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一時停止で見れば名作、再生すると駄作「アップルシード アルファ」レビュー

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評価☆☆☆☆☆(7点)全93分

あらすじ 世界大戦後、国家や情報網が破壊し尽くされ廃墟となったニューヨーク。
元・SWATのデュナンと、彼女の恋人で全身サイボーグのブリアレオスは不本意ながらギャングから依頼された仕事をこなして日々の糧を得ていた。
引用 – Wikipedia


本作品は士郎正宗原作の漫画のアニメ化。
アップルシードは過去にも何度もアニメ化されており、
1988年にOVA、2004年,2007と映画化、2011年にTVシリーズが放映された。
本作人は2015年の作品、過去作品とのつながりはない。
監督は荒牧伸志、制作はルーセント・ピクチャーズエンタテインメント

見出して感じるのはキャラデザの違和感だろう。
最新の3DCGアニメだけあってCGの質は非常に高く、
CGの「クォリティ」という意味では過去作品よりも当然高い。
しかし、クォリティが上がり人間のモデリングや
アニメといいより実写に近づいてしまったせいで、
ヒロインであるはずの「デュナン」が全くもって可愛くない。

過去作品を全て見ている私でも最初、デュナンが出ても
「これ誰だ?」と思うほど別人感がすごい。
表情も異様なまでに固く外見的にはリアルな人間だが、
硬すぎる表情のせいで作り物感じが強く出てしまっている。

まるで実写のように見えるといえば聞こえは良いが、
リアルを追求してしまったがゆえにアニメーションとしての面白さが欠落しており、
肝心の戦闘シーンも酷くつまらない。
「ぬるぬる」動いてはいるが、基本的に動きが遅く、
スローモーションの演出などを入れているため余計にカッコ悪さが増している。

荒牧伸志監督は「キャプテンハーロック」のCGアニメも手がけていたが、
基本的に「CGの重さの演出」が全く出来ていない。
重量感のない車の走りはダンボールで出来ているのか?と思うほど軽く、
壊れたコンクリートなども紙細工のごとく重さを感じない。

一時停止してみれば素晴らしい絵の数々だ。
だが1シーン1シーンとしてみると「物体の質量」を考慮していない
動きや余計な演出のせいでつまらない。
必要性の感じない「スローモーション」など無能な監督がよくやる手段であり、
意味もなくスローにしてじっくり見せられても、
ただ何の感情もなく眺めるしか無い。

荒牧伸志監督はアップルシードの映画シリーズを手がけている監督だが、
はっきりいってアニメーションとしての面白さは
最初の2004年に公開された作品のほうがしっかりある。
CGの質だけいえば2004年の作品よりもかなり上がっているが、
質が上がった分、荒牧伸志監督がその質に頼ってしまている。

キャラクター・デザインはデュナン以外は素晴らしいのだ。
全身をサイボーグ化したキャラの細かい動きや、
キャラクターの「肌の質感」など一時停止してじっくりと見ると、
細かく画きこだわりを感じる部分が多い。

ストーリーに関してははっきりいって、つまらない。
アップルシードのファンで原作も好きならば、
原作の前日談的なストーリーは楽しめるかもしれないが、
基本的に「淡々」とストーリーを進めている感じが強く、テンポが悪すぎる。

スピィーディーに戦闘シーンなどが展開すれば、
前述した「CGの欠点」ばかりが目立つシーンも気にならなかったろうが、
たーっぷりと尺を掛けている割には内容の薄い戦闘シーンばかりで、
欠点が余計に目立っている。
簡単に言うと常に間延びしている。

本来なら5分で描くようなシーンをこの作品は10分で描いている。
そんな感覚になるほど遅い。
尺稼ぎばかりが目立って本筋がなかなか進まない
苛立たしさばかりを感じてしまった。

全体的に見てCGの質があがり、その質に頼り切っただけの作品だ。
1シーン1シーンを切り取ってみてみれば凄いフル3DCGアニメに見える、
だが、一旦再生して「アニメーション」としてみた瞬間に駄作になる。
尺稼ぎばかりのグダグダなストーリー展開とテンポも、
CGの欠点を目立たせてばかりになってしまっており、
結果的に駄作になってしまっている。

2004年のアップルシードは日本の3DCGアニメの未来を感じる作品だった。
しかし、2015年のこの作品からはそんな可能性も未来も一切感じない。
外見はいいが中身は最悪な雰囲気イケメンのような、
残念さしか感じなかった。

個人的には大嫌いな作品だ。
日本のフル3DCGアニメは近年進化している、
CGの欠点である「重さ」や人物描写の違和感など、
演出やセルルックなどで工夫をし、
海外のCGアニメとは違う日本らしいCGアニメの方向性と作品が生まれてきている。

しかし、この作品は本来、フル3DCGアニメの先駆けだったはずの
アップルシードの最新作とは思えないほど、
海外のCGアニメのようなクォリティやCGの欠点ばかりが目立つ。

荒牧伸志監督は2004年にはCGで重さの演出がきちんとできていたし、
見ごたえのあるシーンがきっちりと描けていた。
しかし、本作品では見ごたえが一切ない。

「クリエイティブな才能は10年で枯れる」というのはよく言われるが、
アップルシードと言う作品でそれを実感するとは思わなかった。
本当に残念だ。

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