラクターたちが
アニメでは「中学生」にしてしまったことによる矛盾が
キャラクターの行動の突飛さや情緒不安定さにもつながっており、
終始、キャラククターに感情移入できず掴みどころがないままに終わってしまう。

結局ストーリー自体が薄いのをいろいろな演出で
引き伸ばしたという作品だった。

個人的な感想:2年ぶり…


画像引用元:「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」予告3 より
(C)2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会

再レビューに伴い、この作品を約2年ぶりに見たのだが、
恐ろしいことにこの作品の記憶を一切失っていた。
「見た」という記憶はあれどストーリーやキャラクターの名前が
まるで思い返せず、いざ見返しても思い出せない。

おそらく2年後にはまたすっかり忘れている。
そんな自信があるほどにとんでもなく印象に残らないアニメ映画だ。

「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」は面白い?つまらない?

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