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「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」レビュー

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評価 ★☆☆☆☆(16点) 全110分

「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」予告②

あらすじ 少年リュカはゲマ率いる魔物たちに連れ去られた母マーサを取り戻すため、父パパスと旅を続けていた引用- Wikipedia

なにが大人になれだよ馬鹿馬鹿しい。

本作品はドラゴンクエストVの劇場アニメ化作品。
監督は山崎貴、製作は白組。

ダイジェスト


引用元:(C)2019「DRAGONQUEST YOUR STORY」製作委員会 (C)
1992 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/
SQUARE ENIX All Rights Reserved.

始まって早々にドラゴンクエストVのゲーム画面が挿入される。
主人公が生まれ、母が魔物に連れ去られ、
父と主人公は旅に出てとゴリゴリのダイジェストだ(苦笑)

本当にがっかりさせられる。
物語の導入部分と言うべき部分はどんな作品でも大切な。
作品の世界観や雰囲気、ストーリーへの期待感、キャラクターの第一印象、
作品全体にかかせない最初の要素ががっつりとダイジェストで描かれる。

正直意味不明でしか無い。
ドラゴンクエストVをプレイしたことがある人もそうでない人も、関係ない。
ドラゴンクエストVという作品を知ってるかどうか関係ない。
きちんとした「導入」が描かれなければ、
見る側もこの作品の世界観に入り込むことが出来ない。

開始1分足らずで作品に対する期待感がまるでなくなる。
ある意味ですごい作品だ。
ここまで視聴者のことを無視した作品は珍しい。

原作を普通にプレイすれば20時間以上かかる内容を
103分の尺に収めるのが難しいのは分かるが、
導入をダイジェストにしてしまうのは意味がわからない。

常にダイジェスト


引用元:(C)2019「DRAGONQUEST YOUR STORY」製作委員会 (C)
1992 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/
SQUARE ENIX All Rights Reserved.

冒頭のダイジェストが終わっても、常にダイジェストだ。
いきなり場面が展開し、イベントが起こり、なんかよくわからないままに
ストーリーが進んでいく。
制作側の「とにかく尺が足りねぇんだよ」という文句が画面から伝わってくるほどに
適当すぎるダイジェストな展開とイベントの数々には何の感情移入も出来ない。

ろくに導入もきちんと描かずにイベントをダイジェストにつないでるだけの
ストーリーではキャラに感情移入できないのは当たり前だ。
ゲーム未プレイの人を意識していないため、
ドラゴンクエストVという作品をプレイした人がない人はついていきにくい。

コミカルなノリでサクサクとストーリーが進むというのは悪くはない。
モンスターとの戦闘シーンはコミカルでありながらも色々な
モンスターがでてくるのはドラゴンクエストファンならばテンションが上がる。
ただ、サクサクと進みダイジェストにしてしまっているため
「キャラクターの成長」の描写がひどく薄まってしまっている。

幼少期を盛大にダイジェストしているため、
ゲームをプレイしていない人にとっては
「フローラ」や「ビアンカ」と主人公の再会のシーンを見ても
「フローラ?ビアンカ?誰やねん」っとなってしまうだろう。

細かい設定の改変


引用元:(C)2019「DRAGONQUEST YOUR STORY」製作委員会 (C)
1992 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/
SQUARE ENIX All Rights Reserved.

かなり部分で設定が改変されている。
Wikipediaにざっくりと乗ってる部分だけ上げると

。サンタローズが雪国になっている。
・かつて天空人がミルドラースを封印した
・天空の剣を魔界の門に投げ込むと門を封印できる

などなど細かい改変が非常に多い。
103分というストーリーにまとめるために改変し、
ストーリーを整える必要があるのは分かるが、
キャラの性格や設定までいろいろな部分を改変してるため、
原作をやったことがある人からするとかなり違和感を覚える部分もあるはずだ。

レビューをシてる私自身、プレイしたのはだいぶ前だったため
忘れてる部分もあったが「そんな設定あったっけ?」と
思わず調べてしまったほどだ

ビアンカ?フローラ?


引用元:(C)2019「DRAGONQUEST YOUR STORY」製作委員会 (C)
1992 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/
SQUARE ENIX All Rights Reserved.

ドラゴンクエスト5を代表する選択肢と言ってもいい二人のヒロイン。
物語の中盤で主人公は「ビアンカ」か「フローラ」を選択しなければならない。
ゲームでのプレイヤーの多くも葛藤したはずだ。幼馴染かお嬢様か。
二人のヒロインはそれぞれ魅力的だ。

その葛藤をこの作品でもきちんと描けており、
フローラとの結婚が決まった後に「ビアンカ」で悩む主人公の描写、
二人のヒロインの可愛さは折り紙付きだ。
「ビアンカ」を演ずる有村架純さんの声も可愛らしく演技も素晴らしいがゆえに
ビアンカを選ぶ主人公に共感できてしまう。

キャラクターデザインこそ鳥山明さんではないにしろ、
「ビアンカ」の可愛さは破壊的だ。
そして、そんな主人公の気持ちを後押しする「フローラ」の魅力も
ゲームでは描写不足だった部分をうまく映画という媒体で補完し、
表現している。

ちなみにデボラは出ない。

知っていても


引用元:(C)2019「DRAGONQUEST YOUR STORY」製作委員会 (C)
1992 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/
SQUARE ENIX All Rights Reserved.

物語の盛り上げ方は素晴らしい。序盤こそダイジェストが多く、
イベントを切り貼りしてる展開が多いものの中盤からはそれが減ることで
「ドラゴンクエストV」の魅力と面白さがしっかりと出てくる。

特に勇者ではなかった主人公と、天空の勇者の真実。
「天空の剣」を初めて勇者が抜く姿は思わず、声を上げそうなほどだ。
原作プレイヤーなら知ってるはずの要素でも、
アニメーションとして、ある意味「最大の盛り上がり所」を
きちんと描いている。

カットや改変がされている部分はあるものの、
そのカットや改変も終盤のこの盛り上がりをきちんと描くためと
考えれば納得することができる。
最終決戦でかつての仲間や仲間になった魔物がともに戦う光景は
王道でありながらもしっかりと面白い。

今回の…


引用元:(C)2019「DRAGONQUEST YOUR STORY」製作委員会 (C)
1992 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/
SQUARE ENIX All Rights Reserved.

しかし作品全体で違和感のあるセリフがいくつかある。
例えば主人公の母の「今回のゲマ」という今回というセリフ、
その言葉に主人公自体も引っかかる。

そんな違和感を感じるセリフがある中で主人公とゲマに戦いが描かれる。
きちんとアニメーションとして迫力があり、
主人公と、その「息子」とともにゲマを討つ。

だがゲマは最後の最後で「魔界の扉」を開くものの、
「天空の剣」をその穴に投げ込むことで封印することができるはずだった。
そう「はずだった」だ。

わざわざ「天空の剣を魔界の門に投げ込むと門を封印できる」という
設定を作ったのにも関わらず、それが活かされない。
なぜか「世界」が停止する。

誰も動けず、音も消え去り、主人公だけがその世界で動けてしまう。
「なんだこれは…」
と主人公がつぶやくが、見てるこっちが「なんだこれは」だ。

本来はゲマと戦った後に、ラスボスであるミルドラースと戦って終わりのはずだ。
それで十分良かったはずだ。
カットされている部分や改変されてる部分はあるものの、終盤は
しっかりとこの作品は面白くなっていた。

だが、それを台無しにする。

は?


引用元:(C)2019「DRAGONQUEST YOUR STORY」製作委員会 (C)
1992 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/
SQUARE ENIX All Rights Reserved.

突然現れた存在はドラクエの世界観にふさわしくないキャラだ。
彼は「世界の真実」を告げると言って世界を壊す。
マッピングをオフにし、グラビティをオフにし、
「ドラゴンクエスト」の世界を消去していく。

突然現れた存在はミルドラースではなく「ウィルス」だ。
もうめちゃくちゃである。
この作品の世界は実は「ドラゴンクエストのリメイク」のVRゲームだ。
主人公はプレイヤーだ。それをウィルスが告げてくる。
ウィルスの制作者は「ドラクエの住人が嫌い」という理由だけでゲームを破壊する。

「大人になれ」とウィルスの制作者は言う。もう乾いた笑いしか出ない。
せっかくドラゴンクエストという作品が好きで、
それを3DCGによるアニメという表現で描かれた映画を楽しんでいた人に

「大人になれ」になれと告げてくる。
子供心に帰り、子供のときにプレイしていたドラクエを楽しむように
この作品を見ている人に対して、この作品は「大人になれ」と言ってくる。

楽しんでいた気持ちを地の底へと落とす。
一体この作品はなにをシたいのだろうか?なにを告げたいのだろうか?
「いい大人がドラクエとかで騒いでるんじゃないよ、くだらねぇw」
とでも嘲笑したかったのだろうか?

「ユアストーリー」という部分でオリジナル性を出したかったのかもしれないが、
そんなオリジナル性を誰が求めたのだろうか?
ゲームの世界をそのまま描いていればいいのに、
余計なオリジナル性を出したがためにこの作品の評価は地に落ちる。

意味不明


引用元:(C)2019「DRAGONQUEST YOUR STORY」製作委員会 (C)
1992 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/
SQUARE ENIX All Rights Reserved.

本当に意味不明なのが
「実は主人公と一緒にずっと旅をシていたスライムはアンチウイルスプログラム」
という事実だ。

それがないと主人公はウィルスに消されるがままになってしまうための
ご都合主義なだけの存在だ。
ワクチンもきっちりと用意してあり、ウィルスに切りかかって終わりだ。
こんな虚無感のあるラストは初めてだ。
まるで意味がわからない。

ゲマを倒して、ミルドラースを倒して終わりで良かったのではないだろうか?
この作品の世界がゲームであるという二重構造にしたいのならば、
最後に主人公がスーファミの電源を切るというシーンだけ入れればよかったはずだ。
「ユアストーリー」というオリジナル性を出したいがために、
余計な作家性を出して作品自体の評価も地に落ちた作品だ。

総評:子供心はいつまでも失いたくない


引用元:(C)2019「DRAGONQUEST YOUR STORY」製作委員会 (C)
1992 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/
SQUARE ENIX All Rights Reserved.

全体的に見て子供心を失った大人が作った唾棄すべき自己満足な作品だ。
序盤からダイジェストしまくりでカットしまくりな上に改変しまくりな
ストーリーは引っかかる部分焼きになる部分も多くキャラにも感情移入しづらく、
原作をプレイしていない人にとっては優しくない部分は気になるところだ。

だが、中盤からの「結婚イベント」や「天空の勇者」の正体など
原作ゲームの魅力をしっかりと感じれる部分や
きちんとしたストーリーの盛り上がりも描けており、
「ゲマ」との戦いは心の底から楽しめた。

しかし、そんな最高に楽しんで見ている側を地の底に落とす。
「ユアストーリー」という謎のオリジナル性を出すために、
作品の世界を二重構造にし、唐突にウィルスが出来て
「大人になれよw」と見てる側を嘲笑してくる。

なにゲームに夢中になってるの?とでもいいたげなメッセージ性だ。
そんな制作側の自己満足全開なメッセージ性だけは強く伝わる。
制作者側の自己満足などいらない、この作品に期待してるのは
「ドラゴンクエストV」の劇場アニメだ。

「ドラゴンクエストV」という作品に余計な泥を塗っている。
ならばドラゴンクエストVという作品のストーリーを、キャラを借りなければいい。
「大人になれよw」というメッセージを描きたいなら、
ご自分のオリジナル作品で描けばいいだけだ。
わざわざ「ドラゴンクエストV」という作品でやる必要性がまるで無い。

本当にくだらない。唾棄すべき作品だ。

個人的な感想:イラッ…


引用元:(C)2019「DRAGONQUEST YOUR STORY」製作委員会 (C)
1992 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/
SQUARE ENIX All Rights Reserved.

これほどイラっと點せられた作品は久しぶりだ。
なまじ、中盤から終盤までが序盤の微妙な部分からきちんと
盛り返してる部分があったために
「どうして普通にミルドラースを倒して終わってくれなかったんだ」という
気持ちが強く出てしまう。

あのままミルドラースを倒して終わってさえすれば、
この作品は色々と問題点は合ったもののそこまで
酷評するような作品ではなかったはずだ。
だが、制作側の自己満足による「余計な作品への介入」のせいで
せっかく楽しんでみていた気持ちを台無しにされた。

なんでこんなメチャクチャなオチにしてしまったのか、
本当に理解できない作品だった

「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」は面白い?つまらない?

この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください

  1. Y.S より:

    昔、地元のビデオレンタル店グループが発行していた小冊子に掲載されていた実写版キャッツアイ(だったかな?)に対する批評を思い出しました

    「視聴者が望んでいるモノをわざと見せないのがクリエイティビティだと勘違いしている男の自意識が炸裂する愚作」

  2. カタヤベ より:

    あらゆる歯車が
    致命的に噛み合わなかった作品。

    一本の映画に纏めるために
    原作の展開をカットするのも分かるし、
    カットしたぶんをを埋めるための
    オリジナル展開を入れるのも分かる。

    だがその方法があまりにも駄目だった。

    特に変なラスボスを入れたところが
    酷かった。実の所、原作ラスボスである
    ミルドラースはいわゆるポッと出なので
    ゲマがラスボスでも、完全とは言えなくとも納得は出来たというのにだ。

    ただし、ゲームだと大体主人公の
    最終武器はドラゴンのつえなのだが、
    そこをあえて父の形見である
    パパスのつるぎにしていた所は
    少しだけエモかった。