よくよく考えると舐められた気分になる作品「ガラスの花と壊す世界」レビュー

2016年5月20日

☆☆☆☆(6点)67分
【チラシ3種付映画パンフレット】 『ガラスの花と壊す世界』 出演(声):花守ゆみり.種田梨沙.佐倉綾音

あらすじ
無数の光が色とりどりにきらめき、浮遊している無重力の空間――「知識の箱」。
そこには幾つもの世界があり、幾度の時間があり、幾多もの人がいた。デュアルとドロシーの2人はそこで敵と戦っていた。
敵、それは世界を侵食する存在――ウイルス。

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よくよく考えると舐められた気分になる作品

本作品は2016年に公開されたアニメ映画作品。
監督は石浜真史、製作はA-1 Pictures。
なお、尺は1時間ほどとなっている。
原作はポニーキャニオン主催の企画でアニメ化大賞を取った作品。

見だして感じるのはとっつきにくさだろう。
仮想空間の中での描写と現実世界の中での描写、
これが冒頭から交互で描かれ「2064年」「2073年」
どんどんと置いてけぼりのまま時間が流れ、
そうかと思えば、2015年の日本になる。

わずか2分ほどの尺の中であまりにもめまぐるしく状況が変わり、
確かに「綺麗」な背景や作画ではあるのだが、
内容がゴチャゴチャしすぎて、それを頭の中で受け止めたり整理する前に
状況が変わっていく。

仮想世界の出来事なのか、現実世界の出来事なのか、
「知識の箱」と呼ばれるヴァーチャル世界の中で、
ヒロインたちは「ウィルス」と戦っている。

「なんとなく」流れを追うことはできるのだが、
はっきりいって「ダイジェスト」を見せられているような端折りぶりだ。
あまり深く考えずに見ればストーリーとしてはわかりやすいのだが、
よくよく深く考えると引っかかる部分も多く、
その「引っ掛かり」が気になってしまうとストーリーに集中しづらい。

わずか60分という尺の中でオリジナルの世界観とオリジナルのキャラで
オリジナルのストーリーを展開するというのは非常に難しく、
必然的に「ダイジェスト」ちっくになってしまうのは仕方ないが、
あまりにも端折り過ぎてしまうため、作品本来にあるであろう面白さが伝わらない。

はっきりいってこの作品の面白さをきちんと表現するには
「60分」という尺では不可能だ。
せめて、あと30分あればこのゴチャゴチャ感は減ったかもしれないが、
もともとが「映画向き」の作品とはいえない。

1クール尺ならば色々と膨らまして面白くなりそうな部分はあるのだが、
60分という尺に無理矢理押し込めるために、
本来は描写しないといけない部分、本来は膨らませなければならない部分を
端折ってしまっており、ダイジェストチックになってしまっている。

更に厄介なことにダイジェスト感を強めるシーンが2つもある。
挿入歌をガッツリ流しながらヒロインたちの日常を描くシーンがあり、
ただでさえ尺がないのに、挿入歌を売りたいのはわかるが、
流石に「2曲」はこの尺では厳しい。
しかも2曲連続のため、フラストレーションが溜まる。

言いたいことは分かる、やりたいことも分かるのだが、
分かるだけに「もう少し尺がアレば」と見終わった後に強く感じてしまう。
恐らく多くの人が見終わった後に「う~ん・・・」と、
なんとも言えない声を上げてしまうはずだ。
決して面白くないわけでもないが、素直に面白いとも言えない、
そんなもどかしさが見終わった後に強く残ってしまう。

全体的に見て企画段階で失敗している作品だ。
この作品をどうしてもアニメ化したいならばせめて90分、
もしくはTVアニメで1クールやらなければ面白さが伝わらず、
60分という尺に原作の「上辺」だけをなぞったような作品にしかならない。

監督や脚本家をこれで攻めるのは無理がある、
個人的な意見を言わせてもらえれば、60分という縛りプレイ状態で
起承転結をきっちりと描きつつ、それなりにまとめており、
見る人によっては「作画の美麗さ」と「キャラ描写」と「声優の演技」で
誤魔化されて面白いと感じることも出来るだろう。

ただ少なくとも「映画作品」としての満足感は薄く、
作画は綺麗だが、映画館で見るレベルの作画や演出とはいえず、
クォリティとしてはできの良いOVAレベルだ。
60分という尺なのに映画料金が1800円で通常料金と変わらないという
商業スタイルも嫌気を感じる。

2016年1月公開だが、BDは2月に正式発売、
もしくは劇場で売られていたようだ。
OVAを劇場で先行公開する場合によくある手法ではあるが、
この作品はあくまでもきちんとした「劇場アニメ」を謳っている以上、
もう少し先の販売か、料金が安くなければ話は違うが、
これでは見に行った人がなんだか損をする気分になるのではないだろうか。

ちょっと言葉は悪く、極端な言い方だが
「アニメ」というものを舐められている気分になる作品だ。
可愛い女の子と人気の声優を使えばそこそこお金を落とすんだろ?と
言われているようなプロデュースがされており、
アニメを作ったスタッフや原作を書いた作者、見に来た人、
アニメという媒体に対して敬意を感じない商業スタイルは
いろいろな意味でいらだちを感じてしまう。

きちんと作ればもっと面白くなった作品だ。
それだけに色々な制約中で綺麗にまとめた制作スタッフには賛辞を送りたいが、
このような作り方をしてしまったプロデュース方法が、
作品の評価を大きく下げてしまっていた。