「君の膵臓をたべたい」レビュー

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映画
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評価 ★★☆☆☆(27点) 全108分

あらすじ 君の膵臓をたべたい」……主人公である「僕」が病院で偶然拾った1冊の「共病文庫」というタイトルの文庫本。引用- Wikipedia

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緩んだ涙腺を通り魔が切り刻む

原作は「小説家になろう」に投稿された小説作品。
実写映画化もされており、本作品はそのアニメ映画版。
監督は牛嶋新一郎、制作はスタジオヴォルン。
なおネタバレを含みます。

作画

見出して感じるのは背景の異様なまでの書き込みだろう。
窓から差し込む光の加減まできっちりと意識した背景美術は
かなりこだわって描かれていることを感じる。

「君の名は」の影響で新海誠監督の背景の異質なまでのこだわりに
影響される作品も多かったが、この作品も類を見ない。
少し違和感を感じるほどに美麗だ。
だが、こだわればいいとうものではない。

正直言って「綺麗すぎる」背景は少し違和感を感じるほどだ。
乗り物などが3DCGを使って描かれていたりするせいで、
その美麗な背景からあからさまに浮いてしまっていることもある。
こだわりならそこまでこだわって初めて意味が出てくる。

背景にこだわるのは良いが逆にキャラクターデザインは
物凄くシンプルなものになってしまっており、
普段アニメを見ない人でも受け入れやすそうなシンプルなデザインだ。
シンプルすぎるゆえにやや無個性になってる部分はあるものの、
いわゆる「一般受け」を狙ってるなら無難なところだろう。

膵臓食べたい

昔の人は胃が悪ければ動物の胃を食べた。
映画のタイトルにもなってる「君の膵臓をたべたい」はこういう意味合いだ。
確かにタイトルのインパクトはかなりあるものの、
この作品を紐解くとこの作品がどんなものかをシンプルに伝える言葉がある。

スイーツ(笑)だ。
もはや死語となってる言葉だが、15年くらい前に流行りまくった
携帯小説「恋空」などのあの手の作品だ。
ヒロインか主人公が何らかの病気などで死ぬ寸前で、
色々すったもんだしたあげく最後を看取って
世界の中心で、愛をさけぶ。

これだ。この作品も基本的な部分はそれだ。
ヒロインは主人公に出会ってすぐに自分が膵臓が悪いことを告げる。
この手の作品の傾向として具体的な病名は言わないのも似通った展開だ。
始まって15分もしないうちにラストが想像できてしまう。

流されるまま

主人公はヒロインの日記を病院で拾い、そのせいでヒロインの事情を知る。
しかし、彼は元々人間に興味がない系人間だ。
そんな彼がヒロインに誘われ「ホルモン屋」にいき、喫茶店に行きと
流されるままに彼女に付き合う。

彼はヒロインがもうすぐ死ぬと聞かされても
「ああ、そう」と言い放つくらいテンションが低い。
しかもヒロインはクラスメイトだ。
本来ならもう少し驚くべきところを彼はまるで驚かない。

そんな彼がどうしてヒロインにここまで付き合うのかが少し納得できない。
思春期の男子だ。可愛い女子に誘われたらホイホイついていく
気持ちはわからないのでもないが、
いくら主人公が「好きに生きればいい」とヒロインに言ったからと言って、
ヒロインのわがままに付き合う理由がこの主人公の設定では
物語の導入としてはやや強引に感じる。

ダイジェスト

中盤になるとダイジェストで二人のまるでデートのようなシーンが続く。
恋人ではなく友達と呼べるかどうかも怪しい二人ではあるものの、
互いの性格や状況から生み出す距離感が互いにとってちょうどいい。
この付き合う一歩前のような絶妙な関係性は見ていて微笑ましく、
同時に二人がいつ「恋愛感情」に変化するのかがきになってくる。

そんな中でセクシーなシーンが有る。
例えばヒロインの生足だったり「シャワーシーン」だったり、
そういったシーンは意外と多いのだが、
そこにあまりこだわりを感じない。

新海誠監督作品のように背景にこだわるなら同時に
「フェチズム」にもこだわってほしかったと感じてしまう描写が多く、
作画の質がいいだけにもったいない。
背景の美麗さも基本的に会話劇であり絵代わりしづらいことをごまかすために
背景を綺麗にすることで絵をもたせてるような感じだ。

特に序盤から中盤はものすごく淡々としている。
二人で会話したり、何かを食べたり、どこかに行ったり、
そこでなにか起こるわけでもなく淡々としている。
淡々とした中で徐々に二人の気持ちが変化していく。

ヒロイン

この作品のヒロインは可愛い。
小悪魔的に主人公を誘い、物有りげな言葉や行動を取るが、
ふとした瞬間に恥ずかしがる様子や病気であることを感じさせない明るさと
飄々とした笑顔は可愛らしく、そんな彼女に「惹かれていく」主人公の
気持ちに感情移入することができる。

ちょっとあざとさすら感じるほどぐいぐいと主人公に迫る様子は
可愛らしく、小悪魔的な彼女が主人公の意外な行動に
ドキッとさせられる様子は思わずニヤニヤしてしまう。
そしてふとした瞬間に感じさせる「死への恐怖」が
彼女への感情移入も高めていく。

サブキャラ

この作品のある意味、最大の欠点だ。
ヒロインの友人であり主人公のクラスメイトの少女がいる。
彼女はヒロインの保護者のような立場だ。
かなり過保護にヒロインのことを大切に思っている。

しかし、そんな彼女は冴えない主人公がヒロインと
仲良くしてるのが気に食わない。
常に眉をひそめて主人公にあからさまな「憎悪」を向け、
主人公の首根っこを掴んで突っかかってくるときもある。

これで主人公が札付きの悪ならば彼女の言動や行動はわかるが、
主人公は人畜無害な孤独な少年だ。それ以上でもそれ以下でもない。
そんな彼がヒロインと仲良くしてるだけで、
その気持をヒロインにぶつけるわけではなく彼にぶつけるさまは
見ていて不愉快でしかない。

ヒロインの元彼までつっかかってくる。
基本的にサブキャラは性格が悪くめんどくさい。
元彼は暴力まで使ってくる(苦笑)
もうひとり、主人公の友人になりそうなポジションの
チャラ男がいるのだが、彼の存在価値はいまいち見いだせない。

変化

二人が行動をともにする中で二人も変化していく。
他人に興味がなかった主人公がヒロインのことを徐々に大切に思い、
逆にヒロインも最初はからかい半分だった行動や言動が
徐々に本物になっていく。

主人公の変化は特に顕著であり、表情や他人への態度も変わっていく。
彼が何故変わったか?がきちんと見てる側にも納得できるような流れだ。
魅力的なヒロインの人間性に惹かれ、変わる。
それが見てる側にも痛いほどわかる。

この作品はサブキャラはともかく、
主人公とヒロインのキャラ描写は丁寧かつまっすぐに伝わるようになっており、
物語の中心にいる二人にきちんと感情移入できる。

通り魔

この作品の結末は読めている。
携帯小説ブームで散々読んだ「死」という名の別れだ。
この作品の場合は最初からそれをきちんとに匂わせており、
残された時間もあまりないことはキャラクターたちも見てる側もわかる。
序盤である程度結末を「予想」できる。
だが、その予想を大きく裏切る展開が待っている。

もちろんヒロインは死ぬ。
だが何故か病気ではなく「通り魔に刺されて」死んでしまう。
ちょっと意味がわからない。
二人で出かけたときに「最近物騒だね」と通り魔のニュースを
話題に出していたが、それで、なぜ通り魔に殺させたのだろうか?

確かに病気でそのまま亡くなればありがちな展開だったかもしれない。
だが、それでよかった。
序盤こそ否定的な部分はあったものの中盤からはキャラクターの変化が
きちんと伝わり、彼と彼女にしっかりと感情移入して、
予想はできる展開ではあるものの王道のラストは泣けたかもしれない。

王道をわざと外した

この作品は王道の盛り上がる展開をあえて外している。
まさに虚を突かれたような展開だ。
これで通り魔の正体が実はヒロインの元彼だったり、
ヒロインの友人だったり、存在感の薄かったお調子者のクラスメイトだったり、
そういった更に後の展開があるなら別だが、そういった展開はない。

通り魔は本当にどこの誰とも知らない人物であり、
主人公やヒロインと何の関係もない。
どうしても通り魔という要素を使いたいなら
襲われそうになった主人公をヒロインがかばったという
展開でも良かったはずだ。

主人公とヒロインが予想してたよりも早く亡くなった、
「死」への段階的な受け入れをする前になくなったという
展開を描きたかったのかもしれないが、それならば普通にヒロインの病気が
急変して倒れてそのまま亡くなったでもよかったはずだ。
あえて「通り魔」に殺させた意味がまるでわからず、
そのしっくりとこないズレた感覚ともやもやが残ってしまう作品だった。

総評:王道を穿けば…

全体的に見て惜しかった作品だ。
序盤こそやや強引な導入部分と、15年前くらいに流行った携帯小説的な
設定と展開がやや拒否感の生まれる部分はあるものの、
中盤からは主人公とヒロインの丁寧なキャラクター描写と
ヒロインの魅力もあって、しっかり物語の中心の二人に感情移入できる。

だからこそ「王道」でよかった。ゴールは見えてる作品だからこそ、
その見えてるゴールにそのまま辿り着いてくれれば、
テンプレート的ではあるもののストレートな青春恋愛映画として
評価できた作品だっただろう。

だが、なぜかその見えてるゴールに辿り着く前に
どこからともなく現れた人物に邪魔をされてしまい、
せっかくの感動のゴールがその妨害者のおかげで、
ゴールしたことよりも妨害者のことのほうが気になってしまうような感覚だ。

一言でいえばケチを付けられた感じのある作品だ。
主人公の初めて見せる涙のシーンも本来なら感動が出来た。
だが「通り魔」という存在が出てきたせいで、
作品の世界観から抜け出してしまって蚊帳の外にされてしまうような
そんな作品だった。

個人的な感想:犯人は…

歳のせいか涙腺が弱くなってきてるので、テンプレート的かつ
予想できるこの作品でも、王道通りなら多分私は泣いていた。
だけど通り魔という予想外すぎる要素のせいで、
緩んでいた涙腺が一気に締め上げられたような気分になってしまった。

本来ならスッキリと終わるストーリーがスッキリと終わらない。
なぜ「通り魔」に殺させたのか、本当によくわからない作品だった。
アニメを見た後に実写のほうもみてみたが、
実写の方は「浜辺美波さん」がヒロインを演じてることもあって
ヒロインの可愛さは実写のほうが上だった。

どちらかといえばアニメよりも実写のほうがおすすめかもしれない。
アニメレビューサイトとしては「実写よりもアニメのほうが良い!」と
言いたいところではあるのだが、浜辺美波ちゃんの可愛さに
かなわないのは皆さん納得いただけることだろう(笑)

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